問題解決と創造・総論
「問い」から「問題の発見・解決」と「創造」を考える
序
私は、当初から「問題解決と創造」をこのサイトのメインテーマとしてきた。長年「学び」ということしか頭になかったから、私にとって「問題解決と創造」という視点はとても新鮮であった。私は「問題解決」について次のように捉えていた。
「問題解決」へアクセスする
私たちは、日々、自分自身の現在の有り様(ありよう)とこれからの行く末に思い煩わされ、頭上に掲げた目標と泥沼のような日々の現実との差異(問題)の解決を迫られている。更に自分の視野を通して見える、環境(自然や人工物等)の中に存在する、自身や自身が属する組織(家族・コミュニティ、企業、自治体・国、その他の組織)とこれらの相互作用として起きている様々な複雑な問題群に直面し、その解決も迫られる。社会や世界には、複雑で解決困難な問題や新しい問題が群として山積していることがわかる。個の問題より、こちらの方が重いことが多いだろうが、これについて個としてできることは限られる。
これらの解決すべき問題を、「個の問題」(大きくは「目標の達成」と「依存からの脱却」と捉えることが出来ようか。)と「世界の複雑な問題群-複雑系と持続可能性-」に分けることにしよう。
現代の焦点となるのは、多く後者の「複雑系と持続可能性」の問題であるが、その解決は容易ではない。ただ「個の問題解決」をクリアしないと、なかなか「世界の複雑な問題群-複雑系と持続可能性-」の解決にまで行き着くことは出来ないだろう。 「世界の複雑な問題群」の多くは「公共」に関連するので、まずその問題解決に取り組むべき役割を担うのは各国の政府であるといえるが、最近の彼我の政府や政治過程の視野の狭さには辟易するだけで、当面政府がこれらの問題を解決することは当てにしない方がよさそうだ。というより、政府自体、解決しなければならない問題の大きな対象だし、次々と新しい問題を引き起こし、持続不可能性に拍車を掛けているようにも思われる。
そこで私たちは襟を正し、世界の最小の構成要素である一個人として、自ら「世界の複雑な問題群-複雑系と持続可能性-」の解決に乗り出すべく、「問題解決学」、「創造学」、「システム思考」等々といわれる分野をのぞいてみたくなるが、百花繚乱で、何を頼ればいいのか、迷うばかり、さてどうしよう。特にビジネス分野から発信される「問題の発見・解決」論は、いかにも軽率なものが多く、どうも頼りがいがない。一方、学問分野からの発信は対象範囲が狭く、しかも重くもたもたとして、しかも構造の記述、モデル化、分析にとどまるものが多く、なかなか「問題の発見・解決」の実行に届かない。
「問題の発見と解決」へむけて
問題の定義
「問題解決」という場合の「問題」とは、普通、私たちが存在する現実の世界における「目標と現状のギャップ」と定義される(これは、ハーバート・A. サイモンが、言い出したらしい。)。問題は、既に起きてしまっている発生型問題、より高い到達目標を設定することで見えてくる設定型問題、将来的に時間と共に問題になるという将来型問題に分けることが出来る。なお「創造」は「問題解決」の枠組みにとらわれないより伸びやかなものととらえてもいいが、「問題解決の方法」で検討するように、「問題解決」の一場面として位置づけることができるので、逐一区別しないことにする。
「問題」の対象は、大別すると、「個の問題」と「世界の複雑な問題群-複雑系と持続可能性-」に分けることが出来ることは、上述した。
4要素5領域と問題解決の方法
ではこの「私たちが存在する現実の世界」はどのように構成されているのか。経済学等では、人(家計)、企業、政府の3主体を想定するのでこれを借用し、これに自然・人工物・情報からなる環境を加えると4要素(人、企業、政府、環境)になる。そして、これらの4要素の活動と相互作用によって、複雑な振る舞いをする現実の社会・世界が形作られていると考えることができる(普通、これは「システム」と呼称される。)。
