法とルール

廃棄物処理法について

廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は,ご多分に漏れず,増改築を繰り返した結果,きわめて理解しづらい法律となっている。御者に対する許可が取り消されるのはどのような場合か,まとめてみたので,参考になると思い,掲載する。なお基本は,一般廃棄物処理業のうちの,収集,運搬業の申請の許可である。取消し,あるいはその他の態様の廃棄物処理業は,その応用とし,読み解くのはさほど困難ではない。

要点

 
一般廃棄物処理業のうち,収集,運搬業の申請の許可は,廃棄物処理法7条5項(該当すると許可されない場合は4号),処分業の許可は,法7条10項(該当すると許可されない場合は4号。収集,運搬業の法7条5項の規定を準用),許可の取消は,法7条の4に定められている。
  法7条の4の許可の取消も,法7条5項4号を中心に規定されているので,法7条5項4号をしっかり読み込むことが重要である。

◇収集・運搬(法7条5項4号(イ~ヌ)),処分(法7条10項4号)の許可要件

イ.成年被後見人若しくは被保佐人または破産者で復権を得ない者
ロ.禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ.次の法律の違反により罰金に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 <廃棄物処理法,浄化槽法,大気汚染防止法,騒音規制法,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律,水質汚濁防止法,悪臭防止法,振動規制法,特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律,ダイオキシン類対策特別措置法,ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律,暴力行為等処罰ニ関スル法律,刑法第204条(傷害),第206条(傷害助勢),第208条(暴行),第208条の3(凶器準備集合),第222条(脅迫),第247条(背任)>
ニ.廃棄物処理法第7条の4第1項,第2項,若しくは第14条の3の2第1項,第2項(これらの規定を第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。),又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され,その取消しの日から5年を経過しない者
  許可を取り消された者が法人である場合においては,当該取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員,取締役,執行役又はこれらに準ずる者をいい,相談役,顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず,法人に対し業務を執行する社員,取締役,執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)をいう。
ホ.許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に,一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法の規定による届出をした者で,届出の日から5年を経過しないもの
ヘ.ホに規定する期間内に一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法の規定による届出があつた場合において,ホの通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員若しく重要使用人であつた者又は個人の重要使用人であつた者で,届出の日から5年を経過しないもの
ト.その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
チ.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイからトまでのいずれかに該当するもの
リ 法人でその役員又は重要な使用人のうちにイからトまでのいずれかに該当する者のあるもの
ヌ 個人で重要な使用人のうちにイからトまでのいずれかに該当する者のあるもの
※ 重要な使用人とは,次の代表者である。
一 本店又は支店
二 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で,廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くもの

◇ 許可の取消要件(法7条の4)

 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
一 第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに該当するに至つたとき。
二 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
三 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ニに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
四 第七条第五項第四号イからヘまで又はチからヌまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
五 前条第一号(注:この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反する行為(以下「違反行為」という。)をしたとき、又は他人に対して違反行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、若しくは他人が違反行為をすることを助けたとき)に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
六 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第七条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
2 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が前条第二号(注:その者の事業の用に供する施設又はその者の能力が第七条第五項第三号又は第十項第三号に規定する基準に適合しなくなつたとき)又は第三号(注:第七条第十一項の規定により当該許可に付した条件に違反したとき)のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。

◇産業廃棄物処理業

 <第七条の四 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
 一 第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに該当するに至つたとき。
 二 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
 三 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ニに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
 四 第七条第五項第四号イからヘまで又はチからヌまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
 六 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第七条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
 2 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。>
 <第十四条の三の二 都道府県知事は,産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
 一 第十四条第五項第二号イ(第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロ若しくはヘに該当するに至つたとき。
 二 第十四条第五項第二号ハからホまで(同号イ(第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロに係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
 三 第十四条第五項第二号ハからホまで(同号イ(第七条第五項第四号ニに係るものに限る。)に係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
 四 第十四条第五項第二号イ又はハからホまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
 六 不正の手段により第十四条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第十四条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
 2 都道府県知事は,産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。>

法とルール

問題解決と創造

このWebはかなり盛りだくさんなので,乏しい時間をやりくりしてあちらをいじればこちらが倒れ,こちらをいじれば,あちらと矛盾するというようなことになってしまうが,私としては,最終的には,法というルールが,硬直性,複雑・難解性,権威性を離れ,個人,企業の生活を利する,柔軟,平明,合理的なものになるよう,努力していきたいということが,目標だ。

その目標のための基礎作業,準備作業となる,「問題解決と創造」に手を入れ,その下位項目である「仕事:アイデアをカタチに」の題名を改めて「問題解決と創造の方法と技術」にして最初に持ってきて,「生活:食動考休」の題名を「生活と仕事:食動考休」にして,2番目にした。さらにその中に,「人体」,「人類史」の検討を入れることにした。これでだいぶすっきりとした(はずだ)。これらの項目立てははこれからも変わっていくだろう。

問題解決と創造のために,どのように頭と心を働かせるべきなのか,その基本として,問題解決については「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」(著者:佐藤 允一)を,創造については,「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」(著者:中尾政之)を紹介し,今後,これを基準として,検討を進めていくことにする。

法とルールの基礎理論

少し前になるが,「法を問題解決と創造に活かす」とその中心になる「法とルールの基礎理論」にも,少し手を入れた。

ここでの問題意識は,「規範とゲーム」(著者:中山康雄)や,「法と社会科学をつなぐ」(著者:飯田高)を読み込み,言語ゲーム,ゲーム理論等を踏まえた,新しい法の機能論,立法論に近づきたいということだ。

