人間にとって法とは何か_への道標
書誌_人間にとって法とは何か:橋爪大三郎

短い紹介と大目次
短い紹介
本書は、法と個人の関係、そして公共性の問題を探求することを目的としている。全体は四部構成で、「法の原理」「法の歴史」「日本人と法」「未来を構想するために」という主要なテーマに分かれている。特に序論では、法を「強制をともなったルール」と定義し、公共性とは個人が幸福を追求する上での調和を見出すための「社会的技術や制度の積み重ね」であると述べている。また、法と道徳の違いや、「法の強制説」と「法のルール説」の対立といった法哲学上の重要な論点にも言及し、近代法の原則や、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など主要な宗教における法の考え方を歴史的に考察することで、多角的に「法」の現象にアプローチしようとしている。法社会学ではなく、社会学者が法を考察するというスタンスは聞くべきものがある。
大目次
- プロローグ 講義を始めるにあたって
- 第Ⅰ部 法の原理―法はなぜ必要なのか
- 第1章 法とは何か
- 第2章 ハートの法理論
- 第3章 近代法の原則とは何か
- 第Ⅱ部 法の歴史―古代宗教と法
- 第4章 ユダヤ教と法
- 第5章 キリスト教と法
- 第6章 イスラム教とイスラム法
- 第7章 仏教と法
- 第8章 儒教と法
- 第Ⅲ部 日本人と法―法感覚を鍛えるために
- 第9章 日本社会と法
- 第10章 明治国家と法
- 第Ⅳ部 未来を構想するために―法と自由をめぐるいくつかの問題
- 第11章 民主主義とリバタリアニズム
- 第12章 国際社会と法
- あとがき
一口コメント
要約と詳細目次
『人間にとって法とは何か』に関するブリーフィング・ドキュメント
要旨
本書は、社会学者である橋爪大三郎氏による法に関する講義録であり、法の本質、歴史的変遷、そして現代日本社会における法の役割と課題を多角的に論じている。中心的な主張は、法を単なる権力者の「強制」ではなく、市民が自生的に生み出した「ルール」として捉え直すことの重要性にある。この「法のルール説」に立ち、H・L・A・ハートの法理論(一次ルールと二次ルールの結合)を援用しながら、法の構造を解明する。
本書の大きな特徴は、法の起源を世界の主要宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教、儒教)にまで遡り、それぞれの宗教が育んだ独自の法感覚が、現代の各文明圏の社会構造や思考様式をいかに規定しているかを鮮やかに描き出している点にある。特に、ユダヤ教・イスラム教における「神との契約=法」という一体性と、キリスト教における「政教分離」が近代国家の憲法思想を生んだという対比は、法の普遍性と多様性を理解する上で極めて重要である。
この世界的な文脈を踏まえ、本書は日本の法感覚の特異性を浮き彫りにする。律令制の導入と形骸化、武家法の台頭、そして村落共同体の「村の掟」が、成文法よりも実質的な力を持ってきた歴史を概観し、日本では「法の支配」ではなく、同調圧力を指す「空気の支配」が社会を動かしてきたと指摘する。明治期に西洋近代法が導入された後も、その根本精神は十分に理解されず、「官/民」という歪んだ公私観や、国会審議を形骸化させる財政投融資などの問題が根強く残っていると分析する。
最終的に、著者はリバタリアニズムの思想をてこに「自由」と「公共性」の再定義を試みる。真の「公共性」とは国家(公共2)ではなく、市民である「公衆」(公共1)にこそ宿るものであり、政府はその代理人に過ぎないと説く。日本人一人ひとりがこの原点に立ち返り、法を自らのものとして主体的に運用し、国際社会の基準と調和した「法の支配」に基づく社会を築き直すことが、現代日本に課せられた喫緊の課題であると結論づけている。
第I部:法の原理—法はなぜ必要なのか
