山ある日々

大森 久雄
山と渓谷社
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一口コメント

帯にあるとおり「豊かな山の世界を綴った紀行、記録、エッセー、詩歌のアンソロジー」である。53編も収録されているそうだから1編当たりは抄録も含めて短いものだが、それだけに相応の経験のある山好きには次々とめくるめくような世界が展開されていてたまらないが、この世界に乗れない人にはつまらないかも知れない。

また見慣れない作品も多いが、編者の「固まった既成概念で選ぶのではなく、もっと自由に羽ばたいてみたい」結果なのだろう。

ついでに書くと、実際の本の副題は「読んで味わう山の楽しみ」なのに、Amazonでは「山の文章世界の道しるべ」となっているのは不思議だ。

私的メモ

この本は、手にとって味わってもらえばいいので、あまり私が書くべきこともないが、一つだけ取り上げてみよう。

「山に忘れたパイプ」(藤島敏男)

藤島敏男は名前しか知らなかったが、紹介されている白砂山は、私は2回ぐらい計画したが、未だに登っていない山だ。最寄り駅の長野原草津口から夏の短い期間バスが出ていて、車を運転しない私はその期間しか登れないが、残念ながら過去の計画は流れてしまった。それと、八間山を回ると帰りのバスの間に合うかという問題もあったように思う。花敷温泉に泊まればいいのだが、だいぶ距離がある。

藤島は花敷温泉から白砂山に登っている。野反池が素晴らしく、何度か訪れている、。のちに白砂山から佐武流山へ尾根伝い、苗場山へ抜けたが、「野反湖と池から湖に昇格(?)した野反は、北端に堰堤が築かれて、見る影もないただの貯水池に変わり果てていた」と書いている。その思いは手に取るように分かる。でも、白砂山、佐武流、苗場山というのは、素敵なコースだ。今は荒廃して行きにくいようだが、藤島の頃だってそんなに立派な登山道があったわけではないだろう。

ところで「山に忘れたパイプ」というのは雪道で休憩したときにパイプを置き忘れ旅館の若者が探しに行って見つけ届けてくれたという話だが、藤島は日銀に勤めていて「仕事も遊びも誤魔化しを嫌い、手厳しかった」ことから「あの藤島が忘れものをするわけがない、拾ったパイプ、の間違いだろう」と揶揄した人がいるそうである。笑える。

次に収録された作品名と作者の一覧を載せておく。

収録された作品と作者

本の森

結果から原因を探る数学

一言コメント

充満したおやじギャグと展開された数式の間には深い闇がある。

入口にて

とても読んだとはいえないけれども

私はこの本の数式部分は飛ばし読みするしかないけれども(もっとも数学の本だから論述の大部分は数式に支えられているが)、活字部分を追っていくだけでも、新鮮な感動(快感)を覚えた。数式部分がわずかでも追えれば、その感覚ははるかに深まるだろうと思われるが、この本は数式に「暗い」私に、過去の不勉強の悔恨を強いる。

何が書かれているのか

逆問題とは普通「現象の原因を観測結果から、法則に基づく逆のパスを通して、定量的に決定あるいは推定する問題を総称していう」が、この本では「分割された要素(=原因)達のある規則(=法則)に基づく積み重ねで得られる包括(=結果)から要素を決定または推定する問題」と定義される。具体的には、後記の目次を見ていただければいい。

私がこの本のほとんどが分からないまま最後まで目を通したのは、取り上げられた恐竜の絶滅とか、海洋循環逆問題が面白いこと、それと逆問題の解は、観測誤差に対して鋭敏になるとの指摘があること(それは、観測データによっては解が存在しない、その点に目をつむって現実には解があるとしても、解はパラメーターの変動に対して安定にならない非適切性が原因であること)、そしてこのような非適切問題について、適切問題に近似しつつ解いていく「正則化法」があるが、それは数学自身の役割への問いかけであること、等が面白かったからである。

