社会と世界

未読・半読・一読の本 1 (180411)

いろいろな問題を考えるとき,それを世界史(これは文明発祥以降になるので,できれば「サピエンス史」を踏まえる方が視野が広がる。)の中に位置付けて考えることが重要だ。ただ世界史の迷路に踏み込むと出て来らなくなるので,ここでは,その「案内図」のさらに「概要」を頭に入れておくことを考える。

改めて知る国ごと、地域ごとにまとめ直した高校世界史(上・中・下)

改めて知る国ごと、地域ごとにまとめ直した高校世界史 増補版<上巻>,増補版<中巻> ,増補版<下巻>」(八尾師 誠(監修), 川音 強(著)は,高校世界史が,あちらこちらに飛びながら説明している錯綜する内容を,各国別(地域)別にまとめ,足りない部分は補足しているので,頭の整理にいい。

上巻は,西ヨーロッパ史,南ヨーロッパ史,中巻は,東ヨーロッパ史,北ヨーロッパ史,キリスト教史,北アメリカ史,中・南アメリカ史,オセアニア史,アフリカ史,下巻は,東アジア史,中央アジア史,南アジア史,東南アジア史,西アジア史という構成である。そして例えば,西ヨーロッパ史は,さらにイギリス史,アイルランド史…スイス史の,8国に分けられている。

西アジア史は,古代メソポタミア史,イスラーム帝国史,アラブ近・現代史,イラン史,トルコ史,ユダヤ民族史に分けるという工夫がされている。別にキリスト教史が設けられているのもいい。

R本は,1冊1944円であるが,KIndle本は,1冊900円なので,急いで買っておいた。今だけ安いのか,通常の価格設定なのかは分からない。ただKIndle本の目次のリンク等が今一つ使いにくい。

英語で読む高校世界史

あと,高校教科書『世界史B』(東京書籍・2012年版)の英訳版である,「英語で読む高校世界史 Japanese high school textbook of the WORLD HISTORY」は,英語圏の人と,知的な会話をしようとする場合に,手助けとなる。ただここまで来ることは大変だが。

その他,普通の高校世界史を読もうと思えば,「もういちど読む 山川世界史」がある。「世界史年表」(R本だが,地図も載っている。ただ字が小さい。)も身近にあった方がいいだろう。

ここから世界史は無限に広がる。逆にいえば,言いたい放題の混乱世界である。

 

本の森

未読・半読・一読の本 序 (180410)

「未読・半読・一読(みどく・はんどく・いちどく)の本」では,ざっと目を通し,あるいはそれも途中で止めてしまった本,買っただけで目も通してもいない本,さらにはKindle本でサンプルだけダウンロードしそのうち買おうと思っている本,まとめれば積読本(つんどくぼん)を紹介していこうと思います。

本の森

これまで本の森で紹介する本は,主として「詳細目次」を紹介することだけでも意味があると思う専門書,一般教養書といわれる部類の本を対象としてきたが,そのような本の内容にきちんとコメントしようと思うとなかなかエネルギーがいるし,私の関心もどんどん目移りしていくしで,どうしても作業は「詳細目次」を作成するだけで停滞し,いつしか日の目を見ないままま埋没してしまうので,精神衛生上よろしくない。心の底では,紹介は,松岡正剛さんの「千夜千冊」ぐらいの詳細,緻密な記述にしたいという思いはあるが,あちらは優秀なスタッフを抱えたプロ,こちらは弁護士の仕事の片手間では,レベルが違い過ぎる。このような思いは,かえって埋没に拍車をかけてしまう。

ところで久しぶりに「千夜千冊」のことを思い出したので,Webを見てみると,最新の本(1670夜)は「国語入試問題必勝法(著者:清水義範)」であった。今,清水義範さんとは意表を突かれる思いだが,紹介された内容は,今読んでも昔と変わらず楽しい。

改めて「千夜千冊」にどんな本が紹介されているかを見ると,松岡さんの関心の広さには驚嘆する。私が手に取ったことがあるであろう本は約4分の1,内容に見当がつく本でもせいぜい半分というところだろうか。私も法律書は別にして,様々な機会に5000冊は処分(寄付)し,いまKindla本2500冊,リアル本1500冊ぐらを保有している,個人としてはまあまあの愛書家のつもりだったが,桁が違う。それに登山に情熱を傾けていた約10年間は,本よりも山の風が好きだったから,大きな差が開いてしまった。

松岡さんの基本は,思想・文学を中核にして,文化,歴史,社会にアプローチするということだろうか。それと松岡さんは,編集工学を提唱され,情報史にも興味をお持ちなので,その意味での広がりもある。「千夜千冊」もわかりやすいし,面白い。しかし松岡さん自身が書くものは「参考書」としては面白いが,問題に切り込む凄みに欠けるような気がしていた。

私は思想・文学を捨て,科学・論理を中核にしてアプローチするスタイルに転向したので,松岡さんのリストを見ると,松岡さんの関心外の本も,守備範囲であることが分かる。だから今後は,本の森本編では,私が立てた問題(このWebで紹介しているような問題だ)を解決すべく,主としてそのような本に切り込もう。

未読・半読・一読の本を紹介する

最近,山へも行かず,お酒も(少し)控えめなので,本を読んだり,勉強したりする時間が割とある。あるいは,出張に行くと往復の乗物だけでも時間があり,スマホでKindle本を読むのに最適の環境だ。先週,一泊で長崎に出張したが,新書のKindle本2冊全部と,その他にも目を通すことができた。