1. 法の定義と本質
法の基本定義
法は「強制をともなったルール」と定義される。この定義には二つの重要な要素が含まれる。
- ルール: 人間が集団で生活する上で、個々の幸福追求が他者との衝突を生まないよう、相互関係をパターン化する秩序や決まり。
- 強制力: ルールに従わない者に対し、力ずくでルールを実現させる制度。この強制力によって裏打ちされたルールが「法」である。
法の正当性
人々が、時に自らに不利益をもたらしうる法の強制力(例:死刑)を受け入れるのは、法がその背後に「正しさ(正義)」を含んでいるからである。法が公平に適用されるという「正義」への人々の承認が、物理的な強制力の根源となっている。
法の本質をめぐる対立
法の二つの要素(強制とルール)のどちらを本質と見るかで、二つの主要な法哲学が対立する。
- 法の強制説(命令説): 法の本質は権力者による「強制」にあるとする考え方。ジョン・オースティンが提唱し、マルクス・レーニン主義の法理論(法は支配階級が被支配階級に押し付ける命令である)と類似する。この立場では、法をより良くしようという動機が生まれにくい。
- 法のルール説: 法の本質は人々が自ら従う「ルール」にあり、強制力はルールから派生するものだとする考え方。H・L・A・ハートが代表的な論者。著者はこの立場を採り、人々が自らルールを生み出すという考え方こそが民主主義の根源であると主張する。
法の理性説(自然法思想)
人間には理性があり、それによって普遍的な法を認識できるとする考え方。
- 起源: トマス・アクィナスのキリスト教神学に由来する。彼は法を「神の法」「自然法」「実定法」の三層構造で捉えた。「神の法」のうち、人間の理性で認識できる部分が「自然法」である。
- 近代への展開: 啓蒙思想の時代に「神の法」が後退し、「自然法」が法の究極的な根拠となった。人間の理性が神の代わりとなり、理性が生み出す自然法によって実定法(国王の法など)を批判する論理が、フランス革命などを可能にした。
- 現代への継承: 「人権」思想は、この自然法思想の現代的な現れである。
2. H・L・A・ハートの法理論
ハートの法理論は、著者が採用する「法のルール説」の根幹をなす。
- 法の定義: 法とは「一次ルールと二次ルールの結合である」と定義される。
- 一次ルール: 人々の行為に直接「責務を課すルール」。どの社会にも存在する、行動の基本的な規範(例:暴力の禁止)。暗黙のうちに従われているルール。
- 二次ルール: 一次ルールをめぐる不確実性を解決するための、ルールについてのルール。これは言語化・明示化されたルールである。以下の3種類がある。
- 承認のルール: 何が法であるかを確定する手続き(例:石碑に刻む、長老に判断を仰ぐ)。
- 変更のルール: 法を改正・廃止する手続き(例:議会による立法)。
- 裁定のルール: ルール違反があった場合に誰がどのように判断するかを定める手続き(例:裁判制度)。
- 法と言語ゲーム: ハートの理論はヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の概念で理解できる。
- 一次ルールは、ルールを意識せずに行われるゲーム(例:草野球)のようなもの。
- 二次ルールは、ルールブックを作成したり、審判を置いたりして、ルール自体を対象とするメタレベルのゲーム(例:プロ野球)に相当する。
- 近代法は複雑な二次ルールを持つシステムだが、法の本質は暗黙の一次ルールにある。これにより、文字を持たない社会の法も不完全なものではなく、法のひとつの形態として捉えることができる。
3. 近代法の三原則
近代法は、刑法、民法、憲法の三つの領域で特徴的な原則を確立した。
- 刑法:罪刑法定主義
- 原則: 「何人も明確な法律の条文にもとづかないかぎり、有罪とならず、処罰されない」。これは、国家権力による恣意的な処罰から市民の自由を守るための根本原則である。
