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「本_を読む」(本が読めない)問題への対応_試論

目次

「本_を読む」(本が読めない)問題とは?

私の手元にはデジタルで9000冊以上の本がある(語学書、若干の漫画も含む。)が、この「本が読めない」。1日1冊目を通しても20年以上かかる量から任意の本を選択することも大変だし、そもそもデジタル本は目を通すのは簡単だが「読みにくい」。
読みにくい本の大部分は、文・パラグラフや章節項の関係が整序されず、不要なものも含めて曖昧なまま羅列されていて、内容理解より苛つきが先に来る類の本だ。「本_を読む」ことの最大の難点は、そのような本の言語空間を論理的に辿ることである。ということは、論理を追うことが不可欠な、哲学書、思想書が、「読めない」「読みにくい」ことになる。
文学書の多くは、「整序されず不要なものも含めて曖昧なまま羅列されている」言語空間を彷徨することが楽しい。また、実務書、自然科学書、法律書の多くは、文・パラグラフの情報を読み取ることで足りる場合が多い。社会科学書の多くは、社会的実態、データを参照するので、論理は二の次になる。
一番の問題は、概念を叙述する哲学書、アイデアを元に概念を叙述する「思想書」ということだ。
このような「本_を読む」(本が読めない)問題は、「国語問題」と「記号接地問題」に分けて考えることができる。以下現時点(25/11/23)での試論をまとめておく。

国語問題

国語問題1 本(文章)を構成する要素と接続関係

本(文章)を構成する要素

本(文章)のミクロの単位は、「単語」、「文節」、「文」である。「文」は、主語・述語を含む。
「文」をまとめた「意味」の単位を、「段落」、「パラグラフ」とする。「段落」は一字下げで表示される形式的な単位であり、「パラグラフ」は「1つのトピック(主張)のみを含む」とされることが多い。
これらをまとめた本(文章)のマクロの単位は、章節項である。
「段落」、「パラグラフ」、章節項の内容を内容を端的に表すタイトルを「見出し」という。
ここはこれだけで通過するが、文については「文とは何か 愉しい日本語文法のはなし:橋本陽介」を紹介しておこう。

接続関係

「文」より大きな単位相互の関係を接続関係と称する。接続関係は、接続詞や接続語尾を付加して表現しようとすることが多いが、その使用が適切であるかは別問題である。
まずは「論理トレーニング101題:野矢茂樹」、「文章は接続詞で決まる (光文社新書):石黒 圭」の接続表現(接続詞)の分類を掲載する。昔から接続詞の部分を空欄にして入れさせる国語の問題があるが、多くの場合、「語調」で入るものもあるので簡単ではない。野矢もよくそれをさせ、私も昔それをした記憶があるが、すぐに嫌になってしまった。

野矢の分類
接続関係主な接続表現概要
付加そして、しかも独立した論点を並列的に付け加える。「しかも」はより強くたたみかける(累加)。
理由なぜなら主張の根拠や理由を示す。
例示たとえば具体例を挙げて主張を分かりやすくする。
転換しかし、だが主張の方向性を変える。逆接。
解説すなわち、つまり同じ内容を別の言葉で言い換えて説明する。「つまり」は結論的にまとめるニュアンスを持つ。
帰結だから、したがって、それゆえ根拠から結論を導き出す。
補足ただし主張に対して例外や補足的な条件(ただし書き)を加える。
石黒の分類

論理の接続詞

  • 順接の接続詞
  • 「だから」系――原因─結果の橋渡しに活躍
  • 「それなら」系――仮定をもとに結果を考える
  • 逆接の接続詞
  • 「しかし」が続く文章は読みにくいか
  • 「しかし」系――単調さを防ぐ豊富なラインナップ
  • 「ところが」系――強い意外感をもたらす
    整理の接続詞
  • 並列の接続詞
  • 「そして」系――便利な接続詞の代表格
  • 「それに」系――ダメを押す
  • 「かつ」系――厳めしい顔つきで論理づけ
  • 対比の接続詞
  • 「一方」系――二つの物事の相違点に注目
  • 「または」系――複数の選択肢を示す
  • 列挙の接続詞
  • 「第一に」系――文章のなかの箇条書き
  • 「最初に」系――順序を重視した列挙
  • 「まず」系――列挙のオールマイティ
    理解の接続詞
  • 換言の接続詞
  • 「つまり」系――端的な言い換えで切れ味を出す
  • 「むしろ」系――否定することで表現を絞る
  • 例示の接続詞
  • 「たとえば」系――抽象と具体の往還を助ける
  • 「とくに」系――特別な例で読者を惹きつける
  • 補足の接続詞
  • 「なぜなら」系――使わないほうが洗練した文章になる
  • 「ただし」系――補足的だが理解に役立つ情報が続く
    展開の接続詞
  • 転換の接続詞
  • 「さて」系――周到な準備のもとにさりげなく使われる
  • 「では」系――話の核心に入ることを予告する
  • 結論の接続詞
  • 「このように」系――素直に文章をまとめる
  • 「とにかく」系――強引に結論へと急ぐ
もっと簡明に把握する

