山ある日々,個人の問題解決,複雑な問題群

個の課題

私たちが,組織,環境,社会,世界の世界の複雑な問題群に向き合い解決していくためには,まず私が健康であり,かつ私の抱える問題-目標達成と依存からの脱却-を解決できる自立した個であることが重要である。

健康の問題は別に扱うとし,ここでは,目標達成と依存からの脱却-個の自立-を考えてみよう。

目標達成は重要な課題かも知れないが,依存からの脱却は私は関係ないという人もいるかも知れないが,煙草,お酒,食べ過ぎ,ネット,ゲーム,セックス等々,誰もが依存問題を抱えている。やめられない!!ことである。

これについて「人間の脳は…経験により快感回路(報酬系)を長期的に変化させる能力のおかげで、人間はさまざまなものを自由に報酬と感じることができ、抽象的観念さえも快いものにできる。突き詰めて言えば、人間の行動や文化の多くはこの現象に依存している。しかし残念なことに、その同じプロセスが、快感を依存症へと変化させてしまうのである」(快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか:デイヴィッド・J・リンデン)。

私はここ(刺激-行動-報酬のプロセスの定着(習慣化))に個の自立問題の焦点があると思う。

目標達成を論じる本の論点は錯綜している

誰でも素晴らしい目標を設定しそれを達成したいし,依存からの脱却は喫緊の切実な課題である。しかしどうも取り組みが散漫ですぐに途絶してなかなかうまくいかない。この分野を論じた本は,トンデモ本,経験譚,心理学本等々を含んで厖大であるが,襷にも短すぎるものが多く,全体を俯瞰できる帯を得ることが難しい。

私も,絶えず自分を何とかしたいという思いがあるから折に触れて買ったKindle本は厖大であるが,「でもここはどうなんだろう」という感想を抱かせる本をいくら買っても実践に結びつかないのは当然である。特に,ヒトの行動,思考はすべて習慣であるから,それを改めればよいという「習慣論」は,そのとおりであるが,ではその習慣はどういう原理で構成されているのか,何を改めれば良いのかという観点で見たとき,多くの「習慣論」は習慣の原理,その改革方法が様々な分野,問題に渡っていて使いにくいものが多い。

そういう中で,ヒトの行動と思考が「刺激-行動-報酬」のループにあること,そして報酬系が重要であることに立脚して展開している次の2冊には,蒙を啓かれた。

  1. 快感回路なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか:デイヴィッド・J・リンデン(Amazonにリンク)
  2. あなたの脳は変えられる 「やめられない!」の神経ループから抜け出す方法:ジャドソン・ブルワー(Carving Mind)(Amazonにリンク)

これを基盤にして「目標達成と依存からの脱却」の方法を位置づけていくと,有効な見取図とマニュアルが出来そうだ。

そこでまず「目標達成と依存からの脱却」全体の俯瞰図を次の「個の自立の論点表」に纏めてみた。

目標達成と依存からの脱却の論点表とその説明

論点表

目標達成と依存からの脱却の論点表

習慣論 ⑧

目標の達成

依存からの脱却

様々な技法(モチベーション) ⑥

脳のリセット ⑦

先延ばし ⑤

心身論とマインドフルネス ④

システム1とシステム2 ③

報酬系 ②

ヒトの行動と思考(刺激-行動-報酬) ①

論点表の説明

各説明

まず①②の核心は,上記の2冊でカバーできる。

③は,カーネマン等の二重過程論であり,頭に入れておくと良い。

④は,個の自立を支える,行動と思考の方法の基盤である。上記ⅱはこれに言及している。私の好みは,「なぜ今,仏教なのか―瞑想・マインドフルネス・悟りの科学 :ロバート ライト」(Amazonにリンク)や,「心と体をゆたかにするマインドエクササイズの証明 :ダニエル・ゴールマン , リチャード・J・デビッドソン」(Amazonにリンク)であるが,心身を伸びやかに機能させるものであれば,何でもいいわけである。

さらに①から④が整っても⑤「先延ばし」の魔の手が伸びてくる。次の本は,「私は、先延ばしをライフワークにしてきた人間だ。先延ばしの研究者としても、先延ばしの実践者としても、長年にわたり経験を積んできた」著者の書で,いろいろなことが書かれているが,その考案した「先延ばし方程式」から,先延ばしという悪癖を克服するための戦略も割り出せたということだから楽しみだ。①~④を踏まえて読み込めば,⑥⑦もカバーしている。

 ⅲ.ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか:ピアーズ・スティール

⑦は,上述したⅰⅱに頼ろう。

目標達成のための様々な技法と習慣論の説明

⑥の分野の本は,それこそ汗牛充棟である。

①~⑤に照らしてその意味あいを理解し,実践に結び付ければよいだろう。

例えば,私はかつて,コロンビア大学でモチベーション理論を教える社会心理学者のハイディ・グラント・ハルバーソンの「やり抜く人の9つの習慣」を紹介した。同書のまとめとして著者自身が次の9つの習慣を挙げている。

