ブログ本の森と山ある日々,法とルール

「弁護士村本道夫の未来の法律事務所」は、非力を顧みず私が独力・自力で、企画、作成、発信しています(私の自己紹介は「弁護士紹介」を、このWeb全体の簡単な紹介は「HOME」や「事務所案内」をご覧ください)。
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なおここ数年、WordPewssをいじるのが億劫になってきて(主因はブロックエディター、副因はコロナかな)、継続的な投稿ができない常態なので、まずテキストだけで投稿できる<note>に投稿し、それからおおもむろにこのWebサイトに整理してみようと思います(2023/07/19)。ですから<note>も見てください。

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法とルール

「法とルールの基礎理論」でどんな問題を解決するのか

これまで「法とルールの基礎理論」、「法とルールの基礎理論の本まとめ読み」という記事を作成してきたが、いずれも「入口」の前に佇む風情に止まっている。
そもそも私はなぜ「法とルールの基礎」を考察しようとするのかの確認から始めよう。

基礎法学の学者であれば、「学問」、あるいは「知的好奇心」ということで済ますこともできるだろうが、私は「問題解決と創造」を志す弁護士実務家であるから、目的は、法に関わる現実の「問題解決と創造」に活かすことである。

では解決すべき法に関わる現実の問題とは何か。

3つの問題設定

3つの問題とは

当面、解決すべき問題を、「権力制御と人権保障」、「専門性・複雑性による制御不能」、「デジタル情報の氾濫による制御不能」の3点と捉えてみる。

私も含めて、これまで法のあり方を批判的に検討しようとする者は、少なくても「権力制御と人権保障」は視野に入れていた、あるいはそれ以外の視座を持てなかったといっていいであろうか。

でも今法が直面しているのは、「専門性・複雑性の制御不能」によって現実へ対応できず、「デジタル情報の氾濫による制御不能」によってその機能が破綻しつつあるという現実だ。

しかし、だから「法の再生、復権だ」などと軽々にいうと、「権力制御と人権保障」と衝突することは間違いない事実だ。
いずれの問題も深くその根拠に遡り、法をどのように定立、運用すれば、上記3点の問題解決への展望が開かれるのかを探求しよう。

3つの問題についてどのようにアプローチするのか

「権力制御と人権保障」は、これまでの実定法学に加えて、周辺の「法哲学」、「法思想史」、「法制史」、「比較法」、「法社会学」、「法と経済学」等々(以下、「周辺法学」という。)、更に、法学から離れ、進化論、言語ゲーム、ゲーム理論、行動経済学、複雑系ネットワーク科学、ベイズ推定、統計学等々(以下、「周辺科学」という。)を踏まえ、活用することによって、政府の立法実務と裁判所の法実務(法解釈+事実認定)を「権力制御と人権保障」を実現する「科学」にすることが目的だ。

「専門性・複雑性の制御不能」は、周辺法学、周辺科学をにらみつつ、,複雑系科学、システム思考により、複雑化した世界や社会、テクノロジーに対応すること、及び、対象が複雑で専門的であっても、一般市民として通常の日本語運用能力があれば、理解し、使いこなせる平易な立法化(立法学)の問題といえるであろうか。

「デジタル情報の氾濫による制御不能」は、デジタル・テクノロジーの氾濫による、社会(コミュニケーション。ルーマンは社会の要素とした。)の制御不能、破綻の問題である。その根底には、ヒトの「本性」の問題があり、法で規制すれば済むというような問題ではない。

最近、私は後2者に首を突っ込んでいたが、これらの問題を法の定立、運用によって解決するためには、「権力制御と人権保障」の深掘りが不可欠であろうと気が付いたのである。

実定法学という面から見たとき、主として、「権力制御と人権保障」は公法、私法、刑事法、「専門性・複雑性の制御不能」は社会法、経済法、「デジタル情報の氾濫による制御不能」は情報法の問題といえるだろう。

そこで新しい「法とルールの基礎理論」として、まず上記した諸学を検討し、政府の立法実務と裁判所の法実務(法解釈+事実認定)を「権力制御と人権保障」を実現する「科学」にすることを志しつつ、後2者の問題に突入しようと考えた次第である。このブログ記事も大分法律家らしくなってきた。

「法とルールの基礎理論」の方法と枠組み(暫定版)

