地球の環境問題

2023-03-20

持続可能性から地球の環境問題を理解する

環境問題は、公害問題、地域環境問題と、地球環境問題に分けることが出来る。前者は被害が直接的なのである意味で分かりやすいが、後者は、温暖化問題、オゾン層問題等、ヒトが直ちにはとらえることができない問題である。

ここでは持続可能性から見た「地球の環境問題」についてできるだけ分かりやすく情報提供したい。以下、参考になる資料を紹介しよう。なお持続可能性の考え方の概要については、「世界の複雑な問題群」で説明した。

環境問題全般について、放送大学の講義、印刷教材が丁寧に情報提供しており、問題の把握に便利である。

私は現代社会・世界の問題を「複雑系と持続可能性がもたらす世界の複雑な問題群」ととらえているが、ほぼ同様の観点から問題全体を捉えようとしているのが、「データブック〕近未来予測2025」、「2052  今後40年のグローバル予測」、「Come On! 目を覚まそう!」の3冊である。これらを読み込めば、問題状況をほぼ捉えることが出来よう。

持続可能性という観点から問題を突きつけているのが「エコロジカル・フットプリント」と「小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発:J.ロックストローム」の2冊である。

これらを視聴し、読み込めば、「地球の環境問題」はほぼ理解することが出来るだろう(私が詳しく検討したときは、「本の森」で紹介したい。)。あとは、実行あるのみだ。

放送大学の講義・教材

  1. ダイナミックな地球
  2. 「人新世」時代の文化人類学
  3. 環境問題のとらえ方と解決方法
  4. 環境と社会
  5. 地球温暖化と社会イノベーション
  6. エネルギーと社会
  7. 市民自治の知識と実践

1、2は、地球と人類を理解する準備、3~5は、環境問題論(4は、経済学と環境法からの アプローチであるが、私は経済学部部分には異論が多い。)、6はエネルギー問題論、7は、市民の実行論である。放送大学については、「今から学び始める方法-オンライン講義と読書」を参照。印刷教材につき、Amazonは、在庫がなくなると、定価+総量の業者を紹介するので、要注意。全国に販売する書店があるのでそこで纏めて購入した方がいいか?

複雑系と持続可能性から問題全体を捉えるこの3冊

  1. 〔データブック〕近未来予測2025 :ティム ジョーンズ、キャロライン デューイング(Amazonにリンク

  2. 2052 今後40年のグローバル予測:ヨルゲン ランダース(Amazonにリンク

  3. Come On! 目を覚まそう!―ローマクラブ『成長の限界』から半世紀 ~環境危機を迎えた「人新世」をどう生きるか? :エルンスト・フォン・ワイツゼッカー, アンダース・ワイクマン(Amazonにリンク

1は、多数の専門家から得た近未来の変化に対する回答について、世界の39都市で120のワークショップを開催して得た意見を整理して纏め(日本の都市は入っておらず、わが国の現在の位置付けが分かる。)、更にこれを専門家に投げかけて、多くの問題についての意見を、未来の、人、場所、覇権、信念。行動、企業に分けて纏めている。こういう言い方では内容が伝わりにくいのだが、世界中の少なくてもものを考えようとしている人が、今後の世界の環境問題を含む変化についてどう考えているかがよく分かる。

2は、ローマクラブで「成長の限界」の執筆にも関与した著者が、40年目の2012年に、専門家の寄稿を得、それを検討して、40年後の2052年を予測したもの。これまで一番のお薦めであった。私は2052年を生きるのだ(「2052年を生きる」というコンテンツまで作成した。)。次頁に詳細目次を軽視したので是非目を通して頂きたい。なおこの本にあるデータや補完的情報は、<http://www.2052.info/>で入手することができる。

3は、ローマクラブのメンバーが、2017年に刊行したもので、環境問題と資本主義、更には情報の問題について詳細に検討したもので、今、私が一番お薦めする本である。次頁に詳細目次を軽視したので是非目を通して頂きたい。

持続可能性を突きつめるこの2冊

  1. エコロジカル・フットプリント
  2. 小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発:J.ロックストローム(Amazonにリンク

1は、地球の持続可能性に、エコロジカル・フットプリントという分かりやすい指標を持ち込んだもので、何個かの本があるので、次項で紹介する。
2は、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)の範囲内で、科学技術の発展や持続可能な社会への転換を促し、貧困の緩和と経済成長を追求する新たな発展パラダイムを提唱している」美しい写真が掲載された本である。

「エコロジカル・フットプリント」をめぐって

「エコロジカル・フットプリント」は、1990年ころ、ブリティッシュコロンビア大学の、リース教授、及び院生であったマティース・ワケナゲルが開発した、環境評価の手法である。

両名の共著「エコロジカル・フットプリント 地球環境維持のための実践ぷらニング・ツール」、別の著者にワケナゲルさんが加わった「エコロジカル・フットプリント 地球1コ分の暮らしへ」等が翻訳されているが、少し古い。雑誌の特集ではあるがWWF監修の「地球にちょうどいい生きかたの指標 エコロジカル・フットプリント入門」(BIOCITY 2013 No.56)が様々な寄稿者によって多面的に論じられており、分かりやすい。
ワケナゲルさんは、2019年9月に「Ecological Footprint 」(by Wackernagel, Mathis)を出しており、これに最新の情報が記載されている。

