高血糖症への途から逃れるために

高血糖症への途

食べ過ぎ,運動不足→肥満により,→高血糖症→糖尿病という引き返し,途中下車のできない新幹線に乗車中だと警告されている人は,私も含め多いであろう。

世の中には,高血糖について,あれがいい,これをしようという情報に満ち溢れているが,食べ過ぎ,運動不足→肥満→高血糖症→糖尿病というメカニズムに関する説明には,とんでも論も多く,まともなものでも,複雑で錯綜しているか,あるいは部分的なもので,なかなか全体の理解が難しい。

そこで私なりに,何とか本筋を踏み外さない手掛かりとなる海図を,まとめてみたいと思う。ただし,以下の記述は極めて不十分だし,誤りもあると思うので,適宜修正していきたい。

まず,ウイキペディアから,高血糖症と糖尿病の概要について引用し,「「代謝」がわかれば身体がわかる」(著者:大平万里)から,「血糖値を調節する仕組み」の概要と「血糖値を下げる仕組み」の説明を引用し(これで血糖値調整の「代謝」の全体像が見えてくる。),これを頭に入れたうえで,「最新版糖尿病は薬なしで治せる」(著者:渡邊昌)の実践と挫折を紹介したい。

高血糖症と糖尿病の基本

高血糖症とは血中のグルコース濃度が過剰である状態であり,125mg/dL以上の状態が慢性的に続くと臓器障害を生じうる。

空腹時においても持続する高血糖症を慢性高血糖症といい、これは最も一般的には糖尿病によって引き起こされる。糖尿病における高血糖症は、糖尿病のタイプと進行度に応じて、通常、インスリン濃度低下、および細胞レベルでのインスリン耐性によって引き起こされる。インスリン濃度低下、およびインスリン耐性により、体内のグルコースからグリコーゲンへの転換が抑制され、その結果、血液中の過剰なグルコースの除去が困難、または不可能になる。糖毒性を生じない通常のグルコース濃度では、任意の時点での血液中の全グルコース量は、20~30分間体内にエネルギーを補給するのにぎりぎり十分な量であり、体内調節機能によってグルコース濃度が精密に維持されなければならない。この機能が低下しグルコースが正常値を超えると、高血糖症が生じる。

グルコースはそのアルデヒド基の反応性の高さからタンパク質を修飾する作用(メイラード反応参照)があり、グルコースによる修飾は主に細胞外のタンパク質に対して生じる。細胞内に入ったグルコースはすぐに解糖系により代謝されてしまう。インスリンによる血糖の制御ができず生体が高濃度のグルコースにさらされるとタンパク質修飾のために糖毒性が生じ、これが長く続くと糖尿病合併症とされる微小血管障害によって生じる糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などを発症する。

「代謝」から見た高血糖

「代謝」がわかれば身体がわかる」の説明

血中にグルコースが余計にあると,その反応性からロクなことはない。高血糖は万病の元といっても過言ではない。かといって,全くなければいろいろ支障が出る。血糖値は程良い数値を常にキープしなくてはならないのだ。

血糖値の調節に関係する事項は,細かいところを含めれば,極めて複雑な機構が満載なのだが,ここでは本質的な部分のみで話を進める(図1参照)。

グルコースの形と血糖値の上下

グルコースはに,体内では主に3つの形で存在している。

1つ目は,血液を流れている「グルコース」。これは,「グルコースそのままの形」であり,血糖値はこのグルコースの濃度のことを指す。2つ目は,「細胞内反応型グルコース」。具体的には「グルコース‐6‐リン酸」である。解糖系でも登場する細胞内で様々な反応に進む時の形態だ。そして,実質的に,このグルコース‐6‐リン酸の細胞内での増減が,血糖値を決める鍵となる。3つ目は,「貯蔵型グルコース」の「グリコーゲン」。グルコースの外部からの供給が止まった場合,このグリコーゲンが分解してグルコースになる。

「血糖値を下げる」場合,グルコースが血液中で勝手に分解するわけではなく,血中のグルコースが細胞内へ取り込まれ,「グリコーゲン」あるいは「脂肪酸」になることによって,結果的に血中のグルコース濃度が低下するのだ。

逆に,「血糖値を上げる」場合は,グリコーゲンが分解したり,アミノ酸からの糖新生が進んだりして,細胞外へグルコースが放出されて,血糖値が上昇する。どちらの方向に進むにも,それぞれの反応を進める複数の酵素がある。

そして,血糖値の上昇・減少の方向性を決めるのがホルモンである。血糖値に関するホルモンは,間脳の視床下部,又はホルモンを分泌する分泌腺が血糖値を感知して,どの自律神経(交感神経と副交感神経)の命令を出すか,どんなホルモンを分泌するかを決める。血中に放出されたホルモンは,各細胞に「どういう方向の代謝に進むべきか」の情報を伝達する。そして,各細胞の代謝が変わり,結果的に血糖値の変化が起きる。

