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老化を考える-1000週間と2年

Introduction

誰でも加齢につれて老いが忍び寄ってくると、「老化」とその先の「死」について考え始める、あるいは頭にちらつくものの、頭から追い出そうとする。いや率直にいえば「老化」は許せても、そして「死」という観念は理解しても、そう遠くない先の現実的な「死」はあり得ないものと考えてしまう。しかし「死」は例外なく誰にもやってくる。「死」はないものとして最後を迎えるのか、「死」を受け入れて最後を迎えるのか。
私も今までは、健康や病気について考えるときは、運動とダイエットが主軸であったが、そろそろ「老化と死」と向き合うべき年齢になってきた。私はあるものをないとして七転八倒するのは嫌なので、「死」を受け入れて最後を迎えたいと思う。
ここでは、そのようなことを考えるため次のメタデータの3冊を取り上げてみよう。実は「老化」を切り取る本もかなり集積しているのだが、ここでは真正面から「死」に向き合っていると思う本を取り上げてみる。

3冊のメタデータ

メタデータ1

Title:限りある時間の使い方 FOUR THOUSAND WEEKS
Author:オリバー・バークマン
Reference: https://www.amazon.co.jp/dp/B0B3MJNC7N

メタデータ2

Title:寿命が尽きる2年前 (幻冬舎新書)
Author:久坂部羊
Reference: https://www.amazon.co.jp/dp/B0BJK1D4MS

メタデータ3

Title:老年の読書(新潮選書)
Author:前田速夫
Reference: https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8R9W6WG

本の森を踏破する

縦走(つながり)とクライミング(登頂)

残された時間ー1000週間と2年

メタデータ1の「限りある時間の使い方」もメタデータ2の「寿命が尽きる2年前」も、誰でも死ぬので死ぬまでの時間には限りがある、その限られた時間をどう送るのかという、極めてまっとうな、しかし誰もが避けて通りたい事実から出発する。
「限りある時間の使い方」は、人の一生はせいぜい「FOUR THOUSAND WEEKS」だ、その中でどのように時間を使うのか、あれもこれも予定をこなすことに焦点を当てても仕方がないね、重要なことを楽しんでやればいいという、極めてまっとうな生き方を勧めるアメリカのベストセラーである。著者は自営のライターでその残された時間は,2000週間ぐらいか?そういう立ち位置を理解して読む必要がある。
そうか、4000週間か。私は……。私はどんなに大過なく過ごしても、まっとうな自分を維持できるのは1000週間だろう。しかし「仕事」は、そんなに遠くない適当な時期に終わるだろうから、すべて時間の使い方は思いのままだ。
そこでObsidianというメモアプリに記載する週間カレンダーの今年(2013年)の1週目を、(1000週ー1週)=残999週としたが、今日(2023年4月3日)現在、残りの週はあっという間に、986週になってしまった。でもどんどん短くなってしまうと焦るのは、「限りある時間の使い方」としては失格である。
「寿命が尽きる2年前」は、残された時間が2年とわかったときに、その残された時間をどのように過ごすかを提案する。著者は、高齢者医療に携わる医師兼小説家であり、多くの高齢者の死を「観察」してきた。その結果、「寿命が尽きる2年前」から、苦痛をもたらすだけの医療に時間を費やしても何の益もないので、その期間を楽しんで生きようというのである。でも「2年前」は分かるのだろうか。
1000週と2年(100週)、面白いのだがこのまま読み過ごしてはまずいだろう。どう整理して考えるか。

老年の読書

「老化と死」について「限りある時間の使い方」と「寿命が尽きる2年前」を基軸として考察するのはとても有益と思われるが、それだけでは潤いがない。当たり前だが、これまで「老化と死」に向き合ってきた人は数多い。「老年の読書」は、もと新潮社の編集者であった著者が、「ギリシア哲学から現代日本文学まで、内外の名著から、より善く老いるための箴言を厳選して懇切にガイドする」。帯には「読まずに死ねない本がある」とあってかっこいい。最初は、キケロやセネカ。引用も多く、これを目に通すだけで済まそうと思う本も多い。後記の詳細目次を見て頂きたい。中国や東洋の古典や仏教書、思想書、宗教書などは、他日を期すそうだ。
私はある時期から「物語」を読まなくなったが、もう一度楽しむ読書もしてみたいと思い始めた。ただそのためにはこれは適当にやり過ごし、「一冊に名著一〇〇冊が詰まった凄い本:大岡玲」で紹介されている本の方に触手が伸びる。これは追って。

抜き書き

ここは追って整理しよう。

眺望(コメント・要約・評価)

