人の心と行動

著者:デイビッド・B エイガス

「ジエンド・オブ・イルネス」の要約版だ

ジエンド・オブ・イルネス」(The End of Illness)という本は,健康を考える上でとても参考になるが(年賀状でも紹介した。),アメリカの本らしく,豊富な話題が登場してあちこちに飛ぶので,これを踏まえていざこれから何をしようかと考えると,分からなくなる。

同じ著者が,「ジエンド・オブ・イルネス」の内容を踏まえ,守るべき習慣としてまとめたのが,「元気で長生きするための、とても簡単な習慣」(A Short Guide to a Long Life)である。原書の存在は知っていたが,つい最近,翻訳本があり,しかもKindle本になっていることを知った。

この習慣のリストは,末尾に掲げたように,習慣1から65まであって,重いものから軽いものまで様々なものの混成だが,自分に欠けていると思うものをピックアップすればよいのだろう。各習慣には,1ないし数ページの説明が付されている。

私には,「座りっぱなしをやめる」,「ストレッチをする」,「「やることリスト」をつくる」あたりが,大切そうだ。あと大方の人にとって一番重要な「適正体重を維持する」に「体重が0.5キロ減るだけで,膝にかかる負担は,一歩につき2キロ減る」とある指摘は新鮮だ。確かに,体重が増えたまま山に登ると,膝への負担は大変で,しばらく痛みがとれない。この計算の根拠は不明であるが。

厳選!13の最強リスト

著者も,さすがにこのリストは多すぎると思ったのだろう,著者自ら「あらゆる人に必要な13項目。この簡単な最強リストだけでも必ず心がけて」として,「日常生活で健康を保つための最強リスト」を掲げている。以下のとおりである。

①毎年の健康診断

②家族の病歴

③禁煙

④身体を動かす

⑤規則正しく

⑥自分の身体を知る

⑦健康な食事

⑧健全な体重

⑨ストレス管理

⑪快眠

⑫ビタミン剤とサプリメントをやめる

⑬アスピリンとスタチンを検討する

使いにくいリスト

「ジエンド・オブ・イルネス」にせよ,この本にせよ,その内容の大半は共感を覚えるが,1,2,我が国ではどうかなという点がある。

一つは,著者は,盛んにスタチン(コレステロール値の低下薬)とアスピリンの服用を薦める(もちろん,適合する場合に限ってであるが。)。前者は,心臓病と脳卒中を予防し,後者は,心疾患リスクが減り,抗炎症力によって,がんのリスクも減るとされている。これは,受け入れるのが難しい。

もうひとつ,「ジューサーで作ったジュースは加工食品だ,ジューサーを処分して,ホールフード食べよう。」というが,言い過ぎのような気がする。

なお著者の最新の本は,「The Lucky Years: How to Thrive in the Brave New World of Health」だが,これは翻訳されていないようだ。

