人の心と行動

「やり抜く人の9つの習慣  コロンビア大学の成功の科学」(Amazonにリンク

著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン

9 THINGS SUCCESSFUL PEOPLE DO DIFFERENYLY by Heidi Grant Halvorson

出版社等による内容の紹介の要約

◎話題沸騰! Harvard Business Reviewで最多閲覧数を記録

◎モチベーション科学の第一人者が教える「心理学的に正しい目標達成の方法」とは?

コロンビア大学でモチベーション理論を教える社会心理学者の著者が,多くの心理学者たちの数々の実験と,著者自身の研究成果によって証明ずみの「心理学的に正しい目標達成の方法」によって,「成功とは生まれつきの才能で決まるものではありません」,「「成功する人には共通の思考や行動のパターンがあります」として,「心理学的に正しい目標達成の方法」を展開する。

◎本書で紹介する「目標達成に最も寄与する習慣」

  • 目標に具体性を与える・目標達成への行動計画をつくる
  • 目標までの距離を意識する
  • 現実的楽観主義者になる
  • 「成長すること」に集中する……etc.

◎本書で手に入る「目標達成ツール」

  • 目標達成の切り札「if-thenプランニング」
  • 目標までの距離に目を向ける「これから思考」
  • ネガティブな側面にも目を向ける「現実的楽観主義」
  • 失敗を味方にする「成長ゴール」
  • 〝やり抜く力〟を支える「拡張的知能観」……etc.

「今日からすぐ実行できる考え方がコンパクトなページ数(120ページ)の中で豊富に紹介されています。」,「仕事からダイエットまで「達成したい目標」があるなら,ぜひ本書を参照してみてください」,「これまでより,もっと早く,もっと上手に,目標を達成できるようになるはずです。」。

私のコメント

全体の感想

読んでいて余り異論のない目標達成のための行動論と言える。内容もシンプルに纏まっていてよいが(元がブログ記事だという紹介がある。),抽象的で説明不足とか,物足りないという感想もありうるだろう。ただ,ある程度「習慣」を巡る本を読んでいれば,著者が,何を問題にしているのかだいたいピンとくるし,参考文献も掲載されているので(ただし,翻訳されていないものが多そうだ。),十分だと思う。第6章で「グリット」や「マインドセット」にも触れられている。私としては,頭がこの方面に向いている人にはおすすめだ。そうでない人の興味は惹かないだろう。

表題にある「9つの習慣」とは?

「9つの習慣」が,9章にわたって展開され,各章には,その内容を端的に表す表題が付されているほか,各章の最後に,何個かのポイントから構成された「まとめ」が付されている。

さらに最後に,著者によって,「9つの習慣」次の様のまとめられている。ここでは,その著者の最後のまとめと,それに対応していると思われる各章の表題(翻訳と英語)を紹介しておく。各章の最後にある何個かのポイントから構成された「まとめ」は,追って紹介しよう。

  • 1.明確な目標を持っている。●目標に具体性を与える Get Specific 
  • 2.if-thenプランの形で「いついつになったらやる」と計画している。●目標達成への行動計画をつくる Seize the Moment to Act on Your Goals
  • 3.現状と目標までの距離に目を向けて「目標に近づくために何をすべきか」に焦点を当て,モチベーションを維持している。●目標までの距離を意識する Know Exactly How Far You Have Left to Go
  • 4.成功できると信じている。同時に,成功は簡単には手に入らないと考えて,努力をおこたらない。●現実的楽観主義者になる Be a Realistic Optimist
  • 5.最初から完璧を目指さない。失敗を恐れることなく,少しずつでも進歩することを考えている。●「成長すること」に集中する Focus on Getting Better, Rather than Being Good
  • 6.どんな能力でも努力で身につけられると信じている。どんな困難でも「やり抜く力」を持って当たることができる。●「やり抜く力」を持つ Have Grit
  • 7.意志力も鍛えれば強くなることを知っていて,習慣的に鍛えている。筋力と同じように,意志力も使いすぎれば消耗することを知っている。●筋肉を鍛えるように意志力を鍛える Build Your Willpower Muscle
  • 8.誘惑をできるだけ近づけないようにしている。意志力で誘惑に打ち勝とうとはしない。●自分を追い込まない Don’t Tempt Fate
  • 9.「やらないこと」でなく「やること」に焦点を置く。●「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する Focus on What You Will Do, Not What You Won’t Do 

