アイデアをカタチにする_日々の創意工夫
私は昔から「アイデアをカタチにする」という言い方が気に入っている。「アイデア」は、「思い」、「発想」、「夢」、「問題発見」、「目標」等とも言えるし、「カタチにする」は、「作る」、「実現する」、「解決する」、「創造する」とも言えるだろう。もともと発明分野で使われていたものが、ビジネスの分野でも使われるようになったものだと思うが、さほど一般的な表現ではないだろう。ただ大分前に、ビッグバン・セオリーの登場人物ハワード・ウォロウィッツが自分のエンジニアという仕事を「アイデアをカタチにするものだ。」と言っている場面をどこかで見かけたので、それなりに使われているのだろうか。
私は、そのように限定せず、日々、様々な事象に取り組み、創意工夫して実現することが、「アイデアをカタチにする」ことだと考えている。「問題解決と創造」が、いささかかしこまった場面を念頭に置いている表現だとしたら、「アイデアをカタチにする」は、もっと小さな、課題の達成、タスクの実行を積み重ねるという場面を想定すればいいだろう。「アイデア」という言葉はなかなか魅力的で人を引き付けるので、アイデアを軸に「知的生産」を考えることも第2の途としてあっていいだろう。「問題解決と創造」との整合性は強いて考えないことにする。
日々の創意工夫は、「アイデアをカタチにする」事象の宝庫である。「身近な自然」、「生活」、「文化」、「仕事」、「遊び」等々、のいずれをとってもそれぞれ面白いことだらけだが、そのためには、最近いろいろなところで触れているように、うまくいかないことに対する自分のイライラを克服すること、イライラを少し突き放し、やりつつあることを投げ出さないこと、要は、イライラに彩られた試行錯誤を楽しむことが重要だ。
特にデジタル関係はそうだ。もうブロックエディターに負けないぞ。プラグインを投げ出さないぞ。Notionで本の目次と要約のデータベースを作るぞ(これなやめた。)。WordやExcelだって、水準を超えて使いこなすぞ。購入したアプリもすぐに投げ出さないぞ。
日本で一番山に行っていた弁護士であったときと同じよう、生成AIを、日本で一番使いこなす弁護士になろうというのが、今後の日々の創意工夫の焦点だ。
アイデアをカタチにするプロセス
アイデアをカタチにするには、手順がある。アイデアを①持つこと、出すこと、②カタチにすることが中心であることは当然だが、よく言われるようにアイデアは「組み合わせ」だ、というだけでいいのだろうか。アイデアの材料は日々の生活における知覚・観察内容やその記憶から「言語」としてもたらされるのだろうが、材料の開拓をしなくていいとは思わない。
アイデアをもたらす源泉_アイデアと生活
そこでまず手順の⓪準備として、「アイデア」をもたらす源泉としてⅰ「言語」を含む「イメージ」、ⅱ日々の生活ではない少し遠くの「生活」を考えてみよう。ここでは放送大学教材から、次の2冊を取り上げよう。
- イメージの力 (放送大学教材):佐藤仁美
- 総合人類学としてのヒト学(放送大学教材):高倉浩樹
アイデアの源泉を検討する2書の要約と目次
書誌

要約
要旨
まず本書で展開される中核的なテーマ、主要な議論、および具体的事例を要約する。編者は佐藤仁美氏、6名の専門家が担当し、人間の心理、文化、そして癒しのプロセスにおける「イメージ」の根源的な力を多角的に探求する。
中心的な主張は、イメージが単なる心象風景に留まらず、個人の内面を外部に表出し、他者とのつながりを形成し、自己治癒を促す強力な媒体として機能するという点である。この力は古代の洞窟壁画から現代の精神科臨床における芸術療法まで、人類史を通じて普遍的に観察される。
本書は、心理臨床の現場で活用される具体的手法を詳細に解説する。言葉だけでは捉えきれない深層心理に迫る「バウムテスト(樹木画テスト)」や「風景構成法」、言葉そのものをイメージの媒体とする「詩歌療法」「俳句療法」、文化や背景が異なる人々の間で共感的理解を築く「感覚詩」などを紹介する。これらの実践は、クライエントが「自由にして保護された空間」の中で自己を探求し表現することを可能にする「治療的枠組み」の重要性を一貫して強調している。
さらに本書は個人の心理療法を超え、イメージが文化や社会を形成する力にも着目する。和歌山県の「那智の火祭」や沖縄県の「ウンガミ」といった祭りの分析を通じ、共同体が象徴的イメージを操作して世界観(風土)を創造・維持してきたことを示す。また、芸術家エドヴァルド・ムンクの生涯やグアテマラ・マヤの染織文化の考察は、個人の経験や文化的背景が創作イメージの源泉となることを明らかにする。
結論として、『イメージの力』は、イメージが意識と無意識、心と身体、個人と共同体、過去と未来を結びつける「かけはし」であり、デジタル化が進む現代社会において人間性を再確認し深めるための不可欠な力であると論証する。
1. イメージの本質と多様性
本書はまず「イメージ」という概念の広範な定義と、それが人間の認知と表現において果たす根源的役割を解き明かす。
イメージの定義と心理的機能
広辞苑はイメージを「心の中に思い浮かべる像。心象」と定義する。本書はこの定義を出発点に、イメージが単なる視覚像に留まらない多層的な機能を持つことを示す。
- 記憶と認知の結晶: 「富士山」という語から静岡側と山梨側で異なる形状や、グアテマラのアグア火山のような類似の山を想起する例は、イメージが知覚・記憶・想像の表象が混ざり合ったものであることを示す。