  1. 「エコロジカル・フットプリント 地球環境維持のための実践プランニング・ツール」(Amazonにリンク)

  2. 「エコロジカル・フットプリント 地球1コ分の暮らしへ」(Amazonにリンク

  3. 地球にちょうどいい生きかたの指標 エコロジカル・フットプリント入門」(BIOCITY 2013 No.56)(Amazonにリンク)

  4. 「Ecological Footprint 」(by Wackernagel, Mathis)(Amazonにリンク)

持続可能性への様々な取り組み

国際機関・政府の取り組み

「成長の限界」や「エコロジカル・フットプリント」を追いかけるように、国連等の国際機関、日本の政府、自治体も動き始めてはいるが、その関係は錯綜しているし、実効性(というより「本気度」という方が適切か)も、多くは多分に疑問である。

国際機関の取り組み

歴史的な経緯を整理しておきたいが、次の機会にしたい。

国連

現時点では、「持続可能な開発目標(SDGS)」への対応が突出している。アメリカの対応が後ろ向きで足を引っ張っているが、同国内の反科学的な世論と相まって、こんなことをしていては、早晩アメリカは、世界の問題から置いて行かれるかも知れない。

WWF(世界自然保護基金)

民間機関として立派な活動をしていると思う。 WWFジャパンにリンクしておく。

その他

日本政府の取り組み

外務省

「ODAと地球規模の課題」という項目があり(外部サイトにリンク)、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の他、気候変動、北極・南極、地球環境等の項目が記載されている。

環境省

「政策分野一覧」という項目があり(外部サイトにリンク)、総合環境政策、地球環境・国際環境協力、環境再生・資源循環、自然環境・生物多様性、大気環境・自動車対策、水・土壌・地盤・海洋環境の保全、保健・化学物質対策から構成されている。

下位項目に「持続可能な開発目標(SDGs)の推進」、別に「生物多様性」がある。

環境法

環境法を論じた本を掲記しておくが、様々「環境法」の目的文言だけ見ると、目標達成はそこまで来ているようだが、実際は、遠ざかる一方である。一番信用されていない法分野かもしれない。

  • 環境問題のとらえ方と解決方法:放送大学
  • 環境と社会:放送大学
  • 環境訴訟法〔第2版〕:越智 敏裕
  • 環境法 第4版:大塚直 
  • 環境法 第3版 北村喜宣 
  • 環境法(第2版) 有斐閣ストゥディア:北村喜宣
  • 環境アセスメントとは何か――対応から戦略へ (岩波新書):原科 幸彦
  • 環境アセスメント学の基礎:環境アセスメント学 編
  • 自治体環境行政法 第7版:北村 喜宣
  • 都市法概説[第2版]:安本典夫 R

企業の取り組み

企業の取り組みは、「CSR」(Corporate Social Responsibility)、「CSV」(Creating Shared Value)、「ESG」(Environment、Social、Governance)、「SDGs」(Sustainable Development Goals)の、それぞれ舌を噛みそうな略語を通じて捉えることができる。
CSR(企業の社会的責任)は、以前からいわれていたことで、そろそろ定着するのかなと思ったら、ポーターさんのCSVに足をすくわれ、更に最近は。ESCやSDGsに追撃されているという感じだ。でも言葉の問題ではなくて、社会における企業の捉え方の問題が基底にある。

CSR

「会社は社会を変えられる- 社会問題と事業を〈統合〉するCSR戦略」(著者:岩井 克人、小宮山 宏)(Amazonにリンク

「CSRデジタルコミュニケーション入門」(著者: 安藤 光展 )(Amazonにリンク

CSV

「CSV経営戦略 本業での高収益と、社会の課題を同時に解決する」(著者: 名和 高司 )(Amazonにリンク

私は名和さんの本は「コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法」(Amazonにリンク)が面白かった。特にその中で「ビッグ・ピボット なぜ巨大グローバル企業が<大転換>するのか」(著者:アンドリュー・S・ウィンストン) (Amazonにリンク)を紹介していることに(日本語版の序文も書いている)大きな意味があると思っている。同書が、世界の動きを[より暑く」、「より稀少に」、「よりオープンに」ととらえていることが優れていると思うし、実践すべき「ビッグ・ピボット」もとても興味深い。

ESG

「ビジネスパーソンのためのESGの教科書 英国の戦略に学べ」(著者:黒田一賢 )(Amazonにリンク

SDGs

「SDGsが問いかける経営の未来」(モニター デロイト :編集)(Amazonにリンク

私たちの取り組み

私たちひとりひとりが「持続可能性」のために何ができるかはとても難しい。ただ毎日の仕事や生活をする上での「心構え」はあり得るだろう。「成長の限界」を書いたデニス・L・メドウズさんもランダースさんも、本当は地球の未来に悲観的だけれども、力を抜いて歩むことを勧めている。まずこれらを紹介し、追って、具体的に何ができるかを考えていこう。