このような整理を前提とすると、問題解決の対象は、人、企業、政府、環境という4要素固有の各問題領域、及び4要素の活動と相互作用によって形作られる社会・世界を加えた5領域になる。ここで、人・組織・環境が、限定された地域の近似した言語・文化で構成される場合(国家の場合もあるが、それに限られない)を「社会」と呼び、異なる言語・文化で構成される場合を「世界」と呼ぶことにしよう(ただし、特に区別せず、社会ないし世界とする場合もある。)。
この「問題発見・解決と創造」の方法はできるだけプラグマティックな内容になるように心がける一方、「世界」はますます拡大していくから、4分野5領域に関する知識はできるだけ範囲を広くとり、わかりやすく整理していきたい。ただ全部に力を入れていると二進も三進もいかないことが分かってきたので、できるだけ内容を、解決すべき問題-「個の問題」と「世界の複雑な問題群-複雑系と持続可能性-」に絞っていきたい。
なお、プラグマティックというと、役に立たないものは排除するというイメージだが、論理的、科学的な知がいつどこで役に立つかは予測できないし(特に数学ではよく言われることだ。)、物語や哲学等々の人文畑も、個人のフレームをチェンジしてどのイメージを沸き立たせ、新たな思考・アイデアを生み出すために「役に立つ」。役に立たないと断言できるのは、古い発想に固執する「学問」だけだ。
問いとリサーチ
上記したように、ここでの課題は、要は、私たちが「問題」と捉えることを「世界」の中に位置づけて記述、モデル化し、それを解決するために何をどうすればよいのかの実行手段が得られればいいわけだから、「世界」に関する知識と「問題解決の方法」が結び付けられればよいわけだ。 ところで、問題解決につながる「世界」に関する知識を得るにはどうすればいいのか。 王道があるはずもなく、地道に本を読み、考え、表現し、実行することを繰り返して「問題解決の地平にたどり着く」のが「正解」であるが、その核心は、「問いとリサーチ」である。
「問い」、「リサーチ」は別に取り扱っているので、ここでは詳論しないが、「問い」では触れられていない「思考実験」(100の思考実験―あなたはどこまで考えられるか:ジュリアン・バジーニ)と「問題発見」(ライト、ついてますか 問題発見の人間学:ドナルド・C・ゴース; ジェラルド・M・ワインバーグ)の2冊を挙げておこう。
100の思考実験―あなたはどこまで考えられるか:ジュリアン・バジーニ
- はじめに
- 出典についての注意
- 1 邪悪な魔物
- 2 自動政府
- 3 好都合な銀行のエラー
- 4 仮想浮気サービス
- 5 わたしを食べてとブタに言われたら
- 6 公平な不平等
- 7 勝者なしの場合
- 8 海辺のピカソ
- 9 善なる神
- 10 自由意志
- 11 わたしがするようにでなく、言うようにせよ
- 12 テセウスの船
- 13 赤を見る
- 14 氷の話
- 15 持続可能な開発
- 16 救命ボート
- 17 殺すことと死なせること
- 18 もっともらしい話
- 19 邪悪な天才
- 20 幻想を破る
- 21 生の宣告
- 22 随伴現象者たちの星
- 23 箱の中のカブトムシ
- 24 シモーヌに自由を
- 25 丸を四角にする
- 26 ビュリダンのロバ
- 27 痛みの痕跡
- 28 義務を果たす
- 29 ただ乗り
- 30 依存する命
- 31 記憶は作られる
- 32 テロ予告
- 33 公式ニュースの発表
- 34 わたしを責めないで
- 35 最後の手段
- 36 予防的正義
- 37 わたしは脳である
- 38 検査員の訪問
- 39 ギュゲスの指輪
- 40 自然という芸術家
- 41 青を獲得する
- 42 金を取って逃げろ
- 43 きたるべき衝撃
- 44 死がふたりを分かつまで
- 45 目に見えない庭師
- 46 ふたりのデレク
- 47 ウサギだ!