- 不安の制御: 暗闇で物音がした際にそれを「風」や「獣」と意味づける行為は、正体不明なものへの不安を、対象が明確な恐怖へと転換し心理的安定を取り戻す働きである。イメージの力は安心感をもたらすと同時に、恐怖を煽る両義性を持つ。
芸術におけるイメージ表現
芸術作品は作者の多様なイメージが凝縮された媒体である。美術史家の若桑みどりは美術を「目に見えない感情や思想やメッセージを、目に見えるかたちによって表現すること」と定義し、言語では表現しきれない深遠な意味を伝えるイメージの力を強調する。
- ピーテル・ブリューゲルの『子どもの遊戯』: 単なる遊びの百科的描写ではなく、約80種類の遊戯を通じて深い寓意を表現している。森洋子によれば、神の視点から見れば大人の仕事も子供の遊びも重要度は変わらないという逆説的メッセージや、失われつつある遊び場を画面上で復活させる意図が込められている。一枚の絵には作者の意図、歴史的背景、文化的文脈など多層的なイメージが織り込まれている。
原始美術とアウトサイダー・アート
イメージ表現の源泉は、専門的な芸術教育を受けていない人々の根源的表現活動にも見出される。
- 太古の洞窟壁画: 約3万6,000年前のショーヴェ洞窟の壁画やラス・マノス洞窟の「ネガティヴ・ハンド」はプリミティヴ・アートの代表例であり、手形は「その時その場に存在していた」という痕跡であり、時空を超えて何かを伝えようとするコミュニケーションの試みである。
- シュヴァルの理想宮: 郵便配達人のシュヴァルが33年間一人で作り上げたこの建造物は、専門教育を受けずに内なる夢と素材との出会いをきっかけに創造された。アール・ブリュットやアウトサイダー・アートの先駆けとされ、ピカソらにも影響を与えた。この事例は、表現欲求の根源に素材との出会いがいかに重要かを示す。
2. 臨床実践におけるイメージの力:芸術療法
本書の中核は、心理臨床におけるイメージの治療的応用、すなわち芸術療法(アートセラピー)の理論と実践である。
芸術療法の基本理念
芸術療法はイメージ表現の多様な作用を治療的に活用するアプローチである。
- 「芸術で治す」と「芸術が治す」: 大森健一は、治療手段として芸術を用いる「芸術で治す」と、アート行為そのものが癒しの力を持つ「芸術が治す」の両視点が不可分であると指摘する。
- 哲学的等価: 芸術療法における「芸術」は一部の才能ある人の特権ではなく、人間が普遍的に持つ表現行為を指す。山中康裕はこの考えを「哲学的等価」と説明し、「表現療法」という名称を提唱した。
- 自由にして保護された空間: クライエントが安心して自己を解放するには、セラピストの存在と整えられた環境によって保証される「自由にして保護された空間」(カルフ)が不可欠である。
言葉とイメージの相互作用
芸術療法は非言語的アプローチと見なされがちだが、本書は言葉との深い関連を強調する。
- すぐれて言語的な芸術療法: 飯森眞喜雄は芸術療法を「すぐれて言語的なもの」と位置づける。クライエントは「言葉で表せないもの」に苦しみ、セラピーは「得体のしれない透明な“あるもの”に言葉の衣服を着せること」である。イメージと言語は相互補完的である。
- 言霊と詩歌療法: 日本には言葉に宿る霊的力を信じる「言霊」の思想があり、これを土壌に詩歌療法が発展した。詩を読むことによるカタルシスや、詩作を通じて無意識的葛藤を象徴的に表現し自己探求を促す意義がある。
- 俳句療法と連句療法: 定型詩「五・七・五」を用いる俳句療法は感情を客観視する助けとなる。複数参加者が句を付け合う連句療法はコミュニケーションの濃密さと遊戯性が特徴で、「付合の心」と「座の構造」を通じて共生的関係性を育む。ここでの対話は芭蕉の言う「いひおほせて何かある」(すべてを言い尽くした上でなお余韻が残る)という深い次元に達する。
描画法によるアプローチ
描画はクライエントの内面を理解し、治療的対話を促す強力なツールである。
描画法 | 創始者/体系化 | 主要な特徴と目的 | 治療的メカニズム |
バウムテスト | カール・コッホ | 「実のなる木を一本描いてください」という指示で木を描かせる。描き手の自己像や心理状態が投影される。 | 開通効果: 言葉だけでは開かれないコミュニケーションの扉を開く。 投影の留め金: 「木」という主題が自己表現の適度な引っかかりとなる。 鏡としての機能: 描かれた絵を見て自身の心の状態を客観視できる。 |
風景構成法 | 中井久夫 | 「川、山、田、道」などの項目を順に描き、一つの風景を完成させる。箱庭療法を紙面で行う発想に基づく。 | 物語としての機能: 各項目を描き加えるプロセスが一つの物語を紡ぐ。 原風景の表出: 深層意識に固着した「原風景」にアプローチする可能性がある。 多視点的構造: 描き順が決められているため線形透視図法とは異なる多視点的世界が構成され、描き手の内的世界を反映する。 |
3. 自然、身体、文化におけるイメージ
本書はイメージの射程を個人の内面から、自然環境、身体感覚、文化体系へと広げる。
祭りと風土の創造
祭りは象徴的イメージ操作を通じて共同体の世界観(風土)を創造・再確認する活動である。
- 那智の火祭(和歌山県): 火と水を象徴的に用いるこの祭りは、太陽神の力を土地神に付与し生命力を活性化させるという垂直的世界観を表現する。参加者は象徴を捧げる行為を通じ聖なるものの顕現(ヒエロファニー)を体験する。