法文と国際法から馴染もう

「法とルールの基礎理論」を再考する場合、通常、「法哲学」に飛びつくだろうが、問題は分析ではなく、上記の3つの問題の解決が焦点であるから、対象であるで法と慣れ親しむことが何より重要である。
そのため、前提として「Ⅰ 法文を読む」と「Ⅱ 国際法を読む」を先行させようと考えた。
「法文を読む」のは当たり前の前提だが、「国際法を読む」は盲点であった。
法律実務家は、憲法の裁判規範化(憲法裁判)を、少なくても民事法、刑事法と並んで身につけようとしてきたことは間違いないが、「国際法」は憲法サイドから眺めるぐらいで、「国際法」の実態(「戦争と平和」のみならず、経済、環境問題)はほとんど把握していなかった。その結果、憲法規範が先行して、国家とか法に関する現実的な認識が不十分にならざるを得なかったと思える。まず「国家」間で何が起こっているのか、国内法と「国家」の対応にはどのような関係があるのか(アメリカやイスラムはどうして不思議な対応をするのか)等に目を向けなければならない。

ルール論

ただ「法文と国際法」の前に、そもそも「法や規範」を包み込む、「ルール」(規則)とはどのようなもので、どのように機能しているのかを確認しようか。当面思いつくのは、ヴィトゲンシュタインの「言語ゲーム」と、文字どおりのゲーム(遊戯ゲーム)の「ルール」である。「法とルールの基礎理論Ⅰ ルール論」について簡単に検討してみよう。

基礎理論の方法

通時性、共時性と領域

その上で(法令と国際法の具体性を踏まえて)、法とは何かについて、法がどのように機能してきたのかについて、どの時点でのどの領域での話かについて、比較検討することが重要だろう。要するに、今私たちが抱いている「法」のイメージは、近代ヨーロッパの国民国家の成立後のかなり一時的かつ偏頗な(要は偶然成立している)法のあり方に過ぎず、それを普遍的なものとして法を再生させようとしても意味がないということを肝に銘じよう。

法、規範、ルール

前項と関連するが、法の定義、内容は、流動的であり、法以外の、社会規範、これらを含み込む「ルール」を想定し、そういう中で、3つの問題に対して機能する「法、規範、ルール」を検討すべきであると考えている。ここについては、更に「法とルールの基礎理論」で挙げた「規範とゲーム 社会の哲学入門:中山康男」を読み込んで、使いやすいツールにしようと思うが、それに先立って、「哲学」を整理しておくことが便利だろう。そこで「法とルールの基礎理論Ⅱ 方法としての哲学」を検討することにした。

法文と国際法の次は何か

「法文を読む」の延長上に、立法学、法制執務も視野に入れるべきだろう。行政法、行政学にもつながる。
「国際法」については、比較法、法制史、法思想史も検討しなければならない。
その上でいったん様々な「法学」、「法哲学」も読んでみよう(「AI時代の法学入門-学際的アプローチ」は必須であろう。)。既に「法とルールの基礎理論」で紹介した、「規範とゲーム 社会の哲学入門」や「法と社会科学をつなぐ:飯田高」をじっくり読み込んでみよう。

ここら辺りまで来ると、「専門性・複雑性の制御不能」、「デジタル情報の氾濫による制御不能」の問題にいったん課題を転じることになるだろうか。

当面の構成予定

法とルールの基礎理論Ⅰ ルール論

法とルールの基礎理論Ⅱ 方法としての哲学

法とルールの基礎理論Ⅲ

  • Ⅰ 法文を読む
  • Ⅱ 国際法
  • Ⅲ 法制史・法思想史
  • Ⅳ 比較法学
  • Ⅴ 憲法
  • Ⅵ 法学
  • Ⅶ 法哲学
  • Ⅷ 法とは何か
  • Ⅸ 法と社会科学 
  • Ⅹ 公法
  • Ⅺ 私法
  • Ⅻ 弁護士実務

基礎理論Ⅳ「専門性・複雑性の制御不能」,Ⅴ「デジタル情報の氾濫による制御不能」の構成は追ってということにしよう。

法とルール

法文を読む

「法とルールの基礎理論」についてあれこれを検討を始める前に、まず法律とはどのようなものかについておおよその見通しを得るため、少なくても現在施行されているわが国の法令の文章(法文)については、読み慣れる必要があるだろう。
法令がわかりにくいという場合、当該法令が対象とし何らかの規制をしようとしている「世界」そのものになじみがなく理解しづらいということもあるが、当該法令の法文を読んでも日本語として意味がわからず、検討する意欲を失ってしまうことも多い。
法律実務家(弁護士)は、どちらかと言えば、「教科書」で法令の内容を理解し、法文は確認程度に見るだけのことが多いし、取り扱う法令も昔からのものが多くて、これらは日本語の文章としてさほど難解ではなかった(文語が多くそのため分かりにくいということはあったが。)。ただ行政法、税法等を扱う弁護士は、複雑な法文に当たる必要があった。