私は別に高踏的なことを言っているのではなく,このまま政府官僚と諮問機関による複雑・難解な独りよがりの立法を許せば,唯識論が複雑怪奇な解釈,細分化によって結局仏教が見えなくなったのと同じ現象が,今後起こる,あるいは現に起こりつつあるということだ。あるいは将棋の妙手がAIにしかわからないように,新規立法も,政府官僚と諮問機関にしかわからなくなるだろうということだ。コピペ立法と,括弧書き立法によって,法令はいくらでも複雑にできる。それは正確でも分かりやすくもない。世界中で引き返す時期だ。

法とルール

この投稿は,固定ページ「法とルールの基礎理論」の記事を投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ「法とルールの基礎理論」をご覧ください。

法とルールの基礎理論に取り組む

「法を問題解決と創造に活かす」ためには,「法とル-ルの基礎理論」から考える必要がある。

これまで法律をめぐる「学問」は,実定法についての「解釈学」と,さすがにこれだけで「学問」と称するのは恥ずかしいので,その周辺に「法哲学」,「法思想史」,「法制史」,「法社会学」,「法と経済学」等々を配置することで,何とか「学問」という体裁を整えてきた。ただ問題は,この周辺の「学問」は,実定法「解釈学」にほとんど影響を与えていないし,法律学徒には大な影響力のある実定法「解釈学」も,裁判所は法解釈にあたって参照する程度である。更には,実定法「解釈学」も裁判所の法解釈も,少なくても日本においては,「科学」ではない。私の関心は,「法とル-ルの基礎理論」についての,新しい周辺の「学問」(上記に加えて,進化論,言語ゲーム,ゲームの理論,行動経済学,複雑系ネットワーク科学,ベイズ推定,統計学等を加えよう。)が,政府の立法実務と裁判所の法実務(法解釈+事実認定)を「科学」にすることにある,

しかし我が国の上記の実定法学者の「解釈学」と裁判所の法解釈の隔たりは,いま,崩れつつあるといっていいかもしれない。法令は実定法学者を巻き込んだ審議会で迅速に制定,改廃されるし,ロースクールを通じて実定法学者と裁判所実務の距離は縮まりつつあるだろう。世界中で,社会が急速に変化,流動化し,人の行動を支えるルールも激変しつつあるという現実が,それを支えていることは間違いない。

ただ我が国の法をめぐる現状は,このような現実に適格に対応するという動きの中から生じたというより,その場しのぎの対応を繰り返しているだけという方が近そうだ。

今後なすべきこと

新しい周辺の「学問」については,以前「「法とルールの基礎理論の本」まとめ読み」をまとめたが,今見るとこれらの検討だけでは不十分だ。これを補充する総論的な本として「法と社会科学をつなぐ」「エコノリーガル・スタディーズのすすめ」「法哲学」「数理法務のすすめ」「法律」を挙げておく。これ以外についても,現在,充電中である。

ルールについて,「複雑系ネットワーク」(社会)の中で「限定合理性」を有する人が営む「ゲーム」(行為)についてのルールはどうあるべきなのか,どうすれば紛争,権利侵害を除去し,生産性をあげることができるのかというのが,立法と,法解釈学の根本問題である。中心となるツールが,行動ゲーム理論であろう。

もうひとつの問題は,事実認定が「科学」的であるためには,どうすればいいかということである。

この両者について,IT・AIの利用を進めることも必要だ。「法とAI」,「仕事の役立つIT技法」もこのような観点からのを目指している(現状は全く不十分だが。)。

これらに加え,法が言語によるルールであることや,法がどのように機能してきたかという歴史的な観点も必要だ。

法が言語によるルールであること

法が言語によるルールであることについては,ウィトゲンシュタインの言語ゲームとの関係が気になっていた。というのは,ハートの「第一次ルール」,「第二次ルール」の考え方は,ウィトゲンシュタインの影響を受けているのではないかという指摘を 橋爪大三郎さんが「人間にとって法とは何か」,「はじめての言語ゲーム」でしているが,どうもその根拠があいまいで,ウィトゲンシュタインの言語ゲームを考察の基本にしていいかわからなかったからだ。しかし,「二十世紀の法思想」(著者:中山竜一)の第2章,3章に,ウィトゲンシュタインのハートへの影響が明記されていたので,安心した?人類学者の中川敏さんが書いた「言語ゲームが世界を創る」を読み始めていたが,これも入れ込めそうだ。

言語ゲームと,ゲーム理論は,関係ないが,期せずして,法とルールを「ゲーム」を基盤として考察することになりそうだ。

その後(平成30年6月23日),「規範とゲーム」(著者:中山康雄)を入手,一読した。この本は,橋爪さんの上記「はじめての言語ゲーム」をあげて,示唆的ではあるものの,精緻化されることはなかったとし(私も同感だ。),自身は上記著作で「社会的規範や(社会的)ゲームを基盤として人々の活動原理を明らかにすること」を目的とするとする。そして実際,規範体系,ゲーム体系を提示し,後者の「中に,言語ゲーム,ゲーム理論を位置づけ,全体の構造を明らかにしようとしている。更に,生活,組織,法体系,経済活動等を,規範。ゲームの観点から分析しており,現時点での私の関心を十二分に満たしてくれる内容になっている。加えて,法体系では,法文の分類,法律の分類,法的推論,法実践(裁判)の分析にも及んでおり,このような関心を持つ哲学者がいたことにいささかびっくりしている。

これで,法,ルール,ゲーム等が見えやすくなったので,立法や,事実認定の問題に,検討を進めることができるだろう。

実は上記した「法と社会科学をつなぐ」も優れた本で,ここから全体の見通しをつけようとも思っていたのだが,この本は個々の問題のとらえ方は秀抜であるが,全体の構造が見えにくく,どうしようかと思っていた。上記「規範とゲーム」によって,この本も生きてくる。

各論

追ってきちんとした,参考本の目録を作成し,各論を展開していきたい。