接続関係は、もう少し大きな単位で考えた方がいい。「大人のための国語ゼミ:野矢茂樹」を参考に接続関係等について注意すべき次の点を指摘しよう。①は書くことだが、読む場合もそれに注目しよう。

①書く前の「下ごしらえ」
  1. よけいなことは書かない: 文章の主題を明確にし、それと関係ない話題(脱線)は、たとえ言いたくても潔く切り捨てる。
  2. 話題ごとにまとめる: 関連する内容は一箇所にまとめる。複数の場所に分散させると、読み手の理解を妨げる。
  3. 書く順序に注意する: 全体の骨組みが明確になるように、話題を論理的な順序で配列する。最初に全体の構成を予告することも有効である。
**②接続関係を3類型に分類する

グループ1は「情報を追加したり、別の角度から説明したりする際に用いられる基本的な接続関係」、 グループ2(逆接)の「「逆接」とは、単に反対の意味をつなぐだけでなく、二つの内容が何らかの形で相反する場合に用いられる広範な概念である」、 グループ3は「論理的な文章構成、特に因果関係や前提条件を明確にする上で極めて重要な接続関係」である。

  • グループ1:付加・選択・換言・例示
  • グループ2(逆接):対比・転換・補足
  • グループ3:条件・譲歩条件・理由・帰結
    グループ3を詳述すると
  • 条件 ある事柄(A)を仮定した場合に、別の事柄(B)が成り立つ関係を示す。英語の “if” に相当する仮定の話である。
  • 譲歩条件 ある事柄(B)に反するような条件(A)を仮定しても、なおBが成り立つことを示す。英語の “even if” に近い。
  • 理由 ある主張(A)がなぜ成り立つのか、その根拠(B)を説明する関係を示す。
  • 帰結 ある事柄(A)が実際に起こり、その結果として別の事柄(B)が引き起こされた関係を示す。「条件」が仮定の話であるのに対し、「帰結」は実際に起こったことを示す点で異なる。
③事実・考え(推測・意見)の区別と事実の多面性について
区分定義
事実その正しさがすでに確定していることがら。
考え推測: 事実だと思われるが、まだ不確かであることがら。
意見: あることがらに対する価値評価、規範、「どうすべきか」という態度の表明など。
事実の多面性
事実と意見の区別は重要だが、自然科学以外の領域では、その区別は単純ではない。
  • 見方の影響: どんな事実描写も、必ず特定の見方や視点の影響下にある。
  • 「ものは言いよう」: 同じ事象でも、表現によって全く異なる印象を与える。
  • 多面性の認識: 重要なのは、唯一の客観的事実と複数の主観的意見が存在すると考えるのではなく、「事実そのものが多面的である」と認識し、他の見方はないかと常に考える感受性を持つことである。
文章の幹を捉える要約

要約は、単に文章を短くすることではなく、「文章の枝葉を切り取り、幹だけを残す」作業である。

  • 文章の構造: 文章を木に喩え、幹(中心的主張)と枝葉(具体例、補足、説明、横道など)を区別する。
  • 要約の下準備(切って・つないで・書き直す):
    • まず文章全体を読み通し、文章が答えようとしている問い()を捉える。
    • 切り取る部分: 具体例、補足説明、横道への脱線、繰り返し、導入部、解説などを候補とする。根拠はケースバイケースで判断する。
    • 残す部分(幹): 文章の「根」に直接答えている部分を中心的主張として残す。
  • **要約の確認:最終形を確認する
⑤主張の根拠について

意見や推測といった「考え」を述べる際、それを支える「根拠」がなければ、その主張は単なる独断や憶測に過ぎない。根拠を提示することこそが、主張に客観的な説得力を与えるための必須条件である
「理由」「原因」「根拠」の区別*

  • 理由: 「なぜ?」という問いに対する答え全般を指す、最も広い概念。
  • 原因: ある事象が「なぜ引き起こされたのか」という、物事の仕組みや因果関係を説明するもの。(例:「なぜ鼻水が出るの?」「花粉が飛んでいるからだ」)。
  • 根拠: ある主張が「なぜそう言えるのか」を示し、その主張の説得力を増すために述べられるもの(例:「なぜ歌舞伎を見るべきなの?」「日本の代表的な伝統芸能だからだ」)。
    これらの概念は重なり合うことがある。例えば「台風が来る」という一つの事実は、「なぜ運動会が中止になるのか?」という問いに対しては物理的な原因となり、「なぜ運動会が中止になると考えるのか?」という問いに対しては、その推測を支える論理的な根拠となる。同じ事象が問いの立て方によって異なる役割を果たすことを理解することが、より深い分析につながる。