- 48 合理性の要求
- 49 部分を寄せ集めたときの落とし穴
- 50 善意の賄賂
- 51 水槽の中の脳
- 52 多くても少なくても
- 53 つかみどころのないわたし
- 54 ありふれた英雄
- 55 二重のやっかい
- 56 ピリ辛のミートシチュー
- 57 神の命令
- 58 コウモリであること
- 59 無知のヴェール
- 60 幸運のルーレット
- 61 わたしは考える、だから?
- 62 知ってはいない
- 63 つぼみを摘む
- 64 宇宙の中の自分の大きさ
- 65 魂の力
- 66 模造画家
- 67 多文化主義のパラドックス
- 68 家族が第一
- 69 戦慄
- 70 中国語の部屋
- 71 生命維持
- 72 パーシーに自由を
- 73 目が見ているもの
- 74 亀の徒競走
- 75 木馬で賭けに勝つ
- 76 ネット頭脳
- 77 身代わり
- 78 神に賭ける
- 79 時計じかけのオレンジ
- 80 心と頭
- 81 感覚と感受性
- 82 悪夢のシナリオ
- 83 黄金律
- 84 楽しみの法則
- 85 どこにもいない男
- 86 芸術のための芸術
- 87 モッツァレラチーズでできた月
- 88 記憶抹消
- 89 水はどこでも水なのか
- 90 正体がわからないもの
- 91 誰も傷つかない
- 92 火星への旅
- 93 ゾンビ
- 94 一粒ずつの課税
- 95 悪の問題
- 96 狂人の痛み
- 97 道徳的な運
- 98 経験機械
- 99 平和の代償
- 100 喫茶店で暮らす人たち
- 謝辞
- 訳者あとがき
ライト、ついてますか 問題発見の人間学:ドナルド・C・ゴース; ジェラルド・M・ワインバーグ
- 序文
- 第1部 何が問題か?
- 1.問題
- 2.ピーター・ピジョンホールの陳情書
- 3.キミの問題は何か
- 第2部 問題は何なのか?
- 4.ビリー・ブライトアイズの最適入札
- 5.ビリーが舌を嚙んだ
- 6.ビリーふたたび入札者のもとへ
- 第3部 問題は本当のところ何か?
- 7.終わりのない連鎖
- 8.不適合を見落とす話
- 9.うまいレベルに着陸する話
- 10.意味に気をつけよう
- 第4部 それは誰の問題か?
- 11.煙が目にしみる
- 12.構内は車で一杯
- 13.トンネルのかなたのあかり
- 第5部 それはどこからきたか?
- 14.ジャネット・ジャウォルスキー変人と衝突
- 15.ミスター・マチーチン事態を収拾
- 16.仕事する人いばる人
- 17.試験について
- 第6部 われわれはそれをほんとうに解きたいか?
- 18.トム・タイヤレスのおもちゃいじり
- 19.政治には忍耐が肝要
- 20.ある特務
100の思考実験―あなたはどこまで考えられるか:ジュリアン・バジーニ
ライト、ついてますか 問題発見の人間学:ドナルド・C・ゴース; ジェラルド・M・ワインバーグ
問題の発見・解決の基礎
ここでは、最初に「問題解決」について、3冊の基本書を紹介しよう。
- 「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」
- 「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」
- 「問題解決大全」
新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方:佐藤 允一
創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ:中尾政之
問題解決大全~ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール:読書猿
「図解 問題解決入門」…基本書1
まず解決すべき「問題の基本的な構造」(問題構造図式と呼ばれることがある。)については、「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」(著者:佐藤 允一)の分析が、簡便でわかりやすい。
