本の森

未読・半読・一読の本 2 (180412)

先週金,土と仕事で長崎に行き,その行き帰りと宿泊先で,3冊ばかりのKindle本に目を通した(おいしい魚のお店で一杯やることも忘れなかった。)。今見ると,1冊は前日,もう一冊は滞在中に購入している。

教養としてのテクノロジー

教養としてのテクノロジー AI,仮想通貨,ブロックチェーン」( 著者:伊藤 穰一, アンドレー・ウール)は,今作成中の「これからの社会と経済を理解するためのこの4冊」の準備として目を通してみた。

私は,今現在の社会と経済を理解するために,「社会と経済の基礎となる8冊―試論」という記事を作成したが(「社会と経済」という言い方は見直したいと思っているが,制裁付きのルールの下で展開される仕事と生活ということである。),これを土台として「これからの社会と経済を理解するためのこの4冊」を作成中である。過去,現在を踏まえ,未来を展望しようという試みだ。

まず出発点として,未来の動向に大きな影響のあるテクノロジー(中心は,AI,IT,IoTの動向だ。)を概観する「この1冊」を取り上げようと思っている。

そしてそれを基盤にして,「限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭」(著者:ジェレミー・リフキン)に進み,さらにビジネスについては「プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか」(著者:アレックス・モザド, ニコラス・L・ジョンソン)に,社会の仕組みについては「ポストキャピタリズム」 (著者:ポール・メイソン)で,さらに詳細に検討しようという運びだ。

最初テクノロジーは,「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則」(ケヴィン・ケリー。原書:The Inevitable: Understanding the 12 Technological Forces That Will Shape Our Future)で決まりと思っていたのだが,読み返してみると,これは「テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?」( What Technology Wants」の応用編という位置づけで,出発点としてはおそらく「テクニウム」の方がよさそうだが,これは翻訳のKindle本が4500円もする。外れだとつらい支出なので,まだ購入していない。そこで伊藤穣一さんの「9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために」もよかったなと思いだしたが,もっと基本なら最新刊で「教養としてのテクノロジー」があることに気が付いたので,これを読むことになった。

内容は網羅的だが(目次は,はじめに/「AI」は「労働」をどう変えるのか?/「仮想通貨」は「国家」をどう変えるのか?/「ブロックチェーン」は「資本主義」をどう変えるのか?/「人間」はどう変わるか?/「教育」はどう変わるか?/「日本人」はどう変わるべきか?/「日本」はムーブメントを起こせるのか?),切り取り方が簡潔,単純に過ぎ,「この一冊」としては適当でなさそうだ。伊藤穣一さんは,しばらく前から名前を聞いていたが(MITのメディアラボの所長),その立場で自由自在に人をつなげて動かし,大活躍していることが分かる。私にとって今一番うらやましい人だ。この本の中でも盛んにメディアラボは営利目的ではない,自由にいろいろな試みができることが繰り返されている。我が国にもこのようなものがあればいいなと思うのだが。ただ官僚的とは正反対の組織のようだから,この国では難しいかな。この本の中で,仮想通貨について詐欺的に使われるとして警戒しているのは,冷静だなと思った。

マネーロンダリング入門

次に「マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで」(著者:橘玲)だ。しばらく国際取引とは関わりを持っていなかったが,私が関与していた頃はあまりマネーロンダリングということは言われていなかったので,普段からよく読む橘玲さんの本を読んでみた(目次は,山口組の指南役になった日/世にも奇妙な金融犯罪/プライベートバンクの憂鬱/北朝鮮はなぜ核兵器が必要なのか/ 世界でいちばん短いマネロンの歴史/誰でもできるマネロン)。

「犯罪収益移転防止法」制定前の2006年の本で,その頃の実情が書かれているが,要は資産家がころりと騙される話,資金受入れ側も騙しながら自転車営業している話,ドル決済はどのように行われているかという話,脱税というけれど国境に何の意味があるのだろうという話等々,みんな面白いけど,10年ふた昔という感じだ。プライベートバンクとして出てくる,クレディスイス,シティバンク,そして犯罪銀行BCCIの名前は忘れるわけにはいかない。

