法とルール

~ストーリー漫画でわかる 作者:大樹七海,監修:杉光一成

知的財産についての入門の入門として

理系の大学を経て,国立研究機関に在籍したあと弁理士資格を得て人生で初めて漫画を描いたという,非常に勉強家であることがうかがわれる作者の作品である。

ストーリー漫画で描かれた「ビジネスツールとしての知的財産」という触れ込みであり,碁のソフトをめぐる様々な紛争,日米対決等が描かれている。漫画は中の中程度の面白さか。

知的財産について入門の入門として読む分にはいいだろうが,今後も知的財産分野を漫画で描くのであれば,もう少し突っ込んだ内容が望まれるだろう。漫画を描く苦労は分かるが,このような作品を読む読者はそこをあまり評価しない。

重要な用語

各章の漫画の後に,簡単な知的財産についての説明記事が載っている。その中で重要と思われる用語だけピックアップして掲載しておく。

パテントロール

「コストセンター」「プロヒフィットセンター」から「ビジネスツール」へ

SWOT分析(プラス/マイナス,内部/外部環境),ファイブフォース分析

特許権…技術的アイデア,意匠法…工業的に量産できる物品のデザイン,商品名やサービス名称等…商標法,(実用新案権…物品の形状,構造の考案),著作権法…アイデアや感情の表現,不正競争防止法

国際特許…PCT

ブランド…商標の中でも品質保障機能を持ち,」顧客吸引力を化体資産としての価値を得たもの

特許出願しないという選択肢

弁理士と知的財産管理技能士

IT企業のスタートアップに必要な人材

経営 ハスラー,開発 ハッカー,デザイン ヒップスター
製品の「外観」という意味での製品デザインは,意匠法

デザインドリブンイノベーション(手段)とブルーオーシャン戦略(目的)

知的財産法でデザインはどこまで保護されるか

ビジネスモデル/操作性/素材/外観/アイコン/音/店舗

特許法,商標法,意匠法,不正競争防止法

IPランドスケ-プ

市場参入抑制機能,市場排除機能

オープン&クローズ戦略

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学ぶ

~「失敗学」から「創造学」へ 著者:中尾政之

原因,結果,因果関係

ある分野の学問的な解明は,ある事象(ものごと)についてなぜその「結果」が生じたのか,「結果」に因果関係のあるその「原因」は何かという形をとることが多い。著者の「失敗学」も,その典型であろう。

しかしこれをひっくり返して,ある「結果」を生じさせるためにはどのような「原因」を設定し,実行すればよいかを考察するのが,著者の「創造学」である。ただ著者は,機械工学畑のエンジニアなので,話題は,モノ作りの話が中心になるが,それに限られているわけではない。

著者は,創造(著者の定義は「自分で目的を設定して,自分にとって新しい作品や作業を,新たに造ること」)の過程を,「思い」(願望)→「言葉」(目的)→「形」(手段)→「モノ」(アクションプラン)ととらえ,まず「目的」を言葉として設定することが重要だとする(これが「出力」となる「結果」である。)。そしてその「原因」となる「入力」を<「形」(手段)+「モノ」(アクションプラン)>と捉え,その具体的な内容を「思考演算子」を適用して検討していく。

本書の概要

筆者の言葉を借りれば本書は,①「いつもと違うことを何かやってやろう」と勇んで創造するために,「その〝何〟とは何なのか」を考えることで要求機能を列記し(なお環境に制約されるので仕方なく達成しなければならない消極的要求機能を「制約条件」という。),②次にその〝何〟を実現するための設計解を,「いつものワンパターンの思考演算」を使って創出し,③さらに「あちらを 叩けばこちらが立たず」の干渉が生じる要求機能を整理することで,互いに独立で最少の数の要求機能群を設定し,④最後に,複雑な状況下で創造するとき,どのように組織(モジュラーとインテグレイテッド)を構築すれば成功率が高まるかを検討するという内容である。

①③の目的の設定,整理,②の設計解を求める思考演算が,二つのポイントである。そしてまず頭に叩き込むべきことは,②の思考演算である。

設計解を求める思考演算

筆者は,旧ソ連の特許を解析して発明者の頭の動きの共通性を抽出したと言われているTRIZ(トゥリーズ)という技法の「教科書を読んで簡単な思考演算子をいくつか覚える」と,容易に新しい設計解を導くことができという。

そして筆者は,ある調査により全体の98%を占めた技法のトップ12を紹介し,1から5までについて詳細に説明している(第2章)。

1.挿入付加(20%),第3物質,第3機能,複合物質
2.分割(19%),機能分離,並列化,オフライン化,副次排除
3.変形(13%),回転,相似,対称,交互,ベクトル分割
4.交換(9%),反転,内外,前後,左右,入出力,因果,動静
5.流線(8%),アナロジー,等角写像,駄肉そぎ,デッドスペース
6.合体(5%),集合,一体化,付加,加算,乗算,相乗効果
7.変換(5%),作用変換,時間関数化
8.電磁場(4%),場の挿入
9.相変化(4%),凍結化
10.表面改質(4%),表面処理
11.独立化(3%),非干渉化
12.冗長化(3%),市販品利用,安全対策