「9つの習慣」を簡単に検討する

1,2は,目標と計画の重要性である。計画をif-thenプランという形にすることを推奨している。

3,4,5は,行動によって目標に到達するまでには,時間と距離の隔たりがある。そこでの「行動論」である。

6は「マインドセット」を,「固定的知能観」と「格納的知能観」にわけ,後者の「能力は経験や努力を重ねることによって高めることができる」を正しいとするが,そのためには「グリット(やり抜く力)」が不可欠だとする。

7,8は意志力を問題にしているが,意志力は消耗することもあり,要は,あまり意志力に頼らない「行動」とすべきだとする。

9は,行動分析学が指摘するように「~をしない」は問題にせず,「~をする」ことにどのような行動随伴性を設定するかが重要だとする。

本書をどう活用するか

私は今,「個人:生活・仕事・文化」の「前提の2」として「自分の行動改革」を,「習慣」という観点から検討している。

そこでは「良い習慣、悪い習慣―世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法」(著者:ジェレミー・ディーン),「習慣の力」(著者:チャールズ・デュヒッグ)「ぼくたちは習慣で,できている。」(著者:佐々木 典士)等を参考にしているが,本書も加えて検討することになろう。

その他に,「自分を変える1つの習慣」(著者:ロリー・バーデン)という「階段マインンドセット ちょっときついが正しい行動をとる思考」を推奨するビジネス本があるが,なかなかノウハウに満ちていて,これをうまく活用したいと思っている。

いずれにせよ,①前状況-②行動-③状況の変化という枠組みの中で,①,②,③の中に何を入れ込んで,目標の達成論を考えるべきか,できるだけ速やかに試論を作りたい。

なお,本書には,詳細な目次はないので,詳細目次は掲載しない。

 

人の心と行動

「図解 老人の取扱説明書」(著者:平松 類)(Amazonにリンク

どこから「老人」を見るか

「老人」というと,「頭がぼけ(認知症),体を支えられなくなり,心もゆがむ」(いわば「全滅論」といえよう。)という固定イメージがある。誰だって,自分がそんな「老人」になるなんて思いもよらないはずだが,街中には,少なくてもそういうふうに見える「老人」があふれている。私もそろそろ60台半ばを迎えて,「老人」と見られる場面も出てくるはずだが,あまり「老人」の自覚はない。でもこれから一体,どうなるんだろう。そういう中でたまたま本書を手に取った。

本書(図解 老人の取扱説明書)は,老人の困った行動を16取り上げている。ここでは最初の8個をあげてみよう。

①都合の悪いことは聞こえないふりをする。②突然,「うるさい!」と怒鳴る,でも,本人たちは大声で話す。③同じ話を何度もする。過去を美化して話すことも多い。④「私なんて,いても邪魔でしょ?」など,ネガティブな発言ばかりする。⑤せっかく作ってあげた料理に醤油やソースをドボドボとかける。⑥無口で不愛想。こちらが真剣に話を聞こうとすると,かえって口を閉ざす。⑦「あれ」「これ」「それ」が異様に多くて,説明がわかりにくい。⑧赤信号でも平気で渡る。

すべて「頭がぼけ(認知症),体を支えられなくなり,心もゆがむ」全滅論に起因するように思えてくる。

しかし,著者は,その前に,年を取ると五感がどうなるかを問題にし,五感の変化について次のように説明する。

五感の変化

Ⅰ視覚 老眼が40代中盤からはじまり,60代になると老眼鏡を使わないと辛くなります。また,白内障が50代から半数以上の人に発症し,80代を超えると99%が白内障になります。白内障になると,暗い所と明るい所が見にくくなります。

Ⅱ聴覚 難聴は50代後半からはじまり,60代後半で急速に進み出し,80代以上では7~8割を占めます。まずは高い音が聞き取りにくくなり,電子音などを聞き逃します。次第に,複数の音声の聞き分けができなくなります。後ろから迫っている車の音にも気づかなくて,轢かれそうになります。

Ⅲ嗅覚 50~60代までは年齢とともに機能が高くなりますが,それ以降はやがて低下します。70代からの機能低下が大きいです。嗅覚と味覚は関連しているので,味も感じにくくなります。普段の生活では自分の体臭・口臭に気づかず,相手を不快にさせます。