英会話不要論

英会話不要論」(著者:行方昭夫)は国際取引にかかわる前に,またぞろ英語を勉強しなくてはと思って手に取った本だ。,一口でいえば,文法を頭に入れた英文読みができれば,なれれば英会話はできるよという本だ。ごもっとも。

 

 

本の森

イソップ寓話は英語の学習に役立つか

私は,これまでイソップ寓話(童話)に興味を持ったことはなかったが,その英訳(新訳)のKindle本とAudibleが手許にあったので,速読用にどうかなと思って試してみた。単語は基本的に簡単だが(ただし,動植物名は分からないものも多い。),修飾関係,構文はかなり複雑なので,英語の頭の体操(読解)用にいいかなと思い,勉強を始めている。

その帰趨は追ってということにして,目に入った話の中から二つほど紹介してみたい。人に言いたくて,黙っておられないほど面白い。紹介はKindle本の英訳(新訳)ではなく,「アイソーポス著作 イソップ物語寓話単位に英日対訳方式採用」を使用した。訳はそのままである。

The Man,the Horse,the Ox,and the Dog

人が馬と牛と犬を助けたら,動物たちが感謝の気持ちから,人間の寿命を3つに分けて,それぞれの時期の気質を受け持ってくれることになった。若い時期は馬で,激しく頑固で,執拗に自分の意見を主張し,中年は牛で,仕事を好み,冨を蓄え,倹約する。さあ,最後は犬だ。

The end of life was reserved for the Dog, wherefore the old man is often snappish, irritable, hard to please, and selfish, tolerant only of his own household, but averse to strangers and to all who do not administer to his comfort or to his necessities.

最後の部分はイヌが受け持った。それ故年寄りは,怒りっぽく,短気で気むずかしく,我が儘で,そして自分の家族には寛容だが,よそ者や,自分の好みでないものや, 自分に必要でないものは,全て嫌悪する。

自戒しよう。

The Man and His Two Sweethearts

これは訳がない方がいいだろう。

A MIDDLE-AGED MAN, whose hair had begun to turn gray, courted two women at the same time. One of them was young, and the other well advanced in years. The elder woman, ashamed to be courted by a man younger than herself, made a point, whenever her admirer visited her, to pull out some portion of his black hairs. The younger, on the contrary, not wishing to become the wife of an old man, was equally zealous in removing every gray hair she could find. Thus it came to pass that between them both he very soon found that he had not a hair left on his head.

Those who seek to please everybody please nobody.

要は,二股かけてつきあった女性に会うたびに,年上の女性は黒い毛を抜き,若い女性は白髪を抜くので,禿げちゃったということだ。私が,"no hair left on my head"であっても,これが原因ではない。

読者プレゼント?

動植物名の英語を頭に入れるために,イソップ寓話の表題とその訳の一覧表を作ったので,私がイソップ式英語学習法に挫折しても,どなたかに使用していただくために「読者プレゼント.pdf」?として掲載しておく。

これは,上記した「アイソーポス著作 イソップ物語 寓話単位に英日対訳方式採用」によって作成したものである。なおこの本は値段が100円ちょっとなのであまり文句は言えないが,一部編集がおかしい。最初は,英語,和文の順で対応しているが,164話あたりで対応関係がおかしくなり,和文が次の英文の訳になっている(リンクが間違っている。)。そして282話あたりから正常に戻っているので,嫌にならずに取り組もう。もちろん私は犬のように,いったんは嫌になりかけた。

英語の勉強やイソップ寓話自体の研究が進んだら,また報告しよう。

本の森

未読・半読・一読の本 序 (180410)

「未読・半読・一読(みどく・はんどく・いちどく)の本」では,ざっと目を通し,あるいはそれも途中で止めてしまった本,買っただけで目も通してもいない本,さらにはKindle本でサンプルだけダウンロードしそのうち買おうと思っている本,まとめれば積読本(つんどくぼん)を紹介していこうと思います。