「限りある時間の使い方」という本は、部分的には(引用も含めて)読ませる本なのだが、全体の整理が不足していると思われるし(ブログを集積したのかも知れない。)、限りある時間に向き合う人(要するにすべての人)は、年齢、仕事や生活のあり方等々が違うのに、著者はそれを自分の現状から割り切ろうとしているように思える。
そこで4000週間を細分化し、(5歳まではカウントしないとして)①残4000週間(6~25歳)の時期、②残3000週間(26歳~45歳)の時期、③残2000週間(46歳~65歳)の時期、④残1000週間(66歳~)の時期としよう。私は今年最初から残1000週間としたが、少しオマケだ(人によって時期はずれるだろう)。
①期は助走、迷走しつつ物事を身につける時期。②期は伸び盛りなのだから、あれもこれもすべてやればいいと思う。③期は一番難しい時期だ。それまでの経験を基盤にして「観念的」な自己は拡散するが、肉体的,そしてそのままでは精神的にも衰微するので、適宜補っていかなければならない。この時期かなりみっともないことになる人も多い(私も少しそうだったかな)。著者の意見が一番参考になる時期だろう。
④は、やりたいことだけやればいい。ただ、それは「常によい姿勢を心掛け、筋力の低下と関節の 拘縮を防ぐために、毎日、体操をしたり、ジョギングをしたりという努力をし、暴飲暴食を避け、喫煙や飲酒、紫外線など、老化を早めるものを遠ざけ」ることで、体と頭のメンテに心掛けつつ「好きなこと」をするということだ。この時期を用意するのも③期の重要な役割だ。そしてこの期中で「寿命が尽きる2年前」になると(要は(短期間では回復しない)病で病床に伏したり、そのような診断があったり、上記のメンテができなくなったり、自然と痩せてきたりした時だろう。)、その時は、何にもとらわれず「最後の2年間」を送るようにしよう。
以上は平均的なモデルなのでそこからはずれる人も多いだろう。でも死ぬときは一人だということに向き合えば、道は開けるのではと言うしかない。

ところで上記を書いてから思い出したのだが、人の一生を4期に分ける考え方が仏教にあった。人生100年とするなら、1-24が「学生期」25-49が「家住期」50-74が「林住期」75-100が「遊行期」であるということだ。何となく上記の私のt分け方と似ているような気がする。

次の縦走(つながり)

さて、今私は、④に乗り出したのだから、やるべき仕事の他は、上記のメンテをしつつ「好きなこと」をしよう。
ポイントは「プチ創造」だ。近場の山の登山も再開しよう。「一冊に名著一〇〇冊が詰まった凄い本:大岡玲」で紹介されている本も読もう。絵も見よう(「観察力を磨く 名画読解 (早川書房) :エイミー・E・ハーマン」)。
身のまわりの放っておくと不愉快になるITやAI技法にもゆっくり取り組もう。
飼い始めて8ヶ月ほどになるコザクラインコのソラちゃんとももっと仲良くなろう。野菜や花を作ろう、雑草や虫もよく観察しよう。etc…

著者サイドのコメント

限りある時間の使い方

人生はたった4000週間、限られた時間をどう過ごすか!?
人の平均寿命は短い。ものすごく、バカみたいに短い。80歳まで生きるとして、あなたの人生は、たった4000週間だ。
「時間が足りない」なんて、何を今さらと思うかもしれない。いっぱいになった受信トレイに、長すぎるやることリスト。ワークライフバランスに、SNSの際限ない誘惑。
もちろん世の中には、生産的になるための「ライフハック」があふれている。けれど、ライフハックを駆使したところで、たいてい状況は悪くなるだけだ。
焦りはさらに増していき、人生の大事な部分には、いつまでたってもたどり着けない。さらに、日々の時間管理に追われていると、本当に大事な問いが見えなくなる。
それは、自分の限られた4000週間を、いかに過ごすかという問いだ。
本書は古今の哲学、心理学、スピリチュアル思想を駆使し、ウィットに富んだ語り口で、時間と時間管理を実践的に、そして深く問い直す。
「すべてのことを終わらせる」という強迫観念を捨て、自分の有限性を受け入れたうえで、そこから有意義な人生を築く方法を紹介する。
本書を読めば時間に対する見方が変わり、さらには生き方が変わるだろう。
全米衝撃のベストセラー、ついに日本上陸!

寿命が尽きる2年前

2年後に死ぬとわかったら、あなたは何を想うでしょう。この時点で〝いつまでも元気で長生き〟という理想の選択肢は失くなります。だが、うろたえ、嘆き続けるわけにもいかない。たった一度の人生を終えるのです。もっと大事なことがあるはずです。人はみな自分の寿命を生きる。そもそも寿命とは何か。戦後一貫して日本人の平均寿命は延びている。自分の寿命はどこまで延ばせるか。「死を受け入れるのはむずかしい」と人は言うが、その達人はいるのか、楽な方法はあるのか。悔いなき人生をまっとうするには?

老年の読書

一度きりの人生、読まずに死ねない本がある。
「死ぬ術は生涯をかけて学び取らねばならないものなのである」(セネカ)、「不知、生れ死ぬる人、何方より来たりて、何方へか去る」(鴨長明)、「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」(井伏鱒二)――ギリシア哲学から現代日本文学まで、内外の名著から、より善く老いるための箴言を厳選して懇切にガイドする。川本三郎氏推薦!