同書は「問題」を「目標と現状のギャップ」ととらえ(後記「問題解決大全」によると、これは、ハーバート・A. サイモンが、言い出したらしい。)、原因となる「入力」、「制約条件」や「外乱(不可抗力)」が影響する「プロセス」を経て、結果となる「出力(現状)」が生じるという「問題構造図式」を提示する。この図式をふまえ、「入力」や「制約条件」をコントロールすることで、「出力(現状)」を変え、問題解決を考えようというのである(「佐藤問題構造図式」という。)。これだけでは単なる枠組みに過ぎないが、それだけに問題解決の様々な対象や方法を整理して位置づけるのに便利である。
次に同書は、「問題」を、発生型(既に起きている問題)、探索型(今より良くしたい問題)、設定型(この先どうするか)に分類しており(この分類は「時間型分類」といえよう。)、これも有用である。
さらにこれは私見ではあるが、「問題」を、個人型、人工物型、システム型に大別することも有用である(この分類は「対象型分類」といえよう。)。「世界」の大部分の問題は、「システム思考」が対象とすべき複雑な「システム型」の問題であるが、個人の問題の多くは、個人型として個人の意思決定と行動改善の方法として捉えることが適切であるし、人工物(多くは商品であろう)の問題は、人より物の振る舞いが前面に出る設定型、探索型の問題であるから、別に検討したほうが良さそうだ。ただし、それぞれの方法を他に応用することは有益である。なお企業に関わる「問題」は、個人型、人工物型、システム型のいずれの要素も含んでおり、併せて経営分析、経営戦略等として検討されているから、別途、検討すべきである。
「創造はシステムである」…基本書2
「創造」は、佐藤の「問題構造図式」の時間型分類の、設定型(この先どうする)ないし探索型(今より良くしたい問題)として、問題解決の一場面と位置づけることができる。
「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」(著者:中尾政之)は、「創造」(自分で目的を設定して、自分にとって新しい作品や作業を、新たに造ることと定義する。)の過程を、「思い」(願望)→「言葉」(目的)→「形」(手段)→「モノ」(アクションプラン)ととらえ、まず「目的」を言葉として設定することが重要だとする(これが「出力」となる「結果」である。)。そしてその「原因」となる「入力」「制約条件」等を<「形」(手段)+「モノ」(アクションプラン)>と捉え、その具体的な内容に「思考演算子」(これは、TRIZ(トゥリーズ)のことである。)を適用して、検討、選択し、「目的」を実現していく。システムである人工物の設計、創作を念頭に置いた問題構造図式の変化型であるが、システムについての問題解決は複雑、難解なものが多いので、まず人工物の創造でこれに習熟することには意味がある(ただし同書には、「システム思考」の話は出てこない。)。
「問題解決大全」…基本書3
なおこの上記の2つの方法に止まらず、「問題解決と創造」を実現する観点から考え出された様々な技法がある。それらの主要なものが「問題解決大全」で、丁寧に検討されている。「問題解決大全」では、問題解決の手法をリニア(直線的) な問題解決とサーキュラー(円環的) な問題解決の2つに大別して取り上げた上、問題解決の過程を、大きくは4段階、詳細には14段階に整理し、それぞれに該当する技法を紹介している。①問題の認知(目標設定、問題察知、問題定義、問題理解)、②解決策の探求(情報収集、解の探求、解決策の改良、解決策の選択)、③解決策の実行(結果予測、実行計画、進行管理)、④結果の吟味(結果の検証、反省分析、学習・知識化)である。基本書1、2を十二分に補完する内容となっている。
新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方:佐藤 允一
- はしがき
- 1 問題とは何か
- 1 見える問題と見えない問題
- 2 問題意識はどこからくるか
- 3 問題をとらえるものの見方
- 4 目標と現状のギャップが問題
- 5 「問題がない」という問題
- 6 問題と問題点は異なる
- 2 問題を見つける
- 1 問題解決の当事者は誰か
- 2 問題はどのように確定するか
- 3 問題には三つのタイプがある
- 4 「すでに起きている」という問題
- 5 「今より良くしたい」という問題
- 6 「この先どうするか」という問題
- 3 問題を組み立てる
- 1 問題の「仕組み」を考える
- 2 問題は環境変化から
