人の心と行動

~世界レベルの名医の「本音」を全部まとめてみた~

著者:ムーギー・キム

ベスト・パフォーマンス編 (Amazonにリンク) 

病気にならない最先端科学編 (Amazonにリンク
 

レイアウトに難あり

「最強の健康法」は,「ベスト・パフォーマンス編」と「病気にならない最先端科学編」の2冊の単行本で構成されている。しかしそのこともすぐには分からないし,本の表紙にも,表紙から目次の間までにも,ごちゃごちゃといろいろなことが書いてあり,しかも,目次も色付きで,ごちゃごちゃといろいろなことがいろいろなレイアウトで書いてあり,率直にいってそれで嫌になる。こんなことで投げ出したくなる本も珍しい。作成サイドは工夫を凝らしたつもりだろうが,度が過ぎている。目次の医師や「専門家」の,氏名のみならず所属の紹介も煩わしい。

後記の詳細目次は,余計な記述を除いて分かりやすくしてみた。項目だけをあげると,「ベスト・パフォーマンス編」が,「消化,食事,食べ方,歯磨き,禁煙,目,歩行,生産性向上,マインドフルネス,うつ病(心理療法),うつ病(食事療法),疲労,疲労回復,水虫,睡眠,不眠」,「病気にならない最先端科学編」「①健康を護る最先端科学」が,「健康診断,糖尿病・高血圧,心臓病,がん,ウイルス」,「 ②若さを保つ最強の健康習慣」が,「アンチエイジング,男性ホルモン(意欲減退、頻尿、ED),薄毛,不妊治療,骨粗しょう症,認知症,人生の終わり方」である。これだけだと,覗いてみたくなるだろう。

内容は悪くない

本書は著者が,医者や健康についての「専門家」約50名から取材した最新の科学的な健康・医療情報を,更に2人の医者・研究者がダブルチェックして上記の項目にまとめたというのが「売り」である。内容もかなり網羅的であるし,個々の記述も平易で参考になるものが多く,「内容は悪くはない」。しかしレイアウトが…。

中でも,誰でも「健康診断,糖尿病・高血圧,心臓病,がん」は気になるところであり,基本的な知識を持つのはいいことだ。

実践的な項目は,特に目新しいことはなく,基本は,減量,運動,食事である。運動として本書の項目にはないが,私はスロージョギングを勧める。

「生産性向上」の「1時間に一度は立ち上がって、体を動かそう─「座りっぱなし」で寿命が縮む」という指摘は,身に染みる。「薄毛」はもうだめなようだ。高齢男性なら「頻尿」はチェックしたい。

ただ,本書以外にも,良書はあるので,追って紹介しよう。

詳細目次

人の心と行動

スロージョギングで人生が変わる

著者:田中宏暁

出版社等による内容の紹介の要約

ランニングブームの今、歩くペースで走るスロージョギングなら、中高年や高齢者でも楽しめる。ウォーキングの3倍の効果があり、内蔵機能・筋力はもちろんのこと、脳の機能も向上することが実証されている。歩くスピードなら70歳、80歳からでも走れる。本書は、スロージョギングのメソッドをわかりやすく解説し、すぐにも実践できるよう具体的なアドバイスも充実。

著者は,1947年生まれで,福岡大学スポーツ科学部教授等を歴任。専門は運動生理学で、特に肥満・動脈硬化性疾患などの生活習慣病の治療と予防、健康増進・競技力向上に有効な運動処方に関する研究が主なテーマ。2018年4月に,膵臓がんで亡くなられたとの由,ご冥福をお祈り申し上げます。

なお本書は,2011年発行だが,著者による最新の本に「ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング 」 がある。

