「問題解決と創造」を見直しています

2018-10-12

「問題解決と創造の頁」を「問題解決と創造」として内容を見直しました。できるだけ,幅広い観点から,「問題解決と創造」について考えようと,あれこれ本を物色してきましたので,それをそろそろ反映したいと思っています。

これまで「システム思考」について全く取り上げていなかったので,これを複雑な問題についての「問題解決と創造の方法」の柱の一つとして取り上げること,個人の「問題解決と創造」については,行動改善として捉えること,「方法論の基礎」を整理すること等について取り組んでいきますが,今日の時点では全く反映されていません。

なお以下の投稿は,固定ページ「問題解決と創造の頁」を「問題解決と創造を学ぶ」として書き直して投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ「問題解決と創造」(固定ページにリンク)をご覧ください。なお10月19日に更に内容を見直しました。

問題の所在-問題解決と創造の全体像

なぜ「問題解決と創造」なのか

私たちは,日々,個人や自分が所属する組織に関わる様々な問題の解決を迫られ,また思いついては新たな価値の創造を試みているが,なかなかうまくいかない。もう少し視野を広げると,世界中に解決困難な問題や新しい問題が集積しているが,世界中その政治過程の愚かさには辟易するだけで,当面問題解決のために組織されているはずの政府がこれらの問題を解決することは当てにしない方がよさそうだ。

そこで私たちは自ら解決に乗り出すべく,「問題解決学」とか「創造学」といわれる分野をのぞいてみたくなるが,百花繚乱で,何を頼ればいいのか,迷うばかり,さてどうしよう。それにビジネス分野から発信される「問題解決と創造」は,いかにも軽率なものが多く,どうなんだか。一方,学問分野からの発信は,重くもたもたと構造の記述にとどまるものが多く,なかなか「問題解決と創造」の実行に届かない。

要は,私たちが「問題」だと捉えることを「世界」の中に位置づけ,それを解決するために何をどうすればよいのかの道標が得られればいいわけだから,「世界」に関する知識と「問題解決と創造の方法」を結びつけることが必要となる。

「世界」と「問題」と「問題解決と創造」

では,「世界」はどのような要素から構成されているのか。経済学等では,個人(家計),企業,政府の3主体を想定するのでこれを借用し,これに自然・生態系・人工物からなる環境を加えて4要素とする。そうすると,これらの4要素の活動と相互作用(普通,これは「システム」と呼称される。)によって,各要素及びこれらの複合体の「社会・経済・歴史」等の現実の「世界」が作られるということになる。

次に,「問題解決」の場合の「問題」は,普通,私たちが存在する現実の世界における「目標と現状のギャップ」と定義されることが多い(これは,ハーバート・A. サイモンが,言い出しっぺらしい。)。なお「創造」は後記するように「問題解決」の一場面として位置づけられるので,逐一区別せず,用いる。

このような前提の元に,「問題解決と創造を学ぶ」わけだ。

「問題解決と創造を学ぶ」には,このような観点から,私自身が「問題解決と創造」を実行するために(皆様にもその手助けになるように),本を読み,Webを探索し,自分の頭で考察した内容の記事を蓄積していきたい。目的は「問題解決と創造」の実行だから,「問題解決と創造の方法」はできるだけプラグマティックな内容になるように心がける一方,「世界」はますます拡大していくから,「世界」に関する知識はできるだけ範囲を広くとり,わかりやすく整理していきたい。

なお,プラグマティックというと,役に立たないものは排除するという印象だが,論理的,科学的な学問がいつどこで役に立つかは予測できないし(特に数学ではよく言われることだ。),物語や哲学等々の人文畑も,人のイメージを沸き立たせ,新たな思考を導く役に立つ。役に立たないと断言できるのは,古い発想に固執する「知的営み」だけだ。

なお私は概念分析がしたいわけではなく,「問題解決と創造」のためには,対象となる「世界」や「問題」をこのような観点から考えるのが「実用的」だろうという「仮定」を設けただけである。

「問題解決と創造を学ぶ」の内容の紹介

全体の概要

まず「問題解決と創造を学ぶ」の最初に,問題解決と創造のための基本的な方法を検討する「問題解決と創造の方法」を設ける。問題解決の基本的な仕組み及び問題の把握と解決の主要な方法である行動分析学とシステム思考,さらにこれらを支える「アイデアと思考法」の基本を紹介する。

