仕事:人と協力する
仕事の基盤としての問題解決論
導入
人と協力して仕事をするメインの基盤は、「問題解決論」である。
「仕事の問題解決」を支えるのは、「経営・経済」といういわば「中階層」であり、「経営・経済」は、人の集団の抗争・協力という「基階層」の上に成り立っている。
したがって仕事を論じるときに、経営・経済に注目するのは当然であるから、前提としてまともな経営書・経済学書を各一冊熟読することが望まれる。これは誰でも大なり小なり抱えているだろうからここでは挙げない。
また人の集団の抗争・協力にも目配りする必要がある。追って、次のような本を検討しよう。
- 暴力と紛争の“集団心理”:縄田健悟(ちとせプレス )
- 協力の条件:盛山和夫(有斐閣 )
- 「協力」の生命全史―進化と淘汰がもたらした集団の力学:ニコラ・ライハニ(東洋経済新報社)
- 協力と裏切りの生命進化史:市橋伯一 (光文社新書)
- 集団と集合知の心理学 改訂版:有馬淑子
「問題解決の進め方」
「仕事:人と協力する」については、「問題解決の進め方」(放送大学)の10章から15章の下記の「目次と要約」が参考になるであろう。
<問題解決の進め方>の目次と要約
目次
- 10 組織での進め方(1)
- 1.はじめに
- 2.組織運営の進め方
- 3.グループワークの進め方
- 4.組織における問題解決の考え方
- 5.まとめ
- 6.事例
- 11 組織での進め方(2)
- 1.はじめに
- 2.ワークシヨツプの準備
- 3.アイデイア出しと収束
- 4.振り返りとまとめ
- 5.まとめ
- 6.事例
- 12 組織での進め方(3)
- 1.はじめに
- 2.システム思考とデザイン思考
- 3.シ ステム思考
- 4.デザイン思考
- 5.まとめ
- 6. 事例
- 13 集団の意思決定とコミュニケーション
- 1.はじめに
- 2.社会的手抜き
- 3.集団での意思決定
- 4.集団の中における自己主張
- 5.まとめ
- 14 解決策を実行する
- 1.はじめに
- 2.作業分担
- 3.実行策の管理
- 4.会議の技法
- 5.事例
- 15 評価する
- 1.はじめに
- 2.評価の分類
- 3.評価の体系
- 4.評価表による表現
- 5,数量的な分析
- 6.ORによる評価
- 7.おわりに
- 1 問題とは
- 2 問題を見つける
- 3 目標を設定する
- 4 情報を収集 して整理する
- 5 数値情報を扱う
- 6 図解化 して見る
- 7 分析的に考える
- 8 学習記録と振り返り
- 9 発想を広げる
要約
- 第10章 組織での進め方(1)
- 第11章 組織での進め方(2)
- グループで問題解決を行うワークショップは、チームビルディング、グループワーク、振り返りという順序で進められる。ワークショップの成功には、参加メンバーによる円滑な協働作業が不可欠であり、最初にチームビルディングを行うことで、同じ目標に向かってメンバーの協働性を高める。
- ワークショップの準備段階では、全体の流れ、各段階の時間配分、終了時間を明確にして参加者と共有することが重要である。短時間で効果的に進めるために、時間の制約を意識する必要がある。チームビルディングとして、アイスブレイクなどの簡単なゲームを取り入れ、グループ内に仲間意識を持たせることも有効である。テーマは抽象的過ぎず、具体的過ぎないように調整し、ワークショップの最初にメンバー全員で確認することで、共通理解を促し、議論の方向性のずれを防ぐ。
