<創造はシステムである:中尾政之 >を読む
Mのコメント
この本を最初に手にしたのは、十数年前だろう。「創造」とあるが、「問題解決論」として読めば秀逸である。なかなかその魅力を伝えられないが、「機械的要約」を試みたところ、十分な内容と思うので、取り急ぎ試論として投稿する。これがあれば本書をかなり「創造的」に読み込める。「問題解決と創造_総論」でも紹介しているので、ご覧頂きたい。なおこの投稿は上記のとおり「試論」なので暇をみて、読み込んだ結果を書き込んでいこう。
なお余計なことだが、著者の他の新書には?と思った記憶がある。
<創造はシステムである >の目次と要約
書誌 創造はシステムである 「失敗学」から「創造学」へ:中尾 政之 (角川oneテーマ21) (2012年4月)
目次
第1章 創造は要求から
1 試しに創造してみよう
2 思いを言葉にしよう
3 創造を言葉で示すのは難しい
4 日本の企業は以心伝心が大好きだった
5 夢を言葉にして語れば,必ず実現する
6 目的を定量的に設定しよう
7 明治以来,要求機能も輸入してきた
8 リサーチとソリューションを分離してみょう
9 要求機能を列挙してみょう
10 不況時に研究室をどうやってサバイバルさせるか
11 目的を持つには,生きる力が必要である
第2章 思考方法はワンパターン
1 簡単な思考演算を用いると,新たな設計解か導ける
2 「凍結させる」の思考演算を使う
3 思考演算子を用いるには,思考の上下運動が不可欠である
4 TRIZを用いて思考を上下運動させる
5 頻繁に用いる思考演算子にはどのようなものがあるのか
6 挿入付加の思考演算子の応用-第3物質の挿人
7 分割の思考演算子の応用-機能分離,並列化,副次排除
8 変形・交換・流線の思考演算子の応用-逆さにする
9 困ったときは,思考演算をやってみよう
第3章 システムは可視化できる
1 要求機能を整理しないと,創造したいものの全体像がわからない
2 ジャガイモ皮剥ぎ器の要求機能をあげよう
3 干渉を逆手にとって成功させよう
4 組織間で干渉が生じて,コミュニケーションエラーが起きる
5 いまどきの干渉管理をやってみよう
第4章 真似ができない創造化
1 干渉設計よりもわかりにくい複雑設計が続々と生まれた
2 人智を超えるような複雑な設計で失敗する
3 モジュラーとインテダレイテッドで戦わせてみよう
4 干渉が大好きな日本の大企業はどうやって失敗を減らすか
5 外見は面倒,中身は単純,真似ができない創造化
6 インテグレイテッドな頭の使い方が中小企業の武器である
7 高級レストランは インテグレイテッドである
8 世の中には インテグレイテッドとモジュラーの両方が必要である
おわりに
各章の要約
第1章 創造は要求から
創造とは、目的を設定し、自分にとって新しい作品や作業を新たに造ることであると定義する。日常の業務を繰り返すのではなく、自分の力で新しいことを行うのが創造である。創造は、設計、企画、計画、戦略、立案と言い換えることができる。創造を行うには、まず「何をやりたいのか」という具体的な目的を決めることから始まる。目的は「思い」ではなく、「言葉」で設定することが重要であり、定量的に示すことが効果的である。日本人は課題設定に慣れていないため、リーダーは部下に「何をやりたいのか」を明確に伝える必要がある。目的を持つには生きる力が必要であり、目標を立てて達成しようと努力することが重要である。目標を定量的に設定することで、創造活動の終わりが見え、達成感が得られる。
1-1 試しに創造してみよう: 創造の定義を広げれば、誰でも日常的に創造の機会がある。「創造」とは「自分で目的を設定して、自分にとって新しい作品や作業を、新たに造ること」。
1-2 思いを言葉にしよう: 目標設定の重要性を強調。目的を言葉にすることで、手段が明確になる。目的を意識することで、非常時にも適切な対応が可能になる。
1-3 創造を言葉で示すのは難しい: 創造を言葉で表現することの難しさについて。目的を言葉で明確にすることが重要。
1-4 日本の企業は以心伝心が大好きだった: 日本の企業文化における以心伝心の偏重を批判。曖昧な指示ではなく、具体的な言葉での伝達が重要。
1-5 夢を言葉にして語れば、必ず実現する: 目標を具体的に言葉で表現することの重要性。抽象的な目標ではなく、具体的な言葉で目標を設定する。