これに続いて問題解決と創造の対象となる「世界」の4つの要素並びにその主たる問題領域(「個人:生活・仕事・文化」,「企業:経営と統治」,「政府:権力と政策」,「環境:自然・生態系・人工物」とこれらの要素の繋がり,複合体の問題領域である「世界:社会・経済・歴史」の5つの領域について,紹介,検討する。

個人,企業,政府,環境には,それぞれ固有の問題があり,「世界:社会・経済・歴史」の問題を,個人,企業,政府,環境をすっ飛ばして考察しても,思い付きに止まるだけだというのが,ポイントになるであろうか(行動分析学の対象となる個人を除くと,すべてそれぞれがシステム思考の対象となる複雑な「システム」と考えられよう。)。

最後に,「問題解決と創造の方法」及びその対象となる「世界」を考察するための「方法論の基礎」をまとめて検討する。

ここでは,問題解決基礎論,アイデアと思考法,行動分析学,システム思考,哲学,言語・論証,論理学・数学(確率・統計),CS・IT・AI,進化論・脳科学・認知科学・心理学,ゲーム理論・経済学,複雑系科学,その他(失敗学,選択の科学等)を検討する。ここで重要なのは,「問題解決と創造」につながる事象の記述とモデル化である。

末尾に資料を集積する場として,本,Web等を集める「書庫」を設ける。

これらの考察を,「法を問題解決と創造に活かす」に盛り込みたいと考えている。

全体の構成

まとめれば,次のようになる。

  • 問題解決と創造の方法
  • 個人:生活・仕事・文化
  • 企業:経営と統治
  • 政府:権力と政策
  • 環境:自然・生態系・人工物
  • 世界:社会・経済・歴史
  • 方法論の基礎
  • 書庫

「問題解決と創造を学ぶ」-4要素5領域の世界-についての補足

私は,「問題解決と創造」の対象となる「世界」について,その内容の特質によって複数の領域を設定し,領域ごとにその特質を踏まえながら「問題解決と創造」を考えていくのが適切であろうと考えている。その領域として,個人と組織(企業,政府)の3主体及び自然・生態系・人工物からなる環境を加えて4要素とし,これらの4要素の活動と相互作用(普通,これは「システム」と呼称される。)によって,各要素及びこれらの相互作用,複合体として「社会・経済・歴史」等の現実の「世界」が作られるとりいう仮説は上記した。それぞれについて,より具体的に検討してみよう。

個人の生活・仕事・文化の問題

私たちは,ふと,「いったい私は何をしているのか,何をしたいのか」という思いにかられることがあるが,私たちがしたいことは,端的にいえば,生活を充実し,仕事と文化において幾ばくか創造をなすことであろう。

私たちの生活と仕事・文化は,走ることによって人類に進化した(これは仮説である。)後の,道具,火,言語の使用等々に支えられた長い長い狩猟採集生活を経て,わずか1万年の間の農業革命,科学革命,産業革命,情報革命等々によって劇的な変動を経験しつつある。

生活は,「食動考休」にまとめることができる。現代の食動考休は,狩猟採集生活時代のそれから大きく変容している。その充実を考える場合は,その変容を視野に入れることが必須である。

仕事は,生活及び文化の基盤に立つ分業による価値創造である。「苦役」というイメージでとらえるべきではない。

人が生活の中で展開してきた文化(芸術,芸能)は,「人のつながりの表現」である。

ところで人の生活・仕事・文化は,進化論(繁殖,生存に有利な形質が自然選択される)を踏まえて考えるべきである。ただ繁殖,生存の根底に性的な衝動や自然選択(競争)があるとしても,人はいつもそれに振り回されているわけではない。他者と接するソフィストケートされたレベルでは,人の生活は,日々の充実した,健康な活動を支える「食動考休」であり,仕事・文化は,生活の応用としての他者との分業による価値創造とつながりの表現であるとまとめることができる。

なお文化(芸術・芸能・文化)については,一連の考察とは別に独立させて検討する。アイデアを活性化させ,結露したものといえる。

個人の行動については,行動分析学が有用である。

政府と企業の問題

農業革命以前,人の生活と仕事は,ほとんど分化していなかったと考えていいだろう。人は,家族,あるいはもう少し規模の大きい共同体に属し,その中で仕事をし,共同体同士で抗争し,死んでいった。

