問題解決と創造の方法を考える
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問題解決と創造の<現場と思考>
問題解決と創造の方法と技術を身につけ実践する前に,実践する現場(環境:自然とテクノロジー)について大まかに理解し,かつ創造の方法と技術を操作する主体である個人と組織の思考の特質(非合理性と合理的な推論と意思決定)について理解しておくことは意味あることだろう。もっともここに深入りすると,現場での問題解決と創造に至る前にそこをぐるぐる回りするけで終わってしまうということは,「知識人」,「教員」だけでなく「科学者」にもありがちなことだ。
現場(環境:自然とテクノロジー)を知る
現場(環境:自然とテクノロジー)を知るには,まず中学,高校レベルの「教科書」に目を通すのもよいが(ブルーバックスに「新しい高校の…教科書」シリーズ(Amazon)や,「発展コラム式中学の理科の教科書」シリーズ(Amazon)がある。),理科が苦手な大人向けに雑多な知識を集めたより読みやすい「入門書」に目を通すのがよいだろう。
そのような本はたくさんあるだろうが,たまたま私が最近購入したというだけだが「もう一度学びたい科学」(Amazon)からはじめてみよう。PART.1の「科学の大原理・大法則」は何とか分かるかな。PART.2の「ニュースがわかる科学の基本」の「生命の科学」,「気象の科学」,「エネルギーと環境の科学」,「宇宙の科学」だけでは全く物足りない。
まず1点目に「化学」分野はまったく抜けているので,ここは私の本棚にあった「ぼくらは「化学」のおかげで生きている」(著者:齋藤勝裕)(Amazon)でカバーすることにしよう。実際私たちの生活では「物理」はテクノロジーとして商品に封じ込められているので商品の使用法さえ分かればよいことが多いが,私のような「化学音痴」は,身の回りの物質のこと,食品のこと,生物の体のこと等々,なかなか理解するのが困難だ。炭素と水素が分かればまあいいか。
2点目に生命の歴史もない。そこで「系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 僕たちの祖先を探す15億年の旅」」(著者:長谷川政美 )(Amazon)の写真と曼陀羅図を楽しもう。ホモサピエンス代表は,著者のお孫さんだ。もっとも,本書には,真正細菌,古細菌ドメインには触れられておらず,最初の分岐は「シャクナゲとヒトの共通祖先」からだ。それについては,「たたかう植物 仁義なき生存戦略 」(著者:稲垣栄洋)(Amazon)の「植物vs.病原菌」に「トコンドリアと共生した生物の一部が,次にシアノバクテリアと共生して葉緑体を手に入れた。こうして,ミトコンドリアのみを持つ動物と,ミトコンドリアに加えて葉緑体を持つ植物が誕生したのである」とあり,イメージしやすい。もっともこの本の内容は豊富であり,植物,いや生命を理解するためにぜひとも一読すべきであるので追って紹介しよう(ただ類書は多い。)。
3点目に「地球の歴史,自然」もまったく不十分だ。これについては「地球とは何か 人類の未来を切り開く地球科学」(著者:鎌田 浩毅)(Amazon)が,まだ速読しただけだが,網羅的でよさそうだ。ただ過去の地震歴から,」2020年から2030年にかけて「関東中央圏での直下型地震」,「南海トラフ巨大大地震」が起こる可能性があるとしていて衝撃的だが,どうなんだろう。もう少し読み込んでみよう。
さて,以上に加えて「眠れなくなるほど面白い図解物理の話」(著者:長澤 光晴)(Amazon) ,「眠れなくなるほど面白い図解科学の大理論」(著者:大宮 信光 )(Amazon) には,もう少し突っ込んだ内容が記述されており,これらに親しみ,科学全体を通観できれば,しろうと科学者の端くれになれよう(なおこのシリーズには,化学,生物,宇宙等もあるが,内容,レベルはまちまちのようだ。)。
科学分野にはこれに引き続いて読むべき興味深い本は多い。「環境:自然・人工物・情報」,「科学」に,少し紹介している。
個人と組織の思考の特質(非合理性と合理的な推論と意思決定)について知る