- ウンガミ(沖縄県): 海の彼方の理想郷「ニライ・カナイ」から神を迎えるこの祭りは水平的世界観を反映する。神女(カミンチュ)が神に近い存在となり、人々と共に遊ぶ点が特徴で、神と人の親密な関係性が示される。
- 風土の創造: これらの祭りは自然環境の反映にとどまらず、その土地に根差した人々の歴史、価値観、未来への意志を統合し、意味ある世界としての「風土」を積極的に創造する営みである。
身体性と無意識的身体心像
イメージは心と身体をつなぐ中間領域に位置し、身体状態を象徴的に表現することがある。
- 二面的一元論: 心と身体を根底にある一つの実在(こころ/からだ統一体)の二側面として捉える考え。この立場では腹痛などの心身症は身体的側面と心理的側面の両方からアプローチされるべき対象となる。
- 無意識的身体心像: 患者が意識していない身体内部の病理的プロセスが、比喩的イメージ(例:癌の転移と「雁の大陸移動」)として語りや描画に現れる現象。これは身体が発するメッセージをイメージが捉えたものと考えられる。
音と音楽のイメージ
音楽は時間芸術として独自性を持ち、身体と心に直接働きかける。
- 音楽の治療的効果: リズムやメロディなど音楽の構成要素は心拍や呼吸といった内的身体リズムと共鳴(自動同期同調)し、気分や情動に影響を与える。
- 日本的感性: 日本文化では「間」「しじま」「余韻」といった音にならない音や、オノマトペに代表される自然音への感受性が豊かである。
- 音楽療法: 古代ギリシャの神殿医療(アスクレピオン)に起源をもち、現代ではクライエントの心身状態に合わせた音楽的体験(同質の原理など)を用いてコミュニケーションを促し自己表現を支援する。
異文化と芸術療法
芸術療法は文化が異なる人々の異文化変容ストレスの緩和に有効である。
- 非言語的コミュニケーションの意義と注意点: 芸術表現は言語の壁を越えやすいが、シンボルの文化的意味(例:タコの色)の違いによる誤解も生じ得るため、言語的対話との併用が不可欠である。
- 相違性と相似性: 異文化間のセラピーでは文化的「相違性」を尊重しつつ、五感などの普遍的体験を通じた「相似性」を見出すことが安心・安全な場を築く鍵となる。
- 感覚詩/交互感覚詩: 五感に焦点を当てて詩を作る「感覚詩」や、セラピストとクライエントが交互に作る「交互感覚詩」は、この「相似性」を体感し自己表現を促す有効な技法である。
4. 精神科医療における芸術療法の現場
本書は精神科病院という具体的な臨床現場での芸術療法実践を、二つの主要対象者群を通じて詳述する。
治療的枠組みの重要性
芸術活動が治療として機能するには「治療的枠組み」が不可欠であり、これは単なるレクリエーションとの決定的な違いを生む。
- 定義: 空間的・時間的安定(決まった場所と時間)、秘密保持が保証される人員構成、予測不能な表現を受容できる多職種の共通理解によって構築される弾力的で安全な環境を指す。
- 機能: この枠組みにより患者は安心して内的世界を探求し自発的に表現できる。治療者は「治す」のではなく患者の自己治癒力を信じ、表現されたイメージに共感し見届ける姿勢が求められる。
事例研究:統合失調症と認知症
対象者 | 事例の概要 | 芸術療法の治療的機能と効果 |
統合失調症 | 50代女性A氏が約9年間にわたり109枚の「朝顔」の絵を描き続けた事例。「皆は壁の外が見えるのに私だけ見えません」という言葉が特徴的。 | 自己像の投影: 朝顔はA氏の自己像であり、その変化(鉢植え、支柱の有無、花の大きさ等)は心理状態を反映していた。 イメージによる冒険: 「想像」と題した連作では鉢から解放された朝顔を描き、現実との接点を再構築しようとする内的冒険を試みた。 自己治癒のプロセス: 安定した鉢植え構図に戻るが背景色が明るくなるなど、冒険を経て自己と折り合いをつけたことが示唆される。描画はA氏にとって「生きていることを実感する手段」であった。 |
認知症高齢者 | 重度の認知症を持つ90代女性B氏が羊毛で「桜」を制作した事例。丸めた羊毛を「よしよし」と撫でる行動が見られた。 | コミュニケーションの促進: 制作プロセスと作品が言語化困難なB氏の感情や記憶(元保育園経営者)を他者に伝える媒体となった。 「居場所」とアイデンティティの創出: 治療者がB氏の行動から「桜の赤ちゃん」という題名を提案し、それが受け入れられたことで他者と世界が通じ合う実感を得て安心感と自己肯定感を回復した。 残存機能の活用: 認知機能が低下していても感覚や感情、過去の経験は残っており、芸術療法はそれらを引き出しその人らしい表現を可能にする。 |
5. イメージの未来:複製技術とデジタル時代
最後にイメージの歴史的変遷を踏まえ、現代社会におけるイメージの役割と未来を考察する。
唯一性アウラの喪失
イメージのあり方は複製技術と密接に関連する。
- 写真技術の発展: カメラ・オブスクラやダゲレオタイプのような一点もののイメージから、ネガ・ポジ法による複製が可能になり、現代のデジタル技術によりイメージは容易に大量生産されるようになった。
- アウラの凋落: ヴァルター・ベンヤミンは、複製技術が普及する以前のオリジナル作品が持つ「今、ここ」にしかない一回性の輝きを「アウラ」と呼んだ。写真や映画など複製芸術はこのアウラを失わせ、芸術を世俗化・大衆化させたと論じた。
リモートとリアルの関係性