- 関連原則:
- 推定無罪の原則: 有罪が証明されるまでは無罪とみなされる。
- 挙証責任: 有罪であることを証明する責任は国家(検察)側にある。「疑わしきは罰せず」。
- 著者は、日本の「毒入りカレー事件」やオウム真理教関連の裁判を例に、情況証拠のみで有罪判決が下される傾向に疑問を呈し、罪刑法定主義の徹底が日本の民主主義にとって重要だと論じる。
- 民法:契約自由の原則
- 原則: 市民社会では、誰もが誰とでも、どのような契約も自由に結ぶことができ、法はこれを保護する。
- 役割: 個人の自由な意思決定を尊重し、市場経済や結社の自由などを基礎づける。裁判所は、個人間の紛争(契約違反など)を解決するための公的サービスを提供する役割を担う。
- 憲法:政府への命令
- 本質: 憲法は人民が政府に対して宛てた「手紙」のようなものであり、その宛先は人民ではなく政府である。政府が権力を濫用して人民の権利を侵害しないよう、その行動を縛るための最高法規である。
- 役割:
- 権力制限: 政府の権限を定め、それを超える行為を違憲・無効とする。
- 正統性の付与: 人民に支持された憲法に従うことで、政府の統治は「正統性」を得る。
- 憲法と条約: イギリスのように成文憲法がない国でも慣習が憲法の役割を果たす。また、領土の範囲などを定める条約も、国家のあり方を規定する点で憲法と同様の効力を持つ。
第II部:法の歴史—古代宗教と法
1. ユダヤ教と法:「神との契約」
- 宗教=契約=法: ユダヤ教の構造は「神とユダヤ民族との契約」そのものであり、この契約の内容が「法(律法)」である。宗教と法が完全に一体化している。
- 憲法の原型: この「神との契約」というアイデアは、神を「人民が設立した政府」に置き換えれば、近代憲法の発想と酷似している。
- 厳密ルール主義: ユダヤ人は、割礼や食事規定など、生活様式のすべてをルールブック化し、それを神の命令として法制化した。これにより、2000年以上の離散(ディアスポラ)の時代を経ても、民族的アイデンティティを維持することが可能になった。
2. キリスト教と法:「政教分離」の起源
- 律法の相対化: イエスは、ユダヤ教の律法を厳格に守ることよりも、神の「愛」を上位に置いた。イエスを神の子と信じることで、神との契約であった律法は無効化されたと解釈され、キリスト教には独自の法体系が生まれなかった。
- 世俗法への服従: パウロは「地上の権威には従いなさい」と説き、キリスト教徒は非キリスト教徒が作った世俗の法(ローマ法など)に従うことになった。
- 政教分離の確立: これにより、世俗の国家と信仰共同体である教会が分離する「政教分離」の原則が生まれた。宗教戦争の教訓から、信仰の内容を問わず市民として共存する「宗教的寛容」が生まれ、近代国家の基礎となった。
- 憲法思想への貢献: 人間が自ら法(憲法)を制定し、またそれを改正できるという発想は、神との契約をイエスによって「更改」したと考えるキリスト教文明に特有のものである。
3. イスラム教と法:「神の法」の共同体
- ユダヤ教との類似: 宗教が即、法であるという点でユダヤ教と酷似している。
- 法源:
- クルアーン(コーラン): 神がムハンマドに与えた完璧な啓示であり、最高の法源。
- スンナ: 預言者ムハンマドの言行録。
- イジュマー: 法学者の合意。
- キヤース: 類推解釈。
- 二重の幸福論: イスラム法に従うことで、信徒は「地上での幸福」と「天国での幸福」の両方を得られるとされる。
- 近代化の課題: 神が定めたイスラム法(シャリーア)は人間が変更できないため、人間が最高の法規として制定する「憲法」や、利子を前提とする近代的な金融システムとの整合性が難しく、近代化において多くの課題を抱える。
4. 仏教と法:出家共同体のルール