デニス・L・メドウズさんが勧める5つのツール

  1. ビジョン を 描く こと、
  2. ネットワーク を つくる こと、
  3. 真実 を 語る こと、
  4. 学ぶ こと、
  5. そして 慈しむ こと

ランダースさんの 20 の個人的アドバイス

❶ 収入より満足に目を向ける
❷ やがて消えていく物に興味を持たない
❸ 最新の電子エンターテインメントに投資し、それを好きになろう
❹ 子どもたちに無垢の自然を愛することを教えない
❺ 生物多様性に興味があるなら、今のうちに行って見ておこう
❻ 大勢の人に荒らされる前に世界中の魅力あるものを見ておこ う
❼ 気候変動の影響が少ない場所に住みなさい
❽ 決定を下すことのできる国に引っ越しなさい
❾ あなたの生活水準を脅かす持続不可能性について知ろう
❿ サービス業や介護の仕事が嫌なら、省エネ関連か再生可能エネルギーの分野で働きなさい
⓬ 成長は良いことだという考え方から脱却する
⓭ 化石を基にした資産は、ある日突然、その価値を失うことを忘れないように
⓮ 社会不安に敏感でないものに投資しよう
⓯ 相応の義務以上のことをしよう。将来後ろめたい思いをしなくてすむように
⓰ 現在の持続不可能性の中にビジネスの可能性を探ろう
⓱ ビジネスで、高い成長性と高い利益率を混同しないように
⓲ 選挙で再選を望むなら、短期的に結果が出る公約を掲げよう
⓳ 未来の政治は物理的限界に左右されることを覚えておこう
⓴ 政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝ることを認めよ

トゥーンベリさんの取り組み

2019年9月23日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)が、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席し、「地球温暖化に本気で取り組んでいない大人たちを叱責した。トゥーンベリさんは世界のリーダーを前に、時に涙を浮かべながら約5分間スピーチ。温暖化解決のための具体的な行動を取らないのであれば、「結果とともに生きなければいけない若い世代」はあなたたちを許さないと強く訴えた」ことが報じられている。

トゥーンベリさんのスピーチ全文

私から皆さんへのメッセージ、それは「私たちはあなたたちを見ている」、ということです。私は今、この壇上にいるべきではありません。私は海の向こうで学校に行っているべきです。それなのに、あなたたちは私に希望を求めてここにきたのですか?よくそんなことができますね!
あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢そして子供時代を奪いました。それでも私はまだ恵まれている方です。
多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。
それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!
30年以上にわたって、科学ははっきりと示してきました。それに目をそむけて、ここにやって来て、自分たちはやるべきことをやっていると、どうして言えるのでしょうか。必要とされている政治や解決策はどこにも見当たりません。
あなたたちは私たちに“耳を傾けている”、そして緊急性を理解していると言います。しかしどれだけ私が怒り悲しんでいようとも、私はそれを信じたくありません。
なぜなら、もしあなたたちが状況を理解していながら行動を起こしていないのであれば、それはあなたたちが邪悪な人間ということになるからです。私はそれを信じたくありません。
二酸化炭素排出量を10年で半分に減らしたとしても、地球の平均気温を1.5℃以下に抑えるという目標を達成する可能性は50%しかありません。そしてそれによる取り戻しのつかない連鎖反応を埋め合わせることは、制御不能になります。
あなた方は50%でいいと思っているのかも知れません。しかしその数字には、ティッピング・ポイント(小さな変化が集まって、大きな変化を起こす分岐点)やフィードバックループ(フィードバックを繰り返して改善していくこと)、空気汚染に隠されたさらなる温暖化、そして環境正義や平等性などの要素は含まれていません。
そして、私たちや私たちの子供の世代に任せっきりで、何千億トンもの二酸化炭素を吸っている。私たちは50%のリスクを受け入れられません。私たちは、結果とともに生きなければいけないのです。
「気候変動に関する政府間パネル」が発表した、地球の温度上昇を1.5℃以下に抑える可能性を67%にするために残っている二酸化炭素の量は、2018年1月の時点で420ギガトンでした。今日、その数字はすでに350ギガトンにまで減っている。
なぜこれまでと同じやり方で、そしていくつかの技術的な解決策があれば、この問題が解決できるかのように振舞っていられるのでしょうか。現在の排出量レベルを続ければ、残っているカーボンバジェット(温室効果ガス累積排出量の上限)は、8年半以内に使い切ってしまいます。
しかしこの現状に沿った解決策や計画は作られないでしょう。なぜならこの数字は、とても居心地が悪いから。そしてあなたたちは、それを私たちにはっきりと言えるほど十分に成熟していない。
あなたたちは、私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。
もしあなたたちが裏切ることを選ぶのであれば、私たちは決して許しません。
私たちはこのまま、あなたたちを見逃すわけにはいかない。
今この場所、この時点で一線を引きます。世界は目覚め始めています。変化が訪れようとしています。あなたたちが望もうが望むまいが。

Posted by murachan54