COVID-19パンデミック以降、オンラインでのコミュニケーションが常態化し五感を通じたリアルな体験が制約されるようになった。しかしこの状況下でもイメージの力は重要性を増している。
現代におけるイメージの役割: デジタル化による分断は逆説的に個を浮き彫りにし、隔たれた者同士をつなぐきっかけともなり得る。オンライン環境では記憶や想像力を駆使し失われた感覚を補いながら、イメージの力を通じて深いコミュニケーションを築くことが求められる。イメージは現代において個人が自分を世界に定位し他者とつながるための不可欠な「かけはし」であり続ける。
プンクトゥムの力: ロラン・バルトが提唱した「プンクトゥム」は写真の中の見る者の胸を刺す細部を指す。断片的イメージ(オンライン画面など)であっても、細部が全体を喚起し強いリアリティや情動を呼び起こす力を持つことを示唆している。
目次
- 1 イメージをめぐる物語
- 1.イメージをひも解く
- 2.アートに表現されたイメージ色
- 3.心理臨床におけるイメージとことば
- 4.アートとアートセラピー−アートの持つ力−
- 2 イメージの本質
- 1.太古の叫び
- 2.物にひそむたましい
- 3.シュヴァルの理想宮(仏:Palais idéal du facteur Cheval)
- 3 言葉とイメージ
- 1.言霊(ことだま)
- 2.ことばによる癒し
- 3.詩歌療法
- 4.俳句療法
- 5.連句療法
- 6.言葉をめぐって
- 4 自然とイメージ1
- 1.バウムの扉を開ける
- 2.バウムの力
- 3.おわりに
- 5 自然とイメージ2
- 1.風景と情動・記憶
- 2.心理療法における原風景
- 3.風景構成法という方法
- 4.風景構成法の実施
- 5 画題の順序
- 6.描画プロセスを見守る
- 7.事例
- 8.物語としての風景構成法
- 6 自然とイメージ3−火と水の祭り−
- 1.イメージの力と祭り
- 2.イメージと象徴
- 3.火と水の祭り−那智の火祭
- 4.那智の火祭における象徴操作
- 7 自然とイメージ4−海と山の祭り−
- 1.祭りと風土
- 2.海と山の祭り−ウンガミ
- 3.風土を創造する祭り
- 8 自然と人1
- 1.一針に込められた思い
- 2.染織に込められた思い志村ふくみ
- 3.テキスタイルに込められた思いグアテマラ・マヤ
- 4.染織の世界幾何学模様に潜むもの
- 9 自然と人2
- 1.ムンクの告白
- 2.ムンクゆかりの地
- 3.北欧神話と作品
- 4.自然と人と太古から息づくイメージ
- 10 身体性とイメージ1
- 1.心と体
- 2.心・脳・体
- 3.腹痛の事例
- 4.症状形成のモデルと治療の流れ
- 5.痛いのは体か心か
- 6.心と体の間にあるものとしてのイメージ
- 7.無意識的身体心像
- 11 身体性とイメージ2−音・音楽と人との響き合い−
- 1.音が人に与える効果
- 2.日本の音の特性(日本的感性)
- 3.人の発達と音楽
- 4.病理との関係
- 5.音楽表現が生まれてくるというコト
- 6.音楽療法の起源
- 7.音楽療法とは
- 8.音楽療法に現れるイメージの世界(回想,身体性,音響・震えを事例を通して考える)
- 9.音を使ったワーク
- 10.さいごに
- 12 イメージの現場から1−異文化と芸術療法(アートセラピー)−
- 1.異文化のイメージ
- 2.異文化と心理臨床の場
- 3.異文化と芸術療法(アートセラピー)の場
- 4.異文化と芸術療法の具体例−交互感覚詩を用いて
- 5.おわりに
- 13 イメージの現場から2−精神科病院における芸術療法−
- 1.治療の場における芸術療法
- 2.具体的な現場から1(統合失調症)
- 3.具体的な現場から2(認知症高齢者)
- 14 イメージの現場から3−素材と環境−
- 1.イメージを紡ぎ出す器としての環境
- 2.素材
- 3.ものがたり・ものづくり
- 4.アート・アズ・セラピー
- 5.対話としての存在
- 15 イメージの力
- 1.イメージの源泉
- 2.イメージの発展唯一性と複製技術
- 3.リモートとリアル現代とイメージ
- 4.おわりに
書誌

要旨
本書は放送大学の教材である。本書の核心は、文化人類学と生物(形質)人類学の知見を融合し、人間(ヒト)を総合的に理解する「ヒト学」という視座の提唱にある。このアプローチは、ヒトの文化的・社会的多様性を、その生物学的基盤や地球生態系における位置づけと不可分に捉える。
本書は以下の主要テーマを通じてヒトの多面的な姿を解き明かす。
- 生態学的基盤と進化:ヒトを太陽エネルギーの循環の中に位置づけ、人類史をエネルギー利用の拡大史として捉える。現代人の膨大なエネルギー消費(「30人の奴隷」の比喩)を提示し、ホモ・サピエンスのアフリカ起源説、その後の世界的拡散、そして多様な環境への生物学的・文化的適応の過程を解説する。
- 生存戦略の大転換:狩猟採集から約1万年前に始まったドメスティケーション(栽培化・家畜化)への移行が、社会構造、エネルギー効率、自然との関係を根本的に変えたことを論じる。在来農耕と現代農業を比較し、技術がもたらす効率性と環境負荷のトレードオフを明らかにする。
- 社会構造の構築:霊長類社会との比較を通じて、インセスト・タブーや外婚規則に特徴づけられるヒトの家族の起源を探る。親子・婚姻関係に基づく親族という普遍的な繋がりから、出自原理による部族社会、階層化した首長制、国家へと至る支配の発展を段階的に追う。
