法とルール

弁護士とビジネス

「法とビジネスの諸相」で述べたように、もともと弁護士は「ビジネス」と無縁であった。もちろん弁護士がしていることは「民(みん)の仕事」であるからビジネスであることは当然であったが、「事件」が来るのをまってその枠組みで仕事をするという受動的なスタンスに慣れ親しんでいて、なかなか弁護士としての発想やスキルをビジネスそのものに参加して生かそうとはしなかった。国内、国外の様々な公的機関への参加も低調であったし、ボランティアやプロボノへの参加も、災害時の救援活動を別にすれば「政治思想」が後押ししているケースが多かった。

今の時代の中で

今の時代は暗いイメージに彩られているが(でも私は「繁栄」派だ。)自分が何をすべきかは、おおむね自分で決定し実行できる、あるいはしなければ朽ち果ててしまう「時代」であって、これを制約するような要因はほとんど存在しない。私が弁護士としてこれからも「法律事務」を受任し実行していくことは当然であるとしても、そのような予定調和的で、受動的な枠組みからは飛び出さなければ。考えてみれば、若い頃の私はそれをもっとも尊んでいた。

私のチャレンジ

私が弁護士としての発想やスキルを生かしたいビジネスの対象は、国際的な価値創造、交換と、生命の充実・健康システムの開発である。現時点で当面具体的に取り組むべきことは、

  1. 羽田空港におけるビジネスジェットの整備、格納ビジネス
  2. 中型ビジネスジェット機を利用する国際医療搬送(エアアンビュランス)
  3. ダイエットに様々な要素(小食、多動、睡眠、旅行、文化活動等)を盛り込んだ双方向性の健康アプリの開発
  4. 教育支援

である。

今後、それへの道筋を開けるような、読書、研究、実務体験を積み重ねていきたい。

法とルール

一口コメント

「法とルールの基礎理論」に関する本をまとめてみた。本棚にあって目についた本をまとめただけなので、決してこれが最良というわけではないし、網羅的でもないが、悪くない本が集まった。

1、2は、人類史の進化論的論点を踏まえた上で利他行為やルールの存在について解明しているので、視野を広げ、適切な出発点を設定するのに適している。2は、読むのに疲れるが。

3は、最近出たものだが、国家に関する幅広い論点を取り上げた上、わかりやすく説明しているので、とても参考になる。国家が適切に果たすべき役割がたくさんにあるということを冷静に理解させてくれる。国家と聞くと頭に血が上って感情的な議論をするだけではだめだと反省。

ただ、3の出発点はヨーロッパの近代国家なので、それ以前、それ以外の地域について、「法人類学」も研究しているという4が、多少古めかしい分析だが参考になる。

法のあり方を考察するためには、5ないし10が、それぞれ特色ある良書だと思う。特に6は、どうして、法哲学、法思想というマイナーな分野に、こんなにわかりやすく説明しようとした、受験のためのトピック集のような本があるのかびっくりだ。10は、ちょっと手に入らないかもしれない。

11は、ここで紹介するのが適切かどうかわからないが、5ないし10で法学者がご大層に語る日本の法律実務のレベルがどうなの(行政分野だが)という、日本文化論としても読めるお笑い「実務書」だ。12は、広い観点から日本の司法の現状を分析している。13、14は、元裁判官が日本の裁判所を痛烈に批判している。

15、16は、外国にも目を向けましょうということだが、どちらもとても面白い。

17から19は、日本で研究、教育をしている外国人の研究者、実務家の、裁判所、日本の法文化、弁護士論。いずれもとても面白い。

紹介

1

クリストファー ボーム 長谷川 眞理子
白揚社
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Basic Books (2012-05-01)

2

ルールに従う―社会科学の規範理論序説 (叢書《制度を考える》)
ジョセフ・ヒース
エヌティティ出版
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Following the Rules: Practical Reasoning and Deontic Constraint
Oxford University Press (2008-10-16)

