<知的生産の技術>を読む
まずは「知的生産の技術:梅棹忠夫」から
まずは、「知的生産の技術」の「要約と目次」を生成AIを利用して作成してみた。少し長すぎるが、この本を振り返り、新たな領域を解体するには悪くないできだ。ただこれを見る人は本当に参考に止めてほしい。私は内容についてはざっと見ただけで、チェックしていない。あくまで一つの手掛かりだ。
この本で私が今でも重要だと思うのは、「発見の手帳」、「ノート・カード」論、「整理と事務」、「読書」だろうか。
「発見の手帳」は、スマホの日記アプリに音声入力している。「ノート・カード」論は、Obsidian、Dynalist「が最適だ。「読書」はまさにこれからの展開だ。
「整理と事務」については、次の指摘が重要だと考えることは、他でも述べた。
「「このような整理や事務の技法についてかんがえることを、能率の問題だとおもっているひとがある。一般に、この本でとりあつかっているような知的生産の技術の話全体が、能率の問題としてうけとられやすいのである。しかし、じっさいをいうと、こういう話は能率とは無関係ではないにしても、すこしべつのことかもしれない。最小時間内に最大効果をあげるというのが能率の問題である。技術論というと、どうしてもそういう方向に話が展開しやすい。そういうゆきかたもあることをみとめながら、すこしべつな観点からもかんがえてみる必要がある。 これはむしろ、精神衛生の問題なのだ。つまり、人間を人間らしい状態につねにおいておくために、なにが必要かということである。かんたんにいうと、人間から、いかにしていらつきをへらすか、というような問題なのだ=。整理や事務のシステムをととのえるのは、「時間」がほしいからでなく、生活の「秩序としずけさ」がほしいからである。 水がながれてゆくとき、水路にいろいろなでっぱりがたくさんでている。水はそれにぶつかり、そこにウズマキがおこる。水全体がごうごうと音をたててながれ、泡だち、波うち、渦をまいてながれてゆく。こういう状態が、いわゆる乱流の状態である。ところが、障害物がなにもない場合には、大量の水が高速度でうごいても、音ひとつしない。みていても、水はうごいているかどうかさえ、はっきりわからない。この状態が、いわゆる層流の状態である。 知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといってよいだろう。精神の層流状態を確保する技術だといってもよい。努力によってえられるものは、精神の安静なのである。」。
「いらつきを減らす」ということで是非とも注意を喚起したいのは、デジタルの時代には、とりわけ「問題を小刻みにして解決する」ことが重要だということだ。小さな躓きが全体の流れを妨げるが、小さなことはほとんど小さな努力で解決できる。小さな努力とは、レベルを変え、角度を変えて問いを発するということだ。その際、生成AIとChatすることも多いが、生成AIでは似たような情報は出るが、まず正解は出ない。これをヒントにどう解決するかが、「問題を小刻みにして解決する」上での重要な手法だ。
要約と目次
各章の要約
まえがき
本書は、いわゆる「ハウ・ツーもの」ではなく、知的生産に関する関心を喚起し、刺激を提供することを目的としたエッセイである。連載時に読者から技法の詳細について強い関心が寄せられたため、書籍化にあたり技法の解説要素を補強している。しかし、著者の役割はあくまで話題の提供者であり、技術の体系的な解説者ではない。知的生産の技術の開発と体系化は今後の課題であり、多くの人々の手によって進められることが期待される。本書の完成にあたり、読者、友人(川喜田二郎、藤岡喜愛、和崎洋一、加藤秀俊など)、湯川秀樹らの協力に感謝の意を表している。
1 発見の手帳
ダ=ヴィンチが手帳に様々な事柄を記録していたという小説『神々の復活』に感銘を受け、著者も手帳をつける習慣を身につけた。手帳には、日々の経験の中で興味深いと思った現象や着想を、短い単語やフレーズではなく、きちんとした文章で記述する。これは、単なる実用メモや日常生活の記録ではなく、一種の「発見」の記録である。発見は即座に文章化し、難しい場合は見出しだけでも記録する。手帳は常に身につけ、新書判を短くした程度の大きさが望ましい。表紙は厚いボール紙を使用し、立ったままでも書けるようにする。ページごとに標題をつけ、後から利用しやすいように工夫する。
2 ノートからカードへ
日本に輸入された大学ノートは、罫線が狭く、ぎっしりと書き込むスタイルが一般的だが、これは検索に不便である。紙の片面だけを使い、左ページに項目の見出しや要約を記入する方が見やすい。ノートからカードへの移行は、知的生産業者だけでなく、実務の世界でも起こっていた。戦後の事務革命の中で、帳簿が帳票化され、伝票式の帳票カードが多用されるようになった。ノートとカードの距離は近く、カードへの移行は自然な流れである。