詳細目次

限りある時間の使い方 FOUR THOUSAND WEEKS:オリバー・バークマン

  • 目次
    – イントロダクション 長い目で見れば、僕たちはみんな死んでいる
    – 人生のベルトコンベア
    – やり遂げよう。でも、何を?
    – PART1 現実を直視する
    – 第 1 章   なぜ、いつも時間に追われるのか
    – 時計のなかった時代
    – 永遠を終わらせたもの
    – ある生産性オタクの告白
    – 冷たいシャワーで目を覚ませ
    – 第 2 章   効率化ツールが逆効果になる理由
    – シーシュポスの受信箱
    – 底なしのバケットリスト
    – タスク処理能力には意味がない
    – 便利さは何を奪うのか
    – 第 3 章  「時間がある」という前提を疑う
    – 死へと向かっていく存在
    – 永遠は死ぬほど退屈だ
    – 人生のすべては借り物の時間
    – 第 4 章   可能性を狭めると、自由になれる
    – タスクを上手に減らす3つの原則
    – 完璧主義者は身動きできない
    – 選択肢は少ないほうがいい
    – 第 5 章   注意力を自分の手に取り戻す
    – 現実は注意力によってつくられる
    – ユーザーの意識を乗っとる機械
    – 第 6 章   本当の敵は自分の内側にいる
    – なぜやりたいことをやりたくないのか
    – デジタルデトックスが失敗する理由
    – PART2 幻想を手放す
    – 第 7 章   時間と戦っても勝ち目はない
    – 何が起こってもおかしくはなかった
    – 1日の困難は1日分でいい
    – 第 8 章   人生には「今」しか存在しない
    – 因果のカタストロフィー
    – あらゆる瞬間は最後の瞬間だ
    – 楽しみにしていたことが楽しくない理由
    – 第 9 章   失われた余暇を取り戻す
    – 余暇を無駄にしない唯一の方法
    – 生産性と永遠の救済
    – 人は強制されなければ休めない
    – 何のためでもないことをする
    – 平凡な趣味の反逆
    – 第 10 章   忙しさへの依存を手放す
    – なぜ現代人は本が読めないのか
    – 忙しさ依存の悪循環
    – 第 11 章   留まることで見えてくるもの
    – 見ることと待つこと
    – 忍耐を身につける3つのルール
    – 第 12 章   時間をシェアすると豊かになれる
    – デジタルノマドの憂鬱
    – 時間のなかで共にいること
    – 個人主義的な自由の弊害
    – 第 13 章   ちっぽけな自分を受け入れる
    – コロナ禍と偉大なる休止
    – ほどほどに意味のある人生
    – 第 14 章   暗闇のなかで一歩を踏みだす
    – 終わらない準備期間
    – 人生を生きはじめるための5つの質問
    – 「それしかできない」ことをする
    – エピローグ 僕たちに希望は必要ない
    – 付 録 有限性を受け入れるための 10 のツール

寿命が尽きる2年前 (幻冬舎新書):久坂部羊  

  • 目次
    – はじめに
    – 第一章   寿命とは何か
    – ● 寿命の定義
    – ● 寿命の〝寿〟とは
    – ● 寿命の短い人もいるのでは
    – ● 寿命のいろいろ
    – ● 何が寿命を決めるのか
    – ● 老衰で死ぬのだけが寿命か
    – ● 平均寿命より大事な「健康寿命」
    – ● なぜ長生きしたいのか
    – ● しかし、死を受け入れるのはむずかしい
    – 第二章   寿命を延ばす方法
    – ●まずは伝承から
    – ● 次に疑似科学から
    – ● 週刊誌の特集
    – ● 科学的な方法も
    – ● ベストセラー『LIFESPAN』の信憑性
    – ● 可能性のある研究も
    – ● 延ばすことより、縮めない方法
    – ● 寿命を縮める病気 ①がん
    – ● 寿命を縮める病気 ②心筋梗塞
    – ● 寿命を縮める病気 ③脳血管障害 
    – ● 寿命を縮める病気 ④肺炎
    – ● 寿命を縮めるその他の病気
    – ● 寿命は大事にすべし
    – ● 実は寿命は延びている
    – 第三章   寿命に逆らう苦しみ
    – ● 老いを否定するのは負け戦
    – ● がんは最後まで治療すべきか
    – ● がん難民の苦しみ
    – ●〝患者を見捨てない医者〟はヒーローか
    – ●「わたしは長生きしたいので」
    – ● 老化を拒絶する業界
    – ● 恥ずかしいアンチエイジング
    – ● 子どもの欲求
    – ●寿命に逆らう最悪の苦しみ=無益な延命治療
    – ● 寿命に逆らわないことの楽さ
    – 第四章   二年後の死は予測できるか
    – ● 医学的な死の予兆
    – ● 葬祭店のネット情報
    – ● 今は元気でも二年後はわからない
    – ● そろそろ準備をしたほうがよい徴候 
    – ● もしいつ死ぬかがわかったら
    – ● ほぼ二年後の死がわかるケース
    – ●「どうせ死ぬ」を前向きに
    – ● 黒澤明『生きる』の意味
    – ● 一年以内の死を予測して亡くなった内科医
    – 第五章   現代日本は心配社会
    – ● あなたは何か心配していないか
    – ● 数字に惑わされる人々
    – 高血圧だとなぜ悪い
    – ●「血圧高め」というコトバ
    – ● 罪作りな健康診断
    – ● 腫瘍マーカーに翻弄される医者
    – ● がん検診を受ければ安心か
    – ● 私ががん検診を受けない理由
    – ● 検診よりも大事なこと
    – ● 安心は幻想、心配は妄想
    – 第六章   どちらに転んでも悩ましい現代医療
    – ● 医療の進歩がもたらす不安
    – ● 治療すべきか、せざるべきか
    – ● 予防的切除、すべきか否か
    – ● 拡大手術か、温存手術か
    – ● 産むべきか、産まざるべきか
    – ● 胃ろうをする選択、しない選択
    – ● ワクチン接種を迷う人へ
    – ● 子宮頸がんワクチンの問題
    – ● 患者の権利の危険性
    – ● インフォームドコンセントの弊害
    – ● 医療は新興宗教か
    – ●〝医療無神論者〟の自己弁護
    – 第七章   望ましい最期のお手本
    – ● みんなが同じパターンで失敗する最期の迎え方
    – ● 命も過ぎたるは猶及ばざるがごとし
    – ● 不安より感動を=レニ・リーフェンシュタール氏の場合
    – ● 老いて新たに見えてくるもの=水木しげる氏の場合
    – ● これぞ見事な自然死=富士正晴氏の場合
    – ● 名もなき人にも感心させられる
    – ● 無頓着力、満足力、感謝力
    – 第八章   寿命が尽きる二年前にすべきこと
    – ● 父の死の二年前
    – ● 父の残した名言
    – ● 弱みにつけ込むビジネス
    – ●「おびえた人生だったわね」と言われないために
    – ● 具体的にしたらいいこと
    – ● 逆に、しなくていいこと、してはいけないこと
    – ● アリよりキリギリスがお得
    – ● 寿命が尽きる二年前、それは「今でしょ」
    – おわりに
    – 7●参考文献