3

国家の社会学

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佐藤 成基
青弓社
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4

世界の法思想入門 講談社学術文庫

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講談社 (2014-11-28)
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5

法学入門

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星野 英一
有斐閣
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6

よくわかる法哲学・法思想 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
深田 三徳 濱 真一郎
ミネルヴァ書房
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7

現代法哲学講義

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8

法理学講義

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田中 成明
有斐閣
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9

法社会学 (NJ叢書)

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法律文化社
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10

法政策学―法制度設計の理論と技法

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平井 宜雄
有斐閣
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11

行政法解釈学〈1〉実質的法治国家を創造する変革の法理論
阿部 泰隆
有斐閣
売り上げランキング: 683,595
行政法解釈学〈2〉実効的な行政救済の法システム創造の法理論
阿部 泰隆
有斐閣
売り上げランキング: 561,577

12

テキストブック 現代司法

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木佐 茂男 佐藤 鉄男 川嶋 四郎 水谷 規男 宮澤 節生
日本評論社
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13

絶望の裁判所 (講談社現代新書)

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瀬木 比呂志
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14

ニッポンの裁判 (講談社現代新書)

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講談社
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15

はじめてのアメリカ法 補訂版

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樋口 範雄
有斐閣
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16

開発法学の基礎理論―良い統治のための法律学
松尾 弘
勁草書房
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17

名もない顔もない司法―日本の裁判は変わるのか (NTT出版ライブラリーレゾナント)
ダニエル・H. フット
NTT出版
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18

裁判と社会―司法の「常識」再考 (日本の“現代”)
ダニエル・H. フット
NTT出版
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19

手ごわい頭脳―アメリカン弁護士の思考法 (新潮新書)
コリン・P.A. ジョーンズ
新潮社
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本の森

6冊?

2014年の大晦日なので、今年、読んだ本のうち記憶に深くとどめるべき本についてまとめておこう。ただしこれは今年刊行された本という意味ではない。私が今年少しまじめに取り組んで示唆を受けたぐらいの意味だ。

といっても、ホームページの整理を考えはじめたのが2ヶ月前なので、まだ本のことにまで十分な手が回らない。だからとにかく最近読んで今の私にとって(仕事や社会貢献等を含んで)重要だと思った本6冊について簡単にまとめておこう。6冊なのは、思いつくままで、適当な数だ。

ただ重要だと考える基準は、知的好奇心を満たすとか、面白いとかよりも(もちろんいずれもそうなのだけれども)、私が現在取り組もうと思っている、価値と健康の創造に添ったものになっている。人も多少は進歩するのだ。

この本6冊

次の6冊だ。

  1. 繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史
    マット・リドレー、
    The Rational Optimist by Matt Ridley
  2. 暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る
    山極 寿一
  3. 貧困の終焉: 2025年までに世界を変える
    ジェフリー サックス
    The End of Poverty: Economic Possibilities for Our Time by Jeffrey Sachs
  4. 経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略
    マイケル.E.ポーター
  5. GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス
    ジョンJ.レイティ、 リチャード・マニング
    Go Wild: Free Your Body and Mind from the Afflictions of Civilization by John J. Ratey and Richard Manning
  6. 哲学入門
    戸田山 和久

簡単なメモ

私が、世界における価値創造ということに目を開かれたのが1だ。これをもう少し遡って動物としてのヒトから考える基本が2だ。更に国際的な経済展開として開発途上国の現在の価値創造を実践しているのが3で、それをより深く考える視点を4が与えてくれる。

これらは3、4はともかく、進化論を基本とするものだが、それをもとにヒトの心身論を考察している最新の本が5である(ただし、この本の糖と炭水化物に関する議論は、単純すぎる。)。さらにこれらを、原理的に考察しているのが6だ。

これらの分野は日々新しい成果生まれている。私の本のストックもたくさんある。来年は、自分自身で少しでも創造に足を踏み入れたい。