個の持続-生老病死を知る

2019-11-18

「病気」かなあ

ここ2週間ほど、熱の出ない風邪?にかかって体調がよくなく、休みは(平日も少し休みを取って)家にいて横になっていることが多かったが(やっと朝ジョグができるようになり、ほぼ完治したと思う)、妻には「子供は熱が出ない風邪は学校に行かされる」と叱咤され、さりとて病院に行く「理由」もなく、例によってKindle本を読みながら時を過ごすことが多かった。そういう中で、何冊かの「健康本」にも目を通した。

これまでの私の病気は、基本的に痛風と無呼吸症候群ぐらいで、「肥満大敵」→ダイエット→「運動+α」でお茶を濁していたが、今回の「病気」はあまり経験がなかったし、最近、間違いなく中年期から高年期入りしつつあるので、そろそろ「老化」も視野に入れ考えた「健康法」を実行していかなくてはという気になってきた。

これまでも「健康」、「ダイエット」、「運動」関係の本には多く目を通してきたが、今回読んだものは「老化」を踏まえた本が多くなった。

「「慢性炎症」を抑えなさい 」を読む

「ガン、動脈硬化、糖尿病、老化の根本原因 「慢性炎症」を抑えなさい 」(著者:熊沢 義雄)

まずこれを入口にしてみよう。「ガン、動脈硬化、糖尿病、老化」、いずれも私だけでなく、すべての老いゆく人にとって切実な問題だ。この本には、新しく正しい情報も多く含まれていると思うが、どうもお医者さんの書くこの手の本は、各情報の新旧や確実性、情報相互の関連性、発症の機序、生命現象における位置づけ等を自身で詰めることなく、人目を惹く情報を上から目線でずらずらと書き連ねる傾向があり、しかも細部の記述も「論理的」といえないので、どうもね、という気になってくる。
この本の「内容紹介」によれば、ポイントは、「最近の研究で、体内で慢性化した弱い炎症(体内で起きた異常な状態を、元に戻すための防御反応」のひとつ)が、血管や臓器の細胞を傷つけ、ガンやさまざまな生活習慣病の引き金になることが明らかになってきた。この体内の「慢性炎症」は、ストレス、肥満、加齢などで生まれる「炎症性サイトカイン」が原因で起こる。サイトカインは、炎症を引き起こす物質で、周りの細胞も影響を受け炎症を引き起こす。また、死んだ細胞からは、細胞の残骸が蓄積される。これがさらなる炎症の引き金となる」とされる。
<ストレス、肥満、加齢(老化・死亡細胞)→「炎症性サイトカイン」→「慢性炎症」→血管・臓器細胞の損傷→生活習慣病>という流れを基本とするわけだが、本書の最初のあたりで強調していた活性酸素やAGE(終末糖化産物)はどこにいったのかなあ?ストレスかなあ?しかもこの流れは、全容のごく一部だろう。
そして「慢性炎症」と「生活習慣病」(ガン、脂質異常症、動脈硬化、糖尿病、認知症、脂肪肝炎、COPD、間質性肺炎、リーキーガット症候群等々)を2つのキーワードとして、その発症にある種の「関係」があるとするが、しかし「慢性炎症」を引き起こす原因、機序、「生活習慣病」を引き起こす原因、機序はそれぞれ多様であり、事態は複雑で錯綜していて到底これでは収まらないだろう。
その上で、今、酸化、糖化を押えるために一時もてはやされた、抗酸化薬、抗糖化薬の効能は疑問視されているので、「慢性炎症」を押える抗炎症薬が勧められることになる。普通は、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、本来はコレステロール降下剤といわれるスタチンが挙げられる。
更に作者は、ビタミンDの摂取(日光に当たる)、歯周病の予防、治療、適切な運動、ダイエット、メラトニンの分泌促進、プチ断食(サーチュイン遺伝子の活性化)、糖質制限食、腸内細菌を整える等、健康のための方策を盛りだくさんに挙げている。だが、整理されているとはいえない。
「詳細目次」を後掲する。

問題はヒトの生命がシステムだということだ

自然科学は、数学、物理学、化学と発展してきて、生物学、医学は、まだ混乱のさなかにあるというような指摘をどこかで見た記憶があるが、まさに、生物学、医学は現在進行形である。またヒトの体、心様々な複雑な要素から成り立つ複雑なシステムである。「因果関係」の把握は極めて困難であり、ましてやこれを抽象化した自然言語による記述は不正確であると同時に、自然言語が独り歩きして「因果関係」の把握を誤導さえする。しかも実証的な実験は細菌やマウスで行われるだけであり、ヒトを対象とする研究の範囲は限られ、統計処理も難しい。更に新しい研究結果は一時的にもてはやされるものの、誤りであったとして消えていくものも多い。
ということで、「これだけが正しい」という発想はやめて、あれもこれも、正しいかもしれないが誤っているかもしれないと見極め、ヒトという複雑なシステムの全体がどういう姿をし、どういう機能を果たしているのかをおぼろげながら把握していくのが正しいだろう。
そういう中で今後「老化」と「病気」の問題を少しずつ解きほぐしていくことにする。

生老病死の世界-「老化」は存在するのか

仏教では、ヒトの苦しみを、生老病死の四苦に、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五陰盛苦を併せて八苦ととらえている。生は「生まれる」なのだろうが、私は「生きる」というステージと考え、その中で老病死という物理現象としての苦、愛別離苦以降の精神的な苦が展開されると考えることにしている。ここでは、当然に「老苦」が普遍的な存在であることを前提としている。
しかし、ものの本を読むと比較的最近まで(千九百数十年代まで)、個体の老化というのは存在していないという説が存在していたそうだし、細胞も老化しないと考えられていた。事程左様に問題はむつかしく、新しい動きとは客観的な距離を取る必要があるが、古い説を信奉していてもしかたない。

Key Wordは何か

そこで私は、錯綜した「老病」に関わる事象について、「DNA(遺伝子・テロメア)」、「たんぱく質」、「ミトコンドリア」、「酸化・糖化」、「細胞・器官・臓器」、「腸内細菌叢」、「肥満」、「慢性炎症」、「生活習慣病」、及び「内分泌系・神経系・免疫系」等をキーワードにし、その相互作用に注目して分析することにする。これで多くは視野に入るだろう。
今後順次、記事を作成していこう。

「生命の内と外」を読む-総論として

ただ上記の内容の記事は、あちらに行ったり、こちらに行ったり、ランダムウオークになるので、「生命の内と外」(著者:永田和宏)で生命活動を俯瞰し、ヒトの生老病死の全体像を理解することにする。この作業は今後することにし、ここでは、「詳細目次」を掲記しておく。

この本の「記述はいささか抽象的なので、生命を支える分子をカラー図解した「分子レベルで見た体のはたらき いのちを支えるタンパク質を視る」(著者:平山令明)を合わせて読むと、ぐっとわかりやすくなる。なお分子グラフィックス・ソフトウェアを利用すると分子の立体構造も見ることができる。これも「詳細目次」を掲記しておく。

各詳細目次は次ページへ