- アイデア出しの段階(発散)では、分野を限定せず、広範囲に多くのアイデアを出すことが重要である。テーマから多少逸脱したアイデアも、最終的な方向性を見極める際に役立つ可能性がある。アイデア出しの手法としては、ブレーンストーミング、カードブレーンストーミング、ブレーンライティング、ワールドカフェなどがある。ブレーンストーミングは、チームで自由にアイデアを出し合う方法であり、発言内容は付箋に記録し、見える化することが重要である。批判的な意見は避け、テーマを深掘りする姿勢が求められる。カードブレーンストーミングは、一人で付箋にアイデアを書き出す方法であり、ブレーンストーミングの導入として効果的である。ブレーンライティングは、参加者が順番にアイデアを書き足していく方法であり、発言力の差による偏りを防ぎ、効率的に多くのアイデアを得ることができる。ワールドカフェ方式は、カフェのようなリラックスした雰囲気で少人数のグループで対話し、テーブルを移動しながらアイデアを深めていく方法であり、斬新なアイデアを生み出すのに適している。実際のワークショップでは、メンバーの特性や問題解決の段階に合わせて、これらの手法を組み合わせることが効果的である。
- アイデアの収束段階では、第9章で学習した親和図法を用いてアイデアの構造化を行う。類似するアイデアをまとめてグループ化し、それぞれのグループに適切な名称を付けることで、アイデアを上位概念として整理する。評価・選択の段階では、任意の評価軸や点数付けを行うことで客観性を持たせ、アイデアの絞り込みを行う。評価軸の例として、「実行が容易」、「効果が高い」、「新規性が高い」などが挙げられる。プロトタイプ作成の段階では、具体的なイメージを共有し、問題点や改善点を見つけるために、アイデアを具現化する。プロトタイプは、グループ外のメンバーに評価してもらい、フィードバックに基づいて修正することで、完成度を高める。最終的なアイデアは記録として清書し、決定理由や背景などを簡単に記載しておくことが望ましい。
- ワークショップ全体の振り返りでは、参加メンバーそれぞれが感想を述べ、良かった点や反省点を共有し、今後のグループワークに活かしていく.提案するアイデアのレベルは、組織のテーマや目的によって選定する必要がある。即効性が必要な場合は実行可能性の高いものを、高い目標設定を目指す場合は新規性の高い対策を選ぶと良い。グループワークを効果的に行うためには、手法を覚えたら繰り返し実践し、自分や組織に適した方法を見つけていくことが重要である.アイデアが出にくい場合は、アイスブレイクで関係性を構築したり、一人で作業するアイデア出しの手法を取り入れることが有効である.
- 第12章 組織での進め方(3)
- 問題を解決するためには、まず問題を正しく理解することが不可欠であり、組織で問題解決を行うには、メンバー全員が問題の本質を理解し共有できている必要がある。本章では、問題を確実に認識すること、問題の本質をつかむ方法、曖昧な問題設定の場合の問題の見つけ方、そしてグループでの問題の共有の方法として、システム思考とデザイン思考について学習する.
- システム思考とデザイン思考は、いずれも曖昧な問題を明確にし、問題解決を行うための手法であるが、アプローチが異なる。システム思考は左脳的、論理的、数学や機能を重視し、物事を要素間の関係性からなるシステムとして捉え、確実な評価・検証を行う。一方、デザイン思考は右脳的、感性的、イメージや直観を重視し、失敗を繰り返しながらチームで協創し、観察、発想、試作を大切にする。
- システム思考では、分析対象を複数の構成要素からなるシステムとして捉え、要素間の相互作用から機能を見出していくアプローチをとる。例えば、販売店の従業員のモラルが向上すれば顧客への応対が良くなり顧客満足度が上がり、さらに顧客満足度が上がることで従業員のモチラルが向上するというように、事象間の関係性を図で示すことで問題の本質を見つけ、解決策を検討する。システム思考は、現状を図として示すことができるため、論理的に事象を理解しやすく、作成した図を見ながら改善点を見つけていく。