- 3 方針は目標達成の方法論
- 4 目標を具体的な課題とする
- 5 課題達成の手段と活動
- 6 課題達成を妨げる条件
- 4 問題点を挙げる
- 1 見える障害と見えない障害
- 2 突然発生した不可抗力的な障害
- 3 「打つ手がまずかった」という問題点
- 4 「やり方がまずかった」という問題点
- 5 「自分の手に負えない」という問題点
- 6 できる範囲とできない範囲
- 5 解決策を考える
- 1 対策はアイデアではない
- 2 目標を修正する必要はないか
- 3 応急処置としての当面策
- 4 戦術レベルの根本策
- 5 戦略レベルの根本策
- 6 解決策に優先順位をつける
- [事例研究]急激な円高! 売上減少
- あとがき
創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ:中尾政之
- 第1章 創造は要求から
- 1 試しに創造してみよう
- 2 思いを言葉にしよう
- 3 創造を言葉で示すのは難しい
- 4 日本の企業は以心伝心が大好きだった
- 5 夢を言葉にして語れば,必ず実現する
- 6 目的を定量的に設定しよう
- 7 明治以来,要求機能も輸入してきた
- 8 リサーチとソリューションを分離してみょう
- 9 要求機能を列挙してみょう
- 10 不況時に研究室をどうやってサバイバルさせるか
- 11 目的を持つには,生きる力が必要である
- 第2章 思考方法はワンパターン
- 1 簡単な思考演算を用いると,新たな設計解か導ける
- 2 「凍結させる」の思考演算を使う
- 3 思考演算子を用いるには,思考の上下運動が不可欠である
- 4 TRIZを用いて思考を上下運動させる
- 5 頻繁に用いる思考演算子にはどのようなものがあるのか
- 6 挿入付加の思考演算子の応用-第3物質の挿人
- 7 分割の思考演算子の応用-機能分離,並列化,副次排除
- 8 変形・交換・流線の思考演算子の応用-逆さにする
- 9 困ったときは,思考演算をやってみよう
- 第3章 システムは可視化できる
- 1 要求機能を整理しないと,創造したいものの全体像がわからない
- 2 ジャガイモ皮剥ぎ器の要求機能をあげよう
- 3 干渉を逆手にとって成功させよう
- 4 組織間で干渉が生じて,コミュニケーションエラーが起きる
- 5 いまどきの干渉管理をやってみよう
- 第4章 真似ができない創造化
- 1 干渉設計よりもわかりにくい複雑設計が続々と生まれた
- 2 人智を超えるような複雑な設計で失敗する
- 3 モジュラーとインテダレイテッドで戦わせてみよう
- 4 干渉が大好きな日本の大企業はどうやって失敗を減らすか
- 5 外見は面倒,中身は単純,真似ができない創造化
- 6 インテグレイテッドな頭の使い方が中小企業の武器である
- 7 高級レストランは インテグレイテッドである
- 8 世の中には インテグレイテッドとモジュラーの両方が必要である
- おわりに
問題解決大全~ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール:読書猿
- まえがき 問題解決を学ぶことは意志の力を学ぶこと
- 本書の構成について
- 第Ⅰ部 リニアな問題解決
- 第1章 問題の認知
- 01 100年ルール THE 100-YEAR RULE 大した問題じゃない
- 02 ニーバーの仕分け NIEBUHR’S ASSORTING 変えることのできるもの/できないもの
- 03 ノミナル・グループ・プロセス NOMINAL GROUP PROCESS ブレスト+投票で結論を出す
- 04 キャメロット CAMELOT 問題を照らす理想郷という鏡
- 05 佐藤の問題構造図式 SATO’S PROBLEM STRUCTURE SCHEME 目標とのギャップは直接解消できない
- 06 ティンバーゲンの4つの問い TINBERGEN’S FOUR QUESTIONS 「なぜ」は4 種類ある
- 07 ロジック・ツリー LOGIC TREE 問題を分解し一望する
- 08 特性要因図 FISHBONE DIAGRAM 原因と結果を図解する
- 第2章 解決策の探求
- 09 文献調査 LIBRARY RESEARCH 巨人の肩に乗る