3 カードとそのつかいかた
文献カードとは異なり、ここで話題にするカードは、ノートの代わりに使用するものである。ノートの欠点は、ページの順序が固定されており、内容の順序変更ができないことである。カードは、内容の保存には適しているが、整理には不適当である。カードの大きさは京大型カード(10cm×15cm)が推奨され、紙質は書きやすく丈夫なものが良い。カードは常に持ち歩き、プラスチック製の表紙で保護する。カードには一枚一項目を記述し、分類を目的とせず、歴史を現在化する。
4 きりぬきと規格化
新聞記事の切り抜きは、知識の宝庫となりうるが、整理方法が重要である。スクラップ・ブックに貼り付けるだけでなく、台紙に貼ってオープン・ファイルに収納することで、様々な資料を規格化できる。資料の規格化は、先輩からの教えであり、別刷り整理法として実践されていた。
5 整理と事務
整理とは、散らばっているものをきれいに片付けることではなく、必要なものを必要な時にすぐ取り出せるようにすることである。整理は機能の秩序の問題であり、整頓は形式の秩序の問題である。整理のためには、置き場所を体系化し、取り出したら必ず元の位置に戻す。垂直式ファイリングは、効率的な整理法の一つである。家庭の事務革命のためには、空間の配置を決め、事務の近代化と機械化を進める。
6 読書
読書は知的生産の様式の問題であり、何を読めば良いかだけでなく、どのように読むべきかという技術が重要である。本は最初から最後まで読み、確認記録と読書カードを作成する。読書ノートを作成し、本は二度読むことで、創造的な読書が可能になる。引用においては、著者の文脈だけでなく、自分自身の文脈で読み、第二の文脈においてメモや書き抜きを行う。これは、本をダシにして、自分勝手な考えを開発し、育てるという創造的読書である。
7 ペンからタイプライターへ
日本語を書くための筆記用具として、毛筆の使用は減少し、万年筆が主流になっている。日本語をタイプライターで書くための工夫として、ローマ字論やカナモジ論が存在する。ローマ字がきを実行することで、言葉選びが慎重になり、文章が簡潔になる。また、日本語の「わかちがき」ができるようになる。カナモジ・タイプライターは、ローマ字から比較的容易に移行でき、文法的な問題も類似している。
8 手紙
現代社会では、手紙による通信、情報交換の体系が危機に瀕している。才能薄き普通の人間が、情報交換手段としての手紙の機能を奪い返すには、形式を再建するしかない。自分用の手紙の雛形を作り、用紙や書式を決め、日付には年を記入する。タイプライター(特にひらがなタイプライター)は、手紙用として非常に具合が良く、安心して忘れられるような形式が望ましい。
9 日記と記録
日記は自分自身との文通であり、魂の記録と経験の記録がある。自分のための業務報告として、バラ紙に日記を書き、日記と記録の間を埋める。記憶せずに記録することを心がけ、メモを取る習慣をつける。野帳の日常化を試み、カードに日記を書くことで、日記自体を資料として活用できる。
10 原稿
現代においては、誰でも文章を書く機会があり、仕事をした人間は、その仕事について情報を提供する社会的責任を負っている。原稿は印刷工事の設計図であり、出版・印刷関係者は、原稿の書き方についての教育普及活動を行うべきである。原稿は原稿用紙に書き、清書は必ずしも必要ではない。コピーを取り、紛失に備える。
11 文章
文章を書く能力は、現代の知的職業人の基礎的技能の一つである。文章は俳句のつもりで書くのではなく、まず分かりやすく書くことが重要である。文章アレルギーは、文章を文学だと考えることから生じる。知的生産のための基礎技術としての文章は、芸術的な文章ではなく、機能的な文章である。国語教育においては、文字の美しさだけでなく、論理的な文章の書き方を教えるべきである。
おわりに
本書は、個人における知的生産の技術を扱ったものであり、将来的には集団や社会のレベルにおける知的生産の技術にまで議論を発展させる必要がある。本書で扱った技術は、全体として一つのシステムに組みあがろうとしている。このシステムは未完成であり、社会的・文化的条件の変化に応じて変化する。重要なのは実行であり、頭で理解するだけでなく、自分で試してみることが大切である。情報時代においては、情報を大切にするという視点を持つ必要がある。
全体の要約
本書は、知的生産の技術について、著者の経験と考察を基に論じたエッセイである。 著者は、本書を単なるノウハウ本としてではなく、読者の知的生産に対する関心を喚起し、刺激を与えることを意図している。
本書では、知的生産の具体的な技術として、手帳、ノート、カード、切り抜き、整理、読書、執筆、手紙、日記、記録、文章といった項目を取り上げ、それぞれの技術に関する考え方や具体的な方法を紹介している。