国語問題Ⅱ 本(文章)の類型化と読み方

本(文章)の類型化

本(文章)を類型化すると次の表のようになるだろうか(With Gemini)。ただし表の下の説明は十分に熟していない。

類型最も重視される要素副次的な要素主なジャンル例
1. 問題解決型解決・手法問題・根拠ビジネス書、マニュアル
2. 論証・実証型根拠・事実仮説・結論学術書、科学書、ルポ
3. 思考プロセス型思考・問い視点哲学書、評論、批評
4. 体験ナラティブ型経験・事実教訓自伝、歴史、体験記
5. 感性・共感型感想・情景共感エッセイ、詩歌、随筆
6. 葛藤・解決型感性・経験共感・教訓小説
【問題解決型】(How-to / 実用書)
読者が抱える悩みや課題を解消することを主目的とした記述スタイルである。最も構造が明確で、ビジネス書や実用書に多く見られる。
  • 基本構造: [問題] → [原因] → [解決] → [手法]*
    【論証・実証型】(Why / 学術書・科学書)
    ある説や真理を証明するために、客観的な事実を積み上げるスタイルである。著者の主張の正当性が最重要視される。
  • 基本構造: [仮説] → [根拠] → [反証への対処] → [結論]
    【思考プロセス型】(What if / 哲学・思想・評論)
    答えそのものよりも、答えに至るまでの「考え方」や「問い」を共有するスタイルであるす読者の脳を揺さぶることが目的か。
  • 基本構造: [問い] → [思考] → [新たな視点]
    【体験・ナラティブ型】(Story / 自伝・ノンフィクション・歴史)
    事実や出来事を時系列や文脈に沿って記述し、そこから教訓や情緒を引き出すスタイルである。
  • 基本構造: [経験] → [事実] → [変化] → [教訓]
    【感性・共感型】(Feel / エッセイ・詩歌)
    著者の内面的な動きや、対象に対する主観的な感じ方を共有するスタイルである。
  • 基本構造: [対象] → [感想] → [情景] → [共感]
    【葛藤・解決型】(Feel / 小説)
  • 基本構造: [情景] → [仮想] → [経験] → [共感]

本(文章)の類型に応じた読み方1

このように本(文章)の類型化すると、類型的に読むのが困難な本は、「思考プロセス型」の「哲学書、評論、批評」、そして直接は挙げていないが、「感性・共感型」のエッセイ的な思想書である。
これらについて、「「国語問題1 本(文章)を構成する要素と接続関係」で指摘した点を踏まえ、読み込んでいけば、まともな本であれば何とかなるか。ただ一点指摘すれば、そのテキストはまともなのかということである。
まともかということはまずは、「国語問題」である。特に「 よけいなことは書かない」、「話題ごとにまとめる」「書く順序に注意する」というあたり前のことが履行されているかということである。「思考プロセス型」の哲学書、「感性・共感型」の思想書で、私の「問題解決」に資する本は多くはないから、あたりまえのことが履行されていない本は、特段読む理由がない限り、読むのをやめるというのが正解だろう。

本(文章)の類型に応じた読み方2…翻訳書の考え方

私が読む本の多くは「翻訳書」であるが、これまではその本が読みにくいと「翻訳が…」ということが多かった。確かに翻訳書では、「単語」レベルでどういうことだろうということが多い。そういう場合は、英語版が安ければそれを購入し、確認すればいい。あと翻訳書は、サービス精神なのか、ページ埋めなのかはわからないが、「 よけいなこと」が(例示かもしれないが)多い。
ただ「難解な本を読む技術 (光文社新書):高田明典」は次のように指摘する。
「巷で言われる「翻訳が悪い」という問題は、読解においてそれほど大きな障害にはならない。

  • 翻訳の質: 名著とされる本は相応の翻訳者が担当しており、総じて質は高い。日本語として不自然に感じられる場合も、むしろ原著の単語に忠実であろうとした結果であることが多い。
  • 文脈理解の重要性: 専門的な研究者でない限り、翻訳で思想を理解することにほとんど問題はない。重要なのは、単語の正確さよりも文脈や全体像を理解することであり、これは原著で読んだとしても同様に必要とされる。
  • 翻訳の利点: 日本は質の良い翻訳が豊富に行われる「文化先進国」であり、その利得を享受しない手はない。原著を読むには多大な時間がかかるため、効率の観点からも翻訳を読むほうが優れている。」。
    そうかもしれない。
    ただ、特に翻訳書で露わになるのだが、「本_を読む」(本が読めない)問題には、「記号接地問題」という問題がある。
    記号接地問題に入る前にここら当たりの議論の参考となる上記の「「難解な本を読む技術 (文社新書):高田明典」を紹介しよう。