1-6 目的を定量的に設定しよう: 目標を定量的に設定することの重要性。数値目標を設定することで、達成度を明確に評価できる。
1-7 明治以来、要求機能も輸入してきた: 日本が明治以降、欧米の要求機能を模倣してきた歴史を指摘。独自の要求機能を設定することの重要性。
1-8 リサーチとソリューションを分離してみよう: 目的と手段を混同しないことの重要性。リサーチ(調査)とソリューション(解決策)を分離して考える。
1-9 要求機能を列挙してみよう: 要求機能を網羅的に列挙することの重要性。連想ゲームのように、考えられるすべての要求機能を洗い出す。
1-10 不況時に研究室をどうやってサバイバルさせるか: 不況時における研究室運営の戦略。助成金応募、若手研究者の育成、成果の最大化など。
1-11 目的を持つには、生きる力が必要である: 目的を持って生きることの難しさと、それに対するエネルギーの必要性。
第2章 思考方法はワンパターン
目的を達成するための手段を創出することが重要。TRIZ(トゥリーズ)という発明的問題解決理論を活用すると、新しい設計解を導き出すことができる。TRIZは、発明者の頭の動きの共通性を抽出したもので、思考演算子を覚えると設計解を導きやすい。思考演算子を用いるには、思考の上下運動が不可欠である。自分の課題を一般化・抽象化し、一般的な解法を特殊化・具体化して適用する必要がある。頻繁に用いる思考演算子として、挿入付加、分割、変形、交換、流線などがある。特に、第3物質の挿入や機能分離は、設計において有効な手段となる。
2-1 簡単な思考演算を用いると、新たな設計解が導ける: 簡単な思考演算を用いることで、新しい設計解を導き出すことができる。
2-2 「凍結させる」の思考演算を使う: 「凍結させる」という思考演算子の例。トランペットのパイプを曲げる際に、水を入れて凍らせることで、パイプの変形を防ぐ。
2-3 思考演算子を用いるには、思考の上下運動が不可欠である: 思考演算子を用いるには、抽象化と具体化を繰り返す思考の上下運動が不可欠である。
2-4 TRIZを用いて思考を上下運動させる: TRIZ(トゥリーズ)を用いて思考を上下運動させる方法。
2-5 頻繁に用いる思考演算子にはどのようなものがあるのか: 頻繁に用いる思考演算子として、挿入付加、分割などを紹介。
2-6 挿入付加の思考演算子の応用──第3物質の挿入: 第3物質の挿入という思考演算子の応用。2つの要素だけでは成立しない場合に、第3の要素を加えることで解決を図る。
2-7 分割の思考演算子の応用──機能分離、並列化、副次排除: 分割の思考演算子の応用。機能分離、並列化、副次排除などの手法。
2-8 変形・交換・流線の思考演算子の応用──逆さにする: 変形・交換・流線の思考演算子の応用。「逆さにする」という思考演算子。
2-9 困ったときは、思考演算をやってみよう: 思考演算が有効であることを改めて述べている。
第3章 システムは可視化できる
要求機能を整理し、創造したいものの全体像を把握することが重要。要求機能と設計解の関係を明確に示すことで、問題点や改善点が見えやすくなる。要求機能と設計解の関係を示す例として、ジャガイモ皮剝き器の要求機能の分析がある。創造には干渉が内在しており、干渉によってトラブルが発生することがある。しかし、干渉を逆手にとって成功させることも可能である。組織間でのコミュニケーションエラーを防ぐためには、関係者を同じ部屋に集めて仕事をさせることが有効である。現代的な干渉管理では、工程やメンテナンスの管理で干渉排除が重視されている。
3-1 要求機能を整理しないと、創造したいものの全体像がわからない: 要求機能を整理することの重要性。全体像を把握しないと、創造的な解決策は見つからない。
3-2 ジャガイモ皮剥ぎ器の要求機能をあげよう: ジャガイモ皮剝き器を例に、要求機能を具体的に分析する。
3-3 干渉を逆手にとって成功させよう: 干渉を逆手にとって成功させる事例。トイレットペーパーの芯を水に流せるようにするなど。
3-4 組織間で干渉が生じて、コミュニケーションエラーが起きる: 組織間のコミュニケーション不足によるエラーとその対策。
3-5 いまどきの干渉管理をやってみよう: 現代的な干渉管理の手法。工程やメンテナンスにおける干渉排除など。
第4章 真似ができない創造化