例えば、ダーウィンの「進化論」も。逆問題かなあとか、複雑化科学でいわれるバタフライ効果も「観測誤差に対して鋭敏になる」ことと関係があるかなあと思ったりもした。

あと、「自然現象はなぜ数式で記述できるのか」という新書があって、筆者は「人間にはまったく関係がない純粋な自然現象が、自然界に存在するわけではなく、100%人間が創造した数式で完璧に記述されるわけです。不思議なことではありませんか。私には、これが身体が震えるほど不思議で仕方がないのです。」との感想を繰り返し、なにやらSomething Greatを持ち出すのだが、この本の筆者のように「もともと、数学は自然現象を理解するための学問ではない。しかし、結果的には自然現象を理解するのに決定的な役割を果たしてきた。これもまた、数学が実在として自然に組み込まれているからである。」との記述の方が、私にはよほど合点がいく。ただいずれにせよここでの私の感想は「素人の戯言」に過ぎない。

オシツオサレツ(※①)

耕作中

出口と展望

耕作中

書誌と評価

書名  逆問題の考え方
著者(編者)  上村豊
出版社  講談社ブルーバックス
AMAZON  ここをクリック
本のタイプ(※②) ①参照・②簡単・③そこそこ・④かなり・⑤ものすごく
読込度(※③) 眺め読み・点読・通読・精読・熟読  →
評価 ◎・〇・△・×・?
ISBN  9784062578936

目次

  • ■第1章 逆問題とはなにか
  • 未知なるもの/内部を探る/逆問題の規定/誤差に対する鋭敏性/演算の方向/重力探査/積分方程式と逆問題
  • ■第2章 史上最大の逆問題
  • 逆問題の哲学/衝突仮説/地上からの隕石推定/衝突の論文/恐竜絶滅のクレーター探し/チチュルブクレーターの直径/決定的証拠
  • ■第3章 振動の逆問題
    振動と順問題/バネの等時性/振り子の運動/ホイヘンスの振り子/逆問題/逆解析/追加すべき観測データ/最終回答/からくり
  • ■第4章 プランクのエネルギー量子発見
  • 壮麗な逆問題/黒体放射/1段目の滝、放射公式/新たな展望/2段目の滝、エネルギー量子の発見/逆問題:エネルギー量子の決定/プランクからアインシュタインへ
  • ■第5章 海洋循環逆問題
  • 海洋学と逆問題/コリオリの力と地衡流/地衡流の運動方程式/地衡流の力学計算/基準速度を決定する逆問題/逆解析の原理/逆のパス
  • ■第6章 逆問題としての連立1次方程式
  • 最小2乗解/過剰決定系・不足決定系/最小2乗解の方程式/長さ最小の最小2乗解/ムーア-ペンローズ逆行列/特異値分解
  • ■第7章 逆問題のジレンマ
  • 正則化法/クイズ/チホノフ正則化解/特異値分解とチホノフ正則化/積分方程式の不安定性/逆問題源流探訪/放射性物質逆問題の正則化解
  • ■第8章 量子散乱の逆問題
  • 量子力学速成コース/シュレディンガー/量子散乱/ハイゼンベルクのS行列/散乱の逆問題/逆スペクトル問題/非線形波動

参考

※① オシツオサレツは「哲学入門」(戸田山和久著)から拝借。もともとは、ドリトル先生シリーズにでてくる動物オシツオサレツ(Pushmi-pullyu)の翻訳らしい。

※② 「本のタイプ」は、佐藤優さんの「読書の技法」が紹介する、②簡単に読むことができる本、③そこそこ時間がかかる本、⑤ものすごく時間がかかる本に、①必要なときに参照する本、④かなり時間がかかる本を加えて、5分類にした。

※③ 「読込度」は、M.J.アドラーの「本を読む本」に準じ、第2レベル「点検読書」を、「点読」、「通読」に、第3レベル「分析読書」を「精読」に、第4レベル「シントピカル読書」を「熟読」にし、さらに、それ以前の段階の「眺め読み」を加えた。紹介する時点では、ほとんど「眺め読み」、「点読」、「通読」だが、将来、より詳細な読み方をする必要があると感じているときは→を付加する。

