山ある日々

「梅は咲いたか,桜はまだか」と浮かれていた私のお腹を見て,孫娘は「運動すること。お酒を飲まないこと。」と厳命する,指切りげんまんまでさせられた。

私もお腹のことはかねがね気になっていたので,本当に久しぶりだが,初心者のリハビリ山歩きコース,箱根の湯坂道に行くことにした。もう一年以上前だが,大山に行って,下りの階段でひざを痛くし(体重のせいだ!),山歩きから遠ざかっていた。
 
湯坂道は,箱根湯本から,湯坂山・浅間山・鷹之巣山を経て,芦之湯へ下り,箱根峠を経て三島に至る道だそうだ。阿仏尼の「十六夜日記」にも出てくる。

路箱根湯本の日帰り湯「和泉」のすぐ先から登り始める。歩くルートは,芦之湯に下るために国道一号線に出るのでそこのバス停で終わるか,直前で左折すると飛竜の滝を経て畑宿に下るのでそちらを行くかどちらかだ。いずれも帰りのバスを拾う問題があるし,少し歩く時間が短いので,湯坂道を往復してもいいなとも思った。すぐに,日帰り湯に入れるし。

湯坂道は,最初は荒れた少しきつい上りが続くが,30分くらいで湯坂城址の説明書きがあるところを通過すると,あとはほぼなだらかな上りで(ただし最後の鷹之巣山を挟んで,割と厳しいアップダウンがある。),誰でも楽しめる道だ。春の桜,秋の紅葉は最高だ。ゆっくり歩いて3時間のコースだ。

さて今回は少し雪が残っていることも考えられたが,上りだし,軽アイゼンはいらないないだろうと判断した。

やはり途中から雪が現れ,少し凍っているので,どうしても歩くのがゆっくり目になる。しかも,私はいつものトレランシューズだし…と言い訳するのは,途中で若者3人組がすたすた抜いていったからだ。「昔は上りでは,セミプロ以外には抜かせなかったのに,しかし彼らは,そうは見えないなあ。」とぶつぶつとつぶやくが,今日は先が長い。当然だが,雪は上に行くほど増えてきて,なかなか大変だ。

やっと。浅間山を過ぎたが(といっても,特に山頂はない。),鷹之巣山に向かう下りあたりから,強風が吹きつけるようになった。下は凍り,手袋も,耳当てもないので,厳冬の山歩きそのものだ。多分体感温度は零下10度くらいではないか。

鷹之巣山へは,急なⅠ00メートルくらいの上りがある。昔は,ここの上り下りは歩きにくくて本当に大変だった。少し前に,木の階段が設置されたので,ゆっくり登ればなんとかなったが,ここが前のままだったら,どうしただろうか。雪が予想されるときは,安全のために,軽アイゼンは持っていたほうがいいなあとあらためて思ったのであった。

国道一号線に出たが,引き返してもう一度湯坂道を下るなどは全く考えず,バスで箱根湯本へ。どうしても湯元前で,バスは動かなくなってしまう。出発点の日帰り温泉「和泉」に行く。単純泉だが「和泉」の湯は本当に気持ちがいい。

お酒も飲まず,3時過ぎには自宅に帰ることができた。

法とルール

前置き

私の友達に,診療所(医療法人)を経営,診療しているお医者さんがいる。彼が抱えている問題について,簡単なレポートを書いて見たので,デフォルメして紹介する。私と同年代の中高年のお医者さんの参考になるのではないかと思う。経済学徒と孫守り転じて,久しぶりの法律関連記事の投稿だ。

前提となる簡単な事実

診療所の売上は多く,報酬も少なくない。でもそうなったのは開業してからで,大学病院勤務時代は貧しかったという。

子供は,大学生だが,医者の途には進まなかった。

医療法人は持分あり法人で,余剰金が計上されている。

最近,MS法人で不動産を購入した。

税務署がやってきて,MS法人への経費支出の一部を問題にされた。

お医者さんは,MS法人で社会的に有意義なことをやりたいと考えている。

問題の所在とその考え方

(1)はじめに

上記の状況を一覧すると,良好な収入,資産状況にあり,特段の問題はないようにも思われる。

ただ医療法人の態勢,その年齢と子供の現況等を考えると,医業の承継ないし相続について,現在から十分な対応を考えておくのが望ましいといえよう(もちろん誰でも死後のことなどどうでもいいが,医療法人の剰余金は,放っておけば雲散霧消してしまう。)。

またこのような状況をもたらすために休みなく稼働しているが,そのような状況について再考し,その労力(収入)の一部を他の有意義な活動に振り向けるということも考えるべきである。

ただし,これらは今後相応の期間,現在の収入,稼働状況が継続することが前提であり,医療法人がトラブルに巻き込まれないような十分な防御態勢も考えておく必要がある(健康であることは当然である。)。

(2)医業の承継と相続

ア まず一般的に死亡時に保有する財産が相続の対象となることは当然であるが,このまま推移すると,医療法人の持分,及びMS法人の株式も,多額の相続財産となる可能性がある。

イ 現在,新規に設立される医療法人は,持分なし法人である(したがって,持分の相続ということはあり得ない。)。当局は今,強力に持分なし法人への移行を進めようとしているが,ほとんど移行は進んでいない。医療法人の理念で旗を振りながら,移行の際に医療法人に贈与税が課されることがあるなどといわれてまともに考える人はあまりいない(「持分なし医療法人」への 移行を検討しませんか?」参照。)。ただ将来,当局が強引に移行ないし持分あり法人に不利益を課すのではないかと危惧する人もいる。

