個と集団-「集団と集合知の心理学」を読む

2020-11-16

「企業」「政府」はヒトの集団である

「ヒトの生活と行動」では、もっぱら個人としてのヒトから見た「問題解決と創造」を取り上げたが、「企業」、「政府」はヒトの集団であり、集団の行動には、<個×人数>とは違う固有の問題(マイナス面もあればプラス面もある)があるだろう。
そこで「企業」「政府」を検討する(項目の内容を修正するのに)に先立って、「集団」固有の問題を検討することには、十分に意味があると思い至り、Kindle本を検索して、「集団と集合知の心理学」という本に巡り合った。

「集団と集合知の心理学」を読む

集団と集合知の心理学:有馬淑子

アクセス

「集団」を検索して見つけたのだが、これは「掘り出し物」である。著者は、社会心理学の「集団の心理をテーマとしてネットゲームなどを用いて研究して」しているそうで、第2章の「集団過程」には力が入っている。私には本書における著者の専門分野での記述のできばえは評価しようもないが、著者が専門分野に止まらず、「集団」と「集合知」(「集団」「組織」「ネット上」)を幅広く取り上げてそれぞれの知見を簡潔に整理していること、さらに補足事項として方法論である「情報科学、ネットワークの科学、意思決定研究の概念、人工知能、ベイズ統計、マインドフルネス認知療法、シミュレーション研究 (含む複雑系)」を簡潔にまとめていること等々、「まとめ本」として秀逸である(これはお得な「おまけ」だ。)。
また「集合知」(特に、第6章「インターネットの集合知」)は、「デジタル情報の氾濫と法とルールの破綻」の検討において、大きな地位を占める問題になると思う。

備忘録

作者側の発信情報

我々は、条件次第で愚かにも、賢くもなれる。困難な課題に直面した時、何を頼りとすれば正解に近づけるだろうか。集団の愚かさが強調されてきた集団研究と、賢さを強調する集合知の知見を統合しわかりやすく解説する。

私の備忘メモ

「集合」を抽象的な多数の要素の集まり「示す概念として、ヒトの集合は、群衆、集団(所属集団名を共有した2名以上の人々)とし、「組織」は集団のうち、役割構造・課題構造に関する知識が共有されているものと整理する。「企業」「政府」は「組織」であるが、その機能は全く違う。
本書3章「集合行動」は群れ(行動、知性、同調と感染)とネットを検討し、4章以下、集団、組織、インターネットの「集合知」を検討している。ネットの集合知については」少なくても「集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書) :西垣通)を併せて検討しよう。
なお本書には、組織の問題解決という視点は余りないのかも知れない。この著者の先輩かも知れないが、釘原 直樹さんの「人はなぜ集団になると怠けるのか -「社会的手抜き」の心理学 (中公新書) 」や「グループ・ダイナミックス –集団と群集の心理学」等が、次に検討すべき本だろう。

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