「AIと弁護士業務」の執筆状況報告
原稿を執筆する
先日ある法律雑誌から,「AIが進展する中で弁護士業務はどうなるのか」というテーマについて原稿の執筆依頼を受けた。私は「AIと弁護士業務」について昔から興味はもっているが,このWebでは目についた本や催しを取り上げて,その時々,感想を述べているだけで,網羅的,かつ学問的な内容の原稿はどうもと思ったのだが,「それならちょうどよい,締め切りは来年の2月末なので充分に時間はある」といわれ,その気になってしまった。
考えてみればこのWebのPC・IT・AI関係の記事についても,「あれをやろう,これを書こう」とそのままになっていることも多いので,「AIが進展する中で弁護士業務はどうなるのか」いうことに焦点を当て,時間をかけてあれこれつぶしていくのも面白いだろうと思いはじめた。私は百名山登山のように「つぶしていく」のが好きだし,頭が整理できると気持ちがよい。
もっとも締め切りが近づいてくると焦るかもしれないが。それはそのときだ。
ただ酔生夢死のまま,来年の2月を迎える危険性も大いにあるので。折に触れて原稿の構想,調査,執筆等々の進捗状況を記事にしていけば,何がしかの役に立つだろうと思い立ち,第1回目の「執筆状況報告」をすることにした。まず「AIが進展する中で弁護士業務はどうなるのか」というテーマについての分析視角をこわごわと言葉にしてみよう。
問題の分析視角
AIとは何か-AIは仕事に何をもたらすのか
まずAIとは何かを,イメージや自然言語だけではなく,PC,IT,AIの技術的基礎を踏まえてしっかりと把握すること,そしてAIが仕事-人や組織の思考と行動-に何をもたらすことができるかを「進化的適応」,行動科学,脳科学,複雑系科学等を踏まえて理解することが必要だろう。ここまでは助走である。
さてAIの開発は現在「驀進中」だし,人によってとらえ方も様々だが,私はPC,IT技法の進化系であるととらえたいと思っている。そのようにとらえたとき,AI技法は,人びとの仕事(ここでは知的作業を問題にする)にどのような変革をもたらすことができるのか(ここは,「デジタルトランスフォーメーション」の議論が関係する(このサイト上の記事にリンク)。
システム思考に関連して,カネヴィンフレームワークという世界の複雑な問題群の捉え方があり,問題の因果関係に着目して,単純系,煩雑系,複合系,カオス系に類型化する。これを前提とすると,AIは煩雑系,複合系についての因果関係を整理,予測して,これに関わる仕事をかえることができるだろう。
ただAIを待っていれば天から何かが降ってくるわけではなく,自分から呼び込み,使いこんで仕事の現実(非生産性)を変えて行く気持ちが必要だろう。実は現状のPC・IT技法でも,単純系,煩雑系ではできることはたくさんあるのに,できていないというのが実際だろう。
弁護士業務のモデル化とAI
弁護士業務を個別的な作業(調べ,考え,読み,書く)に分解してみると,知的作業としてさほど特異なものではない。したがって,外国では弁護士はAIで淘汰されるであろうという議論も多いが,その具体的な内容に着目すると,法を「解釈」し,事実を認定し(法的推論である),人を説得するという一連の行為は,当面は,AIに置き換えがたいものが多い。一方,調べ,考え,読み,書くという個別的な作業そのものについては,AIの活用により劇的に変革される可能性が大きいだろう。
AIによる,政府と弁護士業務の変容
以上は割と無難な議論だが,問題はAIが予想もつかない形で社会のあり方を変え,それが政府の「法に基づく支配」や,弁護士の役割を変容させる可能性も大きいと思われることである。
弁護士がAIによってブラシュアップして待っていても,いつしか弁護士業務への需要が低下するということも大いにあり得るだろう。ただよりよい「ルール」を現実化し,事実を推論するという能力は,社会にとって必須と思われるので,弁護士業務の内容は変容しつつ,弁護士という仕事は残るかもしれない。
あれこれ第1案として考えてみた。
PC,IT,AIの技術的基礎の本
上記とは関係ないのだが,Kindle本が安くなっていたので最近買ったPC,IT,AIの技術的基礎の本を,備忘のため掲記しておく。
- 「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン 機械学習・統計学・アルゴリズムをやさしく解説」(著者:梅田 弘之)
- 「帰宅が早い人がやっている パソコン仕事 最強の習慣112」(著者: 橋本 和則)
- 「Windowsでできる小さな会社のLAN構築・運用ガイド 第3版」(著者:橋本和則)
- 「DNSをはじめよう ~基礎からトラブルシューティングまで~ はじめようシリーズ」(著者:mochikoAsTech)
- 「先輩がやさしく教えるシステム管理者の知識と実務」(著者:木下 肇)
- 「よく解る!世界一やさしい 超パソコン入門用語」(著者:パソコン用語研究会)