- これまでの問題解決は、事象が発生している現場の状況を観察し、過去の延長線上で同様の事象が発生するという視点で対応できていたが、現代社会は複雑化・多様化しており、予測不可能な問題が増えている。また、効率的な投資で問題解決する必要性が高まっている。そこで、問題の背景まで深く探ることで、本質的な問題解決をする取り組みが求められており、その手法の一つがデザイン思考である。デザイン思考は、元々優秀なデザイナーが実践できていた手法であり、訓練されたメンバーが集まることで、組織でも同様の問題解決が可能になる。
- デザイン思考は、表面化されていない問題や、誤って定義された複雑な問題に対処するのに極めて有効であり、「共感」「問題定義」「発想」「プロトタイプ(試作)」「テスト」の5段階のプロセスで進められる。これらの段階は連続的ではなく、必要に応じて前の段階に戻って作業をやり直すことも可能である。ここでのデザインは、美的感覚や物理的なものではなく、システム設計の方法論に近いものであり、個人、社会、様々な問題について創造性をもって斬新な方法で問題解決することを意味する。デザイン思考のポイントは、有用性(人にとって意味があるか)、実現可能性(経済的に問題はないか)、技術的実現性(持続可能か)という3つの条件を満たす問題解決を行うことである。
- 「共感」の段階では、ユーザーのインタビューや観察、体験を通じて利用者の物語を見つけ、表面的なニーズだけでなく、潜在的な感情や欲求を探る。現場を観察することで、無意識の動作や行動を理解し、事前の仮説にとらわれず、新たな発見を重視する。問題を抱えている人に「ニーズは何か?」「困っている点は何か?」と直接尋ねるだけでなく、「なぜ?」を繰り返して問いかけ、問題の根本原因を探ることも重要である。
- 「問題定義」の段階では、「共感」の段階で得られた情報に基づいて、解決すべき問題を明確に定義する。多様な情報を整理し、ユーザーの視点に立った、具体的で実行可能な問題定義を行う。
- 「発想」の段階では、定義された問題に対して、既存の枠にとらわれず、自由な発想で多様な解決策のアイデアを生み出す。質よりも量を重視し、批判を避け、結合や修正を歓迎するブレーンストーミングなどの手法を用いる。
- 「プロトタイプ(試作)」の段階では、発想されたアイデアの中からいくつかを選び、低コストかつ迅速に具体的な形にする。紙や段ボールなど身近な素材を活用し、アイデアを可視化することで、関係者間で具体的なイメージを共有し、問題点や改善点を見つける。プロトタイプは完成を目指すものではなく、ユーザーの本音を引き出すための道具である。解決策の特定の部分をテストするためには、全体ではなく一部分だけの試作で十分な場合もある。
- 「テスト」の段階では、作成したプロトタイプをユーザーに体験してもらい、アイデアやコンセプトを洗練させる。ユーザーのコメントや反応、行動などを観察し情報を記録し、改善点や深掘りすべき点を整理して、アイデアを見直していく。ユーザーから欠点を指摘された場合、それは計算間違いではなく観察不足であると考え、想定外の非定常作業を見抜けなかったと理解することが重要である。
- デザイン思考は、アイデアがある程度まとまった段階でプロトタイプを作成し、早い段階でユーザーからのフィードバックを得ることで、修正を繰り返し、最終的にユーザーの目標に適合した精度の高い提案を行うことができる。小さく失敗し、失敗コストを最小限に抑えることも、デザイン思考の重要な側面である。プロトタイプは、アイデア実現の可能性を低コストで素早くテストするためのシンプルな実験用モデルであり、アイデアに対する思い込みや推測を排除し、チームがアイデアの長所と短所を見つけて議論する機会を提供する。また、ユーザーのフィードバックから学び、創造力を高める機会にもなる。
- システム思考は問題を論理的に図示することで状況を把握し、デザイン思考は事象に自ら体験し共感することで問題を理解する。問題理解の方法は異なるが、組織で問題解決するにはメンバー全員が問題の本質を理解し共有することで、適切な問題解決へと展開することが大切である.