法文を読む練習と知識

この記事では、法文を読む練習をし、読むための核心となる知識をまとめよう。
練習は、細かい技術的な規定ではなく、「総論」部分でわかりやすいはずの各種法令の第1条「目的」を見てみよう。
法律には、目的規定又は趣旨規定が第1条として置かれることが一般的であるが、これらの規定は、それ自体は具体的な権利や義務を定めるものではなく「理念」や「目標」を記述しているので分かりやすいはず(ただし、目的規定も、裁判や行政において、他の規定の解釈運用の指針となり得るとされる(「参議院法制局」「法律の「窓」」「目的規定と趣旨規定」。因みに行政訴訟法9条2項は「原告適格」について「当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする」としている。)。

法文を読む練習

環境基本法

何でもいいのだが、「環境基本法」を見てみよう。便宜のため①~⑥を挿入した。

この法律は、①環境の保全について、②基本理念を定め、③並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、④環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、⑤環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、⑥もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

検討

どうだろうか。
いきなり「③並びに」がでてきて驚くが(この点は、後記「「及び」「並びに」と「又は」「若しくは」」参照)、全体の構文は、「この法律は、①②③…とともに、④…を定めることにより、⑤…推進し、⑥もって…ことを目的とする」だろう。最初は戸惑うが、慣れれば読めないことはない。なお、「もって」以下は究極的な目的とされる。
ただ、「①環境の保全について」が、どこまで及んでいるのか、そのあとの読点で判断できるのか、その後の書きぶりで判断するのかという問題がある。④で「環境の保全に関する施策…」とあるので、①②③が一括りのように見える。

比較的新しい法律の「第1条 目的」は、大体、このスタイルが用いられている。上記の「目的規定と趣旨規定」では、「健康・医療戦略推進法」が取り上げられているので、それを見てみよう。

健康・医療戦略推進法

この法律は、国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会(以下「健康長寿社会」という。)を形成するためには、先端的な科学技術を用いた医療、革新的な医薬品等(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第四項に規定する医療機器又は同条第九項に規定する再生医療等製品をいう。第十三条第一項において同じ。)を用いた医療その他の世界最高水準の技術を用いた医療(以下「世界最高水準の医療」という。)の提供に資する医療分野の研究開発並びにその環境の整備及び成果の普及並びに健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出及び活性化並びにそれらの環境の整備(以下「健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出」という。)を図るとともに、それを通じた我が国経済の成長を図ることが重要となっていることに鑑み、健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出に関し、基本理念、国等の責務、その推進を図るための基本的施策その他基本となる事項について定めるとともに、政府が講ずべき健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「健康・医療戦略」という。)の作成及び健康・医療戦略推進本部の設置その他の健康・医療戦略の推進に必要となる事項について定めることにより、健康・医療戦略を推進し、もって健康長寿社会の形成に資することを目的とする。

構文の整理

上記記事によれば、「「この法律は、・・・に鑑み、・・・定めることにより、・・・を推進し、もって・・・に資することを目的とする。」となります。「・・・に鑑み」の部分が立法の動機、「・・・定めること」は目的達成の手段(=法律の中心的な内容)、「・・・を推進」が直接目的、「・・・に資すること」が究極的な目的を述べたものと整理することができます。」となる。

もうひとつ「アルコール健康障害対策基本法」をみてみよう。

アルコール健康障害対策基本法

この法律は、酒類が国民の生活に豊かさと潤いを与えるものであるとともに、酒類に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透している一方で、不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、アルコール健康障害は、本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる危険性が高いことに鑑み、アルコール健康障害対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、アルコール健康障害対策の基本となる事項を定めること等により、アルコール健康障害対策を総合的かつ計画的に推進して、アルコール健康障害の発生、進行及び再発の防止を図り、あわせてアルコール健康障害を有する者等に対する支援の充実を図り、もって国民の健康を保護するとともに、安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。

法文を読むための核心となる知識

法文の構造

① 法文は、主語(主部)、条件節、述語(述部。目的語を含む)から構成されることが多い。
② 「は」は、主語を示す格助詞ではなく、話題を示す格助詞であることが多い。。