私のコメント

朝のジョギングを始める

今日現在(2018年10月31日),私は3週間ほど,朝のジョギング(歩くより少し速いくらいのスローペースです。)をしている。この夏は暑かったせいか,運動がまるでできず,今までにないほど太って体調も悪くなったので(実は,原因を夏の暑さのせいにするのは「間違い」。食べ過ぎ,飲み過ぎ,何よりも代謝が年齢相応に落ちていることが原因だ。),3週間前から朝のスローなジョギングを始めた。去年も,10月に朝のジョギングをしたが,早く起きて走るのは寒いし辛いし,時間の確保も難しいので,1ヶ月でやめたが,それなりの成果は出た。今年は,朝多少ゆっくり事務所に行ってもあまり問題がないことが分かったので,朝起きてまずお風呂に行って体調を整え,それから50分ほどジョギングすることにした。そうするとあまり無理なくジョギングできることが分かった。

そこで1ヶ月でやめずにもう少し続ける気になって「スロージョギング」について調べるため「本書」を購入した。

ポイント

著者は,運動生理学者なので,運動,肥満を巡る議論はとてもしっかりしているが,それは別の機会に「勉強」すればよい(「詳細目次を参照されたい。)。私が知りたかったのは,次のことだ。

①走り方は,かかと着地ではなくて,フォアフット着地(土踏まずより前部分)にし,地面は蹴らずに,重力を利用して前に進む。

②背筋はまっすぐし,顎はやや出して前の方を見る。

③走るスピードは7キロ(歩くより少し速いくらいのスローペース)で十分,前後の体操も気にせず,筋トレにもこだわらない。少しで汗をかかなければ,普通の服装でも大丈夫。

こんなところだろうか。

①は,私も大好きな「BORN TO RUN」(著者:クリストファー・マクドゥーガル)にも紹介されていることだが,これは追って紹介することとし,ここでは触れないことにする。フォアフット着地は,昨日の帰宅時のウオーキング,今日の朝のジョギングでも試してみたが,とてもお腹に効く気がする。ただなれるまで少し筋肉痛になりそうだ。

どうやって継続するのか

今のやり方だとあまり負担を感じないので,多少は継続できるような気がする。あとは,「自分の行動改革」の問題だ。

詳細目次

人の心と行動

「やり抜く人の9つの習慣  コロンビア大学の成功の科学」(Amazonにリンク

著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン

9 THINGS SUCCESSFUL PEOPLE DO DIFFERENYLY by Heidi Grant Halvorson

出版社等による内容の紹介の要約

◎話題沸騰! Harvard Business Reviewで最多閲覧数を記録

◎モチベーション科学の第一人者が教える「心理学的に正しい目標達成の方法」とは?

コロンビア大学でモチベーション理論を教える社会心理学者の著者が,多くの心理学者たちの数々の実験と,著者自身の研究成果によって証明ずみの「心理学的に正しい目標達成の方法」によって,「成功とは生まれつきの才能で決まるものではありません」,「「成功する人には共通の思考や行動のパターンがあります」として,「心理学的に正しい目標達成の方法」を展開する。

◎本書で紹介する「目標達成に最も寄与する習慣」

  • 目標に具体性を与える・目標達成への行動計画をつくる
  • 目標までの距離を意識する
  • 現実的楽観主義者になる
  • 「成長すること」に集中する……etc.

◎本書で手に入る「目標達成ツール」

  • 目標達成の切り札「if-thenプランニング」
  • 目標までの距離に目を向ける「これから思考」
  • ネガティブな側面にも目を向ける「現実的楽観主義」
  • 失敗を味方にする「成長ゴール」
  • 〝やり抜く力〟を支える「拡張的知能観」……etc.

「今日からすぐ実行できる考え方がコンパクトなページ数(120ページ)の中で豊富に紹介されています。」,「仕事からダイエットまで「達成したい目標」があるなら,ぜひ本書を参照してみてください」,「これまでより,もっと早く,もっと上手に,目標を達成できるようになるはずです。」。

私のコメント

全体の感想

読んでいて余り異論のない目標達成のための行動論と言える。内容もシンプルに纏まっていてよいが(元がブログ記事だという紹介がある。),抽象的で説明不足とか,物足りないという感想もありうるだろう。ただ,ある程度「習慣」を巡る本を読んでいれば,著者が,何を問題にしているのかだいたいピンとくるし,参考文献も掲載されているので(ただし,翻訳されていないものが多そうだ。),十分だと思う。第6章で「グリット」や「マインドセット」にも触れられている。私としては,頭がこの方面に向いている人にはおすすめだ。そうでない人の興味は惹かないだろう。

表題にある「9つの習慣」とは?