「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)
ここでは問題解決と創造の方法と技術を検討する前に,ヒトと組織(の中のヒト)の思考の特質(不合理性)について,丁寧にきちんと整理して論じている「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)(Amazon) をあげておきたい。著者は,サセックス大学の心理学教授であったが1998年に亡くなっており,本書の刊行は1992年で30年近い前である(しかしKindle本の刊行,翻訳等は最近行われているようだ。)。しかし内容は非常にしっかりしており,かつ著者の表現は機知に満ちていて,読んでいて楽しい。本書刊行後,ネットの普及等でヒトと組織(の中のヒト)の思考の不合理性は強まっているが,ネット普及前の「原型」はどうだったのかという観点から捉え,現状をその「変容」と見ればいいだろう。本書は近々「本の森」で紹介したいが,著者が「序章」で本書の構成について述べている部分だけも紹介しておきたい。
「こうした本では,序章の締め括りで,各章の要約を述べるのが約束事になっている。読者が本書を読まないでもすむように,ここで内容を要約するほど私は親切ではないが,全体の構成だけ簡単に説明しておこう。2章(誤った印象)では,人が判断ミスをおかす最もありふれた原因を述べる。その後に詳しく見ていく不合理な思考の多くにこの原因が絡んでいる。続く七つの章(服従,同調,内集団と外集団,組織の不合理性,間違った首尾一貫性,効果のない「アメとムチ」,衝動と情動)では,不合理な判断や行動をもたらす社会的要因と感情的要因を見ていく。10章から19章まで(証拠の無視,証拠の歪曲,相関関係の誤り,医療における錯誤相関,因果関係の誤り,証拠の誤った解釈,一貫性のない決断・勝ち目のない賭け,過信,リスク,誤った推理)は,事実をねじ曲げてしまうために陥る誤りを扱い,それに続く二つの章(直感の誤り,効用)では,手元にある情報の範囲内で,少なくとも理論上は最善の結論を出せるような方法を述べ,そうした方法で出した結論と直感的な選択とを比較して,直感がいかに当てにならないかを示す。22章(超常現象)では,それまでに述べてきた誤りのいくつかを振り返り,超常現象やオカルト,迷信がなぜ広く信じられているかを考える。最終章(合理的な思考は必要か)では,ヒトの進化の歴史と脳の特徴から,不合理な思考をもたらす根源的な素地を考え,併せて合理的な判断や行動を促すことが果たして可能かどうかを考える。そして最後(合理的な思考は必要か)に,「合理性は本当に必要なのか,さらには,合理性は望ましいのか」を考えてみたい。」。
なお著者は合理性について次のように言っている。
「合理性は、合理的な思考と合理的な選択という二つの形をとる。手持ちの情報が間違っていないかぎり、正しい結論を導き出すのが、合理的な思考だと言えるだろう。合理的な選択のほうはもう少し複雑だ。目的がわからなければ、合理的な選択かどうか評価できない。手持ちの情報をもとにして、目的を達成できる確率が最も高い選択が合理的な選択と言えるだろう。」。
「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)
「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)(Amazon) は,人間の実際の思考を踏まえて,合理的な推論と意思決定について検討した本である。著者は,イギリスの心理学者である。少し前に入手していたが,古典的三段論法,「ならば」,因果推論,確率的説明,メンタルモデル理論,二重過程理論,帰納と検証,プロスペクト理論等,感情,合理性,個人差や文化の影響がもたらす複雑さ等,幅広く検討していて,「思考と推論」を考える上では必須の本であると思っていた。ただ問題はここに入り込むと,出てこられなくなることである。ほどほどが大事だ。
問題解決と創造への出発
以上を踏まえた上で,問題解決と創造のために,どのように頭と心を働かせるべきなのか。
以下,「問題解決と創造の方法と技術」に続く。