読点

法文における読点は、語句のつながりの手掛かりとして、かなり人為的に用いられているので、これを受け入れないと法文は読めない。

① 単文の主語の後には、「、」を打つ。単文とは、「主語+述語」の関係が1つしかない文をいう。「~については」や「~にあっては」の場合も同様である。
② 重文のように、主語が複数ある文では、原則各主語の後には「、」を打たない。
  また、条件節の中の主語にも、原則として「、」を打たない。
③ 動詞の連用中止形(「~し」の形の動詞など連用形の後に用言が付いていない動詞の形をいう。)の後には、原則として「、」を打つ。ただし、連用中止形に「て」が付き、「~(し)て」となる場合は、原則として「、」を打たない。
 なお、法文中、「~に関し」や「~に対し」の後には、慣用上「、」を打たないことが多い。
④ 接続詞の後には、「、」を打つ。
⑤ 名詞を列挙する場合は、原則「・」を用いずに、「、」を打つ。
  引用符で囲まれた語句を列挙するときは、省略できない。
  名詞を列挙する場合は、「及び」「又は」「等」「その他(の)」を用いる。そのときは、各名詞を「、」で結ぶが、「及び」等の前に「、」を打ってはならない。
⑥ 動詞を列挙するとき、及び「~とき」で結ばれる節を列挙するときは、「及び」等の前に「、」を打つ。「~こと」は扱いが分かれている。

なお、複数の語句がある語句にかかっていくということはよくあることだが、法文の場合は、語句が長いことが多いので、わかりにくくなる。特にいわゆる連用中止法の場合は、それだけでも分かりにくいのに((私は、太り、頭が薄い男です。)、法文に使われていると、奇っ怪な感じがすることがあった(例文は、追って)。

その他

昔まとめたものです。不都合があれば変えていきます。

1 用字用語

① 副詞は、「必ず」「既に」「全く」「余り」「殊に」「更に」「例えば」「特に」「併せて」のように原則として漢字を用いて書く。ただし、「かなり」「やはり」「よほど」のように、当て字の要素の濃いものは仮名で書く。
② 接続詞は、「おって」「かつ」「したがって」「ただし」「また」「ゆえに」「あわせて」のように、原則として仮名で書く。ただし、「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の4語は、例外的に漢字混じりで書く。
③ 補助体言としての「こと」「とき」「ところ」「もの」「ほか」、「…とともに」の「とも」、補助用言としての「いる」「ある」「できる」「みる」「くださる」等は、仮名で書く。
④ 古い法令では促音(つ)が大きな字で表記されていた。

2 「及び」「並びに」と「又は」「若しくは」

(1)「及び」と「並びに」の使い方 
 いくつかの語を併合的につなぐ場合、単層的につなぐときは、「及び」をまず用い、「A、B、C及びD」のように表わす。重層的につなぐときは、大きな(外側の)接続に「並びに」を、小さな(内側の)接続に「及び」を用い、三層以上のときは、「並びに」の方を何重にも用いる。したがって「A及びB並びにC(Eを除く。)」と規定されていれば、A、B、C間に意味上特別の遠近関係がない限り、かっこ書きはCにのみ働く趣旨で規定されていることになる。

(2)「又は」と「若しくは」の使い方
 いくつかの語を選択的につなぐ場合、単層的につなぐときはまず「又は」を用いますが、重層的につなぐときは、大きな(外側の)接続に「又は」を一回だけ用い、小さな(内側の)接続に「若しくは」を必要に応じ何層にも用いる。上の場合と、一部逆な感じになっている。

3 「その他」と「その他の」

「その他」は、その前後の語句を、並列の関係で並べる場合である。「その他の」は、後に続く語句が前に置かれる語句を含む、より広い意味を示す場合、つまり例示の場合である、。

4 準用と読替え

 法令の規定には、様々なものがあるが、基本パターンは、「ある人やその行為その他の事象がAという要件に該当するときは、Bという効果を生ずる」(AならばB)という形をとっている。他にも、「Cという要件に該当するときは、Bという効果を生じない」とか、「Dという要件に該当するときは、Aの要件に該当するものとみなす」等々の規定もあるが、その多くは、「AならばB」という規定のバリエーションである。

 同様に、準用規定や読替適用の規定も、「A」には該当しないが、これと類似のA’という人、行為、事象について「A’ならばB」ということ(準用の場合)、あるいは「A」の一部に含まれる「A1」について「B」を変形した「B’」の効果を生じる、即ち、「A1ならばB’」ということ(読替適用の場合)ということを、「準用する」、「読み替える」という形で表現しているものである。
 したがって法令の基本的な構造は単純なはずだが、それでも難しいといわれるのは、「AならばB」の「A」や「B」が長すぎたり、「A」の部分が「A1」「A2」……と分れていたり、「B」の部分が「B1」「B2」…と分かれていて、それを並列的あるいは重畳的につないで書いた結果、複雑になっていることが原因であることが多い。