「9つの習慣」が,9章にわたって展開され,各章には,その内容を端的に表す表題が付されているほか,各章の最後に,何個かのポイントから構成された「まとめ」が付されている。

さらに最後に,著者によって,「9つの習慣」次の様のまとめられている。ここでは,その著者の最後のまとめと,それに対応していると思われる各章の表題(翻訳と英語)を紹介しておく。各章の最後にある何個かのポイントから構成された「まとめ」は,追って紹介しよう。

  • 1.明確な目標を持っている。●目標に具体性を与える Get Specific 
  • 2.if-thenプランの形で「いついつになったらやる」と計画している。●目標達成への行動計画をつくる Seize the Moment to Act on Your Goals
  • 3.現状と目標までの距離に目を向けて「目標に近づくために何をすべきか」に焦点を当て,モチベーションを維持している。●目標までの距離を意識する Know Exactly How Far You Have Left to Go
  • 4.成功できると信じている。同時に,成功は簡単には手に入らないと考えて,努力をおこたらない。●現実的楽観主義者になる Be a Realistic Optimist
  • 5.最初から完璧を目指さない。失敗を恐れることなく,少しずつでも進歩することを考えている。●「成長すること」に集中する Focus on Getting Better, Rather than Being Good
  • 6.どんな能力でも努力で身につけられると信じている。どんな困難でも「やり抜く力」を持って当たることができる。●「やり抜く力」を持つ Have Grit
  • 7.意志力も鍛えれば強くなることを知っていて,習慣的に鍛えている。筋力と同じように,意志力も使いすぎれば消耗することを知っている。●筋肉を鍛えるように意志力を鍛える Build Your Willpower Muscle
  • 8.誘惑をできるだけ近づけないようにしている。意志力で誘惑に打ち勝とうとはしない。●自分を追い込まない Don’t Tempt Fate
  • 9.「やらないこと」でなく「やること」に焦点を置く。●「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する Focus on What You Will Do, Not What You Won’t Do 

「9つの習慣」を簡単に検討する

1,2は,目標と計画の重要性である。計画をif-thenプランという形にすることを推奨している。

3,4,5は,行動によって目標に到達するまでには,時間と距離の隔たりがある。そこでの「行動論」である。

6は「マインドセット」を,「固定的知能観」と「格納的知能観」にわけ,後者の「能力は経験や努力を重ねることによって高めることができる」を正しいとするが,そのためには「グリット(やり抜く力)」が不可欠だとする。

7,8は意志力を問題にしているが,意志力は消耗することもあり,要は,あまり意志力に頼らない「行動」とすべきだとする。

9は,行動分析学が指摘するように「~をしない」は問題にせず,「~をする」ことにどのような行動随伴性を設定するかが重要だとする。

本書をどう活用するか

私は今,「個人:生活・仕事・文化」の「前提の2」として「自分の行動改革」を,「習慣」という観点から検討している。

そこでは「良い習慣、悪い習慣―世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法」(著者:ジェレミー・ディーン),「習慣の力」(著者:チャールズ・デュヒッグ)「ぼくたちは習慣で,できている。」(著者:佐々木 典士)等を参考にしているが,本書も加えて検討することになろう。

その他に,「自分を変える1つの習慣」(著者:ロリー・バーデン)という「階段マインンドセット ちょっときついが正しい行動をとる思考」を推奨するビジネス本があるが,なかなかノウハウに満ちていて,これをうまく活用したいと思っている。

いずれにせよ,①前状況-②行動-③状況の変化という枠組みの中で,①,②,③の中に何を入れ込んで,目標の達成論を考えるべきか,できるだけ速やかに試論を作りたい。

なお,本書には,詳細な目次はないので,詳細目次は掲載しない。