- 第13章 集団の意思決定とコミュニケーション
- 集団で意思決定を行うことには、多様な意見が出るなどのメリットがある一方で、社会的手抜きや意見の衝突、特定の人物への負担集中など、様々な難しさも存在する。
- 初等中等教育におけるアクティブラーニングのように、集団での学習活動は重要視されているが、グループワークが必ずしもうまくいくとは限らない。例えば、重たい荷物を複数で運ぶ際に、人数が増えると一人当たりの負担が減るため、貢献しない人が現れることがある。このように、集団で作業する際に生産性が低下することを社会的手抜きという。努力の必要がないと感じる場合や、指示されたもので意欲がない場合などに起こりやすい。
- 集団が目標達成に向けて協力し合う状態をチームと呼ぶ。チームには、互いに貢献し合い、目標を共有し、コミュニケーションを取り合い、個々の役割を認識し、お互いをサポートし合うといった特徴がある。集団がチームとして機能するためには、意見の不一致を経験することも一つの成長過程として捉えることができる。
- 社会的手抜きがなく、集団がチームとして機能している場合でも、集団の意思決定が誤った方向に進むことがある。問題解決のプロセスでは、根拠に基づいて計画や目標を立てることが望ましいが、未来に向けた未知な事柄に対しては、十分な根拠がない状態で判断を迫られることもある。そのような場合、人は判断に偏り(バイアス)が生じやすい。例えば、過去の成功体験から類似の行動を軽く見積もったり、自分に都合の良い根拠ばかりを探したりする。
- 集団で意思決定をする際には、個人の誤った偏見が他の人に指摘され訂正されることもあるが、逆に、誰かの誤った思い込みに賛同する人が現れ、集団によって増幅されてしまうこともある。サンスティーンらは、集団が判断を誤る主な理由として、(1)他のメンバーからのシグナル(情報シグナル)を間違って読み取ること、(2)他人から否定されるなどの不利益を受けるのを避けるために発言を避けたり、意見を変えたりすること(評判プレッシャー)(1)集団によって間違いが増幅される、(2)最初の行動や発言に追随することで小さなことが積み重なり大きな影響を与える(カスケード効果)が生じる、(3)集団は両極化し、いっそう極端な立場をとるようになる、(4)みんなが知っていることを重視し、少数が持つ重要な情報が考慮されなくなるといった現象が起こりうる。
- 集団での意思決定においては、これらの問題点を理解し、適切なコミュニケーションを通じて、より良い結論を導き出すことが重要である。また、過去の集団での意思決定を振り返り、どのような特徴があったかを考察することも、今後の改善につながる。さらに、人とのコミュニケーションにおける自分の自己主張の仕方について考え、相手への配慮や意見の伝え方などを振り返ることも重要である。
- 第14章 解決策を実行する
- 問題解決に向けて目標を設定したら、次はそれをどのように実現していくかの実際の作業が始まる。解決策を実行する際には、解決までの時間、費やす人員・経費などの資源が重要であり、得られる結果の水準や品質に深く関わるため、事前にその優先度や許容範囲を明確にしておく必要がある。
- 最終目標を定めても、解決策を実行している間には様々な要因により変更や手順の修正を余儀なくされるため、変更に関する権限や手続きを事前に決めておく必要がある。次に、解決策の実行に参加するメンバーをどのように編成するかが重要となる。責任者、各メンバーの役割・責任・権限、メンバー間の調整、外部の関係者への報告などを決定する必要がある。
- 作業量を見積もるためには、解決策を完了するために必要な作業をすべて書き出し、それを系統図で表す。まず解決策全体を一つのプロジェクトと考え、大きな単位でいくつかの作業群に分割する。分割の際には、MECE(漏れなく、重複なく)の考え方を意識すると良い。さらに、各作業に必要な人員やスキル、所要時間などを検討し、作業分担表を作成する。過去の類似事例を参考に、作業の質や量、参加メンバーの能力などを考慮して検討する。作業の一部を機械化したり、外部に委託したりする場合など、必ずしも参考とした作業と同じ条件にならないことも考慮する必要がある。
- 日程を管理するためには、ガントチャート(Gantt Chart)のような作業の時間管理表を作成すると便利である。ガントチャートは横軸に時間、縦軸に作業を並べたもので、作業への着手から完了までの所要時間を横棒で示す。各作業の順序、開始時期、終了時期が一目でわかる。クリティカルパスとは、一連の作業全体の開始から終了までに最も長い時間を要する経路、または合計所要時間のことを言う。ガントチャートを作成する際には、まず作業群を作業する順に書き込み、それぞれの作業の最早着手、最早完了、所要時間を記入する。クリティカルパス上にない作業については、余裕時間、最遅着手、最遅完了を記入する。先行作業の完了と後続作業の開始を線で結び、前後関係を示す。ガントチャートは、進捗状況の確認や遅延の早期発見に役立つ。