Ⅳ味覚 60代から衰えてきます。味覚障害により,醬油やソースをたくさんかけたくなります。味がわかりにくくなることで食べる楽しみが減るため,食欲もなくなります。

Ⅴ触覚(温痛覚) 50代から衰えはじめ,70代から顕著になります。手に持っているものの感覚が弱まるため,物を落としやすくなります。温度感覚も鈍るので,やけどをしやすくなります。若い人と同じ空間にいても空調の設定が違うため,嫌な顔をされます。

困った行動のかなりの部分は五感の変化が原因だ

上記した8つの困った行動のうち,①②⑤⑥は,五感の変化が原因の可能性が大きく,③⑦は記憶の問題,⑧は歩く速度の問題であり,五感以外の心身機能の一部が衰えてくるということだ。④は,役割の問題である。残りの8個の困った行動の多くも,五感の変化と心身機能の一部の衰退が原因だ。

五感の変化や心身機能の一部の衰退については,それぞれ「老人」自身で,それ相応の対応ができるし,家族や第三者もそのことが理解できると対応の仕方が大きく変わるだろう。「老人」の行動を「全滅論」で理解し,対応することはお互いにとって不幸だということだ。

全滅論につながる機能の衰退は阻止できる

五感の変化はそれを理解し,適切に対応すれば,さほど問題ではない。一方,心身機能の一部の衰退が,徐々に大きな衰退につながると,その影響は甚大である。これを防ぐのは,食動考休,特に動考である。本書でも簡単に触れられているが,見過ごしてしまいそうだ。間に合ううちに始めなければ…

本書について

「老人の取扱説明書」という題名には,多くの人が顔をしかめそうだが,本書は,老人を「取扱う」主体として,施設,病院等の第三者だけではなく,家族,そして自分自身を想定している。しかも著者は,多くの「老人」と接している「眼科医」ということのようだから,上記のとおり,問題とされる困った行動事例も,あまり深刻でない事例だ。そうなると,「取扱説明書」という機能的な観点がかえって好ましい。

なお,本書には,図解でない,新書版があるが,図解版をおすすめしたい。新書の方は記述が煩わしい。図解版はタブレットがなくてもパソコンにkindleソフトをインストールすれば読むことが出来る。

詳細目次

人の心と行動

私のゲーム体験

ゲームは人を映し出す。小さい子は,自分が後退しなければならないルールが許せない。おとなは,主観的な筋立てや考えるふりをするだけで,強引に手順を進めたり,そもそもゲームの世界に入り込むのを嫌って敬遠したりする。

私は小さい頃は,花札,トランプ,将棋等が好きだったし,碁も少しやったが考えるふりをして強引に進めるだけでうまくならず,いつしかゲームの世界に入り込むのを嫌い敬遠するようになった。

大学生になった頃,インベーダーゲームが流行った記憶だが,あまり好きではなかった。ルービックキューブにも手を出さなかった。その後,私の子供らはそこそこゲーム好きになってファミコン等で遊んでいたが,私はお酒を飲みながら子供らが遊ぶのを見る方が楽しかった。

ということでずいぶんと貧しいゲーム体験だ。

ゲームとのコンタクト

そういう私がなぜ「ゲーム」とコンタクトするのか。対象は,「ゲーム理論」ではなくて,間違いなく「ゲーム」だ。

それは最近,ゲームの制作を受託している会社数社の持株会社の監査役になったことから,これらの会社がどういう業務をしているのか,よく理解する必要がでてきたからだ。まず会社のスタッフから,口頭ベースで簡単な説明を受けた。最近のスマホゲームにも少し触ってみた。それでこれからは,自学自習だ。

「ゲームの今」(Amazon)という本の「はじめに」に,次のような指摘がある。

「こと「ゲームについて語る」となると,明らかにゲームの現状を把握していない発言や,一方的(ないし極めて主観的)な見地からの発言が,急激に増大する傾向がある。興味深いことに,普段は冷静で,畑違いの分野について見解を示すにあたっては下調べを怠らない専門家たちが,ことゲームについて語りだした途端,十年以上前の状況を前提とした分析をしたり,実体がどこにもないブームについてその社会的背景を推測したりと,いわば「勇み足」を連発してしまう…個人的には,これはゲームが持つ,本質的な強さを示しているように思う。ゲームには,識者をして「たかがゲーム」と感じさせる,驚異的な間口の広さがあるのだ。」。

