問題解決と創造

2020-10-13

「問題解決と創造」の第1次案です

これは今までの「問題解決と創造のヒント」を見直して、固サイトを表示定頁の「問題解決と創造」に切り替えるための原稿案です。固定頁は、今後、各項目をおおよそ見直した段階で掲載します。

なぜ「問題解決と創造」なのか

私たちは、日々、自分自身の現在の有り様とこれからの行く末に思い悩む。そしてそういう自分の視野を通して見える、所属する組織(企業や自治体・国、その他の組織)やこれらの間で起こっている様々な問題に直面し、その解決を迫られる。もう少し視野を広げると、人や組織は、環境(自然や人工物等)の中に存在して動いており、人・組織・環境の相互作用で構成され、激しく動いている世界には、より解決困難な問題や新しい問題が山積していることがわかる。これらの解決すべき問題は、一応、「個の問題」と「世界の持続可能性-世界の複雑な問題群」に分けることが出来る。特に現代の焦点となるのは、後者の「複雑性」と「持続可能性」の問題であるが、その解決は容易ではない。ただ「個の問題解決」(大きくは「目標の達成」と「依存(習慣)からの脱却」と捉えることが出来ようか。)がクリアにならないと、なかなか「世界の持続可能性-世界の複雑な問題群」を見通すことは出来ないだろう。

これらの問題の多くは「公共」に関連するので、その問題解決に取り組むべき役割を持つのは各国政府であるが、最近の彼我の政府や政治過程の視野の狭さには辟易するだけで、当面政府がこれらの問題を解決することは当てにしない方がよさそうだ。というより、政府自体、解決しなければならない問題の大きな対象だし、次々と新しい問題を引き起こし、持続不可能性に拍車を掛けているようにも思われる。

そこで私たちは襟を正し、自らまず世界の最小の要素である一個人として問題の解決に乗り出すべく、「問題解決学」、「創造学」、「システム思考」等々といわれる分野をのぞいてみたくなるが、百花繚乱で、何を頼ればいいのか、迷うばかり、さてどうしよう。それにビジネス分野から発信される「問題解決と創造」論は、いかにも軽率なものが多く、どうも頼りがいがない。一方、学問分野からの発信は対象範囲が狭く、しかも重くもたもたしていて、構造の記述、モデル化、分析にとどまるものが多く、なかなか「問題解決と創造」の実行に届かない。

ここでの課題は、要は、私たちが「問題」と捉えたことを「世界」の中に位置づけて記述、モデル化し、それを解決するために何をどうすればよいのかの実行手段が得られればいいわけだから、「世界」に関する知識と「問題解決と創造の方法」が結び付けられればよいわけだ。

なお「創造」は「問題解決」の枠組みにとらわれないより伸びやかなものととらえてもいいが、「問題解決と創造の方法」で検討するように、「問題解決」の一場面として位置づけることができるので、逐一区別しないことにする。

問題解決の準備

問題の定義

「問題解決」という場合の「問題」とは、普通、私たちが存在する現実の世界における「目標と現状のギャップ」と定義される(これは、ハーバート・A. サイモンが、言い出したらしい。)。問題は、既に起きてしまっている発生型問題、より高い到達目標を設定することで見えてくる設定型問題、将来的に時間と共に問題になるという将来型問題に分けることが出来る。

「問題」の対象は、大別すると、「個の問題」と「世界の持続可能性-世界の複雑な問題群」に分けることが出来ることは、上述した。

4要素5領域と問題解決の方法

ではこの「私たちが存在する現実の世界」はどのように構成されているのか。経済学等では、人(家計)、企業、政府の3主体を想定するのでこれを借用し、これに自然・人工物・情報からなる環境を加えると4要素(人、政府、企業、環境)になる。そして、これらの4要素の活動と相互作用によって、これらの複合体である現実の社会・世界が形作られていると考えることができよう(普通、これは「システム」と呼称される。)。

このような整理を前提とすると、問題解決の対象は、人、政府、企業、環境という4要素固有の各問題領域、及び4要素の活動と相互作用によって形作られる社会・世界の5領域になる。