- 象徴と文化の力:言語の二重分節性が世界を分節化・再構成する能力をヒトに与え、儀礼が時間と空間に秩序をもたらす機能を果たすことを示す。遊びや模倣が技能習得だけでなく他者への共感や想像世界を創造する基盤となること、ダンスや祈りが超自然的世界と接続し社会的な癒しや統合をもたらす様を詳述する。
- 近代から現代へのダイナミズム:近代世界がヨーロッパで形成され、ナショナリズムと国民国家という理念が全世界に拡散した過程を分析する。現代のグローバリゼーションは均質化だけでなく、ローカル社会の応答による異質化(グローカリゼーション)を生む動的プロセスであることを示す。最終的に、ヒト活動が地球環境に地質学的影響を与える「人類世(人新世)」の視点から地球温暖化を考察し、在来知と科学的知見の融合によるレジリエンス(回復・更新力)の構築を提言する。
1. 総合人類学としての「ヒト学」の構想
本書は、従来の学問領域の垣根を越え、ヒトという存在を総合的に理解することを目的とする。文化人類学はしばしば人文社会科学に位置づけられるが、その歴史的ルーツは生物学や考古学と密接に関連している。19世紀の「人類学」は、生物としてのヒトと文化的存在としてのヒトを区別せずに探究する学問として成立した。
本書が提唱する「ヒト学」はこの原点に立ち返り、文化人類学(社会人類学)を基盤としつつ、生物人類学、人類生態学、霊長類学などの知見を積極的に導入してヒトの理解を総合化することを目指す。
- 生物学的基盤と文化の結合:ヒトの文化的多様性と生物学的進化は不可分であると捉える。例えば「汗の結晶」という表現は、ヒトが進化の過程で獲得した全身発汗という生理機能に基づく。同様にチンパンジーなど他の霊長類との比較から、家族における父親の特異な役割が浮かび上がる。
- 学際的アプローチ:文化人類学が扱う資源利用技術、分配の社会効果、象徴体系、社会組織などを、地球のエネルギー収支や生態系といった大きな枠組みの中に位置づけることで、多様な文化を支える普遍的な仕組みと生物学的基盤との関連性を明らかにする。
2. 地球生態系におけるヒトの存在
ヒトは文化的存在であると同時に、地球生態系の一員として太陽エネルギーに依存する。この基本的事実をエネルギーという「共通言語」を用いて解明することが、ヒトの存在を理解する出発点となる。
2.1. エネルギー消費から見た人類史
ヒトの生存に最低限必要な食事からのエネルギー摂取量は1人1日あたり約2100キロカロリーだが、現代日本人が消費する総エネルギー量はその約30倍の72,000キロカロリーに達する。これは古代ローマの浴場設計技師が現代日本を見れば「一人一人が30人の奴隷を使って生活している」と想像するに等しい水準である。この膨大なエネルギー消費は文明の発達と密接に関連している。
時代/集団 | 1人1日あたりのエネルギー消費量(キロカロリー) | 主な内訳 |
---|---|---|
アウストラロピテクス (100万年前) | 3,000 | 食糧 |
初期農耕民 (紀元前5000年) | 約10,000 | 食糧、家事、農業 |
高度な農民 (1400年) | 約20,000 | 食糧、家事、農業、輸送、商業 |
産業革命後のイギリス人 (1875年) | 70,000–80,000 | 農業・工業の割合が急増 |
近年のアメリカ人 (1970年) | 250,000 | 全項目で増大 |
人類史は、畜力や化石燃料などの人間以外のエネルギーを社会に取り込み、エネルギー利用を拡大してきた歴史である。一方で、このエネルギー消費は地域差が著しく、先進国の過剰消費と途上国の栄養不足という南北格差の原因ともなっている。 |
2.2. ホモ・サピエンスの進化と拡散
現生人類ホモ・サピエンスは約20万年前にアフリカで誕生し、約10万年前に一部がアフリカを出て世界へ拡散した(単一地域進化説)。この拡散の過程で、人類は熱帯から寒冷地まで多様な環境に適応する必要に迫られた。
- 環境適応:人類は熱帯で進化したため、生物学的には暑さに強く寒さに弱いが、文化的適応(暖房・衣服・住居)によって寒冷環境への進出が可能になった。暑さへの耐性には集団差があるが、遺伝的差異より生活環境への順化が大きい。
- 生物的多様性の形成:移動と隔離を繰り返す中で各集団に独自の生物的特徴が現れた。
- 肌の色:緯度と紫外線量に応じてメラニン量が適応的に変化した。低緯度では紫外線を防ぐ濃い肌、高緯度ではビタミンD合成に有利な薄い肌が有利であった。
- 倹約遺伝子:食料が乏しい環境を生き抜くためにエネルギーを効率的に脂肪として蓄える体質が選択された可能性がある。現代の食料豊富な環境では肥満や糖尿病のリスクを高める要因となる(倹約遺伝子仮説)。
- 遺伝的多様性:ヒトの集団間の遺伝的多様性はチンパンジーより小さく、全人類が比較的最近(約10万年前)にアフリカの単一祖先集団から分岐したことを示している。
2.3. 人新世における地球温暖化
現代は、人間活動が地球の地質や化学サイクルに大きな影響を与える「人類世(人新世)」と位置づけられる。その象徴的な問題が地球温暖化である。
- 原因とリスク:産業革命以降の化石燃料大量消費などによる人為起源の温室効果ガスが温暖化の主因である可能性は極めて高い(IPCC報告)。これにより海面上昇、異常気象、食料・水資源不足などが予測される。
