弁護士への質問

2021-03-19

私が時折聞かれる弁護士業務に関するQ&Aを集めてみました

Q 国際事件も扱いますか

私は主として国内の事件を中心に受任していますが、個人、企業、行政のグローバルな活動に対応すべく個別のご相談により、国際的要素を含む事件にも取り組みます。「海外法務」を参照してください。

Q 専門分野は何ですか

私は様々な法律分野に幅広く対応するように努めており、よほど特殊なものでない限り、これはやらないということはありません。これについては「弁護士紹介」の「私の弁護士としての考え方」に、「一人の弁護士が、共時的にできることは限られていますが、時を異にすればそれは可能ですし、またそうあるべきだと思います。そのように心がけて経験を重ねれば、大概の類型の紛争や法律問題に遭遇しますし、どんな紛争や法律問題も、幅広い広がりと関連性を持っていますから、自分はこれが「専門だ」というのは、「これしかできない」ということであり、感心しません。弁護士が得意な「単品料理」を持つことは当然ですが、「単品料理」だけを提供すべきだ、そちらの方が美味しいという考えは持っていません。」と書いたとおりです。裁判官も、受け持つ事件の選り好みはできませんものね。私は、もともと決まり切ったことより、新しいこと、人が余りやらないことをする方が好きです。

Q 弁護士として得意なことは何ですか

弁護士紹介」の「私の弁護士としての考え方」に掲げていますが、得意なことは、事実や法律をよく調べ、充分に考え抜き、的確に表現して、説得することです。 典型的には、裁判官が誤った判断をしないように、前提となる事実やそこから導かれる論理的な結論を徹底的に分析し、説得する書面を、全力を挙げて作成するように努力します。

弁護士の仕事は、論理的かつ科学的なものであるべきだというのが私の信条です(もっとも私は若い頃は「文学青年」だったので、情緒的、感覚的なところも多いにありますが。)。したがって、訴訟、意見書や契約書の作成、検討提言型の政策法務に向いていると思います。

細かい法律知識は無限に必要ですので、すぐに出せる人はいません。そのようなことに渉るアドバイスは、充分な準備をして臨みます。

Q 裁判は弁護士に依頼しなければ出来ませんか

わが国の法律上の仕組みでは出来ます。しかし、何でもそうだと思いますが、どんなによく出来る人でも、その分野に習熟していない人がいかにそれらしくやろうとしても、「素人っぽい頓珍漢さ」があるのは否めません。訴訟は、複雑な事象の集まりですし、その過程、結論はご本人にとって重要な問題ですから、ご本人で訴訟(広く裁判所で手続)をすることは、簡単な問題や、経験することに意味がある場合を除いては、お薦めしません。

Q 弁護士は忙しすぎて依頼した事件に充分に時間を割いてくれないと聞きましたが

地方の弁護士さんは、全体としての弁護士の数が増えても、まだその数は少ない、裁判所への移動に時間がかかる等々があって忙しそうですが、私はそういうことはありません。個々の事件への対応に十分に時間が割ける態勢にあります。

ただ、弁護士は、基本的には事件処理はすべて自分一人でこなさなければなりませんから(私は複数の弁護士から知恵、労力を借りることはあっても、最終的には一人で仕上げるのが弁護士の仕事だと思っています。)、「重い」事件が何件か重なるととても「忙しそうに見える」ということはあると思います。

 

Q 弁護士費用はどうやって決まるのですか。それはいつ支払うのですか。お金がなくても受任してくれますか

弁護士は、仕事として、法律サービス業務(法律事務)を提供しているので、有償です。

弁護士費用は、抽象的に言えば、当該事件の難易度とその事件に関して弁護士が払うと見込まれる労力(着手金)と、最終的に依頼者にもたらされる経済的な利益(報酬)を総合考慮して決めることになります。 ただ、依頼者の経済状況やその事件が持つ社会的意味合いを考慮して、減額や支払時期の調整に応じています。弁護士費用の詳細は、「弁護士費用について」を見てください。

Q 弁護士の仕事がどんなものか分かりやすく説明してください

弁護士が仕事をする上で、読む、書く、計算する(考える)という能力はどれも大事ですが、話すということも大きな役割を占めています。重い物を持ち上げる力はいりませんが、長時間仕事を継続できる持久力は必須です。

弁護士は、野球選手や医者と同じく職業(仕事)に付された名称です。弁護士法3条は、弁護士は「訴訟事件、非訟事件、行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする」としていますから、弁護士の仕事の内容は、①裁判に関する行為と、「その他一般の法律事務を行うこと」からなり、さらに後者は、②裁判前の交渉、③法律関係文書の作成、④法律問題のアドバイスに分けることが出来るでしょう。

一昔前の弁護士は、ほとんど、①の裁判だけをしていましたが、今は、②~④の「一般の法律事務」をメインの仕事にしている弁護士も多くいます。私は、どちらかといえば後者の方が多いと思いますが、最近改めて結果が出るだけに当事者に対する影響が大きい裁判が弁護士の仕事として重要だと思っています。

弁護士は事務所で仕事をすることが多いのですが、裁判所や、依頼者、相手方のところ、時には「現場」にも出かけます。裁判所では、「証人尋問」の時は長時間を費やしますが、「弁論」のときは,ほんの数分で終わることがほとんどですし、同じ時間に多くの事件の予定が入っていて、初めての人はびっくりします。しかし、「弁論」は、弁護士が長時間かけて準備した書面を提出し、今後の予定を協議する機会なので、それにも合理性があります。しかし、わざわざ裁判所まで出かける必要はないわけで、そろそろITの活用が望まれます。

