「SIMPLE RULES」を読む
著者:ドナルド・サル他
切り口に違和感の多い本である
少し前になるが「SIMPLE RULES:How to Thrive in a Complex World」というKindle本を見つけ、ルールの一種としての法を考える際に参考になるのではと思い買っておいた。最近、翻訳のKindle本が出てのを見つけ、目を通してみた。
著者2人(サルの他は、キャスリーン・アイゼンハート)の経歴を見ると実務経験もあるとても優秀な「研究者」のようであるが、私にはこの本の切り口には違和感が多い。
ただ大事なのは、著者らが挙げる6つの「シンプルなルール」の有効性であって、これが機能するのであれば、私の違和感などどうでもいい。
といいながら、違和感を簡単に書いておこう。
ひとつは、著者らも「複雑なルール」が妥当する場面があることを認めているが、それが単なる例示に終わっていて、どこが違うからそのような事態が生じるかの考察がない。これは読む人を不安に陥れる。
ふたつめは、様々な事例を挙げ、「シンプルなルール」でうまくいったというのだが、うまくいった原因が「シンプルなルール」にあるのか、その他の原因は考えられないのかについて、まったく検討がない。これは非科学的な態度である。イエズス会はそうかなあ。
6つの「シンプルなルール」の紹介
最初の3つは「決断する」ためのルール、あとの3つは「物事をうまく進める」ためのルール設定と説明されている。
「境界線ルール」…「考慮する」か、「排除するか」の二者択一
「優先順位ルール」…少ない資源を最大化する
「停止ルール」…引き際を決めておく
「ハウツー・ルール」…どのように、あるいは、どうしたら
「コーディネーション・ルール」…協調
「タイミング・ルール」…いつ
こう書けばうまくいくに決まっているといいたくなるが、そうでもないだろう。
詳細目次
もくじ
はじめに どんな複雑な問題も、解決に導くすごいルール
「シンプルなルール」の4大特徴
「複雑」か、「シンプル」か
一瞬で”発想”を変える方法
1 すべては「スピード」「実行力」「柔軟性」
「単純明快」というパワー
なぜ、爆発的な勢力を得たのか
こんな「ノイズ」に耳を傾けてはいけない
たとえば、ミツバチ社会にもある「完璧なしくみ」
2 まず「いちばん大切なこと」を見わける
「最初の判断」が命運を左右する
イエスかノーか――「境界線ルール」
少ない資源を最大化する――「優先順位ルール」
必ず”引きどき”を決めておく――「停止ルール」
3 ルールを最少まで絞りこむ
頭のいい人ほど〝逆手〟から考える
「制約のない自由」などない――「ハウツー・ルール」
チームの力を引き出す「コーディネーション・ルール」
足並みを乱すのも作戦のうち――「タイミング・ルール」
4 アクション前に押さえておくべき「4つの基本」──実践編
「戦略のプロフェッショナル」の視点
① 「自分の経験」をとことん活用する
② 「他者の経験」をうまく拝借する
③ 「科学的証拠」で巧みに補強する
④ 「話しあい」でレベルを上げる
5 仕事の現場でどう活かすか──実践編
ゼロから100万人の利用者を獲得するには
まるでコインの裏表のように
①「利益の針」をはっきりさせる
②ボトルネック(障壁)を見つける
③ルールを強化する
6 「最良の選択」を可能にする──人生設計編
恋愛、結婚、育児、生き方まで――
ステップ1――「自分の幸せ」にこだわる
ステップ2――「無意識のワナ」を見つける
ステップ3――「3つのカテゴリー」に落とし込む
データ分析で見える「デートの成功率」
ささいな”日課”に、」目に見える効果が
駆け出しコンサルタントにもできる「カリスマ育成法」
7 激変の時代にこそ役立つ「弱点の強み化」
その情報は”アップデート”できているのか
勝因は、あきれるほど「単純なこと」
「楽なほう」を選んではいないか
”シャーク”に食いつくされる前に
「君たちの目標は”100人に熱烈に愛される”ことだ」
8 成功者は、つねに「ゼロベース」に立ちかえる
フットワークが軽い人、身動きがとれなくなる人
「万年弱小チーム」が起こした奇跡
こんな”プライド”を捨てた者だけが生き残る
「天下分け目の戦い」を制した3つのルール
おわりに あなたの将来は〝その決断〟にかかっている
監訳者のことば 「簡潔で美しいルール」の先に、すばらしい成果が待っている