<因果推論の科学>を読む

2022-11-17

書誌

因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか:ジューディア・パール、ダナ・マッケンジー (文藝春秋)
The Book of Why: The New Science of Cause and Effect (English Edition):Judea Pearl、Dana Mackenzie 

今一押しの本を記事作成の「練習」として紹介しよう 

今私が一番読み込みたいと思っている本は「因果推論の科学」だ。著者のジューディア・パールは、「アメリカの計算機科学者で哲学者であるが、人工知能への確率的アプローチとベイジアンネットワークを発展させたことで知られている(確率伝搬法を)。また、構造モデルに基づいた因果的かつ反事実的推論の理論を発展させた」(ウィキペディア)と紹介されている。
本書を読んでいてわかるのは、著者が、解決すべき問題に、「科学界の常識」とされていてもおかしな「因襲」に真正面から向き合い、自分の頭で考えて、自足することなく、次々に解決策を切り拓いてきたことである。「統計学」「データ」が支配的な状況の中でこれらが避けてきたが人の脳が得意とする「因果関係」を、「因果モデル」と「記号言語」を導入して取扱い、人の思考、社会の問題解決や「強いAI」を視野に入れていることである。このような一生を送っていることに感動すら覚える。
ただし本書の詳細な紹介は追ってとし、ここでは、やっと目途のついた「Obsidian」での原稿作成と「WordPress」での記事作成の「練習」(導入)を試みてみたい。
今回は、目次、及び序章の「推論エンジン」と第一章の「因果のはしご」を紹介したい。ついでに第六章で紹介されているモンティ・ホールのパラドックスを、最初に紹介しておこう(これはベイズ推計の本で紹介されていたように思う。)。本当はリストの該当箇所に次の画像を入れたかったのだが、ブロックエディターがすぐには言うことを聞いてくれないので、とりあえずモンティ・ホールのパラドックスの次に入れておく。

モンティ・ホールのパラドックス

モンティ・ホールのパラドックスとは次のような問いである。

「あなたがテレビのクイズ番組に出たとします。プレーヤーであるあなたの前には三つのドアが用意され、そのうちの一つを選ぶよう言われます。一つのドアの後ろには景品の新車が置かれ、残り二つのドアの後ろには、外れを意味するヤギがいます。新車の置かれたドアを選べば、その車をもらうことができます。プレーヤーがいずれか一つのドアを選択すると、司会者は残り二つのドアのうち、ヤギのいる方を開いて見せてくれます。ここで司会者からは、選択するドアを変更してもよいと言われます。あなたはどうしますか。ドアの選択を変更せず、そのままにしますか。それともまだ開かれていないドアに変更しますか。ドアを変更すると、少しでも有利になるでしょうか」。

さて、変更するのが正解だと聞かされたあなたはどう思うであろうか(確率は3分の1で変わるはずがないというのは間違いである。)。

因果推論エンジン

i因果推論エンジン

因果のハシゴ

因果のはしご

目次

  • はじめに
  • 序 章  「因果推論」という新しい科学
    • 導入 因果関係、すなわち原因と結果の関係について語ることは、科学の長年のタブーとされてきた。しかし近年、政治からAIにいたる幅広い分野で、因果関係の新しい科学である「因果推論」が大きな注目を集めている。
    • 無視されてきた因果関係
    • なぜ誰もやらなかったのか?
    • 統計学という抑圧
    • データは何も教えてくれない
    • 因果ダイアグラムと記号言語
      • P(L | do(D))
      • P(L | D)
    • 反事実的推論の重要性
    • 強いAIと因果推論
    • 現実の青写真
      • 「推論エンジン」のⅠないし9の説明
    • 「なぜ?」の問いに答えるロボット
    • 本書の構成
      一章から一〇章の簡単な説明
  • 第一章   因果のはしご
    • 因果関係を理解する能力を手に入れるには、三段の「因果のはしご」をのぼらなければならない。学習機械は一段目、初期人類は二段目にいる。三段目に到達できたのは、現在のところ私たち人間だけである。
  • 第二章   シューアル・ライトが起こした革命──因果推論創世記
    • 科学や統計学において因果関係はなぜ拒絶されるようになったのか? フランシス・ゴルトンによる相関の発見から、シューアル・ライトによる因果関係の再評価まで、因果推論誕生前夜の歴史をたどる。
  • 第三章   結果から原因へ ──ベイジアンネットワークの真価と限界
    • 一八世紀に発表されたトーマス・ベイズの理論をルーツとする「ベイジアンネットワーク」によって、コンピュータは不確実なことがらをはじめて扱えるようになった。その様々な応用例と限界について考える。
  • 第四章   交絡を取り除く──ランダム化比較試験と新しいパラダイム
    • R・A・フィッシャーが提唱したランダム化比較試験は、交絡因子の解消に関して、長らくゴールドスタンダードとみなされてきた。しかし因果革命によって、私たちはそれ以外の手段を手に入れることになった。
  • 第五章   タバコは肺がんの原因か? ──喫煙論争の煙を吹き飛ばす
    • 一九五〇~六〇年代初頭にかけて、統計学者たちは「喫煙は肺がんの原因か」という問題をめぐる論争に明け暮れていた。この難問はいかに解決されたのか? 因果推論が投げかける新しい光とは何か?
  • 第六章   パラドックスの詰め合わせ──因果のレンズで世界を見る
    • モンティ・ホールのパラドックス、シンプソンのパラドックス、バークソンのパラドックスなど、楽しくも手強い謎の数々を紹介する。おなじみの問題も、因果のレンズを通して見ると違う姿が浮かび上がってくる。
  • 第七章   介入──険しい山を登るための強力な道具一式
    • 介入は因果のはしごの二段目に位置する。「介入の山」の道は険しく、無事に登りきるためには、パスブロッキング、バックドア調整、フロントドア調整、操作変数、do計算法といった強力な登山道具が必要になる。
  • 第八章   反事実 ──「こうであったかもしれない」世界を考える
    • デヴィッド・ヒュームが一七四八年に因果性の定義を与えて以来、「反事実」は、因果関係の根底をなすものと捉えられてきた。因果のはしごの最上段に位置する反事実。その発展の歴史と現代の応用例を概説する。
  • 第九章   媒介──因果関係の背後にはどんな仕組みがあるのか?
    • 原因と結果をつなぐ「媒介」は、反事実の要素を含む難解な概念だが、因果推論の発展によって、今では簡単な数式で表せるようになった。媒介研究のパイオニア、バーバラ・バークスの知られざる業績とともに振り返る。
  • 第一〇章   ビッグデータ、AI、ビッグクエスチョン
    • 人間と同等の知性を持った「強いAI」を実現するには、自由意志の問題をはじめ、解決すべき課題が数多く残っている。だが、そうして生まれたAIは、人類の味方なのか、脅威なのか?私たちとAIの未来予想図。まず目次と本書に掲載されている /