「たかがゲーム」と感じさせることが,「驚異的な間口の広さ」を示しているというこの本の言い方は,すぐには理解できないかなり「ひねくれた」分析だ。

「たかがゲーム」という切り口は,明らかに「ゲーム」を,つまらないものとみている。ひとつはゲームが,単なる「遊び」だということ,もうひとつは,ゲームを構成する要素は大したものではないという「思い込み」からなっているのだろう。

しかし,後者は,全くの誤解である。今のゲームの制作,流通に必要なものをざっと挙げても,企画,シナリオ,ゲームデザイン,プログラミング,ゲームAI,サウンド,グラフィックス,ビジュアルデザイン,ネットワーク,法務・著作権,国際対応,マーケッティング,広告・宣伝,プロジェクトマネージメント等々,膨大な広がりがある。コンテンツ・ビジネスの中でも,最も複雑な仕組みの中で初めて成立する成果だろうが,ゲームを遊ばない世代からは,もっともつまらないものとみられている。前者は,「思想」の問題だ。このような中で「たかがゲーム」と言えることが,ゲームの「驚異的な間口の広さ」,毀誉褒貶なんでも飲み込んでしまうゲームの性格を示していることになる。

現実との架橋

これではすれ違いのまま終わるので,取り急ぎ「ゲーム」と現実を架橋しよう。

1点目は,ゲーム制作の中心に,プログラミング,ゲームAI,ネットワークがあるということだ。ゲームでの試み,習熟が,現実での「軽快な動きを切り開くだろう。

2点目は,ゲームがルールによって成立しており,ルールと世界の関係をシミュレーション出来るということだ。これによってはじめて法が科学的に検証できる土俵に乗るだろう。

3点目は,プロジェクトマネージメントである。ゲーム制作に関与する人員は次第に膨大となり,しかも仕事の集中と弛緩を管理するのは,基本的にはクリエーター自身だから,労働法規の枠組みの中で,プロジェクトマネージメントを実行するのは至難の業である。まさにあらゆる分野のプロジェクトマネージメントの試金石になるだろう。

このように指摘することで,はじめてゲームと関わりを持てなかった世代の人や,敢えて関わらなかった人にも,その意味合いが見えてくるだろう。

そしておそらく実際にゲームにのめり込む体験を経てはじめて,ゲームと現実が深くつながるのだろうが,私にはもう無理かな。

取り急ぎ調べることと今後の課題

まずゲームの歴史と現在の状況を把握する必要がある。「ゲームの今 ゲーム業界を見通す18のキーワード」(著者:徳岡 正肇)(Amazon)には,ゲームの歴史を踏まえた現状の詳細な記述がある。少し古い歴史はその前版である「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」( デジタルゲームの教科書制作委員会 )(Amazon)にある。ただゲームの世界は変化が早いから,最新の状況は,丹念に業界情報を追う必要があるだろう。未読だが「All in One ゲーム業界」(廣瀬豪)(Amazon)は,刊行が最近で,新しい情報に基づいているようだ。

ゲーム開発を引っ張ってきた一人の「遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継」(著者:株式会社モバイル&ゲームスタジオ)(Amazon)も少し古いが参考になるだろう。Kindle無料本の「ゲーム開発者の地図: 20年の個人開発から学んだこと」(著者:SmokingWOLF)(Amazon)をダウンロードしてみたが,何が書いてあるのかさっぱりわからないのでやめた。

その他,もう少し理解が進んだら,各論の本も読み進めよう。反対にゲームをコンテンツの一種として検討する「図解入門業界研究 最新コンテンツ業界の動向とカラクリがよくわかる本」(著者:中野明)(Amazon)も参考になるだろう。

上述したプログラミング,ゲームAI,ネットワークについては,「人工知能の作り方 ―「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか」(著者:三宅 陽一郎)(Amazon),「人狼知能で学ぶAIプログラミング 欺瞞・推理・会話で不完全情報ゲームを戦う人工知能の作り方」(著者:狩野 芳伸他)(Amazon),「ゲームを作りながら楽しく学べるPythonプログラミング」(著者:田中 賢一郎)(Amazon),「ゲームを作りながら楽しく学べるHTML5+CSS+JavaScriptプログラミング[改訂版]」(著者:田中 賢一郎)(Amazon)等が参考になる。

ゲームとルールについては,「組み立て×分解!ゲームデザイン―ゲームが変わる「ルール」のパワー」(著者:渡辺訓章)(Amazon)を材料に,ゲーム理論と対比して検討したいと思っている。

ゲームの世界は広大だが,人生は短い。