- 10 力まかせ探索 BRUTE-FORCE SEARCH 総当たりで挑む万能解決法
- 11 フェルミ推定 FERMI ESTIMATE 未知なるものを数値化する
- 12 マインドマップ® MIND MAPPING® 永遠に未完成であるマップで思考プロセスを動態保存する
- 13 ブレインライティング METHODE635 30分で108のアイデアを生む集団量産法
- 14 コンセプトマップ CONCEPT MAP 知識と理解を可視化する
- 15 KJ法 KJ METHOD 混沌をして語らしめる、日本で最も有名な創造手法
- 16 お山の大将 KING OF THE MOUNTAIN 比較で判断を加速する
- 17 フランクリンの功罪表 MERIT AND DEMERIT TABLE 線1 本でつくる意思決定ツール
- 18 機会費用 OPPORTUNITY COST 「選ばなかったもの」で決まる
- 19 ケプナー・トリゴーの決定分析 DECISION ANALYSIS 二重の評価で意思決定する
- 第3章 解決策の実行
- 20 ぐずぐず主義克服シート ANTI-PROCRASTINATION SHEET 先延ばしはすべてを盗む
- 21 過程決定計画図 PROCESS DECISION PROGRAM CHART 行動しながら考える思考ツール
- 22 オデュッセウスの鎖 CHAIN OF ODYSSEUS 意志の力に頼らない
- 23 行動デザインシート BEHAVIOR DESIGN SHEET 過剰行動の修正は不足行動で
- 第4章 結果の吟味
- 24 セルフモニタリング SELF MONITORING 数えることで行動を変える
- 25 問題解決のタイムライン PROBLEM SOLVING TIMELINE 問題解決を時系列で振り返る
- 26 フロイドの解き直し SOLVE AGAIN FROM SCRATCH 解き終えた直後が最上の学びのとき
- 第1章 問題の認知
- 第Ⅱ部 サーキュラーな問題解決
- 第5章 問題の認知
- 27 ミラクル・クエスチョン THE MIRACLE QUESTION 問題・原因ではなく解決と未来を開く
- 28 推論の梯子 THE LADDER OF INFERENCE 正気に戻るためのメタファー
- 29 リフレーミング REFRAMING 事実を変えず意味を変える
- 30 問題への相談 CONSULTING THE PROBLEM ABOUT THE PROBLEM 問題と人格を切り離す
- 31 現状分析ツリー CURRENT REALITY TREE 複数の問題から因果関係を把握する
- 32 因果ループ図 CAUSAL LOOP DIAGRAM 悪循環と渡り合う
- 第6章 解決策の探求
- 33 スケーリング・クエスチョン SCALING QUESTION 蟻の一穴をあける点数化の質問
- 34 エスノグラフィー ETHNOGRAPHY 現場から知を汲み出す
- 35 二重傾聴 DOUBLE LISTENING もう1つの物語はすでに語られている
- 第7章 解決策の実行
- 36 ピレネーの地図 A MAP OF THE PYRENEES 間違ったプランもないよりまし
- 37 症状処方 PRESCRIBING THE SYMPTOM 問題をもって問題を制する
- 第5章 問題の認知
- 問題解決史年表
- 索引
創造について
「創造」は、「アイデアをカタチにする」こととほぼ同義であり、「問題の発見・解決」と重なっている領域である。両者で、「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ:中尾政之」を紹介した。 「創造」に関する本は多いが、「アイデアをカタチにする」では、上記以外は、紹介しなかったので、ここでは次の本だけ掲記しておこう。
創造力を民主化する たった1つのフレームワークと3つの思考法:永井翔吾
創造力を民主化する たった1つのフレームワークと3つの思考法
目次
はじめに
エレベー夕ーの話
創造力は誰もが後天的に伸ばすことができる
なぜ今、創造力なのか
あなたも必ず創造的になれる
序章「 1つのフレームワーク」と「3つの思考法」の全体像
1 「 1つのフレームワーク」と「3つの思考法」の全体像