65項目の習慣リスト

習慣1 健康のサインを記録する

習慣2 自分を測る

習慣3 規則正しい生活

習慣4 自分の医療データをつくる

習慣5 「本当の食べ物」を食べる

習慣6 生産者と知り合いになる

習慣7 家庭菜園を楽しむ

習慣8 自分に合った食習慣

習慣9 オフィスでもリラックスする

習慣10 夕食に赤ワインを一杯

習慣11 清潔にする

習慣12 だれかと一緒に暮らす

習慣13 適正体重を維持する

習慣14 予防接種を受ける

習慣15 自分の裸を見る

習慣16 座りっぱなしをやめる

習慣17 毎日十五分以上汗をかく

習慣18 身体にいいコーヒーの飲み方

習慣19 家系の病歴を知る

習慣20 遺伝子検査をする

習慣21 「スタチン」という薬

習慣22 ベビー・アスピリン

習慣23 定期検診と予防接種

習慣24 健康面の目標を立てる

習慣25 病気になったら、賢く過ごす

習慣26 慢性疾患を管理する

習慣27 医師と二人三脚する

習慣28 正しい姿勢を保つ

習慣29 スマイルを忘れない

習慣30 趣味をもつ

習慣31 よくなると信じる

習慣32 苦手なエクササイズに挑戦する

習慣33 目と耳を守る

習慣34 歯と足の手入れをする

習慣35 心肺蘇生法を習う

習慣36 災害対策をする

習慣37 魚を食べる

習慣38 果物と野菜を食べる

習慣39 健康情報を次世代に伝える

習慣40 適度な潔癖性

習慣41 朝ごはんをきちんと食べる

習慣42 万能薬はないと理解する

習慣43 病気を前向きにとらえる

習慣44 ストレッチをする

習慣45 「やることリスト」をつくる

習慣46 助けを頼む

習慣47 子どもをもつ

習慣48 処方を守る

習慣49 犬を飼う

習慣50 「終活」を話し合う

習慣51 医療の基本的用語を覚える

習慣52 自分の健康を定義する

習慣53 人工食品とダイエットを避ける

習慣54 自然のデトックス

習慣55 危険な運動を避ける

習慣56 放射線照射に気をつける

習慣57 日焼けを避ける

習慣58 よい睡眠をとる

習慣59 炎症の原因を避ける

習慣60 ジュースを避ける

習慣61 肉を適度に食べる

習慣62 ビタミン剤やサプリメントを避ける

習慣63 適度に休む

習慣64 禁煙する

習慣65 自分の情報をシェアする

 

 

 

人の心と行動

「ジエンド・オブ・イルネス」

最近また少し体調を崩し、そろそろ「いつまでもいくら飲んでも大丈夫」とは言っておられないなあと感じている中で、たまたま目にした「ジエンド・オブ・イルネス」(デイビッド・エイガス著)(病気の消滅)を読んだ。

自分で自分を守るしかない

この本の内容は、「アイデアをカタチに」の「健康になる」との関係で、別途紹介することにするが、その中に、「がんになるのが、たいてい子どもを持つ年齢を過ぎてからなのは、偶然ではない。進化は、子どもを持つ可能性が低い40歳代、50歳代の人間を守ることには、あまり関心がないのだ。進化が気にかけているのは、あなたが、子を持てるように体のシステムを維持できるかどうか、ということだけなのだ。」、「自然は善良かもしれないが、愚かでもなければ、情け深くもない。年寄りにエネルギーを注ぐような無駄はしないのである。したがって、体が新しい生命を世の中に送り出せなくなった後は、私たちは自分で自分を守るしかない。」という記述がある。

これは、進化論を理解するとよくわかるが、要するに、「生物は繁殖度が上がるように進化する」のであるから(したがって、できるだけ多くの子孫作りさえ行われれば、様々な原因で直ちに死んでしまう動植物も多い。)、繁殖期を過ぎた動物が長生きするような手立てを進化は選択・保持していない、繁殖期後の身体は生存を継続できるような固有のメカニズムを備えていないということである。子供のころは免疫と親に庇護され、繁殖期までは「若さ」を保つ進化的メカニズムに庇護されていても、繁殖期を過ぎれば、従前の「若さ」の仕組みがある範囲で使いまわしできるだけで、あとは、「自分で自分を守る」方法を講じていくしかない。

少なくても中高年の人が健康を考える場合は、これに得心が行くか行かないかで、将来は分かれるだろう。繁殖期後は、老いて衰退するというより、いきなり姥捨て山に放り出されるというのが正しいイメージではないだろうか。

自分を守る手立ては何か

自分を守る手立ては、このブログでも一度触れたことのある「食動考」である。これに休息を付け加えてもいいだろう。

私はこれについて、今後、健康になりたいという「思い」を「実現する」プロジェクト(アイデアをカタチにする)の中で、できるだけ実行が容易なスキームを提供したいと思っている。実は私が関与していたビジネスジェットを使った「国際医療搬送事業」は、我々が作成・提供する健康管理アプリを使用する個人会員が、海外にいて救急搬送が必要となった時に、優先的に安価(無料)で提供するというスキームを検討していたが、その中で「健康管理」については、ある程度検討していた実績がある。

もっとも、そこでは、私自身は適用除外になっていたので、何度も体調不良になってしまうわけだ。今後は、繁殖期を過ぎた私は「自分で自分を守るしかない」ということを根底において、当然私にも適用され、私自身も健康になる、「食動考休システム」を検討してきたい。

 

 

 

