私たちの不安

「決断科学のすすめ」

「決断科学のすすめ」(矢原徹一著)は、「持続可能な未来に向けて、どうすれば社会を変えられるか?」という問題意識にたち、そのためのリーダーを養成しようというプロジェクトのためにまとめられたお薦めできる優れた内容の本であり、いずれ全体について紹介したいと思うが、これに欠けている基本的な問題がある

それは この本の著者が 大学の教員(研究者)であり、かつ対象が大学院の学生であることから、要するに個人が持続的に生活していくためにはどういう活動を営めばいいかという「身過ぎ世過ぎ」の観点が抜け落ちている

それについては様々な方向から考えられるだろうが、「幸福の「資本」論― あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」」(橘玲著)が、クセはあるが、実践的だと思う。ただ多分に主観的な議論なので、我が国の客観的な経済状況を、例えば「日本経済入門」(野口悠紀夫著)で押さえておくと、考えがまとめやすい。もちろんこれらの本の内容には、異論があるのが当然であるが、問題を基本から考えていくのによい。

私たちの3つの不安

たぶん、人にとっては、「身過ぎ世過ぎ」と健康(肥満、病気等)問題が、目の前に垂れ下がっている覆い、あるいはまぶたに突き刺さったとげになる大きな問題であろうが、それを乗り切ったとしても、私たちの不安は解消しないだろう。

一体私たちは何に怯えているのかについて、改めて考えてみた 私たちの3つの不安としてまとめることができよう。私たちの乗り物、入れ物の信頼性である。

ひとつめは、地球環境の問題である。地球温暖化、放射能・化学物質汚染等々。科学技術のコントロールがうまくいかないことによる。

ふたつめは、戦争だ。いくら戦争の大惨事を経験しても、民主主義はなかなかこれを避けられない。むしろ状況は悪化している。

みっつめは、経済-生産と分配の問題だ。どんどん生産性が落ち、労働人口は減り、政府が大赤字を抱えているという我が国の状況は、たまらない。どうすればこれを「身過ぎ世過ぎ」の問題の延長上で解決できるであろうか。

この3つの不安の先に、「持続可能な未来」を作るのは、至難の業だ。その根底には、直観と理性の相克と直観の優位、さらには政治過程における無内容なイメージ戦略の氾濫がある。AさんにもKさんにも、すべての人の子ども、孫のための社会作りを考えてもらいたいのだが。