- 国際社会の対応:地球温暖化問題は、科学者が問題提起と評価の中心を担う点で従来の国際政治と異なる。IPCCのような科学者主体の国際組織が政策決定の科学的根拠を提供し、国家、国際機関、NGOなどが協働する新たなガバナンスが生まれている。
- 人類学の貢献:マクロな科学的知見に対して、人類学は地域社会が温暖化をどのように経験し対応しているかをミクロな視点で明らかにする。特に世代を超えて育まれた在来知(indigenous knowledge)は、気候変動の具体的影響を把握し地域に根ざした適応策を考える上で不可欠であり、人類学者は科学的知見と在来知を繋ぐ「翻訳者」としての役割を担う。
3. 生存戦略の大転換:狩猟採集からドメスティケーションへ
人類史の約99%は狩猟採集の時代であったが、約1万年前に始まったドメスティケーション(栽培化・家畜化)は、ヒトの生存戦略と社会を根本から変えた。
3.1. 狩猟採集民の社会
狩猟採集生活は自然の再生産過程に依存する。その社会は現代のサン(ブッシュマン)の事例に見られるように、次の特徴を持つ。
- 遊動的生活:水や食料の季節変動に合わせて頻繁に移動し、特定土地に対する排他的な権利を持たない。
- 柔軟な社会組織:居住集団(キャンプ)のメンバーは流動的で、血縁や姻戚、友人関係に基づき離合集散を繰り返す。父系・父方居住という固定モデルは当てはまらず、双系的な社会が基本である。
- 食物分配と平等主義:狩猟で得た大型動物の肉はキャンプのメンバー全員に行き渡るよう徹底的に分配される。これにより富の蓄積が防がれ、経済的・政治的平等主義が維持される。有能なハンターへの威信集中を防ぐ文化的慣習も見られる。
3.2. ドメスティケーションという発明
ドメスティケーションは野生の動植物を人間管理下で再生産させるプロセスであり、人類が自ら生態系を改変した画期的出来事であった。
- 栽培化された植物:米や麦などの栽培植物は、野生種に比べて実が大きく脱粒しにくいといった人間に都合の良い特徴を持つが、自然環境では不利であり人間の管理(農耕)を必要とする。
- 飼育化された動物:家畜は攻撃性が低く穏やかで、多くは人間が利用できない草を餌とし、肉・乳・労働力を提供する。家畜は財産や威信財としての価値も持つ。
3.3. 農耕・牧畜の多様な形態
ドメスティケーションは各地域で多様な農耕・牧畜社会を生み出した。
- 在来農耕 vs 現代農業:
- 在来農耕:地域の生態系サービスに依存し、狩猟・採集・漁撈などと複合的システムを形成する。焼畑や伝統的水田は食料生産の場であると同時に多様な動植物のニッチを創出し、広範な在来知に支えられている。
- 現代農業:化学肥料・農薬・機械を多用し生態系への依存度は低い。労働効率は高いが、生産量あたりの総エネルギー投入量は在来農耕より大きく、環境負荷が高い傾向がある。
- 牧畜社会の類型:
- 乾燥地牧畜:西アジアで始まり乳製品の利用を特徴とする。農耕民との交易を通じ穀物を得る。モンゴルの遊牧民のように部族社会を基盤に遊牧国家を形成した例もある。
- 寒冷地牧畜:ユーラシア北方のトナカイ遊牧民。乳利用は少なく、運搬や肉利用が主。狩猟採集との連続性が強く自給的性格がある。
- 高地牧畜:南米アンデスのリャマ・アルパカ牧畜民。毛皮や輸送力を低地農耕民との交易に利用して社会が成立している。
4. 社会の構築:家族、親族、交換、支配
ヒトは生物学的繋がりを基盤としつつ、文化的に構築された多様な社会集団を形成する。
4.1. 家族と親族
ヒト社会の基本単位は家族だが、その形態は多様である。霊長類社会との比較からヒト社会に特有の要素が浮かび上がる。
- ヒトの家族の構成要素:
- インセスト・タブー:親子・兄弟姉妹間の性交を禁じる普遍的規則。
- 外婚:生まれ育った集団外から配偶者を得る制度。これにより家族や集団間の連携が生まれる。
- 重層的社会:家族の上に親族集団や地域社会などの上位集団が存在する。
- 性別分業と分配:食料獲得における男女の役割分担と共同体全体での食料共有。
- 出自と親族集団:親族集団は祖先との繋がり(出自)を辿る原理に基づく。
- 単系出自:父系(父の系譜)か母系(母の系譜)のいずれか一方を重視し、成員の範囲が明確な出自集団を形成する。
- 双系:父方・母方の両方を等しく辿る。現代日本の親族認識はこちらに近い。
- 近代社会の繋がり:血縁(親族)に加え、地縁(地域共同体)、社縁(結社・アソシエーション)、情報縁(インターネット)など多様な繋がりの重要性が増している。
4.2. もののやりとりと社会関係
交換は単なる経済活動ではなく、社会関係を構築・維持する重要なメカニズムである。
- 贈与の三つの約束事:モースによれば贈与には「贈る義務」「受け取る義務」「お返しをする義務」が伴い、これが守られることで社会関係が維持される。
- 互酬性の種類と社会的距離:サーリンズは互酬性を当事者間の社会的距離に応じて三つに分類した。
- 一般的互酬性:家族など親密な間柄。見返りを期待しない与え合い(シェアリング)。
- 均衡的互酬性:親族や友人など。等価のお返しが期待される交換。
- 否定的互酬性:見知らぬ相手など。自己の利益を最大化しようとする駆け引き。
- 交換の様式と社会統合:ポランニーは社会を統合する交換様式を三つに分類した。
- 互酬交換:対等な集団間のやりとり。
