今求められる問いと質問

2024-05-13

参考図書

  • Q思考:ウォーレン・バーガー
  • A More Beautiful Question: The Power of Inquiry to Spark Breakthrough Ideas (English Edition):Berger, Warren
  • ChatGPTプロンプト逆引き!API活用ガイド:太田和樹
  • 生成AIスキルとしての言語学 誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書:佐野大樹
  • 問いを問う ―哲学入門講義 (ちくま新書):入不ニ基義

    今、問うことについて?

    今、問うこと、質問することに、焦点が当たっている。もちろん、生成AIのプロンプトとの関係でだ。 生成AI登場の少し前、ウォーレン・バーガーさんという人が「A More Beautiful Question: The Power of Inquiry to Spark Breakthrough Ideas」(和訳名「Q思考」)という本を書いて、結構ブレイクした。内容はあちこちと飛んで落ち着かないが、質問することが創造につながっていることは充分に理解できる。私が持っている英語版は、「UPdated & Expanded」とあり、和訳版と目次も違うようだが、両書がどう変わっているかまでは追っていない。ただ、両書を通じて強調される「Beautiful Question」が、英語版の4~6章で次のようにまとめられていて腑に落ちる。

  • 4 Asking Why (to Understand)
  • 5 Asking What If (to Imagine Possibilities)
  • 6 Asking How (to Innovate)

    問うことの種類

    このようにQ思考は、WHYとHOW系の問いだが、もう一つの系統にWHAT系の問いがあるだろう。好奇心に基づく問いの多くは、WHAT系の問いだろうし、検索することもWHAT系の問いが多いだろう。そして、WHAT系の問いは、回答がなされれば(概念化・言語化されれば)、一応納得することができる。 もちろん、WHAT系の問いも、WHYとHOW系の問いと交錯しているのだが、WHAT系の問いは、概念に置き換えることで、それ以上、WHYとHOWの問いに踏み込まないことが多いと言えるだろう。

    「問いを問う」哲学

    「問いを問う」は、丁寧な哲学入門書であるが、4章の「心と脳の関係とはどのような問題か?」の最期に「五つの見解を俯瞰する──認識論・存在論・意味論の観点から」として次の記述がある。 「ここまで、五つの見解が登場した。二元論も「関係的な二元論」と「無関係的な二元論」に分かれるし、物理主義の鏡像のような「汎心論あるいは唯心論」もあり、見解の総数はもっと増えるが、本書では言及しただけなので、数に入れていない。 1 二元論 2 物理主義 3 機能主義あるいは関数主義 4 二重様相説あるいは中立一元論 5 情報主義あるいは情報実体論 これらの五つの見解について、認識の水準・存在の水準・意味(概念)の水準という三つの観点から振り返り、俯瞰しておこう。 そもそも、この第4章のテーマである「心身問題」「心脳問題」では、「心」と「脳」「身体」に関して、その存在領域の「数」と「何であるか」が問われていた。その点で第4章は、第2章や第3章の「どのようにして……知るのか?」という認識論的な問いと比べると、当初から存在論的な問いとして始まっていた。 しかし、その存在論的な問いの内部では、さらに認識の水準・存在の水準・意味(概念)の水準が、互いに優位性を争いながら、絡み合うことになる。いわば、認識・存在・意味の三者は、自己相似的に(フラクタルのように)、それぞれの内にそれぞれが入り込む仕方で、大小の三者関係を反復し続けることになる(次の図を参照)」。

    私はこのような切り口は嫌いではないのだが、さすがにこれは有効な問題の整理か、何かを解決できるのだろうかと思ってしまう。これは寄り道だ、

    プロンプト

    プロンプトの本は多くあるが(多くはブームへの「便乗組」だが)、問題をよく理解して知識もあり、自分で実践もしている人の本として「「ChatGPTプロンプト逆引き!API活用ガイド」が有用だ。プロンプトとは何か、少しずつ実践していくとどうなるかが、プロンプトエンジニアリングガイド(Prompt Engineering Guide | Prompt Engineering Guide<!– –>)も参照しながら要領よくまとめられている。 ここでの問題は、プロンプトに習熟することと、ともすればWHAT系の問いで終わりがちな生成AIの利用を、WHY・WHAT IF・HOW系の問いに活用することだ。 ただそれを導く「道標」が必要だが、実務書ではなかなか届かないので、「哲学」でどうかと思いたいが、上記をみるとどうだろう。 そこで「言語学」はどうか。

    言語学はどうか

    「生成AIスキルとしての言語学 誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書」は、創造をもたらす問いと質問、実務的なプロンプトをつなぐ地位にあるように思われる。ただ内容を咀嚼するのはこれからなのでおって「戯れ言日録」で取り上げよう。