弁護士は職業ですから、仕事の場から離れると、パパ、ママであったり、ジジ、ババであったりする普通の人です。普段、「先生」と呼ばれ慣れているので、いささか高慢だと思われるかも知れませんが、多分あまり世慣れていないので、そう思われるだけのことも多いでしょう。

弁護士は仕事にかなり多くの時間が取られるので、余り遊び回る時間のある人はいません。私が百名山を完登できたのは、本当に幸運に恵まれたからというしかありません。

Q 弁護士は依頼者のいうことが嘘だと分かっても弁護するのですか

民事事件と刑事事件ではいい方が少し変わります。

民事事件ではまともな弁護士であればそのようなことはしません。ただ、ある事実というのは、天上の神様の目から見るならば格別、地上の人間の目から見ると実は何が真実であるかということはよく分かりません。特に弁護士は、一方の当事者から提供された資料に基づいてその事実を理解しますから、なおさらそういうことがいえます。しかも依頼者の表現が稚拙であったり、大事なことを取り違えていて、最初は嘘っぽかったが、よく聞くとそういうことかということも、ままあります。でも最初から明らかな嘘であることが分かっていればそれが正しいとする弁護はしませんし、仮に途中で嘘だと分かれば依頼者を説得し、しかるべき対応をします。

刑事事件では、被告人がいうことが嘘だと分かっていても、適正な手続に基づいて裁判所の判断がなされるよう「弁護」します。

Q 弁護士は偏った思想を持っていませんか。お金儲けしか考えないのではないですか

前段については、弁護士の仕事には、裁判官や検察官、あるいは行政官という「お役人」、場合によっては警察官とも激しく争う場面があることや、弁護士法1条が、弁護士は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と普通の人が普段口にすることがないようなことを弁護士の役割としていることもあって、そのように見られるのだと思います。いずれも、仕事をする上での、立場や役割、機能の話です。 弁護士には「野党」を支持する人が比較的多くいるので、そのように見られることもあるのだと思います。でも、それは個々の弁護士の考え方の問題です。大事なのは、仕事をする能力と情熱です。

後段については、お金儲けしか考えない弁護士はいないと思います。どんな弁護士でも、事務所とスタッフがいなければ充分な弁護活動は出来ませんから、そのための弁護士費用は頂きます。それ以上にお金儲けをするかどうかは個人的な資質の問題だと思います。

Q 弁護士は適当に妥協するときましたが、本当ですか

世の中には多くのもめ事があります。もめ事は双方にとって大きな精神的な負担となりますから、もちろん大事にならないうちにおさまった方がいいといえるでしょう。 しかしもめ事には原因があり、感情の行き違い等だけが原因であれば、「まあまあ」でもめ事がおさめることはそれ自体に価値あることでしょうが(もっとも最近は、そのようなことが出来る立場の人が少なくなりました。)、一方で、何らかの「権利」を侵害されたことからめ事になったのであれば、その「権利」が回復されないのに「まあまあ」というわけにはいきません。その場合は、「権利」を国家権力の力を借りて回復することをためらうべきではありません。

しかし多くのもめ事には双方にそれなりの「言い分」があるので、「権利」が7割くらい実現されるのであれば「まあまあ」で手を打った方がいいということは充分にあり得ることです。これが「紛争」解決の基本的な原理ですが、当事者だけではなかなかうまくいきません。そこに弁護士の存在意義があると言えるでしょう。それは、「適当に妥協」とは、違うことだと思います。

Q 弁護士という職業には、様々なイメージ方がありますが、どうしてでしょう

弁護士は様々なイメージを持って語られますが、これを硬軟に分けてみましょう。まず硬いイメージから。

弁護士法1条には、弁護士は「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」、「前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」という「使命」「努力義務」が書かれています。主として強いものと闘い、弱いものを擁護するイメージでしょうか。弁護士の仕事にこのような側面があることは紛れもない事実です。弁護士が自分の仕事を考えるとき、この弁護士法の規定に遡って考えることもよくあることです。そしてこれと並んで、弁護士法2条には、弁護士は「常に、深い教養の保持と高い品性の陶やに努め、法令及び法律事務に精通しなければならない。」といささか手に余ることも規定されています。

しかし弁護士が「深い教養の保持と高い品性の陶や」に努めていますといっても、実際は弁護士は反対の、軟らか過ぎるイメージを持ってみられているかも知れません。狡猾である、悪者の擁護者である、金の亡者である、法律を盾に弱者をふみにじる、口先だけで誠意がない等と、ろくでもない「悪しき隣人」のイメージで理解されることもあります。しかしこれは、多くの場合、弁護士が行っている仕事の危うさ、すなわち、他者の「秘密」が多く含まれる紛争に関与し、しかもその一方当事者をサポートして(時には多額の)報酬を得るということに起因するものだと思っています。

もちろんそうであるからこそ、「深い教養の保持と高い品性の陶や」あるいは弁護士としての倫理が要請されるものだと思います。 ちなみに弁護士法にある「深い教養の保持と高い品性の陶や」ですが、「深い教養」という用語は、法令では、(短期)大学設置基準、教育職員免許法施行規則に規定されているだけです(こちらは分かりますよね。)。「品性の陶や」は弁護士法にあるだけで、「品性」について、衆議院速記者養成所規則に「怠惰若しくは品性不良な者」は「退所を命ずることが出来る」とあるだけです。なんだか不思議な規定ですね。

まだまだあるでしょうが、このくらいにしておきましょう。

Posted by murachan54