2 本書のガイドマップ
第1章 たった 1つの フレームワーク
想像力とは「いろいろなものを繋ぐカ」
物事は全て「課題」 X「解決方法 」の組み合わせ
課題ドリブンか解決方法ドリブンか
第2章 3つの思考法①統合思考
統合思考とは
1 複数の課題を一気に解決する本質的な課題の見つけ方
課題を構造化する
本源的欲求を考えるメリット
どこまで本源的欲求に遡るか、ほどよい抽象化の方法
本質的な課題に遡ることで、複数の課題を一気に解消する
未来でヒットするサービスを考える
あえて、本源的欲求から二ーズを捉えてサービスを考える
2 統合はシンプルで具体的に
なぜ Twitterはこれほどまで広がったのか
アー卜なサービス
3 トレードオフの課題の見つけ方と解決方法
イノベー夕ーは、トレードオフの課題が大好き
ビジネス上のトレードオフの課題を解決した事業の例
ユーザーのトレードオフの二ーズを解決したプロダクトの例
イノベーションに共通すること
トレードオフの課題にあえて着目し、イノベー夕?の考えを真似る
レードオフな本源的欲求を狙え
トレードオフの課題や二ーズの解決方法
解決方法を考える上でもっとも重要なこと
トレードオフの課題や二ーズを解くと、マーケティングメッセージが効果的になる
トレードオフの関係を抱える戦略は、長期的な競争優位性を創ることができる
生活にも統合思考を応用する
4 統合思考あれこれ
デザイン思考とアー卜思考を統合すると起業家に
S D G Sは、企業活動のトレードオフを解消する
第3章 3つの思考法②アナロジー思考
アナロジー思考とは
1 なぜアナロジー思考が重要なのか
飛んだ発想をするにはアナロジー思考は必要不可欠
アナロジー思考は効率的に発想を飛ばすもの
2 アナロジー思考の思考技術
1 要素分解する技術
2 抽象的に考える技術
3 アナロジー思考を使った三つの発想方法
1 課題を軸に新たな解決方法を?ぐ方法
2 解決方法を軸に新たな解決方法を?ぐ方法
3 解決方法を軸に新たな課題を繋ぐ方法
4 アナロジー思考あれこれ
エリー卜たちの思考法
創造的な発想以外のアナロジー思考の用途
第4章 3つの思考法③転換思考
転換思考とは
1 課題を転換する SpaceXの創業者イー ロン・スクの
一流のコンサルタントや起業家も課題を転換している
課題を転換する技術
2 解決方法を転換する
1 W h性を転換する方法
2 Howを転換する方法
3 転換思考あれこれ
セザンヌの絵
論理的思考と創造的思考の関係性
第5章 創造的に考える技術のまとめ
1 「1つのフレームワーク」と「3つの思考法」の整理
課題 X統合思考 課題 Xアナロジー思考 課題 X転換思考 解決方法 X統合思考 解決方法 Xアナロジー思考 解決方 法 X転 換思考
2 アイデア出しー新しい歯ブラシを考えよ
思考プロセスをコミュニケーションでも大事にすべき理由
終章 これからの社会で創造していくための 2つの視点
AI時代で創造力を高めるためには、「知覚」がカギになる
V U C A時代、「創発」のマインドセットがカギになる
推薦図書
全体を通じて影響を受けたもの
統合思考で影響を受けたもの
アナロジー思考で影 <Vを受けたもの
転換思考で影響を受けたもの
知覚の議論で影響を受けたもの
その他
おわりに
最後に
私が今、もっとも取り組みたいことは、弁護士として「アイデアをカタチにする_支援法務」と「法を問題解決と創造に活かす」活動であり、「問題解決と創造」は、そのための、事実と論理を踏まえた準備作業、基礎作業となることを志している。このWebサイトも、やっとそういう情報発信ができるような準備が整いつつある気がする。まだ各項目の内容はバラバラだし、ITやAI、科学についての新しい知見・動向を知るには、英語文献、数学手法の読解が必須である。その意味で内容が整うまでには今しばらく時間がかかりそうだ。
ただ法を古臭い非科学的な「法学」という孤立峰から解き放ち、法の機能を社会の問題解決につなげようとしている試みとして、私がもっとも評価している「法と社会科学をつなぐ」(著者:飯田高)の論述も、まだまだ準備段階である。学者と違う時間の使い方をしなければならない実務家(弁護士)である私にできることは限られている。ただ学者とは違うアイデア、ルートからの実践的なアクセスもできることを願っている。