本の森

読んだ本を頭に定着させるために

「読書法と記憶法をめぐって」に書いたように、「本を読むことの目的が(単なる楽しみでなく)もう少し実践的なものであれば、その具体的な目的に資するように、読んだ本の内容のうち、私にとっての必要な部分(重要な部分)を効率的に整理して取り出し、頭に定着させる必要があるだろう。私は、今までこのようなことは全く行ったことがないが、さてどうしたらいいのだろうか。」。ここでは「私にとっての必要な部分(重要な部分)」をどのように選択するかではなくて、これを実現するための技術的なことを検討してみる。

当面の目標は、本を読む過程でセレクトした情報を、以後、自由自在に確認したり、使用したりすることができるように電子情報として活字化することであるといえるだろう。そのための方法としてはセレクトした情報について、①手書きで筆写したものを活字化する、②読んで録音したものを活字化する、③本の印刷された活字をスキャンして活字化する、④Kindle本の電子情報を取り出すということが考えられる。

「読書法と記憶法をめぐって」で紹介した「本当に使える勉強法」は、記憶することとも絡んで、重要な本は何回も読んで重要部分を抜粋し、更にその部分を音読して記憶することを重要視している。②である。音読した部分を、活字化するために、「ICレコーダー+音声認識ソフト」が必要となる。

ICレコーダー+音声認識ソフト

ICレコーダー

私もICレコーダーはこれまで何点か購入し、思いついたことを録音したり、仕事上の打ち合わせ等を録音したりしたが、基本的に聞き直すのが面倒で煩わしいという問題がある。ただ録音の質はどんどん良くなっていることを実感していたので、音声認識ソフトがしっかりしてくれば活字化に役立つだろう。

私の持っているもので一番新しいものもだいぶ古くなったが、「SANYO ICR-PS501RM 」だ。

文字化(音声認識)ソフト

いままでドラゴンスピーチと、AmiVoiceを購入したが、これも実用レベルには今一だったので余り使わないまま、どこへ行ったか分からないので、新たにgoogleの音声認識を利用するという「Voice Rep Pro」を購入してみた。レビューを見る限り、相当使えそうだ、

スキャン+OCRソフト

本の該当部分をスキャンし(コピー機でもいいし、スキャンできるマウスもある。)、OCRソフトで文字化すればいい。③だ。これは時々やっている。

Adobe Acrobatでは、スキャナーからの読み込み・テキスト認識・PDF への変換が同時に行えるらしい。この機能は使っていなかった。

手書き文字の活字化

これはだいぶ前から、ぺんてるが商品化していたが、考えてみれば極端な悪筆の私の字がそうそう活字化されるわけもなく、全く役に立たなかった。

ただ最近、スマホやevernoteを利用して、手書き文字の活字化も相当実用化してきたらしいが、悪筆の私には、所詮、無理な話だ。

Kindle本の電子情報の取り出し

本来ならこれが大本命になるはずだ。しかし、2年前にはじめてKindleを利用しはじめた頃、文中のある部分を選択して「ハイライト」すると、それが記録されて「読書メモ」ができるということだったが、多くの和書で、保存できる「ハイライト」数がわずかに限られていて、到底利用できないと思ったことを思い出した。他にページを画像として保管できるということもあったが、これは紙本のスキャンよりも扱いが面倒だ。あとSNSを利用して書き出すという方法もあるようだったが、私は未だにSNSは加入しているだけなので「公開」は考えなかった。ということで、大本命のはずが、読書記録を作るということでは全く役に立たないように思えた。今、当時目を通した「Amazon Kindle クリエイティブ読書術」という本の最後を見ると、ソーシャルマイページ「Amazon Kindle」の未公開のハイライトとEvwenoteで自分だけの「読書メモ」を作ろうという記事があった。これも含めてデジタル情報のKindle本の電子情報を利用した「読書メモ」について検討してみたい。

今少し簡単なやり方はないか

このようにしっかりと頭に定着させるために時間と手間をかけるべき本もあるが、多くの本はもう少し手軽に「記憶の片隅」にさえあればいいのではないかと思う。そのためには、ここで検討するような方法に基づいてワードプレスの投稿記事を作成するのは大げさすぎるだろう。簡単なメモだけ残すようなやり方も考えたい。