5 法令文の平易化方策 

昭和60年に内閣法制局では、法令文の平易化のために次のような留意事項を定めているそうである。

(1)長文化について
 法令の一文が長文(400字を超えるもの)となるときは、次のような工夫をする。(中略)
 イ 結論に至るまでの条件を号・号の細分で整理し、さらに必要があれば、別の条又は項として整理する。
 ロ 適当な場合には、表又は式により整理する。
(2)複雑文について
 法文が複雑になることを避けるため、次のような工夫をする。
 イ 結論に至るまでの条件が二以上あり、かつ、その内容が複雑なものであるときには、そのいずれかの条件を号・号の細分で整理し、さらに必要があれば別の条又は項として整理する。
 ロ 適当な場合には、表又は式により整理する。
(3)括弧書について
 括弧書の使用については、次の点に留意する。この場合、法令番号等の括弧は数えないものとする。
 イ 三重括弧以上の重括弧は用いないものとし、また、二重括弧の使用もできるだけ避ける。
 ロ 括弧内の文が長いもの又は複雑なものとなる場合には、これを別項、後段、ただし書等として整理する。
(4)準用又は変更適用読替えについて
 準用又は変更適用の場合にする読替えが複雑になることを防止するため、次のような工夫をする。
 イ 煩雑な読替えが必要となる準用は避けて書きおろす。
 ロ 複数の条又は項の準用又は変更適用の際、全体として読替えが相当数あるときは、表により整理する。
(5)定義規定等について
 定義又は略称に関する規定については、誤読の防止等のため、次のような工夫をする。
 イ 適当な場合には、定義規定等をまとめて、章、節等の冒頭に置く。
 ロ 同じ字句を「以下第〇〇条において同じ。」等として、同じ法令で別の意義に用いることはしない。
(6)その他
 定義された語を用いる際には、それが何条において定義されたものであるかを明らかにすること(クロス・レファレンス方式の採用)も検討する。

情報関係の基本法を読む

ここで、最近検討する機会の多い情報関係の「基本法」の目的をまとめてみてみよう。なお基本法は、最近多くなった名称で、比較的大きな分野の政策、制度等について基本的な方針を規定し、それに基づいて具体的な法律を整備するような場合に用いられる。

「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(IT基本法)、「官民データ活用推進基本法」、「サイバーセキュリティ基本法」、「知的財産基本法」は、名称も基本法とされている。
「コンテンツ基本法(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律)は、略称で、「基本法」という字は入っていない。

官民データ活用推進基本法

この法律は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、急速な少子高齢化の進展への対応等の我が国が直面する課題の解決に資する環境をより一層整備することが重要であることに鑑み、官民データの適正かつ効果的な活用(以下「官民データ活用」という。)の推進に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務を明らかにし、並びに官民データ活用推進基本計画の策定その他官民データ活用の推進に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、官民データ活用推進戦略会議を設置することにより、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的とする。高

高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)

この法律は、情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済構造の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に係る基本方針を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、並びに高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を設置するとともに、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画の作成について定めることにより、高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とする。

コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(コンテンツ基本法)

この法律は、知的財産基本法(平成十四年法律第百二十二号)の基本理念にのっとり、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及びコンテンツ制作等を行う者の責務等を明らかにするとともに、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する施策の基本となる事項並びにコンテンツ事業の振興に必要な事項を定めること等により、コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

サイバーセキュリティ基本法

この法律は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークの整備及び情報通信技術の活用の進展に伴って世界的規模で生じているサイバーセキュリティに対する脅威の深刻化その他の内外の諸情勢の変化に伴い、情報の自由な流通を確保しつつ、サイバーセキュリティの確保を図ることが喫緊の課題となっている状況に鑑み、我が国のサイバーセキュリティに関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにし、並びにサイバーセキュリティ戦略の策定その他サイバーセキュリティに関する施策の基本となる事項を定めるとともに、サイバーセキュリティ戦略本部を設置すること等により、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成十二年法律第百四十四号)と相まって、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって経済社会の活力の向上及び持続的発展並びに国民が安全で安心して暮らせる社会の実現を図るとともに、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に寄与することを目的とする。

知的財産基本法

この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成について定めるとともに、知的財産戦略本部を設置することにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。

特訓

「税法の読み方 判例の見方」(伊藤義一)で検討されている、租税特別措置法第70条の4第1項を見てみよう。