医業の継続を考えると,持分権者の死亡時に,その相続人に医療法人から持分を払い戻すことがなくなるというのは魅力的である。医療法人に余剰があれば,医業に貢献した医師に「退職金」を支払えばいいのである。医業の承継も,評議員,理事の交代時に,「退職金」を支払うことで実行できる。

ただし本件では,子供による承継はなさそうなので,①第三者にどのタイミングでどのような費用を負担させて承継させるか,その時点で持分あり法人と持分なし法人のどちらがよいか,あるいは②第三者に承継させずに(相続時に)法人を解散して残余財産を分配するのか,ということを想定してみる必要がある。少なくても,現在の医療法人の余剰金が雲散霧消しない対応が必要である。

ウ 一般に,MS法人のメリットとして,事業面から,医療法人で実施できない事業を行なえる,経営負担の分散が行える,転用可能な不動産を取得できる,就業規則を分けることができる等,税務面から,役員報酬の支給を通じた所得分散。交際費の損金算入限度の増加,役員報酬の取得,軽課法人税率適用額の増加,共同利用設備の少額資産化,消費税の納税義務の判定等があるとされる(「メディカルサービス法人をめぐる法務と税務」(著者:佐々木克典))。

このように利用される場合もあるであろうが,実態としては,医療法人に課せられた業務制限,非営利性,剰余金の配当の禁止という規制を潜脱するために利用されているといわれる(特に最後)。ただこれも少しピントがずれていて,要は,剰余金について,医師に対する所得税45%が課税される報酬として持ち出すか,MS法人に経費として持ち出し,それを利用するかという問題である。しかし後者が否認されると,追徴課税等の問題が生じてしまう。

これらについて,MS法人の不適切な利用をやめさせるため,税務の前に考え直させそうとしたのが,「取引報告義務制度」と考えることができよう。

MS法人に対する経費支払の一部否認というのも,そういう問題であったと思われる。またその収入に継続性があるかも疑問である。

(3)MS法人によるビジネス

このように考えると,現時点では,労力(収入)の一部を他の有意義な活動に振り向ける方法として,MS法人に対して医療法人の余剰金をどう持ち出して,どう有効活用するかという問題の立て方はあまり適切ではないかもしれない。

それはさておき,まずどういう活動(ビジネス)が考えられるだろうか。

ありふれたアイデアであるが,医療法42条により定款にいれて…(略)…をすれば,直接あるいはMS法人外注して行うことができるのではないだろうか。これらにより医療費の増大を抑える方向性が見つかれば,社会的意義も大きい。

そしてこのような研究からMS法人が行うべきビジネスも見えてくるかもしれないが,実際は,なかなか魅力的なビジネスの開発はむつかしい。私は,Apple,Google,Amazonに絶えず心を揺すぶられてきた。小さくても,そういう揺さぶりのあるビズネスを探すのがよい。

(4)医療法人の防御

上記(2)(3)は医療業務が順調に推移することを前提としているが,思わぬ事態が発生してこれが瓦解することもあり得るから,十分な防御態勢を立てておく必要がある。

これまで,医療機関においてそのような意味で大きな問題となってきたのは,①医療事故(とその対応),②スタッフの労働問題,③診療報酬の不正請求等であるが,近時は,④行政が医療機関に求める様々な法規制についてこれを理解し適切に対応することも重要である。③はともかく,①②④は弁護士マターであるから,適宜相談されたい。

①は,仮にミスがあったとしてもどう適切に対応できるかが重要であるし,ミスがなかった場合も,放っておいていいわけではない。むしろこちらの対応の方が,こじれることが多い。②は,法令に定められたルールに従うということである。

④は,行政は「後出しじゃんけん」であれこれいってくることがあることを十分に理解すべきである。

これが,上記(2)(3)を進めるための前提となる。

 

戯れ言日録

昨日の夜は少し寒かった。孫娘は,いつものように,寝る前に絵本を読んでもらうために,じじばばの簀の子ベッドに来て,まずいつもどおり飛び回り,やはり寒かったのか,早々にお布団に潜り込む。何と今日はじいじの布団だ。

じいじは喜んで,「トラのじゅうたんになりたかったトラ」を読む。今,一番気に入っている絵本だ,前は全部で3冊ということになっていたのだが,最近「もう一つ」を乱発し,何日か前には1時間以上も読む羽目になった。「もう一つ」というのは「たくさん」という意味だ。おかしもそうだ。

ところが昨日は,「トラのじゅうたんになりたかったトラ」の「おしまい」を読んで横を見ると,なんと孫娘はもう寝入っているではないか。しかも,じいじの布団のままで。じいじは大喜びだ。

しかし少しすると,孫娘はじいじの枕に載せた頭を,だんだんと真中へ移動してくる。多分寒いからあったかいじいじにすり寄って来るのだろう。それ自体はうれしいのだが,じいじはだんだんベッドの端に移動せざるを得なくなる。このままでは落ちてしまう。何とか固まって持ちこたえよう。首が痛い,凝ってきた。じいじは,鯉の滝登りに引っ掛けて,えみちゃんの枕登りと何度となくつぶやく。

そのままの状態でうつらうつらし,悪夢を見たが,ついに3時。布団から出て,階下のこたつで一人で寝たじいじであった。