- 会議は、情報共有、意思決定、進捗確認など、問題解決の実行において重要な役割を果たす。会議を効率的に行うためには、事前に目的を明確にし、参加者、議題、時間配分などを決定し、周知しておく必要がある。会議中は、時間管理を徹底し、議題に沿って効率的に議論を進める。発言を促し、意見を整理し、合意形成を図ることが重要である。会議に出席する際には、遅刻をしない、私語をしないなどの基本的なマナーを守るとともに、発言を独り占めしない、高圧的な発言をしない、人の発言を良く聞くなどの態度にも留意する.会議のリーダーは、メンバーをリラックスさせ、会議の目的や進め方を説明するだけでなく、ファシリテーターとしての役割も担い、中立的な立場で全員の参加を促し、特定の意見に偏らないように配慮する。質問をする際には、タイミング、内容、回数などに配慮が必要であり、回答には感謝の意を示す。参加者の意見を集約する際には、対立する意見がある場合、中立派の意見を参考にしたり、建設的な反論に耳を傾けたりすることが重要である。パブリックスピーキングは、多数の聴衆に対して、一定の時間内に一定の内容を筋道立てて話すことであり、報告、説明、スピーチなどが該当する。
- 解決策の実行中は、ガントチャートなどを活用して進捗状況を定期的に確認し、計画との差異を把握することが重要である。遅延が発生している場合は、原因を究明し、対策を講じる必要がある。例えば、クリティカルパス上の作業が遅延している場合は、後続作業への影響が大きいため、担当メンバーの増員や作業の見直しなどを検討する必要がある。計画通りに進捗している場合でも、予期せぬ問題が発生することがあるため、常に状況を監視し、柔軟に対応することが求められる.
- 第15章 評価する
- 問題解決においては、事前に目標を設定し、それに向けて解決策を展開していくため、ある程度の評価の視点は事前に決まっている。問題が解決したかどうかは、その視点に基づいて判断することになるため、具体的な評価項目を決める場合はその視点との関連を十分に検討する。評価項目が一つで単純明快なものであれば、解決策が難しくとも問題の設定が簡単になるが、実際には評価項目が決まっても、相反する考え方が混在したり客観的なデータが得られないこともあり、評価することが難しい場合もある。問題解決に当たって、重点の置き方によって評価の視点に違いが生じるため、まずその特徴や問題点について理解する必要がある。(1)動機を重視する考え方、(2)過程を重視する考え方、(3)結果を重視する考え方があり、それぞれにメリットとデメリットが存在する。
- 評価の方法や項目には様々なものがある。評価する時期としては、事前評価(アセスメント)、中間評価、事後評価(レビュー)定性評価に向けたものと、指標化、点数式、序列化などの定量評価に向けたものがある。
- 評価は、個人の問題、グループの問題、企業・組織の問題など、階層によって重視する点が異なる。個人的な問題では、規範や価値観に基づいた主観的な判断が行われることが多い。グループの問題では、共通目標の達成度や全員一致の意思決定などが重視される。企業・組織における評価は、設立理念や組織の維持・発展に資することが重要であり、経営評価(方針決定)や管理評価(計画の実行)などが行われる。意思決定のための評価方法は、情報が確実に得られる状況では数値的な方法が用いられるが、数量化が難しい場合は、文字情報を集めて整理する方法や各種の発見的方法が用いられる。
- 評価を表で表現する方法として、(1)功罪表(利点と欠点を対照させた表)、(2)評価表(複数の評価項目について良否の程度を示した表)、(3)利得表(評価項目を数値化した表)などがある。利得表に基づいて意思決定をする場合には、(1)各項の最大原理、(2)最大・最小原理、(3)最大・最大原理、(4)最大・平均原理など、様々な考え方がある。どの原理に基づいて意思決定を行うかは、判断基準によって異なる。
- 数量的な分析として、費用分析がある。問題解決が終了した時点で、投資した費用や得られた効果を算出したり、事前に解決策を検討する際に費用を推計したりする。評価では、得られる効果と掛かる費用の関係を明らかにすることが重要であり、効果を貨幣価値に換算できる場合は、現在の評価額か将来の評価額かの違いを考慮する必要がある。
