社会と世界

私は今、日本においてビジネスジェット機を利用するエアーアンビュランスを立ち上げる仕事に、弁護士として関与しているが、そもそもエアーアンビュランスとはどのようなものかについては、日本ではほとんど知られていないので、世界で実際に行われているエアーアンビュランスを調べるのが手っ取り早い。

限られた分野の話なのでなかなか文献を探すのが面倒だが、ウィキペディアで検索して得られた情報(記事)を集めた何ともお手軽な「AIR AMBYURANCE SERVICES」(HEPHAESTUS BOOKS)という本があり、そこに収録された記事のアドレス一覧も収録されているのでこれを備忘のために掲載しておく。。ワード文書も添付しておく。

air ambulanceリンク集

それぞれの記事に深みはないが相当に網羅的であり、これを基にしてさらに調査すればよい。

なお、世界のエアーアンビュランスという場合、国境が接したりしているので、ビジネスジェットを利用するだけでなく、日本のドクターヘリと同様に、ヘリコプターを利用する救出も大きな位置を占めている

社会と世界

入口

人類史という観点で書かれた様々な本が出されている。

チンパンジーと分岐して二足歩行を始めた初期ヒト属、250万年に分岐したホモ属、20万年前に分岐したホモ・サピエンスという流れは、まだどちたかといえば動物学だろうが、既に石器の使用、肉食、脳の巨大化という問題もあるので、「動物」だといって知らん顔はできない(「ヒトの進化七〇〇万年史」(ちくま新書:河合信和)。

更に5万年前に出アフリカを果たして世界中に分散していったわずかな集団が、1万2000万年前の定住革命やその後の農業革命を経て「文明」に足を踏み入れて以降の歴史は、まさに人類史だ。日本史を勉強していると、4、5世紀でも文字は使用されておらず、集権権力の状態もよくわからないという状態で、「大昔」=歴史以前という感じだが、その感覚は大きな誤りだろう。出アフリカをした人類が、2万年前か1万年前かは知らないが、日本に到達し、生き延びて文化、文明を築いていった過程は、まさに文明史だ。

私は、40億年くらい前に地球に最初に誕生した生命の子孫ですというのは余りリアリティがないが、5万年前に出アフリカを果たして、その後いろいろな人と別れ、ひもじいこと、危ないこともありましたが、とにかく今の私まで命を繋いできましたというのは、新鮮な驚きだ。世界の人とつまらない諍いをしようなどとは全く思わない。

4冊の本

とりあえず「人類史」として4冊の本が目に入っている。

一番最初に「へえっ」と思ったのが、<The Rational Optimist:How prosperity evolves>by<Matt Ridley>(「繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史」(早川書房))である。「分業」という観点から人類の「繁栄」を分析した本で、これには率直にいって感銘を受けた。

その前に、名著の誉れ高い<GUNS,CERMS,AND ATEEL:The Fates of Human Societies>by<Jared Diamond>(「銃・病原菌・鉄 1万2000円にわたる「人類史の謎」(草思社))を買って少し目を通していたが、何となく結論は「西洋から見た未開文明」というようなことかなと思いそのままにしていた(「昨日までの世界」はいいなと思っていたのに、なぜかこちらには手が延びなかった。)。今回もう一度読み直すことにした。

出アフリカをした人類が、再び出会い結びつく(ただし、虐殺も含む。)という観点で書いてあるのが<Bound Together:How Traders, Preachers, Adventurers, and Warriors Shaped Globalization>by<Nayan Chanda>(「グローバリゼーション 人類5万年のドラマ」(NTT出版))。集められた事実はおもしろいが、さてこの先どうなるんだろうかがイメージできない。

一番お勧めなのは<THE COMPANY OF STRANGERS:A Natural History of Economic Life>by<Paul Seabright>(「殺人ザルはいかにして経済に目覚めたか?」(みすず書房))である。改訂版だし、序文を「ダニエル・デネット」(余り知らないかな?)が書いていて、事実だけに止まらない「考察」があって、現時点では一番のお勧めかも知れない。

これから

この4冊の本を読んで、ああそうですかと納得するのが、目的ではない。いずれも分業と生産に注目して、人類は何をしてきたのかを論じているのだから、私はそれを転じて何をどうすればいいのかを考え、実行していきたいと思う。もちろんそのためには、ミクロな観点からの「経営学センス」も大事だし、マクロな開発経済学、法学も重要だと思っている。

出アフリカに比べたら、出日本など、何でない(はずだけど)!