記号接地問題

記号接地問題に向き合った経緯

サイト全体の構成(固定ページのコンテンツブロック)を見直しつつ、NotebookLMを利用して本を要約する作業をしている中で、改めて「本_を読む」(本が読めない)問題に向き合い、「誤読と暴走の日本思想~西周、福沢諭吉から東浩紀、落合陽一まで~ (光文社新書):鈴木 隆美」に、偶然、行き当たった。

著者が同書で取り上げた哲学者、思想家は、欧米語に記号接地できない状況で、翻訳語を利用し(誤読し)て独創的な日本思想を形成(暴走)しているという見立てだ。著者が取り上げた誤読・暴走する福沢諭吉・中江兆民・西田幾多郎・和辻哲郎・中沢新一・東浩紀のうち、今後私が日本文化論として読む可能性があるのは、福沢諭吉・中江兆民・和辻哲郎ぐらいだろうか。後は私の関心をひかない。
そして同書での私の関心は、「概念」を導入・作成した西周と、生成AIの「伝道師」である落合陽一に向いている。西周は、古本で「日本の名著 (34) 西周・加藤弘之 (中公バックス)」を購入した。「百一新論」が収録されている。落合陽一は何冊か購入したが、今のところ「当たり」はないか。

記号接地問題

私がこれまで「本_を読む」の「Mのコメント」に「言語空間」、「位置付け」を設けて問題にしようとしていたことは、同書で著者が問題とする「記号接地問題」と重なる。本来の「記号接地問題」は、「AIが扱う記号にどうやって実世界の感覚や経験に基づいた『本当の意味』を持たせるか?」という課題であるが、著者はこれを明治以降の、欧米語及びそれで表現される文化の、日本語への翻訳と移入、理解に重ねる。「AIが扱う記号」で生じる問題は「外国語」でも同様であるということだ。
しかしこれは我が国の明治以降の欧米語の翻訳の場面だけでなく、およそ自国語、特に抽象的概念でも同様に生じることだろう。私が本を読んでもすぐには飲み込めない場合に、その本の「言語空間」、「位置付け」として解明したかったのは、その本の「記号接地問題」といえる。
そして日本語での抽象概念の使用は、明治期に初めて生じたことではなく、日本で文字(漢語)が使用されてから、政治制度、漢籍、特に仏教語の理解の過程で生じていた。明治期までには、それが日本語に相応に血肉化していたとはいえる。
また明治期に翻訳された欧米語も、神を前提としないプラトン、アリストテレスが切り開いた概念世界、神を前提とするスコラ哲学、それを基本から考え直しとされるデカル以降の近代哲学(と言ってもデカルトは神の証明に心を砕いており、デカルトの新しさは検討の余地がある。)を経て創作されたものであり、「文化的接木」も単純ではない。
今後の生成AIは、これまでの言語の「記号接地問題」をいったん白紙にし、AIの「記号接地問題」として捉え直すということもありうるかもしれない。要は、いままでの難解で煩瑣な概念整理を棚卸して再生する可能性があるということだ。

ところで「Mのコメント」の「言語空間」と言っても、「言語空間」という用語はあまり一般的ではない。私は、対象となる文章や本に表示された固定された言語総体を「言語空間」と呼ぶことにする。そしてそれを読む私には、脳から取り出される言語情報である「言語世界」があり、社会には、様々な要素(人の脳、表示・固定された言語等)から構成される「言語世界」がある。

したがって私がある書物を読む(「言語空間」を解読する等)場合、個・母語圏の「言語世界」の中での「位置付け」が問題となる。対象が翻訳書である場合、その書物の言語空間は、個・母語圏・翻訳語圏の「言語世界」の中での「位置付け」が問題となる。母語圏・翻訳語圏が独立に成立した語圏である場合(欧米語圏、漢語圏、日本語圏)、理解困難な問題が多い。

そのため「Mのコメント」の「言語空間」、「位置付け」を「言語空間の接地問題」とし、それを「批判的思考」で検討するという段取りにしてみようか。すぐに変わるかもしれないが。
当面ここが「本丸」だ。しばらく試行錯誤が続くだろう。
「記号接地問題」以前の「本が読めない問題」は前述した。

今後の課題

これから、生成AIを利用することで、「本_を読む」(本が読めない)問題にどのように対応できるか。
私の基本的なツールは、NotebookLMによる、「要約」である。これで何回か試行錯誤することによって、これまで検討してきた「国語問題」の多くをクリアすることができそうだ。ポイントは、何回も試行錯誤することによって論理的な要約に達することだ。ただ今はまだそれができていない(とにかくサイトの整理が先決だ。)。
この「本_を読む」ことを生成AIと共に通過すれば、私の「創造」の世界が開けるだろう。今後が愉しみだ。

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