しかし農業革命により人の生活と仕事が分化し,その余剰生産物を収奪する「権力集団」(政府)が生じた(もっとも現代のほぼすべての政府は,民主制(支配者と被支配者が同一)に基づくと主張しているが。)。そして,分業の進展により,更に「産業革命」によって決定的に,人の仕事の領域から分化した「企業」が大きな勢力となり,現在に至っているとまとめることができよう。政府と企業は,個人とは別の次元に存在する「組織」である。

なお成立は政府が先行するが,考察する順番としては,個人,企業,政府という方が分かりやすいであろう。

組織のうち企業の問題は,利潤追求を目標とする企業の活動により,たとえ「見えざる手」によって資源の最適配分が図られるとしても,様々な立場の人々(消費者,取引先,株主,経営者,従業員,政府等々)に,様々な利害得失を与えるから,その活動が適切に制御されなければならない。「経営と統治」を考察する必要がある。

組織のうち政府の問題は,民主制のもとでは個人の政治参加(投票)により選出された代表者(政治家)が組織する集団による権力行使(法・実力)と政策の実行及びその制御の問題である。ただし,政府を主導する政治家,官僚は,政策に失敗することがあるのみならず(悲惨な被害が生じる政策の失敗は戦争であろう。),その権力を冒用し私的利益を図ろうとする強いインセンティブがある。それが問題を複雑にしている。そこで主たる問題を,「権力と政策」としてとらえることとする。

なお組織には,地域共同体,宗教団体,学校,NPO等々も含まれるが,企業,政府に準じて考えればいいであろう。いずれにせよ,個人から独立した存在として迷走する組織の行動について理解するためには,複雑系ネットワークの観点が欠かせない。家族は,人の生活・仕事・文化の領域の問題として考えればよいであろう。

環境:自然・生態系・人工物の問題

個人の生活・仕事・文化及び企業や政府の活動は,環境の中で(自然及びテクノロジーを利用して)展開される。個人の生活と仕事,企業や政府の問題解決のためには,自然とテクノロジーの機能,動きを理解し,これを利用,制御することが必須である。

世界:社会・経済・歴史の問題

人はともすると,共時的及び通時的な社会や経済の問題に素手で入り込み,全体の構造を離れてその問題の一部を撫ぜ,あれこれ論じてきた。しかし,それでは決定的にうまくいかない。社会は,人の生活・仕事・文化,企業,政府,環境の複雑な振る舞いをする複合体であり,社会,経済はその一側面である。ここでは,「システム思考」なしでは「問題解決」は不可能であろう。

方法論の基礎

ところで「問題解決rと創造の方法」で紹介する多くの方法は,経験の集積という方が正しく,問題解決と創造にあたっては,KKD(勘,経験,度胸)が大事だなどともいわれるので,それだけでは心もとない。これを論理的,科学的に捉え返す必要がある。

そのため「問題解決と創造の方法」及びその対象となる「世界」を考察するための「方法論の基礎」では,,問題解決基礎論,アイデアと思考法,行動分析学,システム思考,哲学,言語・論証,論理学・数学(確率・統計),CS・IT・AI,進化論・脳科学・認知科学・心理学,ゲーム理論・経済学,複雑系科学,その他(失敗学,選択の科学等)を網羅的に検討する。ただしあまり深入りはできないので,関係するホンの紹介がメインになろう。

まとめ

このように現在,私あるいは現代の「世界」社会が直面している多くの問題について,個人,企業,政府,環境の4要素(更には,その複合する「社会・経済・歴史」も含めての5領域)から,分析,考察を巡らせ,私たちにとって最も重要で切実な問題である日々のあり方(生活と仕事)を充実,活性化させること,人から独立した存在として迷走する組織(企業と政府)を適切に制御,運営する企てに参加すること,更にはこれらの活動の環境,場となる自然とテクノロジーを理解し,制御し,利用することによって,自然・生態系,社会・経済の問題を順次解決していくことができれば,結果的に「新しい社会と経済を創る」という価値創造に結実するであろう。

最後に

私が今,最も取り組みたいことは,弁護士として「法を問題解決と創造に活かす」活動であり,「問題解決と創造を学ぶ」は,そのための,事実と論理を踏まえた準備作業,基礎作業となることを志している。このWebサイトも,やっとそういう情報発信ができるような準備が整いつつある気がする。ただまだ各メニューの内容はバラバラだ。それにITやAI,科学についての新しい知見・動向を知るには,英語文献の読解が必須である。その意味で内容が整うまでには今しばらく時間がかかりそうだ。