本の森

これまで本の森で紹介する本は,主として「詳細目次」を紹介することだけでも意味があると思う専門書,一般教養書といわれる部類の本を対象としてきたが,そのような本の内容にきちんとコメントしようと思うとなかなかエネルギーがいるし,私の関心もどんどん目移りしていくしで,どうしても作業は「詳細目次」を作成するだけで停滞し,いつしか日の目を見ないままま埋没してしまうので,精神衛生上よろしくない。心の底では,紹介は,松岡正剛さんの「千夜千冊」ぐらいの詳細,緻密な記述にしたいという思いはあるが,あちらは優秀なスタッフを抱えたプロ,こちらは弁護士の仕事の片手間では,レベルが違い過ぎる。このような思いは,かえって埋没に拍車をかけてしまう。

ところで久しぶりに「千夜千冊」のことを思い出したので,Webを見てみると,最新の本(1670夜)は「国語入試問題必勝法(著者:清水義範)」であった。今,清水義範さんとは意表を突かれる思いだが,紹介された内容は,今読んでも昔と変わらず楽しい。

改めて「千夜千冊」にどんな本が紹介されているかを見ると,松岡さんの関心の広さには驚嘆する。私が手に取ったことがあるであろう本は約4分の1,内容に見当がつく本でもせいぜい半分というところだろうか。私も法律書は別にして,様々な機会に5000冊は処分(寄付)し,いまKindla本2500冊,リアル本1500冊ぐらを保有している,個人としてはまあまあの愛書家のつもりだったが,桁が違う。それに登山に情熱を傾けていた約10年間は,本よりも山の風が好きだったから,大きな差が開いてしまった。

松岡さんの基本は,思想・文学を中核にして,文化,歴史,社会にアプローチするということだろうか。それと松岡さんは,編集工学を提唱され,情報史にも興味をお持ちなので,その意味での広がりもある。「千夜千冊」もわかりやすいし,面白い。しかし松岡さん自身が書くものは「参考書」としては面白いが,問題に切り込む凄みに欠けるような気がしていた。

私は思想・文学を捨て,科学・論理を中核にしてアプローチするスタイルに転向したので,松岡さんのリストを見ると,松岡さんの関心外の本も,守備範囲であることが分かる。だから今後は,本の森本編では,私が立てた問題(このWebで紹介しているような問題だ)を解決すべく,主としてそのような本に切り込もう。

未読・半読・一読の本を紹介する

最近,山へも行かず,お酒も(少し)控えめなので,本を読んだり,勉強したりする時間が割とある。あるいは,出張に行くと往復の乗物だけでも時間があり,スマホでKindle本を読むのに最適の環境だ。先週,一泊で長崎に出張したが,新書のKindle本2冊全部と,その他にも目を通すことができた。

あるいは,昨日だったか久しぶりに「俳句 4合目からの出発(著者:阿部ショウ人)」という本が目に入ったので読み始めたが止まらない。Amazonのカスタムレビューに「俳句を絶対に作らせないという趣旨の本としか思えない。腐すこと腐すこと全編その姿勢」とあるように,あることをけなすにはどう表現すればいいかについての達人の書だ。あるいは題名だけは頭にこびりついている「読んでいない本について堂々と語る方法(著者:ピエール バイヤール )」は,その内容は忘れてしまったが,題名が魅力的なので,もういちど読みたいと思う。ただ単行本は捨てて(寄付して)しまったようなので,文庫本を買おう。

このように,上段に構えて真正面から振り下ろすのでなく,ざっと一読しただけの本,半分読んでやめてしまった本,あるいは未読の本,要するに積読だけの本も,備忘のために記録しておくことも大事だろう。

年をとってくると最も懸念されることは,一度買った本をもう一度買うことだが,幸いなことにKindle本ではその警告が出るので(過去にR本を買った場合も同じだが,R本はAmazonで買わないことも多い。),それは気にしないで済む。しかし,本が何千冊単位になると本の存在すら忘れてしまい,意識に上らなくなる。意識に上らないということは存在しないということだ。だから思い出すに足る本は,備忘のための記録をつけることには意味がある。

ということで,これから備忘のために記録しておいた方がいいと思う本は,できるだけ「未読・半読・一読」に記録することにしよう,それすらも忘れてしまうと困るが(これは,近未来の冗談です。)。