老年の読書(新潮選書):前田速夫

  • 目次
    – はじめに
    – 一  晴れやかな老年を迎えるために     
    – キケロ『老年について』/セネカ『生の短さについて』     
    – チチェローネの由来      達人の箴言      多忙からの脱出
    – 二  老いの正体、ここにあり     
    – テオプラストス『人さまざま』/モンテーニュ『随想録』/ラ・ロシュフコオ『箴言と考察』     
    – 年寄の冷水      俗人の態度      悲観もせず楽観もしない      痛快な憎まれ口
    – 三  無用者の存念     
    – 鴨長明『方丈記』/吉田兼好『徒然草』/『芭蕉文集』     
    – 世をそむく      わが生すでに蹉跎たり      風羅坊という生き方
    – 四  幸と不幸は 綯い交ぜ     
    – シェイクスピア『リア王』ほか     
    – 世界は舞台      歩く影法師      荒野をさまよう
    – 五  ありのままの死とは     
    – トルストイ『イワン・イリッチの死』/チェーホフ『退屈な話』/正宗白鳥『一つの秘密』     
    – 他人の死と自分の死      こんなふうには生きて行けない      トルストイの家出      未完であること
    – 六  「老いづくり」から真の老いへ     
    – 永井荷風『新帰朝者日記』『日和下駄』『断腸亭日乗』     
    – 老いづくり      蝙蝠傘に日和下駄      偏奇館炎上      敗荷落日?
    – 七  上手に年をとる技術     
    – アンドレ・モロア『私の生活技術』/ケストナー『人生処方詩集』/井伏鱒二『厄除け詩集』     
    – 老年を受け容れる      心の処方箋      ユーモアと平常心
    – 八  死からの呼び声に目覚める     
    – ハイデガー『存在と時間』     
    – 「現存在」とは     「気づかい」と「不安」      良心の呼び声      先駆的決意性      白とシラ
    – 九  残炎の激しさ     
    – 川端康成『眠れる美女』『片腕』/谷崎潤一郎『鍵』『瘋癲老人日記』/室生犀星『われはうたえども やぶれかぶれ』     
    – 観念の淫蕩      被虐と陶酔      やぶれかぶれ
    – 十  いよよ華やぐいのち     
    – 宇野千代『幸福』/瀬戸内寂聴『かの子撩乱』ほか/田辺聖子『姥ざかり』『姥勝手』     
    – 老いの仕合せ      豊満なる生      歌子さん
    – 十一  晩年の飄逸と軽み     
    – 内田百閒『日没閉門』/木山捷平『軽石』/尾崎一雄『片づけごと』『だんだんと鳧がつく』     
    – とは云ふもののお前ではなし      三円で買えるもの      良くも悪くもケリがつく
    – 十二  病いの向こう側     
    – 高見順『死の淵より』/色川武大『狂人日記』/耕治人『一条の光』『天井から降る哀しい音』『そうかもしれない』     
    – 魂よりも食道のほうが      死ぬよりほかに道はなし      生涯を貫いた光     「そうかもしれない」
    – 十三  作家の生死と虚実
    – 古井由吉『白暗淵』ほか/小島信夫『うるわしき日々』/藤枝静男『田紳有楽』     
    – 白い闇      事実かフィクションか      ペイーッ・ペイーッ
    – 十四  老いと時間     
    – ボーヴォワール『老い』/ジャンケレヴィッチ『死』/ミンコフスキー『生きられる時間』/吉田健一『時間』     
    – 老いとは何か      死という未知なもの      有限と無限
    – 十五  死後を頼まず、死後を思わず     
    – 山田風太郎『人間臨終図巻』/岸本英夫『死を見つめる心』/佐野洋子『がんばりません』/キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』/文藝春秋編『私の死亡記事』/富士正晴『どうなとなれ』     
    – 最後の日々      私のままでバアさんに      死後を思わず
    – おわりに──われとともに老いよ
    – 【コラム】 老年には老年の楽しみが 生き物たちの摂理 天晴れな老人たち シルバー川柳の純情 遅咲きの人生 ああ、懐旧 風土のめぐみ