- 再分配:中心(首長など)に富を集め再分配する様式。
- 市場交換:貨幣を介した、当事者の社会関係から切り離された交換。
4.3. 支配の仕組みの発展
農耕牧畜の開始による社会の大規模化に伴い、集団を統御する支配の仕組みが段階的に発展した。
- バンド(群れ):狩猟採集民の小規模で平等主義的な集団。明確な支配者は存在しない。
- 部族:複数のバンドが単系出自などの親族原理に基づき結合した大きな集団。基本的には平等主義的。
- 首長制:特定家系が世襲的に指導者(首長)を占め、社会が階層化する。首長は再分配経済の中心となる。
- 国家:政府、都市、専門分化した職能集団などを備え、制度化された支配機構を持つ。
支配は単なる暴力的強制ではなく、血統の正当性、神聖性(「劇場国家」的表象)、資源管理の効率性など、被支配者の容認を得るための様々な論理によって支えられる。
5. 象徴の世界:言語、儀礼、信仰
ヒトは言語や象徴を用いて世界を分節化し、意味のある秩序を構築する。
- 言語と認識:言語は音素と形態素に分解される二重分節性を通じて無限の表現を可能にする。言語は世界を分節化し(例:色名)、二項対立(例:聖/俗)などの思考様式を生み出す。
- 儀礼と境界:通過儀礼(成人式、結婚式など)は「分離」「移行」「統合」の三段階を経て日常に人為的な境界を作り、個人の社会的地位変化を画定する。儀礼は日常と非日常を往復させることで社会に秩序と更新をもたらす。
- 遊びと祈りの創造:
- 遊びと模倣:ヒトは他者の行動を忠実に模倣する「真の模倣」能力に長け、これは技能習得だけでなく他者への共感や現実とは異なる「仮の世界」を創造する遊びの基盤となる。
- ダンスと祈り:サンのヒーリング・ダンスのように、歌や踊りなどの身体活動は参加者をトランス状態へ導き、超自然的存在との交流を可能にする。これにより個人の病だけでなく共同体全体の浄化と癒しがもたらされる。こうした体験は目に見えない世界を前提とする宗教的世界観の根幹をなす。
6. 近代世界とグローバル力学
近代はヨーロッパに端を発し、全世界を巻き込んだ地球規模の歴史として特徴づけられる。
ツバルの事例:地球温暖化による「沈む島」としてツバルが象徴化される一方、現地調査は住民が国内外を頻繁に移動しリスクに対応しつつ能動的に生活している姿を示す。これはグローバル言説とローカル現実の乖離、そして近代以前からの移動伝統に根ざした人々の強靭さを示している。
ナショナリズムと国民国家:近代は「一つの民族(ネイション)が一つの国民を構成し一つの国家を形成する」というナショナリズムの理念を広めた。この理念に基づき領土と主権を持つ国民国家が国際社会の基本単位となったが、しばしば国内の少数民族抑圧や同化政策を正当化する側面もある。
グローバリゼーションとローカル社会:現代のグローバリゼーションはヒト・もの・情報の移動が速度・規模・密度面で過去と比較にならないレベルに達している。
均質化と異質化:グローバリゼーションはマクドナルド化に象徴される文化の均質化をもたらす一方、スローフード運動のようなローカルな対抗や、グローバル文化を地域に適応させるグローカリゼーションといった異質化も生み出している。
- 1 地球におけるヒトの存在
- 1.太陽の恵み
- 2.共通言語としてのエネルギー
- 3.エネルギー循環の人体と社会
- 4.エネルギーの最大消費の起源と石油文明
- 5.エネルギーと文化
- 2 文化としてのドメスティケーション
- 1.食べ物は誰がつくるのか
- 2.植物のドメスティケーション
- 3.動物のドメスティケーション
- 4.まとめ:ドメスティケーションの捉え方
- 3 からだの進化
- 1.なぜ人間のみかけは多様なのか
- 2.ホモ・サピエンスの進化と出アフリカ
- 3.暑さ寒さへの適応
- 4.人類集団ごとの生物的特徴と健康
- 5.まとめ
- 4 食べものをとる
- 1.初期人類の生活
- 2.現代の狩猟採集民
- 3.狩猟採集民の多様性
- 4.食物の社会道具化
- 5 家畜とともに暮らす
- 1.遊牧の風景
- 2.牧畜社会の特徴
- 3.乾燥地牧畜
- 4.多様な牧畜社会
- 5.共生的牧畜
- 6 食べものをつくりだす技と場
- 1.はじめに
- 2.焼畑農耕
- 3.水田耕作
- 4.在来知のあり方
- 5.農耕の現代化で人類が失ったもの
- 7 ヒトの家族の起源
- 1.家族とは何か
- 2.霊長類の社会構造
- 3.インセスト・タブー,そして外婚
- 4.重層的社会
- 5.分配と性別分業
- 8 ヒトの繫がりと社会集団
- 1.社会的動物としてのヒト
- 2.親族という繫がり
- 3.いろいろな繫がり
- 9 時間と空間を区切る
- 1.鳴くこととしゃべること
- 2.世界の切り分けと再統合
- 3.二項対立と料理の三角形
- 4.境界と通過儀礼
- 5.世界観と宗教
- 10 遊ぶことと祈ること
- 1.遊びと模倣
- 2.サンの子どもの遊び
- 3.ダンスと祈り
- 4.祈りの世界の創造
- 11 もののやりとりと社会関係
- 1.ものを贈る
- 2.ものをやりとりする
- 3.ものを売買する
- 12 支配の仕組み
- 1.群れを超えて生きる
- 2.有力者から支配者へ,部族から首長制と国家へ
- 3.支配の正当性
- 4.支配の仕組みの複雑化と多元化
- 13 近代世界の成立と国民国家の形成
- 1.古代,中世から近代へ