9つの習慣
  • 1.明確な目標を持っている。
    • 目標に具体性を与える Get Specific 
  • 2.if-thenプランの形で「いついつになったらやる」と計画している。
    • 目標達成への行動計画をつくる Seize the Moment to Act on Your Goals
  • 3.現状と目標までの距離に目を向けて「目標に近づくために何をすべきか」に焦点を当て,モチベーションを維持している。
    • 目標までの距離を意識する Know Exactly How Far You Have Left to Go
  • 4.成功できると信じている。同時に,成功は簡単には手に入らないと考えて,努力をおこたらない。
    • 現実的楽観主義者になる Be a Realistic Optimist
  • 5.最初から完璧を目指さない。失敗を恐れることなく,少しずつでも進歩することを考えている。
    • 「成長すること」に集中する Focus on Getting Better, Rather than Being Good
  • 6.どんな能力でも努力で身につけられると信じている。どんな困難でも「やり抜く力」を持って当たることができる。
    • 「やり抜く力」を持つ Have Grit
  • 7.意志力も鍛えれば強くなることを知っていて,習慣的に鍛えている。筋力と同じように,意志力も使いすぎれば消耗することを知っている。
    • 筋肉を鍛えるように意志力を鍛える Build Your Willpower Muscle
  • 8.誘惑をできるだけ近づけないようにしている。意志力で誘惑に打ち勝とうとはしない。
    • 自分を追い込まない Don’t Tempt Fate
  • 9.「やらないこと」でなく「やること」に焦点を置く。
    • 「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する Focus on What You Will Do, Not What You Won’t Do 
さてどうだろう

この中には①~⑤の問題と⑥の様々な技法が,そして⑥の中でも,様々な方法,見方が混在していて,決してわかりやすく整理されているとは言えない。でも「個の自立の論点表」に位置づけて理解しようとすると,いきなり「やり抜く人の9つの習慣」を投げ出されるよりわかりやすいことは間違いない。著者には同じような本がKindle本に2冊あるが(「やってのける 意志力を使わずに自分を動かす」,「やる気が上がる8つのスイッチ」),それを読みあさるより,目の前の本と「個の自立の論点表」を対話させる方が,はるかに生産的であると思う。

なお目標達成の技法は,「9つの習慣」でもいいのだが,もう少し心に食い込む技法を探すことにしよう。

また⑦習慣論は,上述したように,様々な分野,問題に渡っていて使いにくいものが多いのであるが,追って「個の自立の論点表」と照らし合わせて使えるものを選択しよう。当面,次の3冊を,「総合問題」として検討しよう。

     ⅳ.習慣の力 The Power of Habit:チャールズ・デュヒッグ
    ⅴ.ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣:ジェームズ・クリアー Atomic Habits
    ⅵ.スマート・チェンジー悪い習慣を良い習慣に作り変える5つの戦略:アート・マークマン

実践

目標を達成することの実践として,<学習する・表現する>,<上達する・創造する>があり,④「心身論とマインドフルネス」の自薦として,<自然を経験する>の項目を用意している。いずれもワクワクする活動だ。

 

山ある日々

仏教音楽祭~流音月聲~

ここのところ一心に取り組んでいた書面書きが昨日の16時45分にやっと終わり,提出することができたので,今日(2018年11月10日)は,かねて誘われていた總持寺で行われた「宗派を超え,五大へ響く仏教音楽祭~流音月聲~」を聞きに行った。全日本仏教青年会全国大会と同時に開催された催しのようで,總持寺の境内ではお坊さんらの様々な内容のテントのブースが開かれていた。私は少し早く行き,レトルトの精進カレーを買い,野菜ラーメンを食べた。

内容は2部からなり,前半は「西川悟平ピアノ&トーク 奉納コンサート」,後半は「仏教音楽祭~流音月聲~」である。実は私は事前にその内容を全く把握しておらず,パンフもみなかったので,白紙で聞き始めたのだが,西川悟平さんの,ピアノとトークには本当に感銘を受けた。

西川悟平さん

西川さんは,ピアニストとしての修行中の30歳の時,ジストニアと診断され,最初は指が全く動かなかったがそれを克服して徐々に使えるように克服していったもののそれでも限られた指しか使えず,「7本指のピアニスト」と呼ばれているそうだ。そのことは,言葉は悪いが「そうですか」と言うしかないが,西川さんはその行動力を関連分野にもどんどんぶつけて事態を切り開いていく,その姿に感動させられる。例えば西川さんは,ニューヨーク在住でその住まいに「泥棒」に入られ脅されたが,震えながらも率直なやり取りをする中で,最後はピアノを弾き,泥棒らが家を直してくれたこと,その後,その時の希望をかなえ,カーネギーホールで開かれたコンサートに呼んだこと。いじめにあって自殺したアメリカの子が作った曲を演奏することを頼まれてその両親のところに行き,その子の部屋で一晩過ごしたり,その曲を映画で使うときに両親を日本に呼んだこと。その他,話される西川さん一つ一つの行動が思わぬ展開をするにつけ,自分の思いをぶつけて事態を切り開いていっていることがよくわかる。さて,私はどうしたらいいのか。なお「西川悟平,動画」等で検索すると,西川さんの活動が描かれたドキュメンタリーやその他の情報が得られるので,ご覧になることをお薦めする。