問題解決と創造の知識,本の森

学びを極めたシニアに学ぶ本2冊

学びを極めたと自負していると思われる男女のシニアによる、それぞれ「学び」のエッセンスを主張する2冊の本が目に止まった。これこそが本当の「学び」だと主張している本は世の中に何十冊もあるが、たまたま私とほぼ同年代で、学びの経験を重ねたシニアが、それぞれ目次に学びのエッセンスとなる項目を掲記するという共通性のある本を出していたので取り上げてみた。
1冊目は、「何歳からでも結果が出る 本当の勉強法:望月 俊孝」、2冊目は、「メタ認知で〈学ぶ力〉を高める:認知心理学が解き明かす効果的学習法:三宮真智子」である。
といっても私は無条件でこれらを押す気はない。それぞれ著者が学んだ上で、人に提供している「知的サービス」があまり気に入らない。望月さんの「売り」は、望月俊孝オフィシャルブログ「3つの宇宙法則で魂の次元上昇」Powered by Ameba。三宮さんは「メタ認知」を専門とする認知心理学者であるが、上記の本の「第2部 メタ認知的知識を学習と教育に活かす」の内容、整理の仕方は、「メタ認知」心理学者としての立論としては幼稚に思える。
ただいずれも、How To本として、自分にとっての引っかかりをチェックしてみるという意味はあると思うので、それぞれ目次にある「学び」のチェック項目を掲記しておく。なお望月さんの本の目次の各項目はどちらかが「正しい選択肢」であるとして○と×が付いているのだがそれは省略した。
誰にとっても何個かの項目は参考になるだろう。著者の理由付けを知りたければ、Kindle本に当たられたい。
でもこれを見ているだけでは、「学び」は全然楽しくなさそうだ、

何歳からでも結果が出る 本当の勉強法:望月 俊孝

Reference

目次

  • はじめに
  • 第1章 Start 勉強をはじめるときの「迷い」を断ち切る
  • 01
    • 人は死ぬ間際に「もっと遊べばよかった」と後悔する 
    • 人は死ぬ間際に「もっと勉強すればよかった」と後悔する
  • 02 
    • 勉強は、「完璧」を目指すもの 
    • 勉強は、自分なりの「完成」を目指すもの
  • 03 
    • 最初から「崇高な目的」のために勉強をする 
    • 勉強は「欲望」ではじめて、「やりがい」で続ける
  • 第2章 Plan 学習目標を定め、計画をつくる
  • 04 
    • 学習とは、1つでも多く「間違い」に気づくこと
    • 学習とは、1つでも多く「正解」すること 
  • 05 
    • 試験勉強とは、内容を「読み直す」作業である 
    • 試験勉強とは、内容を「思い出す」練習である
  • 06 
    • 試験を突破する人は、「一夜漬け」の達人である 
    • 試験を突破する人は、「一夜漬け」の真逆である
  • 07 
    • 勉強時間で大切なのは、「長さ」を守ること 
    • 勉強時間で大切なのは、「開始時刻」を守ること
  • 08 
    • 学習量の目安は、長いスパンでざっくりつくっておく 
    • 学習量の目安は、毎日しっかりとつくっておく
  • 09 
    • 「熱意」が、あなたの能力を覚醒させてくれる 
    • 「期限」が、あなたの能力を覚醒させてくれる
  • 10 
    • 勉強は、集中できるまとまった時間でやらないと効果は薄い
    • 勉強は、スキマ時間で積み重ねたほうが効果的
  • 11 
    • 正しい勉強をすれば、最初から楽しくて仕方がない 
    • どんな正しい勉強法も、最初はつらく感じる
  • 12 
    • 問題は、最後に解く 
    • 問題は、最初の段階で一度解いておく
  • 13 
    • 「合格体験談」の逆転ストーリーを100%信じる 
    • 「合格体験談」には、2つの限界がある
  • 第3章 Do 何歳からでも結果が出る一生モノのインプット術
  • 14 
    • 試験で使える記憶術は、時間をかけて習得するべき 
    • 試験で使える記憶術は、たった2行で説明できる
  • 15 
    • 覚えにくい暗記事項は、何度も書いて覚える 
    • 覚えにくい暗記事項は、手書きイラストにして覚える
  • 16 
    • 音で覚えたい場合は、プロが吹き込んだ音声教材を使う 
    • 音で覚えたい場合は、自分で音読してみる
  • 17 
    • よりくわしい説明をされると、記憶量が増える 