- 2.イノベーションの時代
- 3.ナショナリズムの広まり
- 4.国民統合
- 5.ヨーロッパ近代の受容、克服、限界
- 14 グローバリゼーションとローカル社会
- 1.グローバリゼーションとは何か
- 2.近代以前のグローバリゼーション
- 3.近代以降のグローバリゼーション
- 4.グローバリゼーションとローカル社会
- 5.グローバリゼーションの諸相−ツバルのフィールドワークから
- 15 地球温暖化と人類社会
- 1.「人類世」という視点
- 2.気候変動と災害
- 3.地球温暖化と国際政治
- 4.気候変動とヒト学
- 5.おわりに
アイデアを持つこと、出すこと
アイデアを持つこと、出すことについての本は多いが、次の4冊に目を通してみる。少し多いが、読み飛ばすこともイメージ作りだ。
- アイデアのつくり方:ジェームス W.ヤング
- IDEA FACTORY 頭をアイデア工場にする20のステップ:アンドリー・セドニエフ 1082
- アイデア・バイブル:マイケル・マハルコ
- 言葉でアイデアをつくる。―問題解決スキルがアップする思考と技術:仁藤 安久
アイデアをカタチにすること
実際は、アイデアをカタチにする過程が重要だ。カタチとしては、「言語」、「デジタルソフト」、「ハード」、「制度・行動」等が考えられるだろう。カタチにするためには「思考」と「協同」が重要だろうか。
ところで最近、私は改めて気がついたのだが、「思考」や「協同」を経てカタチにたどり着くには、その過程でうまくいかないことに対する自分のイライラを克服すること、というより、イライラを少し突き放してやりつつあることを投げ出さないこと、あるいはイライラに彩られた試行錯誤を楽しむことが重要かなということである。継続が重要だというより、イライラがあってこそ到達できるということだ。もっともなかなかうまくはいかないが、ここでは従前から馴染みのある次の3冊を挙げておく。
- 創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ:中尾政之
- トリーズ(TRIZ)の発明原理40 あらゆる問題解決に使える科学的思考支援ツール:高木芳徳
- アイデアの99%―「1%のひらめき」を形にする3つの力:スコット・ベルスキ
アコーディオンを利用した詳細目次を挙げておく。
上記の7冊については、追って順次「要約と目次」を作成するが、このページが長くなるので別稿にしよう。本の入れ替えもあるだろう、「アイデア大全」はなぜ外したのだったかなあ。
次に「アイデアをカタチにする」という面から分析する「法務」と社会(外部世界の問題を検討しておく。
「アイデアをカタチにする」仕事を支援する法務の仕組み作り
弁護士として「アイデアをカタチにする」仕事を支援する法務ができないかと考えている。これは、通常の弁護士がする法律事務を踏まえつつ、より不定型な(創造的な)ビジネス分野に関わろうということだ。
このアイデアは6年以上前に一度頭を過ったようだが、そのままになってしまった。実はこのようなことを考えていたことも忘れていたのだが、思いつく必然性があったのであろう。全然まとまっていないが、「アイデアをカタチにする_支援法務」を参照していただきたい。
社会制度を改革するアイデア
社会制度の改革
私が若いころは、「過剰」な政治の時代であり、私は一時期から「政治」とは、弁護士の仕事と関係する限りで関わりそれ以上にはみ出さないこととし、以後、基本的にそのようにしてきた。投票はしている。
ただ最近は、「政治」の変質が目に余るようになったので(「啓蒙思想2.0」参照)、私は改めて「政治」を含む社会制度の改革について、提言・実現する必要があるのではないかと考えるようになってきた。「遅れてきた元青年」である。とはいえ、すぐに用意できる現実的な提言があるわけでもないので、しばらく準備をしたいと思っている。
私がこれまで何らかの関与をしたのは、せいぜい次のとおりだ。
政治資金規正法の改正提言をした。「その内容は、「自由と正義」の論文を参照されたい。同時に、公職選挙法の改正提言もした。
太陽光発電設備を規制する条例策定に関与した。
小澤事件について指定弁護士として関与した。
その他は、細々とした事案である。。
ただ今は、もっとも大切なことは地球環境と資本主義の問題だと考えている。私が少しひねくれているのは、地球環境を守ることに焦点を当てるのではなく、人が地球への過剰な負荷を掛けることをやめなければ人(文明)は滅亡し、それと関係なく地球の自然は繁栄するだろうと考えていることだ。地球は強靱だ。資本主義(産業社会)も、有り余る(偏在する)財・サービスの取り合いにうつつを抜かすのではなく、地球への過剰な負荷を掛けるることをやめることに能力を費やさなければ、財共々なくなりますよ、あの世には持って行けませんよということだ。
「社会制度を改革する」方法と理論
これについては数理的な分析を含め、非常に有効な方法と理論が生み出されつつあると理解している。ゆっくりと整理していきたい。
アイデア倉庫
ところで、アイデアの湧出を活性化するアイデアツールを集めた本(内容によって「アイデア・デザイン編」、「IT・AI編」、「経営編」、「心身の向上技法編」、「世界の構造と論理編」、及び「冷水編」に分けています。)を整理した「アイデア倉庫」を作成している。これはかなり前の整理なので、補足しつつ、重要な本については、適宜紹介していきたい。