血糖値を下げる仕組み

では,血糖値を下げる方を見てゆこう(図2)。

食事で大量の糖質(グルコース)が入ってきた場合,まずは血糖値を適正な値に戻す必要がある。一時的に高血糖になった血液の状況は,視床下部および膠臓が認識して,副交感神経が血糖値を下げる方向に情報を伝達する。その結果,インスリンが腎臓から血液中に分泌される。各々の細胞の表面にはインスリン受容体があり,細胞がインスリンを認識すると,それがきっかけとなって血糖値を下げる方向で代謝が進むことになる。

特に肝臓の細胞では,グリコーゲン合成を促進する方向へ代謝が進む。インスリンによって活性化された細胞内の情報伝達物質は,グルコースを細胞内に取り込むように働き,ヘキソキナーゼによってグルコースはグルコース‐6‐リン酸となる。

インスリンによるシグナルは,さらにリン酸基のついた不活性型の酵素,グリコーゲンシンターゼを脱リン酸化させる。すると,活性型のグリコーゲンシンターゼになる。脱リン酸化による酵素活性の調節である。そして,グルコースの貯蔵形態であるグリコーゲンが次々と合成されてゆく。

一方で,活性型ホスホリラーゼを脱リン酸化させて不活性型ホスホリラーゼにして,グリコーゲン分解の反応の阻害もする。すなわち,脱リン酸化によって,グリコーゲンの合成は促進され,分解は阻害される結果,細胞内のグルコース濃度は減少してゆく。減少すれば,さらに外部からグルコースが取り込まれる。

ただし,肝臓以外の細胞では,グルコース‐6‐リン酸が過剰になった場合,グルコースー6‐リン酸によるアロステリック効果によって,ヘキソキテーゼの活性が低下してゆき,必要以上のグルコースの取り込みが起こらないようになる。しかしながら,肝臓ではこのアロステリック効果が起こりにくい。なぜか?

酵素の構造の違いもあるが,肝臓においては,グルコース‐6‐リン酸から脂肪酸合成の方向もあるからだ。つまり,脂肪酸合成の材料として,肝臓の細胞はいくらでもグルコースを取り込むことができるのだ。インスリンが肥満ホルモンといわれる所以である。

問題の所在と実践

問題は,「各々の細胞の表面にはインスリン受容体があり,細胞がインスリンを認識すると,それがきっかけとなって血糖値を下げる(グルコースを取り込む)方向で代謝が進む」のに,インスリン濃度低下(インスリンの不足)と,インスリン耐性(インスリン抵抗性)が生じる(グルコースの取り込みが阻害される)ことである。

これを基本に何をすべきかを考えたい。インスリンの不足(濃度低下)は,簡単にいえば,食べ過ぎ,運動不足が続き,過剰な血糖処理のために常時インスリンが作り続けられ,結果,膵臓が疲弊したこと,インスリン抵抗性は,内臓肥満が原因のようだ。上記図2を見ればわかるように,これはいずれもグルコースが細胞に入る入口の話だ。ただし「最新版糖尿病は薬なしで治せる」(者:渡邊昌。以下「最新版薬なし」と略称する。)の中に,運動によってインスリンによらなくても(AMPキナーゼの働きで)グルコースが細胞に入る旨が指摘されているので,この限りで入口が広がることになる。あとはグルコース(カロリー)の摂取量と,AMPの生産量(運動量)の話だが,ここは整理しないと混乱する。

「最新版薬なし」(旧版は,平成16年刊行の「糖尿病は薬なしで治せる」)は,糖尿病と宣告された医師である著者が「薬に頼らず,食事と運動だけで治す!」ことを志し,頻繁に血糖値を測定しながら,食事と運動の効果を検証しつつ,(ほぼ)糖尿病を克服したという,優れたレポートであった。

最近旧版を読み返してみて,少し説明が古いかなと感じ,改定されていないかなあと探してみると,「最新版薬なし」にアップデートされていた。最新版の帯は「食事と運動でここまでできる!」となっていて,「食事と運動だけで治す!」から後退している。内容をみると,どうも著者は,高血糖の状態が再発したらしく,インスリンも使用しているようである(原因はs高齢化とあるが,「外食は半分残す」,「甘いものは食べない」がおろそかになったようだ。)。そうであっても,糖尿病合併症の発症は阻止しているので,十分な実践であろう。ただ最新版は部分的に新しいことがバラバラと付け加えられているので,旧版にくらべてわかりにくなっている(なおこの本には,結構,逸脱気味の記述もある。断食,西式健康法…私は昔はそんな世界が好きだったけれど。)。それで上記のような整理をしてみようと思い立った。

あとは,「最新版薬なし」の各記述について,上記の整理のどこに引っかかる問題かということも興味深いので,今後,記述を追加したい。

 

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