    • 背景にある物語を知ると、記憶量が増える
  • 18 
    • 記憶量は、かけた時間に応じて増える 
    • 記憶量は、体感した時間に応じて増える
  • 19 
    • 記憶作業は、一気に集中しておこなう 
    • 記憶作業は、間に睡眠をはさむ
  • 20 
    • 記憶作業を減らすには、覚える項目を絞る 
    • 記憶作業を減らすには、記憶のつながりを増やす
  • 21 
    • 人は「整理されているもの」のほうが覚えやすい 
    • 人は「ごちゃ混ぜのもの」のほうが覚えやすい
  • 22 
    • 年を重ねると、記憶力の低下は避けられない 
    • 年を重ねても、脳はアップデートできる
  • 23 
    • 記憶力を高める必要があるのは、若者だけである 
    • 高齢化社会では、記憶力訓練はラジオ体操のように日常になる
  • 24 
    • 講義メモは、スマホやPCでおこなう 
    • 講義メモは、やはり手書きでおこなう
  • 25 
    • 最初から、大切なところには蛍光ペンを使う 
    • 全体を2回読み直すまでは、蛍光ペンは我慢する
  • 26 
    • 学習ノートは、覚えたいことを自由にまとめる 
    • 学習ノートの理想は、「If-thenモデル」のシンプルなもの
  • 27 
    • 論文口頭試験では、多く論拠を述べたほうが勝ち 
    • 論文口頭試験では、挙げるべき論拠は「3つ」に絞る
  • 28 
    • 究極の読書法は、1分間で本を読み切ること 
    • 究極の読書法は、「9割捨てる」こと
  • 第4章 Check 自分自身で勉強を適切に評価する
  • 29 
    • 本番までに、モチベーションを上げておく 
    • 本番までに、課題の分析力を上げておく
  • 30 
    • ベストを尽くすとは、ひたすらがんばること 
    • ベストを尽くすとは、ベストを数値化すること
  • 31 
    • 勉強の成果は、反省すれば改善される 
    • 勉強の成果は、計測するだけで改善される
  • 32 
    • 常に、ゴールと現状のギャップを意識する 
    • 勉強開始時は、現状の「うまくいった点」だけを見る
  • 33 
    • 「未来の自分はきっと成長している」と考える 
    • 「未来の自分に警告してくれる協力者」を用意する
  • 34 
    • ひたすら新しい単元に進むことを最優先にする 
    • 間違えた問題の解き直しを最優先にする
  • 35 
    • 復習は、同じ教材を繰り返しておこなう 
    • 復習は、同じ教材をほんの少し内容変更しておこなう
  • 36 
    • 練習量と成果は比例する 
    • 先生からのフィードバック環境と成果は比例する
  • 37 
    • 苦手分野は集団クラス、得意分野は個別学習で学ぶ 
    • 苦手分野は個別学習、得意分野は集団クラスで学ぶ
  • 38 
    • 「わからない」と言うのは、不勉強の証拠 
    • 「わからない」と言えるのは、勉強を重ねている証拠
  • 第5章 Improve 勉強法をさらに改善する
  • 39 
    • 勉強のやる気は、自ら奮い起こすものだ 
    • 見るものを変えると、やる気ゼロでも勉強が進む
  • 40 
    • 落ち着いて着席できる状態が、学習力をアップさせる 
    • 動かない状態は、むしろ人の学習力をダウンさせる
  • 41 
    • 20分休憩があったら、スマホを見る 
    • 20分休憩があったら、自然のなかを歩く
  • 42 
    • 勉強中は、よそ見禁止 
    • 勉強中は、「緑の自然」をよそ見する
  • 43 
    • 勉強中は、スマホを時計代わりにする 
    • 勉強中は、スマホを別の部屋に置く
  • 44 
    • どんな場所でも勉強できるようにする 
    • 勉強する「ホームグラウンド」を徹底的につくる
  • 45 
    • イメトレでは、「合格した喜びのなかの自分」を想像する 
    • イメトレでは、「困難を乗り越えている自分」を想像する
  • 46 
    • 勉強からの現実逃避は一刻も早くやめる 
    • 徹底的に逃避することで、勉強の意味が見つかる
  • あとがき 参考文献