- 出家と在家: 仏教は「出家」を基本とし、出家者の集団(サンガ)と在家の信者とでルールが明確に異なる。
- サンガ(僧伽): 250の厳格な戒律(具足戒)に従う。世俗の法が及ばない自治が認められている。
- 在家: 殺生戒など5つの戒(五戒)があるが、これは努力目標であり、世俗の法に従って生活する。
- ダルマ(法): 仏教における「法」とは、因果律(善因善果、悪因悪果)を指し、自然現象から社会現象まですべてを貫く究極の法則である。これは徹底した個人主義であり、親の因果が子に報いるといった連帯責任の考え方はない。
- 日本仏教の変容: 日本では戒律が正しく伝わらず、僧侶の妻帯が一般化するなど、仏教の原則が曖昧になった。特に浄土真宗は出家主義を否定し、革命的な変容を遂げた。
5. 儒教と法:支配者のための法
- 徳治主義: 儒教は、法による支配(法治主義)よりも、支配者の徳による統治(徳治主義)を理想とする。
- 法の位置づけ: 法は人民を統治するための支配者の命令であり、支配者自身は必ずしも従う必要がない(「刑は士大夫に上らず」)。人民を守るためのものではなく、人民からは嫌われる存在。
- 連帯責任制: 犯罪者の親族や共同体全体に責任を負わせる「連帯責任」が特徴。これは個人の自由や人権思想の発展を阻害する要因となった。
第III部:日本人と法—法感覚を鍛えるために
1. 日本社会における法の歴史
- 律令制の形骸化: 中国から律令制を導入したが、社会構造の違いから機能せず、貴族による私物化(荘園制)によって空洞化した。
- 武家法の台頭: 律令法に代わり、武士団のローカルルール(固有法)が実質的な法となった。鎌倉幕府の「御成敗式目」はその代表例である。
- 村の掟: 大多数の人民が暮らす村落では、律令法も武家法も遠い存在であり、共同体の不文律である「村の掟」(例:村八分)が現実的な規範として機能した。
- 空気の支配: 日本社会では、明確なルールに基づく「法の支配」ではなく、全員一致を前提とし、異論を許さない同調圧力、すなわち「空気の支配」が意思決定を左右する傾向が強い。これは、責任の所在を曖昧にする「本尊秘仏化の法則」にもつながる。
2. 明治国家と法
- 近代法の導入: 明治維新は、地方分権的な幕藩体制を解体し、天皇主権のもとで単一の法が通用する中央集権国家を創設した。その際、ドイツ憲法やフランス民法などを導入したが、その根本精神は十分に理解されなかった。
- 天皇機関説論争: 明治憲法が、天皇を憲法下の機関と見る「立憲君主制」と、超法規的な存在と見る「専制君主制」の二重構造を内包していたため、後に「天皇機関説論争」として顕在化し、日本の方向性を誤らせる一因となった。
- 歪んだ公私観: 明治政府は、天皇を頂点とする「官(公)」が、一般の「民(私)」よりも上位にあるという序列を国民に植え付けた。これにより、真の公共性が育たず、戦後は献身の対象が国家から私企業へとスライドする現象を生んだ。
- 民主主義の不理解:
- 財政投融資: 郵便貯金などを原資とし、国会の予算審議を経ない「第二の予算」が存在することは、議会制民主主義の根幹を揺るがす問題である。
- 多数決と全員一致の混同: 反対意見の表明を保障する多数決と、同調圧力を生む全員一致が区別されていない。
第IV部:未来を構想するために—法と自由をめぐる問題
1. 民主主義、自由、公共性
- リバタリアニズム: 国家の介入を最小限にし、個人の自由を最大限に尊重する思想。徴税を権力の発動とみなし、警察や刑務所までも民営化できると考える。身体(中絶、臓器売買)や財産(所有権、相続)に関する個人の自己決定権を絶対視する。この思想は、日本の社会に欠けていた「国家に自由を渡さない」という覚悟を問い直す上で示唆に富む。
- 公共性の再定義:
- 公共1(公衆): 真の公共性とは、家族の外で他人同士として社会を構成する「公衆(the public)」そのものである。特別な資格を要しない普通の人々が、市場で財を交換し、ジャーナリズムを通じて情報を交換し、任意団体を組織する活動こそが、根本的な公共活動である。
- 公共2(政府): 政府とは、この「公衆」が特定の目的のために設立し、税金を払って雇った代理人(エージェント)に過ぎない。
- 結論: 日本人は「官=公」という明治以来の誤った認識から脱却し、公衆こそが公共性の主体であるという原点に立ち返る必要がある。
2. 国際社会と法
国際化の遅れ: 日本社会の不文律や国内基準が国際基準からズレており、外国人にとって閉鎖的な社会と見なされ、国益を損なっている。国際化の推進は、日本人自身の自由を尊重する住みやすい社会の実現にもつながる。
国際法の性質: 国際法は、上級権力のない主権国家間の慣習法であり、国内法のような明確な強制力を持たない。しかし、ハートの理論によれば、これも法の一形態である。
憲法と条約の関係: 領土の範囲を定めるなど、国家の根幹を規定するのは条約であり、その効力は国内の憲法以上である場合がある。日本は憲法のみを重視し、条約の重要性を軽視する傾向がある。
東京裁判の問題: 事後法で裁くことの是非など法理上の問題はあるが、戦勝国によって確定した判決は戦後の国際秩序の基礎となっており、これを一方的に否定することは非現実的である。日本はこの矛盾の中で、批判的認識を磨き続ける必要がある。
日本の国際的課題:
憲法と国際常識の乖離: 憲法第9条の解釈(特に集団的自衛権の否定)が、国連憲章などが認める国際常識と乖離しており、国際貢献の足枷となっている。
歴史認識問題: 賠償問題などは条約上解決済みとされているが、従軍慰安婦問題などで認識の齟齬が残り、東アジア諸国との関係構築の障害となっている。
- プロローグ 講義を始めるにあたって
- 第Ⅰ部 法の原理―法はなぜ必要なのか
- 第1章 法とは何か
- 1 法とは強制をともなったルールである
- 人間の社会になぜ秩序は必要なのか
- 法と強制力の問題
- 法はなぜ正しいのか
- 2 法の強制説(命令説)vs 法のルール説
- 法の強制説とマルクス主義
- なぜ法のルール説を採るのか
- ルール説による証明
- 3 法の理性説(自然法)
- 「神の法」とトマス・アクィナス
- 神の法から自然法へ
- 人権思想はどこからきたのか
- 1 法とは強制をともなったルールである
- 第2章 ハートの法理論
- 1 H・L・A・ハート
- 法律家の社会的地位について
- 法とは「一次ルールと二次ルールの結合である」
- 二次ルールについて
- 2 言語ゲーム(language game)としての法
- 暗黙のルールと明示化されたルール
- ルールブックがなぜできるのか
- 3 審判のいるゲーム
- 審判とルール
- 審判の役割は命令か
- 1 H・L・A・ハート
- 第3章 近代法の原則とは何か
- 1 罪刑法定主義
- 裁判も処罰もすべて法(条文)を前提とする
- 推定無罪と挙証責任
- 裁判における被告人の権利
- 罪刑法定主義について
- 2 契約自由の原則
- 民法と裁判所の役割
- 3 憲法
- 憲法とは政府へ宛てた手紙である
- 政府の正統性と憲法
- イギリスの憲法の場合
- 1 罪刑法定主義
- 第Ⅱ部 法の歴史―古代宗教と法
- 第4章 ユダヤ教と法
- 1 神との契約
- なぜ「神との契約=法」なのか
- 憲法のアイデアと「神との契約」の類似性
- 2 厳密ルール主義
- ユダヤ教の厳格さ
- ユダヤ人の生活様式はなぜ二千年も保たれたか
- 3 律法と註釈の体系
- ユダヤ教の経典について
- 1 神との契約
- 第5章 キリスト教と法
- 文明論としての「宗教と法」
- 1 個人救済の愛の律法
- イエス・キリストとユダヤ教
- パリサイ派と律法
- ユダヤ教からキリスト教へ
- 2 世俗法と教会法
- ローマ法とキリスト教徒