社会と世界

遊動論 柳田国男と山人 (文春新書)

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柄谷 行人
文藝春秋
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最初のコメント

柄谷行人さんは、実はあまり読んだことがなかった。英語教師をしている「文芸評論家」という存在とはあまり接点がないし、「マルクスその可能性の中心」といわれてもねということで、視野の外であった。
しかし最近、人類史の大きな流れをとらえたいという思いの延長で、「世界史の構造」関係の本に何冊か目を通し、確かに問題が大きな視座で捉えられているし、「面白い」部分も多いとは思うのだが、読んでいて何だか落ち着かない。
まず柄谷さんの議論を理解するためには、下記の図式が頭に入っていなければならない(「柄谷行人 政治を語る」(図書新聞79頁より)。
アソシエーションを目指すんだって、その交換様式はわからない?それは普遍宗教なの?という、例えば池田信夫さんのような昔の政治青年からの「突っ込み」があり得るだろうが、今の時代、誰もこれからの社会を構想できていないんだから、それはお互い様でしょうね。
しかし問題は私にはこの図式が理解できないことである。イの交換様式は理解できる。しかし、ロ、特にハは何だろう。単純に「A ネーション」が何をさすのかわからないし、「A ネーション」、「B 国家」、「C 資本(市場経済)」は、カテゴリーのレベルがあっていないのではないだろうか(ロも同じだ。)。少なくても、簡単でもいいから「定義」をし、その関係を提示して議論を進めてくれないと、これだけで嫌になってしまう。

基礎的な交換様式(イ)とその歴史的派生形態(ロ、ハ)
※イ B 収奪と再分配     A 贈与の互酬性
C 貨幣による商品交換 D X

ロ B 専制・封建的国家 A 農業共同体
C 都市         D 普遍宗教

ハ B 国家         A ネーション
C 資本(市場経済)   D アソシエーション

※なお「遊動論」(196頁)では、イは、次のようになっている。
B 再分配 A 互酬(贈与と返礼)
(略取と再分配)(強制と安堵)
C 商品交換(貨幣と商品)D X

それと柄谷さんは、「互酬原理は、遊動的な狩猟採集民の段階には存在せず、定住後に形成されたと考える」、「定住以前の狩猟採集社会には、共同寄託(生産物を平等に分け合う)はあるが互酬的交換はなかったと考えるべきである」(「遊動論」179、182頁)とする。私もそうかなと思うけれども、柄谷さんも共同寄託をしていた時期の人類史を視野に入れているのだから、人類史を1万年前の定住革命以後ではなく、5万年ないし20万年前から語り始めること、更には250万年、700万年前からの進化論による人類理解を元にこれらの図式を再構成する方が、抽象的かも知れないが、より問題解明の核心に近づくのではないだろう。マルクスではなく、ダーウィンから始めて分子生物学を友にした方がいいのではないかと思うんですが。

次のコメント

さてこの「遊動論」も「世界史の構造」理解の一環として書かれたものであるが、その要点は、付論として加えられた「二種類の遊動性」を柳田国男に読み込んだものである(「あとがき」(199頁)で、「これを最初に読んでいただきたい」といわれても・・・)。
要は柳田の「遊動性」の民には、定住以前の「山人」(狩猟採集民的遊動性)と、移動農業・狩猟を行う「山民」、および工芸・武芸をふくむ芸能的漂白民がおり、後者は定住民を支配する権力とつながっているが、「国家に抗するタイプの遊動民は、前者である。これは上記のDにつながっている。
これを柳田の生涯、及び作品を取り上げながら、論じている。私は柳田も余り読んでいないので、柄谷さんの論述の正否については判断できないが、この作品は「文芸評論家」らしい生き生きとした表現に充ちているし、柳田を「正解」せず非難する凡百の学者、評論家の言説が如何に誤りかをその内容がわからなくても「説得」されそうになる筆力に充ちている。もちろん、その是非を判断すべき責任は読者にある。