メタ認知で〈学ぶ力〉を高める:認知心理学が解き明かす効果的学習法:三宮真智子

Reference
目次

  • はじめに
  • 第1部 メタ認知を理解するための20のトビック
    • 認知とは何か,メタとはどういう意味か
    • メタ認知とは何か
    • メタ認知的知識とは何か
    • メタ認知的活動とは何か
    • メタ認知という言葉が使われるようになった背景
    • 記憶関連のメタ認知(メタ記憶)の発達
    • 理解関連のメタ認知(メタ理解)の発達
    • 「視点取得」とメタ認知
    • 「心の理論」とメタ認知
    • 学習に困難を抱える子どもの支援とメタ認知
    • 協同学習における他者とのやりとりとメタ認知
    • 学習における加齢の影響とメタ認知
    • メタ認知が働かなくなる場合
    • 「不明確な問題」が要求するメタ認知
    • メタ認知を司る脳の部位
    • 自己調整学習とメタ認知
    • 頭のよさ(知能)とメタ認知
    • 意欲(動機づけ)とメタ認知
    • 感情とメタ認知
    • メタ認知の問題点・留意点
  • 第2部 メタ認知的知識を学習と教育に活かす
  • Section1 意識・注意・知覚編
    • 睡眠をとることが頭の働きをよくする
    • 睡眠中にも学習は進む
    • 意識せずに学習できることがある
    • 学習やテストに適した緊張感(覚醒レベル)がある
    • カフェインの覚醒効果を濫用することは危険
    • 音楽で覚醒レベルをコントロールできる
    • 注意を向けなければ,見れども見えず聞けども聞こえず
    • 頭を休めている間に解決策がひらめく
    • 努力せすに長時間,没頭できる状態がある
    • ノートの情報をグループ化しておくとすばやく関連づけられる
    • アンダーラインの活用で重要な点が一目でわかる
  • Section2 知識獲得・理解編
    • 一度に記憶できる範囲は限られている
    • 最初と最後に学習したことは忘れにくい
    • 情報を目立たせると記憶に残りやすくなる
    • 知識はネットワークの形で蓄えられている
    • 覚えたい内容に対して深いレベルの処理をすると忘れにくい
    • 自分に関連づけると覚えやすい(精緻化1)
    • 自分で考えたことや自分で選んだことは覚えやすい(精緻化2)
    • テキストの内容をイラストで表すと覚えやすい(精緻化3)
    • 語呂合わせをすると数字を覚えやすい(精緻化4)
    • バラバラの記号や単語などはストーリーにすると覚えやすい(精緻化5)
    • 環境手がかりを利用すると覚えたことを思い出しやすい
    • 視覚情報を言語化すると記憶が歪む場合がある
    • コンセプトマップを描くことが理解・記情を促す
    • これから学ぶ内容のテーマや要約を先に見ておくと理解しやすくなる
    • テキスト学習には,「SQ3R法」を取り入れると理解・記憶を促す
    • テキストを読みながら聞かされると理解・記情が妨げられる場合がある
    • 習熟度が低い場合には,パフォーマンスの自己評価はあてにならない
    • テストは記憶の定着を促す
  • Section3 思考・判断・問題解決編
    • 思い込みが創造的問題解決を妨げる川
    • 習熟による「慣れ」がよりよい問題解決を妨げることがある
    • 命題論理では「真か偽か」の判断をまちがえやすい
    • 三段論法では結論のもっともらしさに惑わされる
    • 事例の思い出しやすさに惑わされる
    • 最初に目に飛び込んだ数字に惑わされる
    • 「偶然」には気づきにくい
    • 仮説は修正されにくい
    • ストーリーに惑わされると問題の本質が見えなくなる
    • 質問の仕方が答を誘導する
    • 代表値の用い方で判断が変わってくる
    • 因果推理は短絡的になりやすい
    • ・アイデアの量と質とは比例する
    • 「創造性は特殊な才能」という考えが創造的思考を邪魔する
    • 粘り強く考えると,よいアイデアが出るに
    • アイデアをどんどん外化することが発想を促す
  • Section4 意欲・感情編
    • 「この学習は自分に役立つ」ととらえることが意欲を高める
    • 「自分にはできる」と考えると,やる気が出るに
    • ・難しすぎず易しすぎない課題には最もやる気が出る
    • 外発から内発へと,意欲(動機づけ)には段階がある
    • がんばってもうまくいかないことを何度も経験するとやる気を失う
    • 好きで学習していることにご褒美を出されると,逆にやる気がなくなる
    • 学習の成果は自分次第であると考えると学習意欲が高まるい
    • 自分で選べるという感覚がやる気を高める
    • 評価ばかりを気にすると学習における新たな挑戦意欲が低下する
    • 過度にがんばりすぎると,その後しばらく自制心が働かなくなる
    • 自分が学習の主体だと感じれば学習者は能動的になる
    • 多少苦手な科目も頻繁に接していると親しみが湧く
    • 気分がよいと発想が豊かになるい6
    • テスト不安はテスト成績を低下させる
    • 楽観的な気持ちで臨むと学習もうまくいく
    • ネガテイプな感情は書き出すことで和らぐ
  • Section5 他者との協働・コミュニケーション編
    • 他者に教える(説明する)ことは理解を促進する
    • 他者との自由なやりとりは創造的思考を促す
    • あいづちとうなずきがアイテアを引き出す
    • 他者の考えに触れることが発想力を高める
    • 頻繁な発話交替が問題解決のアイデアを出しやすくする凵6
    • 個人思考と協同思考をうまく使い分けることが大切
    • 討論は複眼的なものの見方を助ける
    • 討論でものごとを決める場合,思慮が浅くなることがある
    • 討論では同調圧力が生じることがあるい
    • グループワークで社会的手抜きが生じることがある
  • Section6 行動・環境・時間管理編
    • 自分で自分を条件づけて学習行動を引き出すことができる
    • 他の人が学ぶ様子を見ることは学習行動を促す
    • 大変そうな学習も少しずつに分ければ楽にできる
    • とりあえず学習を始めれば,そのまま続けられる
    • 机が散らかっていると作業効率が落ちる
    • 物理的な学習環境が学習効率を左右するい
    • 学習計画がうまくいくためには,すべきことと所要時間の可視化が必要
    • 環境を変えれば学習行動が変わる
  • 引用文献
  • 索引

プチ創造,本の森

読書メモを作る

Kindle本の読書について

厖大なKindle本を買いながら、なかなか満足のいく読書習慣が定着しない。Real本時代は、積読も多かったが読み始めた本は消化していたように思う。」しかしKindle本はいつまでたっても不満足なままだ。読書メモまでいかない。
このままではあの世まで Kindle 本を引きずっていくことになるので、さてこの辺で、少し読書と読書メモを考え直そう。これも「プチ創造」の一環だ。要するに一つずつ焦点を当てて、「創造」していくことが大事だろう。

