弁護士が取り組むこれからの法律事務

2024-06-19

法律事務とは

弁護士の仕事について、弁護士法3条は「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする」としている。

法律事務というと何となく安っぽい感じがするが、事務に踊る人々・阿部公彦」に描かれた文学者たちの生態を思い浮かべると、似通った面もある。

私は、これまで法律サービスとか、法律業務とか、弁護士業務とか言ってみたが、どれもピッタリと来ない。これからは典拠に返って法律事務で通すことにしよう。弁護士が何のために法律事務を行うかと言えば、もちろん依頼者の法律問題を解決するためである。

古典的な弁護士像

弁護士は、法とルールの枠内で依頼者が抱えている法律問題についてその利益を最大限擁護する手段・行動をとること(法律事務の履行)、及び法とルールの立法者・施行者に対しそのルールの原理・価値に従った実行を求めることを使命とすると言えるだろう。弁護士法1条が「①弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。②弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない」とするのも、大旨そういう趣旨だろうか。時代によって物言いは変わるとしても、その基本はローマ法時代から変わらない。この国の弁護士は後者が苦手であったが、今は立法者・施行者(行政・司法)の方がグズグズになりつつあるので、これは変わりつつあるだろうか。急いで付け加えたいのは、「依頼者の利益」は、依頼者の言うがままではなく、客観的な「利益」を想定し、依頼者と協議することが不可欠であるということ、及び「ルールの原理・価値」は、衝突する場合があるということだ。

変わる時代の中でこれからの弁護士がなすべきこと

さて時代は徐々に変わり、現実は大きく変容しつつある。世界の付加価値の生産は、充分に全世界のヒトの生活を支え、環境破壊に対応できる水準にある。しかし世界中のほとんどの、企業経営者、権力者は、戦争や株式市場・政府負債の増大という土俵の上で財の取り合いにうつつを抜かし、地球環境の破壊に手を貸しているというのが実態だろう。もちろん弁護士の仕事はそのような現実に直接取り組むものではないが、個々の法律問題の解決に取り組む中で少しでもその潮流に棹さすような仕事ができればと考えている。

これからの法律事務

「新しい法律問題」への対応

弁護士がなすべきことのひとつは、「新しい法律問題」に対応することである。ここで「新しい法律問題」とは文字どおり、新しく生じた問題に対して、「立法者」がルール(その一部である法律)の「あり方を考え直し、現実を改善するために新たに法律を立法・改正することで生じた問題である。確かに「新しい法律問題」という言葉は、魅惑的である。しかしこれまで、大きく変容しつつある現実に対応するという意味での「新しい法律問題」があっただろうか。私が見るところ、現実の微視的な変化に対し、「立法者」が微視的な観点で、法令の立法・改正をし、それが「新しい法律問題」と大騒ぎされるのが、ほとんどであった。「立法者」(要するに「行政担当者」であるが)は、今でも上記したような、現実の変容を想定できない。それどころか、「行政担当者」は、現実を改革する上での障害にさえなることが多い。

ただ「新しい法律問題」に対する今の「立法者」の役割・機能がどうであれ、新たな法令が立法・改正されれば、市民・企業はそれに対応せざるを得ない。弁護士も当然、依頼者に寄り添い、対応の補助に尽力する。内心では「立法者」に憤激することも多いが。

もちろん定番の「法律問題」に堅実に対応することも重要である。

今知りたい「法律問題」を一覧・検索しよう

さて、別項目の「弁護士が受任する法律事務とは」は、相当な手間を掛けて作成したものだが、当時の(私の)IT技術及び短気な気性では大したものは作れなかったし、修正を始めるとたいていWORDPRESSとの格闘になるので、ほぼ放置されたままだった。

そこでこのページにまず市民・企業の法律問題の入口へのアクセスルートを確保する趣旨で作成した「市民・企業の法律問題の入口」で紹介した2冊、市民向けに「必携 実務家のための法律相談ハンドブック:第一東京弁護士会全期旬和会編」を、企業向けに「中小企業法務のすべて(第2版):日弁連中小企業法律支援センター編)」を挙げ、この頁の下位頁として「今知りたい「法律問題」の一覧」を作成し、その各目次を掲記しよう。目次を検索して、知りたい項目が見つかれば、本を探して該当箇所を見るか、それを「予習」して、弁護士に相談すればよい

「分野別法律問題の手引き」も、同様の意図でより詳細な「手引き」という趣旨で作成したものだが、今これに手を入れるのは時間の無駄だろう。ただ一部に有用な部分もあるので見直しをしつつ参考記録として残しておく。その代わりに、「今知りたい「法律問題」一覧に上記も含め次の各本の目次を掲記することにする。ほぼ私の意図は達成できるだろう。

  • 必携 実務家のための法律相談ハンドブック:第一東京弁護士会全期旬和会編
  • 必携 実務家のための法律相談ハンドブック 顧問先等企業編:第一東京弁護士会 全期旬和会
  • 中小企業法務のすべて(第2版):日弁連中小企業法律支援センター編)
  • 業界別 法律相談を解決に導く法律・条例の調べ方<ヒントは条例にあり!?> :第一東京弁護士会 若手会員委員会 条例研究部会
  • Q&A 若手弁護士からの相談 374 問:京野哲也他
  • Q&A 若手弁護士からの相談203問 企業法務・自治体・民事編:京野哲也他
  • Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン:京野哲也他
  • 上場会社法:宍戸善一、大崎貞和
  • 情報・AIの利活用と紛争予防の法律実務-関連戴判例の分析からみる紛争防止策- :阿部・井窪・片山法律事務所
  • 弁護士として知っておきたい国際企業法務-米・中・東南アジアとの取引を中心に理解する-:山下眞弘他
  • 個人情報保護法の知識<第5版> (日経文庫) :岡村久道

新しい「法律問題」の調査手法

法律・判例・文献の調査

「今知りたい「法律問題」の一覧」を通じて必要な記事に到達するということは、いわば「アンチョコ」を利用するということだが、もちろんそれでは済まないことも多い。従前から「法律・判例・文献」の調査ということが言われてきた。これについてはどこかで書いたが「私が弁護士になったころは、図書館に行って「判例時報」の索引(100号ごとにでていたのだったかな)で判例を調べるとか、目に入った本、雑誌を読むとかが、調査のほとんどすべてだった」が、今はデジタル情報の検索、さらにはAI検索もうまれ、おおきく様変わりした。私の手許にあって利用できるものだけでも次のとおりだ。さらにこれらを起点として、無限のサイトにアクセスできる。ただ、法律分野についてこれらの作業をすることにどのような意味があるのかは、問題次第だ。ほとんど「クズ」情報ではないかという気もする。適当に付き合うのが良いだろう。

  • リーガル・リサーチ[第5版](本)
  • 判例秘書
  • 弁護士ライブラリー
  • 東京弁護士会・第二東京弁護士会号同図書館
  • 日弁連研修
  • 放送大学(若干の法律関係科目)

なおこれまであった下位項目の「法律判例の調査」、「新しい法令の成立を調べる」、「ジュリスト 目次」も当面、残存させておく。

生成AIでこれからの法律事務の何が変わるか

AI、IT,クラウド、DXと、その度に弁護士業界も大騒ぎし、追随解説本が出る。私はこれらの動きは大好きだが、私は弁護士の追随解説本についてはどちらかというと冷ややかだった。今回のChar GptやGeminiはどうだろうか。これは別項目で検討しよう。

投稿した法律問題各論

これまで,おおよそ次のような法律問題の関連する記事を投稿している。これはなかなかふえないなあ。

Posted by murachan54