著者は,「設計解は必ず存在する」とし,これらの技法がうまくいかない場合の二つの原因として「自分の課題を一般化・抽象化できない」,「一般的な設計解が提示されたのにその知識を自分の課題に特殊化,具体化して適用できない」ことを指摘する。

とにかく本書の第2章は,特に「文科系」のひとはあまり目にしないことなので,よく読んで頭に叩き込むのがよい。

システムは可視化できる

しかし,要求機能を列記しこれを満足する設計解を求めてもうまくいかない場合に「自分が何をやりたいのか,何を作りたいのかがよくわからず,考えが整理されていない」ことがある。どうやって整理するか。

要求機能はいくらでも列記できるので,まず下位の類似機能を上位の概念でくくって上位機能に合体する,機能が実現すると従属機能と効果も自動的に成立する,上位の設計解が決まると下位機能が決まるということで,整理すると,要求機能を半数から4分の3程度には,減らすことができる(要求機能が漏れている方が気づくのが大変である。)。その上で,要求機能と設計解の関係を示すとすっきりするが,設計解が別の要求機能に干渉して,達成できないものも存在する。

日本では「すり合わせ生産は日本の強み」などといって「干渉設計」が好まれてきたが,「干渉」は失敗の原因の多くを占める。要求機能が干渉している場合,設計行列は非対角成分が存在する行列になるので,すべての解が一括して定まり,設計条件がひとつ変更されても,設計解がすべて変わることになる。トラブルを起こさないようにしたいのなら,干渉が起きないような「独立設計」を目指すべきだ。

ここまでが,「問題解決の創造と方法」の基本である。

著者は日本の現状を踏まえ,「干渉設計」とそれを支える「インテグレイテッド」組織について考察を進めるが,それは別の「問題解決」であろう。

なお以上の紹介は,大雑把すぎるので,今後,適宜,増補していきたい。

それと,以上の考察の目的(要求機能)は,対象が自分自身に向いていない。自分が何かを達成したい(ダイエット),何かをやめたい(酒,たばこ等々)という場合は,どう考えればいいのだろうか。例を酒をやめるということにして,「習慣の力」や「仕事・お金・依存症・ダイエット・人間関係 自分を見違えるほど変える技術 チェンジ・エニシング」等を参考にして考察してみよう。 

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戯れ言日録,本の森

未読・半読・一読の本 4  (180708)

Kindle本は時々安くなる。特にIT系や自然科学系の比較的高価な本,あるいは新書類は,数か月から1年に1回くらいは,ほぼ4分の3から半額になるセールがあるような印象だ。

私は,すぐに読みたかったり必要となったりしたわけではないが,興味を惹かれたKindle本は,サンプルをダウンロードしておく。そして時間を置き,購入する気になった本を購入する。もちろん購入しないままで終わる本も多い,ただ半額になるセールがあると,購入しようという気になることも多い。

半額になったのでここ何日かで購入したKindle本

➀「Pythonゲームプログラミング 知っておきたい数学と物理の基本」(著者:田中 賢一郎)

②「人狼知能で学ぶAIプログラミング 欺瞞・推理・会話で不完全情報ゲームを戦う人工知能の作り方」(著者:狩野 芳伸)

③「人工知能プログラミングのための数学がわかる本」(著者:石川 聡彦)

④「弁護士が教える IT契約の教科書」」(著者:上山 浩)

⑤「知財戦略のススメ」(著者:鮫島 正洋)

⑥「実践フェーズに突入 最強のAI活用術」(著者:野村 直之)

⑦「マンガでわかる神経伝達物質の働き ヒトの行動、感情、記憶、病気など、そのカギは脳内の物質にあった!」(著者:野口 哲典)

⑧「勉強の技術 すべての努力を成果に変える科学的学習の極意」(著者:児玉 光雄)

 

このうち➀~④は,サンプルをダウンロードしてあって,機会があればと思っていた本である。②は,私が,ゲーム制作会社の社外監査役となったのでぜひ勉強したいと思った本,④は仕事の参考になると思っていた本ではあるが,少し高額だったので,セールがあれば購入しようと思っていた。➀③は,半額になったので,その気になった。

⑤は,仕事で探していて内容が優れておりしかも半額だったので即決で購入した。

⑥は,ITとビジネスを考えるうえで参考になりそうだったので,半額につられて購入した,

⑦⑧は,半額になる新書があったので面白そうなものを探して購入した。

Kindle本の値引きについて

安くなった時にKindle本を買うのは快感であることは間違いない。ということは,高い値段で購入した本が半額になったのを見ると,なんとも悔しい気がする。しかしそういう経験を多く重ねてきたので,後者はあまり気にならなくなった。半額を生かす方が生産的だ。でも,未読・半読・一読の本が増える一方だ。困ったもんだ。