- 政教分離の始まり
- 3 政教分離と近代国家
- 近代国家の成立とルターのロジック
- 宗教戦争から生まれた宗教的寛容
- キリスト教と議会
- 第6章 イスラム教とイスラム法
- ユダヤ教とイスラム教
- 1 『クルアーン(コーラン)』と法源
- 『クルアーン(コーラン)』とはどんなものか
- 違反と誤審と「二重の幸福論」
- その他の法源―法学者の判断が新しい法源になっていく
- 2 イスラム法共同体
- 法学者と政治的支配者
- イスラム法共同体がなぜまとまるか
- 3 イスラム主義・保守派と改革派
- イスラム原理主義とは誤解の産物である
- イスラム諸国と近代化の問題
- イスラム社会の直面する問題
- イスラム女性とフェミニズム
- 第7章 仏教と法
- 1 サンガのルール
- サンガと戒
- サンガの特徴
- サンガにはなぜ法律が及ばないのか
- 大乗と戒律
- 2 中国仏教と法
- 中国仏教の特徴
- 禅宗について
- 3 日本仏教と法
- 戒律を学ばなかった日本仏教
- 浄土真宗の革命性
- 1 サンガのルール
- 第8章 儒教と法
- 1 徳治主義と法治主義
- 法ではなく徳による支配を
- 中国社会の構造と法
- 連帯責任と宗教における個人主義
- 2 官僚制と律令制
- 武力を排した中国官僚制の歴史
- 支配者のための法
- 1 徳治主義と法治主義
- 第Ⅲ部 日本人と法―法感覚を鍛えるために
- 第9章 日本社会と法
- 1 律令法から中世法、近世法へ
- 律令時代以前の法
- 空洞化する律令制
- なぜ武士が台頭してきたか
- 鎌倉幕府と関東御成敗式目
- 法的根拠から見た明治維新
- 2 一揆と村八分
- 惣村と農民の団結
- 3 法の支配と空気の支配
- 法の支配がなぜ重要か
- 全員一致と「空気」の支配
- 1 律令法から中世法、近世法へ
- 第10章 明治国家と法
- 1 幕藩法と近代法
- 中央集権化と天皇の権限
- 2 明治憲法と法
- 明治維新から内閣制の導入まで
- 天皇機関説論争
- 明治の指導者たちの法律感覚
- 3 法をめぐる日本人の誤解
- 「官/民」とは何か
- 統治権を放棄する日本政府
- 予算問題と財政投融資の矛盾
- 民主主義はどこまで理解されているか
- 1 幕藩法と近代法
- 第Ⅳ部 未来を構想するために―法と自由をめぐるいくつかの問題
- 第11章 民主主義とリバタリアニズム
- 1 リバタリアニズムとは何か
- 反権力としてのリバタリアニズム
- どこまで民営化できるか
- 2 自由の根拠―身体と財産
- 自分の身体はどこまで自由か
- 所有と税と法律と
- 財産相続の問題
- 3 公共性とは何か
- 家族・公衆・ルール
- 公衆とは公共そのものである
- 1 リバタリアニズムとは何か
- 第12章 国際社会と法
- 1 国際社会(international community)とは何か
- 国際紛争は誰が調停するのか
- 慣習法としての国際法
- 2 国際法は法なのか
- 国際法に強制力はない
- 国際法と憲法、どちらが上位か
- 東京裁判の問題
- 国際法は訂正できない?
- 3 日本をとりまく国際法の問題
- 日本国憲法と国際法の乖離
- 歴史認識はどこまで共有できるか
- 日本的常識と国際基準
- 原点から日本社会を築きなおすために
- 1 国際社会(international community)とは何か
- あとがき
Mのコメント(言語空間・位置付け・批判的思考)
ここでは、対象となる本の言語空間がどのようなものか(記述の内容と方法は何か)、それは総体的な世界(言語世界)の中にどのように位置付けられるのか(意味・価値を持つのか)を、批判的思考をツールにして検討していきたいと思います。ただサイト全体の多くの本の紹介の整理でアタフタしているので、個々の本のMのコメントは「追って」にします。