この「問題解決と創造を学び解決する」の各項目には、このような観点から、私自身が「問題解決」を実行するために(また皆様にもその手助けとなるように)、本やWebを読みまとめ批判し、自分の頭で考察した内容の記事を蓄積していきたい。目的は問題解決の実行だから、「問題解決の方法」はできるだけプラグマティックな内容になるように心がける一方、「世界」はますます拡大していくから、4分野5領域の「世界」に関する知識はできるだけ範囲を広くとり、わかりやすく整理していきたい。ただ全部に力を入れていると二進も三進もいかないことが分かってきたので、できるだけ内容を、解決すべき問題-「個の問題」と「世界の持続可能性-世界の複雑な問題群」に絞っていきたい。

なお、プラグマティックというと、役に立たないものは排除するというイメージだが、論理的、科学的な知がいつどこで役に立つかは予測できないし(特に数学ではよく言われることだ。)、物語や哲学等々の人文畑も、個性のフレームをチェンジして人のイメージを沸き立たせ、新たな思考・アイデアを生み出すための「役に立つ」。役に立たないと断言できるのは、古い発想に固執する「学問」だけだ。

因果関係による問題の類型化(フレームワーク)

ところで、問題を解決する(現状を目標に変える)上で、実行する手段によって目標が達成されるか否かという「プロセス」=因果関係がポイントとなることは明らかである。ただ「問題解決の方法」で検討する、ごく単純と思われる「問題構造図式」でも「原因となる「入力」、「制約条件」や「外乱(不可抗力)」が影響する「プロセス」を経て、結果となる出力が生じる」とするので、これだけでも因果関係は単純ではない。

そこで問題を因果関係の明確さによって類型化する「カネヴィンフレームワーク(cynefin framework)」を導入しよう(ここではCFと略称する。)。

CFでは、問題領域を大きく3つに分ける。「秩序系」、「非秩序系」、「無秩序」である。そして因果関係の明確さによって、「秩序系」を「Obvious=自明(単純)系」と「Complicated=煩雑系」、「非秩序系」を「Complex=複合(複雑)系」と「Chaotic=混沌系」に分類する。因果関係が、自明か、煩雑か、更に、複雑でわからないか=「複合(複雑)系」、解明が不可能=「混沌系」という基準である。

そして有効な問題解決の方法として、自明(単純)系では、「実行、ベストプラクティス、標準ルール、マニュアル化」、煩雑系では、「専門家に相談する、調べる、分析する、プロジェクトマネジメンント、PDCA」、複合(複雑)系では、「試す、直感、セーフフェイルな探索をする」(人工知能や量子コンピュータを挙げる向きもある)、混沌系では、「決める、損害を抑制する、秩序を取り戻す、複合系に移動し思考や探索に時間を使えるようにする、長居しない」(緊急対応、レッド型組織、強いリーダーシップを挙げる向きもある)が挙げられている(「不確実な世界を確実に生きる」(著者:コグニティブ・エッジ))。

私が複雑な問題として捉えている多くの問題は、煩雑系、複合(複雑)系、場合によっては、混沌系であろう。CFの枠組みで、複雑系科学、システム思考等を展開すれば、かなり問題の解決に迫れるであろう。

なお「カネヴィンフレームワーク」は、デイヴ・スノーデンさんが提唱し、日本では田村洋一さんが紹介している。YouTubeで、簡単な説明が見られる(本人の説明田村さんのインタビュー)。「ソーシャル・インパクト・アクト」というWebにも紹介がある(外部サイトの記事にリンク)。

「問題解決と創造」の概要

全体の構成

「問題解決と創造」は、「問題解決の方法」、「ヒトの行動と生活」、「政府」、「企業」、「環境:自然・人工物・情報」、「社会と世界」の6項目及びその下位項目から構成する(なお、自然科学はあれこれ分散するので、「補論・自然科学」で纏めて掲載する。)ここでは「問題解決の方法」と「ヒト、企業、政府、環境、世界」の概要を説明する。

問題解決の方法

まず「問題解決と創造」の最初の項目として、問題解決のための基本的な方法を検討する「問題解決の方法」を設けた。

(前提ーヒトの進化・行動・思考・情報)は、問題解決と創造を考える場合は、前提として、進化論、ヒトの行動・思考、情報の性質を踏まえる必要があるという観点から、基本となる重要な本を何冊か読もう。

