2004年に私が考えていた「ITが弁護士業務にもたらす影響」
いま弁護士は、そして明日は?
2004年に、日弁連の弁護士業務改革委員会が刊行した「いま弁護士は、そして明日は?」という本に、当時、同委員会の副委員長としてIT部会長であった私は、「ITが弁護士業務にもたらす影響」という論考を執筆している。
ITの世界で13年前というのは随分「昔」だ。2004年のIT関係の情報を見てみると「日本のGoogleで株価や路線、辞書などの特殊検索が可能に」、「Google、1GBの保存容量を持つウェブメールサービス「Gmail」発表」というのが見付かった。まだそういう時代だったんだなという印象だ、
ところで私が上記論考で何を考えていたかだが、当時の状況として「①裁判所は、全ての判例を電子データベースとして公開すべきだ。②裁判所や検察庁における書面の授受を、Eメールを利用し電子情報で行いたいという要望も強い。③裁判所や検察庁の尋問調書、供述調書等を電子情報で交付すべきだという声もある。さらに、④証人尋問を含む法廷でのやりとりや被疑者、被告人との接見を、インターネットを利用したテレビ会議システムを利用して行うようにすることが大切である、と考える弁護士もいる」と指摘し、「②③については、韓国で既に実現されているし、アメリカや他のIT化に積極的な国でも部分的に実現されている。中期的(3年ないし10年程度)には、充分に実現されると思われる」としているが、駄目でしたね。私は①には、今もそうであるが、あまり乗り気でなかった。日本における「判例」の位置づけという問題もあるし、生の情報から、意味ある情報を取り出すのは、とても難しい。
弁護士業務とAI
ところで、上記論考の中で私は、「デジタル化して収集した生情報(注:事実情報)、法情報を、弁護士の頭の替わりに(ないしこれに加えて)パソコンで稼働させるプログラムによって整理、思考、判断し、結論を表現することを可能とするの開発が急務である。例えば、弁護士が全ての証拠を踏まえて論証する書面(弁論要旨や最終準備書面)を作成するとき、必要な証拠部分を探して引用するのには膨大な時間がかかり、しかもなお不十分だと感じることはよくあるのではないだろうか。あるいは供述の変遷を辿ったり、証拠相互の矛盾を網羅的に指摘したいこともある。このような作業(の一部)は、パソコンの得意な分野である。また少なくても、当方と相手方の主張、証拠、関連する判例、文献等をデジタル情報として集約し、これらを常時参照し、コピー&ベイストしながら、書面を作成することは有益であるし、快感さえ伴う。これらの書面作成をいつまでも手作業ですることは質的にも問題であるし、実際これまで弁護士は忸怩たる思いを抱えながらこれらの作業をこなしていたのではなかろうか。目指すは、当面は進化したワードプロセッサー、データプロセッサーのイメージであるが、データ処理自体に対する考え方の「革命的変化」があることも充分にあり得る。これらのの開発には、練達の弁護士の経験知をモデル化する必要があり、弁護士会がすすんで開発に取り組む必要があろう。」と指摘している。
今振り返るとこれこそ、弁護士業務におけるAIの活用そのものである。
さて、これが実現するかどうか、2045年のシンギュラリティでどうだろうか。AIの道、はるかである。