問いは世界を創造する:生成AIと共に

2025-02-08

問いは世界を創造する

「問い」は、世界を理解し、変えていく上でのすべての出発点であり、折り返し点でもある。この過程を「問いは世界を創造する」と捉えよう。「問いは世界を創造する」というのはいささか大仰な物言いだし、「問題解決と創造総論」を付加すると「創造」がダブるので、一度、編集工学研究所の安藤昭子さんの「問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する」に倣って、「世界を編集する:問題解決と創造総論」にしてみたが、「編集」という言葉になかなか馴染めないので、しばらくは「問いは世界を創造する」を試用することにしよう。
問いについては、ⅰ問いが生まれる状況、ⅱ問いの種類、ⅲ問いの展開過程がそれぞれ問題になるだろう。
ⅰについては、子どもの問いを取り上げた「子どもは40000回質問する~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~:イアン・レスリー」、さらに脳が世界を構成する仕組みを考察する「脳の大統一理論 自由エネルギー原理とはなにか:乾 敏郎、阪口 豊」が参考になる。といより「問い」を論じる多くの本は、如何に立派な問いを設定するかという点を焦点をあてているのだが、余り見通しがよくない。
ⅱについては、大きくWhat、Why、Howに加えて、実践的な問いとしてWhy→What if→Howを加えてもいいだろう。「リサーチ・クエスチョンとは何か?:佐藤郁哉」は2W1Hを取り上げ、「Q思考:ウォーレン・バーガー」は、Why→What if→Howを重要視している。
そしてⅲについて、今私は、次の図式を考えている。
問い(What、Why、How)⇆(推論、アイデア、リサーチ)→(知識、問題解決、創造)⇆知的生産⇆問い
上述した「問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する:安藤昭子」は、故松岡正剛のスキーム(例えば「知の編集工学」)と重なる部分があるが、文化・教養に関わる問題をきちんと整理していて、格好いいし、応用範囲も広いので参考にしよう。
ただ「問いは世界を創造する」ことの理解は、言わば実践の結果であるから、最初から本ばかり読み込んでいても仕方がないのだが。

生成AIと共に

これまで上記の「推論、アイデア、リサーチ」は、人手(脳)が行っていた。しかし今これに加えて生成AIが利用できる状態になった。 私は、今後このサイトで、私の人手(脳)に加えて、生成AIと共に<知的生産の学習実験室>と<未来の法律事務所>を展開する。やっとずっとやりたかったことに踏み出せそうだ。 生成AIについては、甲論乙駁であるが、自分が行いたい知的作業の補助者として、焦点を絞って利用すれば、充分に実用的なレベルに達しつつある。ただ気になるのは、ほとんどのサービスは、日本語→英語→日本語で回答しているようで、表現の齟齬が気になる。ただこれも時間の問題だろう。 私がこれから利用するのは、GoogleのNotebookLM(「GNote」と略称する)とGemini Advanced 1.5 Pro with Deep Research(「GReseach」と略称する)である。前者は無償でも利用できるが、後者(Gemini Pro)は有償である(月額2900円)。後者を利用すると、Google Driveも2TB利用できるし、前者も(多分)拡張されたサービスが利用できる。ただこのあたりのサービスの内容、利用料金は、日々変わっているので、適宜調べてもらいたい。

GNote

GNoteは、当面メインで利用するので、試行錯誤しながら今後もあれこれ説明することになるだろうが、無償で利用できるので触ってみてもらうのがいい。自分でソースを提供するとその範囲でChat(質問)し、回答を得られるというサービスである。私の有償サービスでは、一つのノートのソースとして(おおよそ)100GBまでのDoc及び200GBまでのPDF(自動的にOCRされる)が合計300文書までアップロードできる。これが一つのノートで、500ノートまで作成できる。仕事の文書や研究上の文書をまとめて分析することができる。要旨(備忘メモ)を作るのが利用の第一歩だろう。

GReseach

GReseachは、ある質問をすると、リサーチ計画をたて、それをもとにサイトを検索して情報を入手し、報告書を作成するというサービスである。自分の持つ情報も提供できる。 「古代日本の地形、景観、気候及び交通手段についてまとめてください」のリサーチを添付してみた。かなり丁寧な調査だと思う。もちろん自分の専門分野であれば、あれこれチェックが入るだろう。 Chat Gptでも同じようなことができると思うが、GNoteとGReseachは、Google Driveも含めて、文書管理のために整備されつつあるシステムと思うので、当面これを利用しよう。 たまたま目にしたChat Gpt with Researchは相当の高機能であることを強調していたが、例の月額300ドルのChat Gpt利用できるサービスのようだった。