手帳術については、レオナルド・ダ・ヴィンチが手帳に様々な事柄を記録していたというエピソードを紹介し、日々の発見を文章で記録することの重要性を説いている。 ノート術については、大学ノートの欠点を指摘し、片面筆記や見出しの活用を提案している。 カード術については、京大型カードの使用を推奨し、一枚一項目主義、分類の目的化の否定、歴史の現在化といった独自の考え方を展開している。 また、情報の整理術として、切り抜きや規格化の重要性を強調し、資料を整理・整頓することの意義を解説している。
読書術については、単に知識を吸収するだけでなく、創造的な読書をすることの重要性を説き、本を二度読み、著者とは異なる独自の文脈で読み解くことを提案している。 執筆術については、文章を書くための技術だけでなく、原稿を作成するための技術にも焦点を当て、原稿用紙の使い方や印刷技術との関係について詳しく解説している。 手紙術については、現代社会における手紙の衰退を憂い、手紙の形式を再建することの必要性を訴えている。 日記や記録については、単なる個人的な記録としてではなく、知的生産の素材として活用することの可能性を探求し、カード式日記や野帳の日常化を提案している。
文章術については、分かりやすい文章を書くことの重要性を強調し、文学的な文章ではなく、機能的な文章を目指すべきだと説いている。 また、知的生産においては、個人の努力だけでなく、社会的な記録蓄積施設の重要性も指摘し、自家用文書館の建設を提唱している。
本書全体を通して、著者は、知的生産の技術を単なるテクニックとしてではなく、生き方そのものとして捉え、読者自身の知的生産のあり方を見つめ直すことを促している。 知的生産の技術は、社会の変化に応じて常に進化していくものであり、読者自身が積極的に技術を開発し、実践していくことの重要性を強調している。
詳細目次
まえがき
はじめに学校はおしえすぎる/やりかたはおしえない/技術の不足と研究能力/技術ぎらい/知的生産とは/情報産業の時代/生活の技術として/現代人の実践的素養/物質的条件の変化/個人の知的武装/この本のねがい
1 発見の手帳
ダ=ヴィンチの手帳/わかき「天才」たち/発見の手帳/文章でかく/有効な素材蓄積法/発見をとらえる/手帳の構造/一ページ一項目/索引をつくる
2 ノートからカードへ
直輸入の伝統/天皇のノート/ノートの進化/ノートからカードへ/野帳/野外調査法とカード/現地でカードをつくる/共同研究/京大型カード
3 カードとそのつかいかた
カードのおおきさ/紙質と印刷/もってあるく/わすれるためにかく/一枚一項目/分類が目的ではない/歴史の現在化/有限への恐怖/カードへの批判
4 きりぬきと規格化
はじめてのきりぬき/スクラップ・ブック/台紙にはる/仕わけ棚からオープン・ファイルへ/資料を規格化する/先輩のおしえ/むつかしい写真整理/市販品と規格化/規格品ぎらい
5 整理と事務
本居宣長の話/整理と整頓/おき場所の体系化/整理法の模索史/パーキンス先生のこと/垂直式ファイリング/分類項目をどうするか/キャビネット・ファイル/家庭の事務革命/空間の配置をきめる/事務近代化と機械化/秩序としずけさ
6 読書
よむ技術/よむこととたべること/本ずきのよみべた/ 「よんだ」と「みた」/確認記録と読書カード/読書の履歴書/一気によむ/傍線をひく/読書ノート/本は二どよむ/本は二重によむ/創造的読書/引用について
7 ペンからタイプライターへ
日本語を「かく」/筆墨評論/鉛筆から万年筆へ/かき文字の美学と倫理学/タイプライターのつかいはじめ/手がきをはなれて/ローマ字論の伝統/ことばえらびとわかちがき/文字革命のこころみ/きえた新字論/ローマ字からカナモジへ/カナモジ論の系譜/カナモジ・タイプライター/カナモジへの抵抗/ひらかなだけでかく/ひらかなタイプライター/改良すべき問題点
8 手紙
情報交換の技術/手紙形式の収れんと放散/形式の崩壊/手紙ぎらい/形式再建のために/あたらしい技法の開発/タイプライターがきの手紙/まちがいなくきれいに/手紙のコピー/住所録は成長する/アドレス・カード
9 日記と記録
自分という他人との文通/魂の記録と経験の記録/自分のための業務報告/バラ紙にかく日記/日記をかんがえなおす/日記と記録のあいだ/記憶せずに記録する/メモをとるしつけ/野帳の日常化/カードにかく日記/個人文書館
10 原稿
他人のためにかく/訓練の欠如/印刷工事の設計図/出版・印刷関係者の責任/ルールは確立しているか/原稿は原稿用紙にかく/原稿用紙/原稿から印刷へ/わかちがきと原稿/印刷技術をかえる/清書はいらない/かならずコピーする
11 文章
失文症/行動家の文章ぎらい/才能より訓練/かんがえをまとめる/こざね法/ばらばらの資料をつなぐ/発想の体系的技術/まずわかりやすく/用字・用語の常識/日本語は非論理的か/文章技術の両極/国語教育の問題
おわりに
技術の体系化をめざして/情報時代のあたらしい教育