- 問題解決の最終的な目標は、社会レベルでは社会の存続に寄与することであり、地域や組織レベルでは地域や組織の発展であり、グループレベルでは個人では対応できないことをチーム編成で対応することであり、個人レベルでは当初は主観的なものであるが社会に受け入れられることで客観的なものに推移していく。問題解決の過程は、社会や地域レベルでは新たな危機を除去する流れとして歴史や地域活動に記録され、組織レベルでは様々な活動の相互作用によってイノベーションが生まれ促進され、グループレベルでは効果的なチーム展開であり、個人レベルでは意志と創造力が発揮される知的活動を高めることである。
- 全体の要約
- 組織における問題解決は、個人の能力だけでなく、組織的な仕組みと多様な関係者の協力によって推進されるべきである。問題解決のプロセスは、問題を認識し、目標を設定し、解決策を検討・実行し、その結果を評価するという一連の流れで構成される。各段階において、適切な考え方や手法を適用することが、効果的な問題解決に繋がる。
- 組織での問題解決においては、ワークショップが有効な手段の一つであり、主催者、ファシリテーター、参加者など、それぞれの役割を理解し連携することが重要である。アイデア出しの段階では、ブレーンストーミングやブレーンライティングといった多様な手法を組み合わせ、多くのアイデアを発想することが求められる。その後、親和図法などを用いてアイデアを整理・構造化し、評価軸に基づいて絞り込みを行う。プロトタイプを作成し、ユーザーからのフィードバックを得ながら改善を進めるデザイン思考のアプローチは、現代の複雑な問題に対処する上で有効である。
- 集団での意思決定には、社会的手抜きや集団バイアスといった課題が存在するため、チームビルディングを通じてメンバー間の協力関係を構築し、多様な意見を尊重するコミュニケーションを心がける必要がある。解決策を実行する際には、ガントチャートなどのツールを用いて計画的に進捗管理を行い、予期せぬ問題には柔軟に対応することが重要である。
- 問題解決の成否を判断する評価は、事前に設定した目標と関連付け、適切な時期、評価者、表現方法を選択して行う必要がある。評価の視点には、動機、過程、結果を重視する考え方があり、それぞれの特徴を理解することが重要である。評価方法としては、功罪表、評価表、利得表といった表形式の整理や、費用分析などの数量的な分析が用いられる。問題解決の最終的な目標は、個々のレベルから社会全体のレベルに至るまで、それぞれの存続と発展に寄与することであり、その過程は様々な形で記録され、次なる問題解決への糧となる。
- 組織として継続的に問題解決能力を高めていくためには、これらの知識や手法を習得するだけでなく、実践を通じて経験を積み重ね、組織に合ったやり方を見つけていくことが重要である。
ビジネスにおける問題解決論
ビジネスにおける「問題解決論」として次の2冊を読みたい。
- 問題解決 ― あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術:高田貴久 、岩澤智之(英治出版)
- コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法:名和高司(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
1は、わかりやすい概念を用いて、詳細にビジネスにおける問題解決を論じている。2は、もう少しペダンチックであるが、捨てがたい。どちらがビジネスの切開力を有しているだろうか。
<問題解決>の目次と要約
< コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法>の目次と要約
多角的に仕事を考える本
仕事については、次のような本にも目を通したい。
- 「怠惰」なんて存在しない 終わりなき生産性競争から抜け出すための幸福論:デヴォン・プライス
- 最高の脳で働く方法 Your Brain at Work(ユアブレイン アットワーク):デイビッド・ロック
- PLAY WORK(プレイ・ワーク) 仕事の生産性がグングン高まる「遊びながら働く」方法:ピョートル・フェリクス・グジバチ
- 共に働くことの意味を問い直す:山口一郎; 露木恵美子; 柳田正芳
- 他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 :宇田川元一
- 職場の現象学:露木恵美子; 山口一郎
- AIと共に働く – ChatGPT、生成AIは私たちの仕事をどう変えるか – (ワニブックスPLUS新書):小林 雅一