人の心と行動

マジカルナンバー7から3へ

人間が記憶できる量を「チャンク」と呼ばれる塊りで表すと、7±2個の範囲に収まるとして「マジカルナンバー7(±2)」ということがいわれるが(Miller, G. A. (1956). The magical number seven, plus or minus two: Some limits on our capacity for processing information.)、実際は素材の種類に依存し、数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個である、そして見かけ上の記憶成績を増やす要因をできる限り排除すると、若年成人の純粋な短期記憶容量は約4チャンクだそうなので(以上、ウィキペディア)、中高年になると3チャンクだろう。

ところで、中高年、特に60歳を過ぎると体についてあれこれ配慮しながら毎日の生活をしていかないと、あちらこちらにガタが来るというのが実感だが、もちろんあれもこれもというわけにはいかない。なんせ3チャンクだから、カバー出来ることは限られる。でも一番の問題は面倒くさくなって、頭の中は0チャンクで何もしないことだろう。

マントラと標語

いや一つ頭に入っておけば十分だという考えもある。仏教では、念仏(南無阿弥陀仏)、お題目(南無妙法蓮華経)、光明真言(オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン)などを唱えるが、これは意味よりもマントラとして唱えるという世界だ。

キリスト教の主の祈り(天におられるわたしたちの父よ、み名が聖とされますように。み国が来ますように。みこころが天に行われるとおり地にも行われますように。わたしたちの日ごとの糧を今日も お与えください。わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします。わたしたちを誘惑におちいらせず、悪からお救いください。アーメン)や、仏教の懺悔偈(さんげげ)(我昔所造諸悪業(がしゃくしょぞうしょあくごう)、皆由無始貪瞋癡(かいゆうむしとんじんち)、従身語意之所生(じゅうしんごいししょしょう)、一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいさんげ)や、十善戒(弟子某甲盡未来際(でしむこうじんみらいさい)不殺生 不偸盗 不邪淫 不妄語 不綺語 不両舌 不悪口 不慳貪 不瞋恚 不邪見(ふせっしょうふちゅうとうふじゃいん、ふもうごふきごふりょうぜつふあっく、ふけんどんふしんにふじゃけん)なんかは長いし、意味に充ち満ちた世界だ。ところで、私の頃の主の祈りは文語文だったなあ。それと十善戒の代わりに五戒というものもあって、これは4番目までは同じだが、5番目が何と不飲酒(ふおんじゅ)になって終わり。どうして不飲酒がいきなり大抜擢を受けるのだろう。今の私にはよくわかるが。

でもこれらは人によってはいいかも知れないが、60を過ぎた体のガタは防げない。そこで健やかな毎日を過ごすための私流の標語(モットー、スローガン)を考えよう。

食動考

私が考えた標語は、食動考。体に大切なのは、食べることと、動くことと、考えることという意味だ。食は小食、動は多動、考はダニエル・カーネマンの「システム2」だろう。これらの意味内容については、今後じっくりと生命論、健康論として検討していきたいと思うが、今日はとりあえず、標語だ。

でも食動考のままでは抽象的だから、個人個人で食動考のそれぞれに具体的な対象を乗せよう。今の私の場合(当然どんどん変わっていくものだ。)、食は野菜、動は毎日できるスクワットかな。考は英語だな。そうすると口調も考えて、「一英、二スク、三野菜(いちえいにすくさんやさい)」というところだろう。

これを毎日口ずさんみ、毎日少しでもいいから欠かさず実行すれば、0チャンクや、対象が多すぎて結局何もできない場合との差は、明白だ。

偶然に驚く

というようなことを昨日(2014年12月15日)までに考えて、食動考はなかなかいいなあと自画自賛して記事を作成したが、今日アメリカのamazon.comを見ていて驚いた。SCIENTIFIC AMERICANの特集号として「EAT,MOVE,THINK Living Healthy」が販売されていた。「EAT,MOVE,THINK」?食、動、考そのままだ。ただ内容は、7セクションに分けて、それぞれ4、5本程度の短いエッセイから構成されているが。

これはまったくの偶然ではあるが、私が大切だと考えていることが期せずして、SCIENTIFIC AMERICANのeditorと一致したということだ。もっとも誰が考えても同じようなことになるということかも知れないが。