(準備2ーデータ・資料から見る問題群)は、現在とこれから予測できる世界についてのデータ・資料を集めた本を何冊か集めた。持続可能性が焦点となる。

(問題解決の基礎)は、まず<主要な理論と方法>として現時点で、【複雑系・カオス】【システム思考】【統計学・データ分析】【数理モデル】【ゲーム理論】【TRIZ】【デザイン思考】【KJ法】【基礎情報学】を紹介したい。

<問題解決論>としては、固有の「問題解決論」を何冊か紹介したい。さらに、問題解決を支援する<様々なアイデア>、<知的生産・読書・教養>【知的生産】【読書】【教養】を紹介したい。

ヒトの行動と生活・企業・政府・環境・社会と世界

これに続いて問題解決の対象となる4要素5領域の4要素(「ヒトの行動と生活」、「企業」、「政府」、「環境:自然・人工物・情報」)とこれらの4要素の活動と相互作用によって生じる問題領域である「社会と世界」の5つの問題領域について、紹介、検討する。

そして、これらのうち、

人、企業、政府、環境には、それぞれ固有の問題があり、「世界:世界の複雑な問題群」の問題を、これらの4要素をすっ飛ばして考察しても、思い付きに止まるだけだというのが、ポイントになるであろうか。

投稿記事

各項目の下位メニューに、その項目の投稿が時系列順に掲載されるので、そちらも参照されたい(分類が正確でないものも混じっているかもしれないが、ご容赦を。)。

「問題解決と創造」の全体の構成

以上述べた「問題解決と創造」の全体の構成に、下位項目を入れてまとめれば、次のようになる。今までの構成をかなりいじることになるが、完成までには今少し時間がかかろう。

ヒトの行動と生活

  • (生命・進化・生物)
  • (人類史と人体)
  • (人間科学)
    • <医学・看護学>
    • <心理学>
    • <脳神経科学>
    • <認知科学>
  • (言語・論理・哲学・思想)
  • (行動)
    • <オートポイエーシス)
    • <アフォーダンス>
    • <行動分析学>
    • <様々な行動論>
  • (思考)
    • <総論>
    • <問い>
    • <推論>
    • <問題解決>
    • <意思決定>
  • (実践)
    • <目標を達成する>
    • <学習する・表現する>
    • <上達する・創造する>
    • <習慣を変える>
    • <自然を経験する>
    • <瞑想と呼吸>
  • (健康)
    • <運動>
    • <食事>
    • <老化>
    • <ヨガ>
  • (家族とコミュニティー)
  • (生活・文化)
    • <生活論>
    • <文化論>
    • <ゲーム>
  • (仕事)
  • (教育)

政府

  • (権力と支配)
  • (政策)
  • (法とルール)
  • (日本の政治・政府論)

企業

  • (経営)
  • (会計・統治)
  • (日本の経済・企業論)

環境:自然・人工物・情報

社会と世界

補論・自然科学

その他の項目

IT・AI・DX

世界の持続可能性:世界の複雑な問題群

  • (基礎資料)
  • (社会・世界の問題群)
    • <環境問題>
    • <情報の氾濫・暴走と社会の崩壊>
    • <法とルールの破綻>
    • <資本主義の行方>
    • <日本経済と企業の行方>
    • <都市と地方の行方>
  • (個の問題-目標の達成と依存(習慣)からの脱却)

最後に

私が今、もっとも取り組みたいことは、弁護士として「法を問題解決と創造に活かす」活動であり、「問題解決と創造」は、そのための、事実と論理を踏まえた準備作業、基礎作業となることを志している。このWebサイトも、やっとそういう情報発信ができるような準備が整いつつある気がする。まだ各項目の内容はバラバラだし、ITやAI、科学についての新しい知見・動向を知るには、英語文献、数学手法の読解が必須である。その意味で内容が整うまでには今しばらく時間がかかりそうだ。

ただ法を古臭い非科学的な「法学」という孤立峰から解き放ち、法の機能を社会の問題解決につなげようとしている試みとして、私がもっとも評価している「法と社会科学をつなぐ」(著者:飯田高)も、まだまだ準備段階である。学者と違う時間の使い方をしなければならない実務家(弁護士)である私にできることは限られている。ただ学者とは違うアイデア、ルートからの実践的なアクセスもできることを願っている。