あるいは,昨日だったか久しぶりに「俳句 4合目からの出発(著者:阿部ショウ人)」という本が目に入ったので読み始めたが止まらない。Amazonのカスタムレビューに「俳句を絶対に作らせないという趣旨の本としか思えない。腐すこと腐すこと全編その姿勢」とあるように,あることをけなすにはどう表現すればいいかについての達人の書だ。あるいは題名だけは頭にこびりついている「読んでいない本について堂々と語る方法(著者:ピエール バイヤール )」は,その内容は忘れてしまったが,題名が魅力的なので,もういちど読みたいと思う。ただ単行本は捨てて(寄付して)しまったようなので,文庫本を買おう。

このように,上段に構えて真正面から振り下ろすのでなく,ざっと一読しただけの本,半分読んでやめてしまった本,あるいは未読の本,要するに積読だけの本も,備忘のために記録しておくことも大事だろう。

年をとってくると最も懸念されることは,一度買った本をもう一度買うことだが,幸いなことにKindle本ではその警告が出るので(過去にR本を買った場合も同じだが,R本はAmazonで買わないことも多い。),それは気にしないで済む。しかし,本が何千冊単位になると本の存在すら忘れてしまい,意識に上らなくなる。意識に上らないということは存在しないということだ。だから思い出すに足る本は,備忘のための記録をつけることには意味がある。

ということで,これから備忘のために記録しておいた方がいいと思う本は,できるだけ「未読・半読・一読」に記録することにしよう,それすらも忘れてしまうと困るが(これは,近未来の冗談です。)。

法とルール

依頼者が海外との仕事をする際,その仕事に弁護士として参加,支援するために必要となる準備事項・前提事項をまとめておく。なおこの項目については,日弁連が実務研修をしている事項が多いので,適宜それを引用する(日弁連「…」とする。)。内容について疑問があれば問い合わせていただきたい。

国際法と異文化理解

海外との仕事をするということは,日本国に属する私たちと,X国に属するY企業が向き合う関係だから,国と国との慣習,マナーである最低限の国際法を踏まえる必要がある。そうでないと思わぬ対立を招く。手頃な入門書として「国際法第3版」を紹介しておく。

また,人間対人間だからわかるだろうという前に,「異文化を理解する」姿勢を持つことが重要だ。これについては,まず「異文化理解 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養」という本を読んでみることだ。個別事案への対応はそれからだろう

国際貿易

日本企業が輸出入に関与することはそれこそ日常茶飯時だから,弁護士がその実務に関与することは少ないが,対象商品に問題が生じた場合に,その対応を依頼されることが多い。多いのは輸入商品であるが,交渉レベルで解決すればともかく,裁判,執行の問題になることも多いが,海外で回収できる場合は少ない。日弁連「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題 第1回 海外取引に関する法的留意点」及び「貿易実務~中小企業の海外展開を支援するために必要な知識を中心に~」が参考になる。

国際私法と国際裁判管轄,及び国際租税

国際私法と国際裁判管轄は,海外との取引に紛争が生じた場合に,どこの裁判所に管轄があり,どこの法律が適用になるかという問題である。法律学の一分野であり,論理適用の問題であるが,その実効性が問題である。日弁連「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題 第2回 海外進出に関する法的留意点」及び「国際取引分野における国際私法の基本体系と動向」が参考になる。

海外との取引に関する税務問題も重要である。日弁連「税務面を考慮した中小企業海外取引の法的構造」は得難い情報である。

国際契約

海外との仕事の出発点は契約だ。さすがにすべて口頭でというケースはないが,重要なことの検討が不十分な契約書が多い。国際契約については,英文契約書がモデルになるメースが圧倒的に多い。日本での契約書にもその影響がある。

英文契約書を学ぶには,まず「はじめての英文契約書の読み方」(著者:寺村淳)をじっくり読みこむのがいい。そのうえで,「米国人弁護士が教える英文契約書作成の作法」(著者:チャールズ・M・フォックス(原書:Working with Contracts: What Law School Doesn’t Teach You by Charles M. Fox)がよさそうだ。

日弁連の研修には,「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題 第3回 英文契約の基礎知識(総論)及び国際取引契約の基礎(各論)」,及び「英文契約書作成の実務」の「第1回 英文ライセンス契約書作成の留意点」「第2回 英文製造委託契約書作成の留意点」「第3回 国際販売店契約の基礎」がある。復習用にいい。

海外進出実務

アメリカ,EU,中国,韓国についてはすでに十分な蓄積があるし,割と身近に実例も多くて,見当もつけやすいだろう(EUは,分かりにくいところもあるが,まずJETROで情報収集すべきであろう。)。アジアについては,「海外進出支援実務必携」に網羅的な情報が記載されている。

ここではASEANを考える。

ASEANに企業進出する際の基本的な問題点は,日弁連「海外子会社管理の実務~ケーススタディに基づくポイント整理~」,及び「中小企業の海外展開サポートにおける法律実務~失敗事例から学ぶ成功ノウハウ~」に貴重な情報がある。

そのうえで各国別の情報を丹念に検討すればいい。日弁連の研修には,「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題」「第4回 現地法の基礎知識-中国法・ベトナム法」「第5回 現地法の基礎知識-発展途上国との取引の注意点」,「現地法の基礎知識-タイ法」,「現地法の基礎知識-インドネシア法」がある。

注意すべき点

金銭移動が伴う海外案件で注意すべき点だが,昔は外為法がとても大きな意味を持ったが今は基本的には事務的なことと理解していいだろう(日銀Web)。それに変わって今大きな意味を持つのが,マネーロンダリングである。これについて実務家は,今,細心の注意を払う必要がある(外務省Web)。そうではあるが,マネーロンダリングは,①犯罪収益,②テロ資金,③脱税資金の監視ということであり,①はさほど大きな拡がりを持つものではないし,②はかなり限定された時期,地域の「政治的な問題」である。③は国によって考え方が違う。また仮装通貨が多用されるとこれはどうなるのかという疑問もある。