弁護士としてビジネスに法を活かす
「ビジネスの問題解決に法を活かす」ことは、仕事上の問題を抱えた個人や企業が依頼する弁護士の主要な役割が正しく法を適用して足下の紛争や法律問題を解決することであることを考えれば、これは当然のことである。加えて法律問題の解決によってそれまでの追い詰められた状況が一掃されて新たな地平が開ける場合も多いから、この場合は「創造」といっても、まあいいかなぐらいにはなるであろうか。ただ私は、もう少し違うことも考えていた。次項で検討する。
法とルールをビジネスの問題解決と創造に活かす
「法とルールをビジネスの問題解決と創造に活かす」を巡って、次の三層の問題を指摘できる。
三層の問題
① 弁護士は法律実務家であるから、具体的な依頼事項について、現行の法令はこうなっており、現状に法令を適用するとこうなるとか、裁判になった場合は、証拠や裁判所の実務を踏まえると、結果はこうなりそうだという、現在の法律実務を前提とする生活とビジネスの枠組み(フレーム)の現状把握と「見通し」を持つことが重要ではある。しかし法令を起案した官僚や判決をする裁判所の「見解」や「実務」を鵜呑みにするだけでは、単なる「権力の下僕」、「慣行の奴隷」になってしまう。
② ⑴正義、平等、あるいは憲法の「理念」や、そこから流出する原理・原則に遡ったり、⑵社会が急速に変化、流動化し、人の行動を支えるルールも激変しつつあるという現実の中で、他の優先する価値観、より合理的な基準等に照らして、この問題についての法解釈や裁判は、現在の枠組みの中でもこうあるべきだと、実務的な「見直し」を促す活動も重要だ。⑶更にこれらを踏まえ、今後、立法や裁判はこうあるべきだという提言や改革をしていく活動も重要だ。⑴について弁護士はこれまでそこそこ頑張ってきたが、他はこれからだ。いずれにせよ①の「見通し」は思ったほど不変、確実なものではない。
③ そして、①②の「法とルール」のあり方は、今後、「法とルールの基礎理論」で検討する複雑系ネットワーク理論や新しい諸科学、IT・AIの進展等に照らして根本的に見直されなければならない。
「法とルールをビジネスの問題解決と創造に活かす」では、主に②③を検討することになろう(これを「法システムの改革」ということにする。)。
法システムの改革をビジネスに活かす
法フレームの明確化
ところで「法とルールをビジネスの問題解決と創造に活かす」ことにより適合する場面は、既に法律問題が生じているケースよりも、個人や企業が、これから解決すべき「問題」として、ビジネスや生活・仕事を始める(見直す)場合であろう。この場合は①を含むがそれだけではなく、いかに法とルールの全体を把握し、距離を取るかが重要だ。
すなわち、当該ビジネスや行動に係わる法とルールという枠組みが、どのように機能、規制、支援、関係しているのかを、中央政府、地方政府、外国政府、国際機関等の法令、規則、業界の自主規制、慣行等々を可能な限り明確化し(法とルールに係わるフレームワーク(「法フレーム」という。)の言語化・明確化)、現在及び将来的に、法フレームがビジネスや行動の支障とならないように、行動範囲を定め、調整することが必要である(かならずしも、法フレームに触れないようにするということではない。これは「コンプライアンス」の実態と捉えることができよう。)。もちろん許認可、知財、補助金等の関係で、法フレームを利用する局面もあるが、これはさほど多くはないであろう。
法フレームの共有化
これだけでは、法フレームに戦々恐々として内に籠ることを薦めているようにも思えるが、そうではない。どこに「爆弾」があるかの予想もせずに、大きなビジネスや行動に乗り出すのでは、かえって不安定で、気が付いたときには収拾がつかなくなる。しかし、法フレームの言語化・明確化をした上で、これを適宜反芻し、これからの逸脱があったり、これに関して問題が生じた場合は、随時、まず現場で当該ビジネスや行動に支障を与えないような方法を考え出し、可能な変更・対応をするという経験を積み重ね、組織的に共有化していけば、破滅的な事態を避けられる可能性が大きい(これは内容的には、下述の「まず頭に入れること」と同じことである。)その場合、大切なのは、法フレームはあくまで外枠であって、ビジネスや行動を主体にして考えることである。法フレームとビジネスや行動が両立せず、あるいは致命的なエラーが生じる場合は多くはないであろう(そのようなビジネスや行動は通常選択しないだろう。仮に選択したのであれば、撤退あるのみである。)。
弁護士の役割
このような意味で「法をこれから始めるビジネスの問題解決と創造に活かす」ためには、弁護士に「法律顧問」や「分野別法務支援」を依頼することが有益である。