現代社会では、要求機能の数が多くなり設計が複雑になるため、人智を超えるような設計で失敗することがある。複雑な設計に対応するため、モジュラー構成とインテグレイテッド構成を組み合わせることが有効である。日本の大企業では、モジュラー構成にインテグレイテッド構成を混ぜている。一方、中小企業では、インテグレイテッド構成にモジュラー構成を加えて体質を強化している。インテグレイテッドな頭の使い方が中小企業の武器となり、大企業に負けない創造性を発揮することができる。
4-1 干渉設計よりもわかりにくい複雑設計が続々と生まれた: 干渉設計よりも複雑な設計が増えている現状を指摘。
4-2 人智を超えるような複雑な設計で失敗する: 複雑な設計における失敗例。
4-3 モジュラーとインテグレーテッドで戦わせてみよう: モジュラー構成とインテグレーテッド構成の比較。
4-4 干渉が大好きな日本の大企業はどうやって失敗を減らすか: 日本の大企業が干渉設計を好む傾向と、その失敗を減らすための対策。
4-5 外見は面倒、中身は単純、真似ができない創造化: 外見は複雑だが、中身は単純で真似ができない創造の例。
4-6 インテグレイテッドな頭の使い方が中小企業の武器である: インテグレイテッドな思考が中小企業の強みとなる。
4-7 高級レストランはインテグレイテッドである: 高級レストランを例に、インテグレイテッドな設計の良さを説明。
4-8 世の中にはインテグレーテッドとモジュラーの両方が必要である: インテグレーテッドとモジュラーの両方が社会には必要である。
全体の要約
本書は、「創造」を「自分で目的を設定して、自分にとって新しい作品や作業を、新たに造ること」と定義し、創造をシステムとして捉え、そのプロセスを詳細に解説している。創造は、天才だけが行う特別な行為ではなく、誰でも日常的に実践できるものであると述べている。
第1章では、創造の出発点となる「要求」に焦点を当てている。創造を始めるには、まず具体的な目的を定めることが重要であり、目的は「思い」ではなく「言葉」で、しかも定量的に設定することが望ましいと説く。日本人は課題設定に慣れていないため、組織のリーダーは目的を明確に伝え、メンバーが共通認識を持つように努める必要がある。また、目的を持つには「生きる力」が必要であり、目標達成に向けて積極的に行動することが重要であると述べている。
第2章では、目的を達成するための「思考方法」について解説する。TRIZ(トゥリーズ)という発明的問題解決理論を活用し、思考演算子を駆使することで、新しい設計解を導き出すことができると説く。思考演算子を用いるには、自分の課題を一般化・抽象化し、一般的な解法を特殊化・具体化して適用する「思考の上下運動」が不可欠である。頻繁に用いる思考演算子として、挿入付加、分割、変形、交換、流線などを紹介し、特に第3物質の挿入や機能分離が有効な手段となることを具体例を挙げて説明している。
第3章では、創造のプロセスを「可視化」することの重要性を説く。要求機能を整理し、要求機能と設計解の関係を明確に示すことで、問題点や改善点が見えやすくなると述べる。ジャガイモ皮剝き器を例に、要求機能の分析と設計解の関係を詳細に解説する。創造には干渉が内在しており、干渉によってトラブルが発生することがあるが、干渉を逆手にとって成功させることも可能である。組織間でのコミュニケーションエラーを防ぐためには、関係者を同じ部屋に集めて仕事をさせることが有効であり、現代的な干渉管理では、工程やメンテナンスの管理で干渉排除が重視されている。
第4章では、現代社会における創造のあり方について考察する。現代社会では、要求機能の数が多く設計が複雑になるため、人智を超えるような設計で失敗することがある。複雑な設計に対応するため、モジュラー構成とインテグレイテッド構成を組み合わせることが有効であると述べる。日本の大企業では、モジュラー構成にインテグレイテッド構成を混ぜており、一方、中小企業では、インテグレイテッド構成にモジュラー構成を加えて体質を強化している。インテグレイテッドな頭の使い方が中小企業の武器となり、大企業に負けない創造性を発揮することができると結論付けている。
本書全体を通して、創造とは単なる思いつきやひらめきではなく、論理的思考と具体的な行動によって実現できるシステムであると主張している。読者に対して、日々の生活や仕事の中で創造性を発揮し、より良い人生を送るための具体的な方法論を提供している。