未来の法律事務所の展開

これからの法律事務遂行の技術論

私は「法の支配」(2020年4月号)に「AI時代の弁護士業務」を寄稿し、次のように指摘した。 「デジタル化して収集した生情報、法情報を、弁護士の頭の替わりに(ないしこれに加えて)パソコンで稼働させるプログラムによって整理、思考、判断し、結論を表現することを可能とするIT技法の開発が急務である。例えば、弁護士が全ての証拠を踏まえて論証する書面(最終準備書面や上訴の理由書、刑事の弁論要旨)を作成するとき、必要な証拠部分を探して引用するのには膨大な時間がかかり、しかもなお不十分だと感じることはよくある。あるいは供述の変遷を辿ったり、証拠相互の矛盾を網羅的に指摘したりしたいこともある。このような作業(の一部)は、デジタルの得意な分野である。また少なくても、当方と相手方の主張、証拠、関連する判例、文献等をデジタル情報として集約し、これらを常時参照し、コピー&ペーストしながら、書面を作成することは有益であるし、快感さえ伴う。目指すIT技法は、当面は進化したワードプロセッサー、データプロセッサーのイメージであるが、データ処理自体に対する考え方の「革命的変化」があることも充分にあり得る」。 私が以上で指摘したことについて、まずGnoteで、デジタル化した書面、証拠、尋問調書等をソースにして、備忘メモ作成、質問、論点の整理、書面作成等が容易にできる。上記したことが実現しつつある。 加えて「弁護士ドットコムライブラリー+判例秘書」(ただしこれは有償で安くはないが、最近ライブラリーで、文章によるAI検索、関連書籍部分の摘示、当該書籍収録の判例摘示、当該判例から判例秘書の判例へリンク、判例秘書で、判例評釈、関連雑誌へリンク)を利用することで、文献・判例調査は、ほぼ完璧である。 会計情報も処理できるであろう。ただPDFにした3年分の税務申告書をソースにしただけでは、「売上」、「販管費」、「経常利益」等の変動の摘示はできなかった。数字情報については、ある程度の加工、試行錯誤が必要なのだろう。

未来の法律事務所は何をするのか

上記の「法律事務遂行の技術」を駆使して、通常の受任事件について対応する、PC、IT、AIに関わる法律事務(行政、企業、研究等)をアシストする。更に「知的生産の学習実験室」で検討する問題について、法律事務所が関わる「法的問題」について考え、可能であれば関与する。

知的生産の学習実験室の展開

知的生産とは

知的生産という表現は、一時期広く使われ、その響きが人々を魅了していた。最初に、梅棹忠夫が「知的生産の技術」の中で使用したと言われている。知的活動を通じて新しい情報を生み出し、それを社会に役立てることを目指すものとでも考えればいいだろうか。上記の、問いが生み出す、知識・問題解決・創造と考えればよいだろう。ただ梅棹は、当時の知的生産の「技術」に焦点を挙げて論じたことが革新的であり、知的生産そのものを主体としたものではない。ただその考えには滋味きくべきものがある。 その中で私は、梅棹の次の指摘を最大限評価する。 「このような整理や事務の技法についてかんがえることを、能率の問題だとおもっているひとがある。一般に、この本でとりあつかっているような知的生産の技術の話全体が、能率の問題としてうけとられやすいのである。しかし、じっさいをいうと、こういう話は能率とは無関係ではないにしても、すこしべつのことかもしれない。最小時間内に最大効果をあげるというのが能率の問題である。技術論というと、どうしてもそういう方向に話が展開しやすい。そういうゆきかたもあることをみとめながら、すこしべつな観点からもかんがえてみる必要がある。 これはむしろ、精神衛生の問題なのだ。つまり、人間を人間らしい状態につねにおいておくために、なにが必要かということである。かんたんにいうと、人間から、いかにしていらつきをへらすか、というような問題なのだ。整理や事務のシステムをととのえるのは、「時間」がほしいからでなく、生活の「秩序としずけさ」がほしいからである。 水がながれてゆくとき、水路にいろいろなでっぱりがたくさんでている。水はそれにぶつかり、そこにウズマキがおこる。水全体がごうごうと音をたててながれ、泡だち、波うち、渦をまいてながれてゆく。こういう状態が、いわゆる乱流の状態である。ところが、障害物がなにもない場合には、大量の水が高速度でうごいても、音ひとつしない。みていても、水はうごいているかどうかさえ、はっきりわからない。この状態が、いわゆる層流の状態である。 知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといってよいだろう。精神の層流状態を確保する技術だといってもよい。努力によってえられるものは、精神の安静なのである。」。
そして梅棹の時代には、知的生産の「技術」として、PC、IT、AIはなかったから、今、生成AIと共に「知的生産」に取り組むべき初めての時代となったのである。 PC、IT、AIを除けば「知的生産」と題した本は、「問い」の中で取り上げれば足りる。
「いらつきを減らす」ということで是非とも注意を喚起したいのは、デジタルの時代には、とりわけ「問題を小刻みにして解決する」ことが重要だということだ。小さな躓きが全体の流れを妨げるが」小さなことはほとんど小さな努力で解決できる。小さな努力とは、レベルを変え、角度を変えて問いを発するということだ。その際、生成AIとChatすることも多いが、生成AIでは似たような情報は出るが、まず正解は出ない。これをヒントにどう解決するかが、「問題を小刻みにして解決する」上での重要な手法だ。    