仏教音楽祭

後半は,7つの仏教団体の,主として声と太鼓,法螺,雅楽等の演奏に,男性俳優の女装の踊り,演奏家の,和太鼓,三弦,二五弦筝が加わり,多様な展開があって楽しかった。ただ,私は,例えば真言宗系の読経はそれ自体が美しく感動的なことを知っていたので,今回の演奏は衝撃とまではいえなかった。

最後に主催者のいかにも仏教家らしい挨拶があり,参加者で般若心経の読誦をしたが,なんと途中で詰まってしまった,昔はすらすらだったのに。

ただ,青年僧たちが,「世界平和祈念」と題してこのような活動をしていることには感動を覚える。今の世界の宗教の多くは平和を忘れているし,我が国のほとんどの人もこのことを忘れつつあるようだ。今後とも活動が発展していくことを期待したい。

山ある日々

淡路町にある立山

私は時々,アフターファイブに,事務所の近くにある「しんえつ」という富山料理を出す居酒屋さんに行く。特に5時から1時間半ほどの「しんえつアワー」では,飲み物が280円?で飲めるし,お刺身や料理も安くて素敵なお店なので,早い時間からいっぱいになっていることも多い。ただし私は「しんえつアワー」が終わるとさっさと帰るという「困ったちゃん」だ。

そこのトイレに,だいぶ前から室堂平のみくりが池のポスターが貼ってある。私は,室堂平に,4,5回は行っているだろう。特に妻,息子,娘の4人で行き,山小屋に泊まり,みくりが池温泉に入り,立山三山を縦走したり,弥陀ヶ原を散策したのは,いい思い出だ。ポスターを見るたびに,立山を思い出していた。

地獄谷

ところでこの何日か,Webの記事にあれこれ手を入れていて,ふと以前のブログ「山ある日々」で室堂平の地獄谷のことを書いたことがあるのを思い出したので,早速探してみた。2010年9月の記事だった。これは面白いし,なにがしかの資料的な価値があると思うので転載しよう。

立山室堂平に,地獄谷という所がある。地獄谷は,立山火山の爆裂火口 で,比較的平坦な窪地に,硫黄の臭いがたちこめ,荒涼とした地肌に多くの噴気孔があり,水蒸気を噴出している。もちろん有毒である。遊歩道を通る限り安全だが,長居は無用だ。

今から7,8年前だろうか。ようやく登山に慣れはじめた頃,立山に登り,その折,地獄谷にも立ち寄った。地獄谷は,室堂平のターミナルからも比較的近いのでそれこそよくみる旗を持ったバスガイドが観光客にこの谷のことをあれこれ説明していた。それを聞くともなく聞いていると「馬鹿な弁護士ですね。」と言っているのが聞こえた。何のことかすぐには理解できなかったが,もう少し近寄って聞いてみると,「大分前だが,地獄谷の噴気孔の湯だまりに露天風呂代わりに入って死んだ人がいる。危険だからやめましょう。皆さんはしませんね。その人は弁護士で,遺族が裁判を起こして負けたそうです。」,「馬鹿な弁護士ですね。」という説明だった。

そのときは,作り話だろうと思っていたが,あとで思い出して裁判例を調べてみると,実際にあったことだった(訟務月報46巻9号3598頁)。

事実関係と判断のポイントは「本件事故は,Hが,本件遊歩道から通路もない斜面を下り,強い硫黄臭がしていて,人の手が加えられた露天風呂でないことが一見して分かる湯溜まりⅡに露天風呂代わりに入った際に生じたものであり,加えるに,Hは,ひまわり山歩会に所属し,月一,二回の広島県内での登山のほか年に三回ほどは県外で泊まりがけの登山を行い,温泉を利用することも多く,温泉好きであったのであるから,硫黄臭の強いガスが有毒なものであることが多いことを認識していたか,容易に認識することができたはずなのに,あえて,危険を犯して湯溜まりⅡに入ったものというべく,そうすると,被控訴人国は,湯溜まりⅡにおいて本件のような事故の発生する危険性を予測することができなかったものと認められる。したがって,被控訴人国が,前記のような柵等を設置するなどの措置を採っていなかったことをもって,直ちに本件遊歩道の設置又は管理に瑕疵があったとはいえない。そして,その他,本件遊歩道の設置又は管理に瑕疵があったことを根拠付けるに足りる事実は,本件証拠上これを認めることができない。」。

今(2010年9月),地獄谷には,頑強な柵等が儲けられているが(そして,投稿時(2018年7月時点)では,地獄谷は立入り禁止になっているようだ。),当時は,そういうものはほとんどなかったろう。ふらふらと湯溜まりに入って露天風呂気分を味わいたいのも分かるが,登山家は安全性の判断もせずに,それをしてはいけない。

ただこれが普通の観光客だったらどうだろう。自然と管理の問題は難しい。

ご遺族には気の毒だが,この判断は妥当だと思う。山好きの弁護士として身につまされるが。