法律判例の調査

2023-03-20

はじめに

はじめに、私が法律と判例について調べる基本的な方法についてまとめておく。

問題の所在が分かっているときは、後述の<基本書と要件事実>→<判例秘書INTERNET>→<法令検索の補充><判例検索の補充>→<法律判例文献情報>→<東弁・二弁合同図書館>という過程を経て、必要十分な情報を入手する。

その分野にあまりなじみがないときや最新の実務動向を把握しておきたいときは(十年ぐらいはあっという間にたってしまうが、今は十年二昔である。)、日弁連研修叢書の年度版「現代法律実務の諸問題」や東弁弁護士研修センターの「弁護士専門研修講座」の該当する項目を読み、あるいは後述の「日弁連の研修総合サイト」をパソコン上で聴講して、概括的な知識を得てから、上記の調査をする。分野別(例えば、「企業法務」)を概観するために「分野別法律相談の手引」を作成した。

大体はこれで大丈夫だが、もう少し調べたいときは「ーガル・リサーチ第5版」や「律家のためのITマニュアル」を参考にして別の調査をしてみる。

私が弁護士になったころは、図書館に行って「判例時報」の索引(100号ごとにでていたのだったかな)で判例を調べるとか、目に入った本、雑誌を読むとかが、調査のほとんどすべてだったから、大変な時代になったものだ。

しかしこのような調査によって分かることは、あくまで「ルール」や「解釈」だ。「ルール」や「解釈」が分かることと、その紛争の実態、事実が分かることは別の問題だ。そこを弁えないと頓珍漢な法律家になってしまう。

基本書と要件事実

各法律分野の基本書は、誰でも1冊は持っているだろうから、まずそれに目を通せばよい。佐藤優さんの「読書の技法」によれば基本書は奇数冊あった方がいいそうだから、3冊は目を通した方がいいだろう。

その上で、その法律問題、論点の解釈や主張・立証責任がどうなっているかを理解するために「要件事実マニュアル」(岡口基一著)にあたる。「総論・民法1」、「民法2」、「商事・手形・執行・破産・保険・金融・知的財産」、「過払金・消費者保護・行政・労働」、「家事事件・人事訴訟」の5巻に分かれている。

もう少し詳しく調べたいときは、大分古くなったが、「現代裁判体系」、「裁判実務体系」、「新・裁判実務体系」で該当項目を見てみる。

さてこれからが、しっかり調べてじっくり考える本番だ。

判例秘書INTERNET

「基本データベース」は、「判例検索」「解説(コメント)」「現行法令アーカイブ」から構成される。

「法律雑誌、文献全検索」は、「最高裁判所判例解説」、「判例タイムズ」、「金融法務事情」、「労働判例」、「金融・商事判例」、「銀行法務21」、「ジュリスト」、「判例百選」、「法学教室」、「六法全書」、「邦文法律雑誌記事検索」「最高裁判所判例解説」から構成される。

これでかなりのことは分かる。

法令検索の補充

政府が提供している無料の法令検索として、「電子政府の総合窓口 イーガブ」に「法令検索」があり、「所管の法令・告示・通達等」「国会提出法案」が有用である。

その他、「サイトマップ」を見ると、電子政府でどういう情報が提供されているかが分かる。例えば「法令外国語訳データベース」をみると、日本の法令もかなり英訳されていることがわかる。

法令の改廃等を調べたいときは、「原則として、明治19年2月公文式施行以降の省令以上の法令について、制定・改廃経過等の情報を検索でき、また、帝国議会及び国会に提出された法律案や国会に提出された条約承認案件等の審議経過等も検索できる」国立国会図書館のデータベースである「日本法令検索」が利用できる。またここの「リサーチ・ナビ」の「政治・法律・行政」もある。

新しい法令の国会での審議状況(いつ頃成立しそうか)を件検討するには、「衆議院」「参議院」の該当ページを見る。

昔は、パソコンにインストールして法令を検索したが、今は「法令検索」があるので、あまり必要性を感じない。個々の条文解釈については、各種コンメンタールで調べるのは当然だ。

判例検索の補充

裁判所の「裁判例情報」(判例検索システム)」

裁判所が独自に公表する「裁判例情報」である。

トップページで「最近の裁判例」をチェックし、「裁判例情報」(判例検索システム)で検索すればよい。

裁判所判例Watch

裁判所の「裁判例情報」を加工したもので、使いやすい面がある。

法律判例文献情報(第一法規)

法律に関する文献情報が網羅的に検索できる。

「文献編…文献(図書、雑誌論文等)の書誌情報」(一部大学の紀要等がダウンロード可)、「判例編…判例の書誌情報」、「掲載誌情報…雑誌の案内情報」、「発行所情報…発行所の案内情報」から構成される。

東弁・二弁合同図書館

いろいろと調べて必要となった文献が、東弁・二弁合同図書館にあるかどうかが、検索できる。ここで入手できなければ「リーガル・リサーチ第5版」を参考にして、国立国会図書館、最高裁判所図書館、法務図書館等を利用する。「リーガル・リサーチ第5版」には、Kidle本もある。

日弁連の研修総合サイト

ある法律に関わる実務の概要についてその分野に習熟した実務家、学者の講義を聴くことができる。

Posted by murachan54