知的生産の学習実験室の試み

私はずっとこのサイトを、本を読み、考えたことを表現する知の場にしたいと考えていた。 しかし、サイト作りは面倒ですぐに投げ出したくなるし、Kindle本を「読み込む」のもうまくいかない。ここ10年ぐらいは、Kindle本に目を通しつつ、目次作りに精を出していたが、それではアウトプットに結びつかず、このサイトはさっぱり充実しない。Kindle本の泥沼だった。時々思いたってサイトの修正に手を出してみるが、「知的生産」が停滞し表現できない状態ではすぐに嫌になってしまった。しかし、しかし今生成AIを利用することで少し違った状況を生みだせるのではないか。

本をGNoteのソースとする

今、Kindle本をはじめとする電子書籍について、DocやPDFに変更する様々な方法がある。全文はテキストにできなくても、重要な部分のテキストでも充分だ。R本についてはスキャンしてPDFにできる。GNoteは画像PDFについて自動的にOCRする。 これらをソースとしてGNoteで様々な加工、利用ができる。目の前の霧がはれる感覚だ。

Kindle本、R本のデータベースを作る

この変化をふまえ、今までどうしてもできなかったKindle本(そろそれ6900冊になる)のデータベースを作った。 Kindlistという自分のKindle本を書名、著者、出版社、Amazonリンク等がエクセルで取得できるフリーソフトがあるが、そこに下記の本の分類(自前の分類である。本の森参照)を付加し、検索、並び替えできるようにした。7000冊のKindle本のDBによって本を検索・把握し、連携してGNoteのソースを使いこなせば、間違いなく本が知的基盤として有効活用できる。これが私のやりたかったことだ。 R本は、スキャンして目録が作成できるスマホアプリで一応、約2000冊のDBを作っているので追って一緒にしよう。

知的生産の学習実験室でどのような問題を取り上げるか

これについては、これまでこのサイトで取り上げてきた(取り上げると予告だけした)問題を、少し組み替えて対象とすることになろう。 知的生産の学習実験室というタイトルに、本の森を入れ込み、双輪として、生成AIと共に、問いは世界を創造する、知的生産を設けよう。 各論として、残された日々を生きる、山ある日々:問題解決と創造、未来の法律事務所を活かすことになろう。

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    • 知的生産
    • 本の森
  • 残された日々を生きる
  • 山ある日々:問題解決と創造
  • 未来の法律事務所

                記

  • 0 英語表記本
  • 10 方法論
    • 11 言語・論理・数学
      • 111 言語
      • 112 論理学
      • 113 数学
    • 12 情報・IT・AI・コード
      • 121 情報論
      • 122 パソコン・IT
      • 123 AI
      • 124 コード・プログラミング 
    • 13 哲学
    • 14 問い・問題解決・創造
      • 141 問いとアイデア
      • 142 問題解決
      • 143 創造
      • 144 知的生産
      • 155 リサーチ
    • 15 システム論
  • 20 人間1 身体・脳・心
    • 21 人類・文明
    • 22 身体・医療・老化・健康
      • 221 身体
      • 222 病気・医療
      • 223 老化と死
      • 224 健康
    • 23 登山・運動
    • 24 脳・認知・心理
    • 25 ヨガ・瞑想
  • 30 人間2 思考・思想・行動・文化
    • 31 学習・読書・思考
      • 311 観察・記憶
      • 312 学習・教育
      • 313 読書
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      • 332 行動実践論
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      • 341 生活
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