読書をどう捉えるか

まず読書について考えよう。 
「読書とは何か 知を捕らえる15の技術」(三中信宏)は数ある「読書本」のなかではきわめてまともな本だと思うが、その詳細は別途検討することにして、ここではかなり以前に読んだそのノード(手掛かり、痕跡)によって「私見」を組み立ててみよう(ちなみに三中本はノードを立論の基本的な概念としている。)。
三中は、読書をする行為を狩猟家ないし登山家に見たてている。狩猟家のことはわからないが(分かる人の方が少ないだろう。)、登山については私は初中級百名山完登者だからそれなりにイメージできる。
登山は高山であればその過程はやはり苦しいが、終わった後は極めて爽快な満足感がある。読書も難解な本はその読解過程はやはり苦しいが、終わった後は極めて爽快な満足感がある。
登山は体を使い読書は頭を使うというイメージがあるかもしれないが、登山も頭を使うし読書も体を使う。いずれにせよ体力を要するし、体が受け止める情報は基本は視覚(画像)でありそれを脳が処理することに違いはない。物理的に移動することによる足の負担は、登山だけだが。
登山は、当然、「登り」と「下り」からなるが、三中読書論の秀逸な点は、最終頁まで読んでいっておしまいではなく、途中の手掛かり、痕跡の再構成を想定している点である。

抽象的に言えば、登山は、物理空間の移動(「登り」と「下り」)とその過程で推測・確認される山全体及び山頂とその眺望全体(山の位置付け)を把握する行為である。移動中には、岩もあれば、沢もある。藪漕ぎもある。その過程から、山全体及び山頂を推測・確認し、眺望も把握できる。
三中は読書を、読書の過程で理解の一部であるノード(痕跡)を刻み、ノードをたがいに結びつける〝連鎖〟としての「チェイン(chain) =鎖」、階層的構造を示す「ツリー(tree) =樹」、そしてより複雑な「ネットワーク(network) =網」に構成する作業と捉え、その過程ではアブダクションが重要な役割を果たすと言っている。これは読書行為の本質を切り取った考え方だと思う。最終頁までの読書の過程で様々な手掛かり、痕跡を獲得し、それをつないで著書全体の言語空間を想定・構成すると考えるのだ。言わば著書の言語空間の移動とその過程で推測・確認される著書全体及び核心の主張とそこからの眺望全体の把握と捉えればいいだろう。登山とパラレルに捉えることができる。だから「本の森」を彷徨うことも「山ある日々」なのだ。

当然山にもいろいろな山行形態があるように、本にもいろいろな種類・内容があるので、一義的に決めることはできない。
いずれにせよ比喩的な問題だから細部に拘っても仕方がないが、苦しいが楽しいこと、手掛かり、痕跡を再構成し全体を把握するという重要な共通点があることは間違いない。

読書メモの作成

読書メモの必要性

次に読書メモの作成について考えよう。読書の過程を記録するのは記憶だけでは覚束ない。実際登山もちゃんと記録しておかないとどんどん記憶は失せていくが、幸いなことに色々なガイド本があるのでそれを見て記憶を蘇らせることはできる。
もちろん本についても一部はガイド本、紹介本があるが、数が少ないし、原本にあたってもいいが、原本へアクセスする手掛かりが必要である。そのために読書メモがあるといい。Webへの基礎資料として使うためには、ある程度内容に踏み込んだものである必要性がある。まず読書メモの構成から考えよう。読書メモについてはできるだけ最新のデジタルをデジタル技法を用いることにしよう

読書メモについて

読書メモの構成をどうするか

Notionのテンプレートを見ると、読書メモ(リーディングリスト)は、「タイトル、著者、リンク、ステータス、評価、読了日、種別」から構成されている。
前3者はいろいろと取得する方法はある。これを「メタデータ」としよう。

ところでKindle本は、画像本以外は、テキスト部分を選択してメモとハイライトを取ることができる。ハイライトはテキストで外に出せるので、これを利用して、目次や抜き書きはかなり容易に作成できる。画像本とR本は、画面や紙のコピーとスキャン、そして音声入力でそれを作成しよう。

テキストを作成するには音声入力を利用するのが最も便利である。現に今私はパソコンの Google ドキュメントの音声入力を利用している。これはなかなか快適である。

以上を前提に、読書メモの項目をどうするか。

読書メモの具体的な構成

メタデータ
 Title:
 Author:
 Reference:
著者サイドのコメント
本の森を踏破する
縦走(つながり)とクライミング(登頂)
抜き書き
眺望(コメント・要約・評価)
詳細目次

本の森を踏破する

読書メモの構成のうち、「著者サイドのコメント」はReference(基本的には、Amazonへのリンク)の一部を抜粋する。内容を知るにはReferenceをクリックすればいいだけだが、その本の内容が(私にも)すぐにイメージできるようにするために設定する。

「本の森を踏破する」は、私が作成する部分だ。

「縦走(つながり)とクライミング(登頂)」は、その本を読もうとした経緯、その本を読むことでどこに行く見通しなのか等々を記そう。「縦走とクライミング」だけでもいいのだが、それだけでは意味不明なので、つながりと登頂を付加した。
「抜き書き」のうちKindle本はハイライトを利用して作成する(画像本やR本は、該当部分をチェックして音読することにしよう。)。
「コメント・要約・評価」は、上記の「言語空間の移動とその過程で推測・確認される著書全体及び核心の主張とそこからの眺望全体の把握」とその評価になる。

「詳細目次」は、Kindle本のハイライト等を利用して作成済みのものが多い。

自分で作成する部分を除き、購入済みのKindle本のデータは、Notionのデータベースにすることにしよう。それも学ばなければ。