DXの現状と展開

DXの現状

DX(Digital Transformation)は,コンピュータ科学,技術(IT,AI,IoT等)を利用して,個人・組織の行動・振舞いを変革し,問題解決と生産性・創造性の向上に結びつける試みと定義することができよう(人工物,自然を対象とする場合もある。)。もっともいわゆるバズワードで定まった定義はなく,これからも使われるかどうかは分からないと指摘されているが(「いまさら聞けないITの常識」(著者:岡嶋裕史),「デジタル」という視点からの問題の整理は分かりやすく,このWebではこれからも利用したい。
「デジタル」というのは以前から使用されていた用語であるが,なぜ今「デジタル」なのか。その理由として,ひとつは,コンピュータに関連する技術が進化し,デジタル情報の処理速度,容量が十二分に実用に耐える域に達したこと,これに対応して個人が使用する「スマホ」の能力が大幅に向上したこと,ディープラーニングを利用した技術(画像認識,将棋,碁等でゲームAI等)が画期的な変容を遂げたことが挙げられよう。ドイツのSAPは,デジタルの5大特長として「差分コストゼロ」,「無制限」,「時差ゼロ(リアルタイム)」,「記録・分析・予測」,「明細×組み合わせによるパーソナライズ」を挙げ,ポイントは「ヒトではなく,電子を走らせろ。電子は疲れない」にあるとする(「Why Digital Matters?-“なぜ”デジタルなのか」)。わかりやすい指摘である。
DXは,「デジタル化の中での企業の生き残りをかけた変革」という観点から取り上げられることが多いが,その基本は,個人を主体として一人一人の人間の行動(思考)を変革し,生活・仕事の問題解決と生産性・創造性の向上に結びつけるということであり,その主体を企業とし対象をビジネスに応用することから,複雑な問題が生じる一方,大きな力にもなる。したがって企業のDXは,DXの開発者だけではなく,これを取り入れようとする企業の一人一人が,程度の差はあれ,DXに取り組まないと,奏功しないのは,当然すぎるほど当然である。その意味でDXは,個人,開発者,企業の総合的なプロジェクトである。なおそれとは別に私は今,DXに関わるあるProjectに取り組んでいるので,それが具体化すればその情報も提供しよう。

DXを理解するポイント

現在,DXを推進・実現するための実に様々な提言,試みがなされている。これを見ていると,カオスに放り込まれ右往左往している「オシツオサレツ動物」の動きを見ているような面持ちとなる。
これからの考察にあたり,無駄にカオスに飲み込まれないために,DXについて私は次の3点がポイントであると考えている。現時点での私見である。
1点目は,DXの基本は個人の行動(思考)にあり,人間の行動(思考)がシステム1(速い思考)とシステム2(遅い思考)に大別されるとすれば,DXは,様々な問題を解決するために,システムの2の一部及び人にはそもそも不可能な論理的推論のうち数学で表現できる部分(要するに,人間では処理でない高速,大量の処理ができる部分)を利用しようとするものに過ぎず,しかもこれは今現在進行中であり全く完成されたものではないから,その限界を理解する必要があるだろうということである。逆にいえば,システム1,及びシステム2の行動及び自然言語による推論の大部分は,手付かずであり,依然として「教養」が活きる部分である。そのことが「AI讃美者」にはわかっていない。
2点目は,DXを推進するためには,一人一人が,自分の置かれているデジタル環境を把握し,これを改善して生活や仕事において使いこなす姿勢が必要だろうということである。家電のように黙ってスイッチを押せばいいというものではない。
3点目は,これまでのシステム開発(IT)において多発した紛争の原因を解明し,これを克服する思想と技術が必要だということである。要件定義の重要性とアジャイル開発の関係をどう考えるべきか,うまく整理できるだろうか。
更に,上記したように「主体を企業とし対象をビジネスに応用することから,複雑な問題が生じる」のであるが,これについては,「集中講義デジタル戦略 テクノロジーバトルのフレームワーク」(著者:根来 龍之)の整理が秀逸である。追って簡単に紹介したい。

「DX・IT・AI」の構成の概要

この「DX・IT・AI」という項目(メニュー)では,まず企業変革という観点から,「DXが変える企業と社会」を考察し,次いでDXを「評論」レベルでなくできるだけ具体的に理解するために「DXを支える技術」のポイントを概観する。更に,私の弁護士という職業固有のプロジェクトとして,「DX・IT・AI法務」を取り上げる。
次に基本に返り,DXと個人の行動(思考)の問題を考察することとし,知的生産術や労働生産性も含め「DXと生産性」を検討しよう。更にその一助となる「DXで学ぶ」を整理しておこう。そしてDXの主たる舞台となる一方,現実社会へも功罪半ばする大きな影響を与えている「ネット上の諸問題」を検討する。
最後にDXに関し現在最も人々の関心を集めている「AIとは何か」を概観し,次いで,更にこれらを踏まえ,私自身の仕事について「AI時代の弁護士業務」という観点から整理して検討し,情報提供しよう。

なおこの項目は,2020年6月に見直したが,コロナによってIT技術(ネット会議)棟が身近になったのは一応慶賀すべきことだが,これを契機としたセキュリティ侵害や詐欺という問題が多発しており,ますます人の知恵が問われている。