問題解決の方法
検討すべき課題と構成
課題
この項目では,ヒト,企業,政府,環境の4要素と,これらの相互作用によって形成される「社会と世界」を加えた5領域の問題の検討に先立ち,全ての問題解決について一般的に適用できるレベルの基本的な「問題解決の方法」について検討する。焦点となるのは固有の「問題解決論」であるが,「個の問題」,「世界の複雑な問題群」をより良く理解,運用できるように「準備1ーヒトの進化・行動・思考・情報」と「準備2ーデータ・資料から見る問題群」を概観し(詳細はこれに続く4要素5領域の各項目及び「世界の複雑な問題群」に記述する。),「問題解決の基礎」として「問題解決論」を,それに続いて「問題解決論」を補完する「主要な理論と方法」と「様々なアイデア」を掲載する。更に独立した項目の「IT・AI・DX」も「問題解決の方法」において重要な地位をしめる。
構成
この項目の構成は,以下のとおりである。
若干の方法及び目的の検討
「問題解決と創造」,「世界の複雑な問題群」,「IT・AI・DX」のすべてのコンテンツにおいて,これまでどのような方法で記述するのかが,なかなか定まらず,長い間,乱雑なままで放っておかれた。ここで一定のルールを決めておこう。
方法か定まらないのは,要は,このWebで何をしたいのかの目的が定まっていなかったからである。
しかし,今,ようやく方向が見えてきた。このWebは,「個の目標達成と依存からの脱却」という問題と,世界の複雑な問題群(「地球の環境問題」,「地球温暖化とエネルギー問題」,「デジタル情報の氾濫と法とルールの破綻」「資本主義と企業の行方」,「地域の行方と災害」)を解決するためのツールであることを主目的とし,知的好奇心の満足を従たる目的とする。従って私のための確認(備忘)と展開の基盤であると同時に,閲覧者がWebの情報の位置づけと方向性を理解しこれを手掛かりに新たな世界に赴くことができる内容でありたい。
だから放送大学の講義(印刷教材),基本書,参考本等の内容を紹介するときは,最低限120字程度で紹介しよう。というのは,たまたま手に取った「時代を超えたブックガイド遊読365冊:松岡正剛」で,たまたま目に入った「中国古代の文化 中国古代の民俗:白川静」は「中国の古代観念において 日本の原観念を語り切る-。この最も挑戦的な難題1人でこなす漢字学の牽引者がいよいよ史観の発生現場をも叙述した。文字霊と言霊への原型への旅は同著者の漢字関係の著作を!」と紹介する。 「位置づけと方向性を理解しこれを手掛かりに新たな世界に赴くことができる内容」である。その他,臨機応変に。
準備1-ヒトのー進化・行動・思考・情報
放送大学の講義
- 総合人類学としてのヒト学(’18)Introduction to General Anthropology
- レジリエンスの諸相(’18)-人類史的視点からの挑戦 Aspects of Resilience-Approaches and Challenges from the Viewpoint of Human History
- 「人新世」時代の文化人類学(’20)Cultural Anthropology in the Era of “Anthropocene"
- 比較認知科学(’17) Comparative Cognitive Science
- 知覚・認知心理学(’19) Psychology of Perception and Cognition
- 情報学へのとびら(’16)Introduction to Informatics
- 情報技術が拓く人間理解(’20)Understanding the Humans through Information and Communication Technologies
基本書
- 哲学入門:戸田山和久
- 「こころ」はいかにして生まれるのか-最新脳科学で解き明かす「情動」:櫻井 武
- こころの情報学:西垣通
- フォーカス :ダニエル・ゴールマン
- 思考と推論 理性・判断・意思決定の心理学:K・マンクテロウ
- 探究型読書:編集工学研究所
- 才能をひらく編集工学 世界の見方を変える10 の思考法 :安藤昭子
準備2ーデータ・資料から見る問題群
基本書
- 〔データブック〕近未来予測2025 :ティム ジョーンズ,キャロライン デューイング
- Come On! 目を覚まそう!―ローマクラブ『成長の限界』から半世紀 ~環境危機を迎えた「人新世」をどう生きるか? :エルンスト・フォン・ワイツゼッカー, アンダース・ワイクマン
- 2052 今後40年のグローバル予測:ヨルゲン ランダース
- データでわかる2030年地球のすがた(日経プレミアシリーズ): 夫馬賢治
問題解決の基礎
問題解決論
問題解決の3冊の基本書
なず「問題解決の基本」となる次の3冊の基本書を紹介する。
- 「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」
- 「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」
- 「問題解決大全」
「図解 問題解決入門」…基本書1
まず解決すべき「問題の基本的な構造」(問題構造図式と呼ばれることがある。)については,「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」(著者:佐藤 允一)(Amazonにリンク・本の森の紹介)の分析が,簡便でわかりやすい。
同書は「問題」を「目標と現状のギャップ」ととらえ(後記「問題解決大全」によると,これは,ハーバート・A. サイモンが,言い出したらしい。),原因となる「入力」,「制約条件」や「外乱(不可抗力)」が影響する「プロセス」を経て,結果となる「出力(現状)」が生じるという「問題構造図式」を提示する。この図式をふまえ,「入力」や「制約条件」をコントロールすることで,「出力(現状)」を変え,問題解決を考えようというのである(「佐藤問題構造図式」という。)。これだけでは単なる枠組みに過ぎないが,それだけに問題解決の様々な対象や方法を整理して位置づけるのに便利である。
次に同書は,「問題」を,発生型(既に起きている問題),探索型(今より良くしたい問題),設定型(この先どうするか)に分類しており(この分類は「時間型分類」といえよう。),これも有用である。
さらにこれは私見ではあるが,「問題」を,個人型,人工物型,システム型に大別することも有用である(この分類は「対象型分類」といえよう。)。「世界」の大部分の問題は,「システム思考」が対象とすべき複雑な「システム型」の問題であるが,個人の問題の多くは,個人型として個人の意思決定と行動改善の方法として捉えることが適切であるし,人工物(多くは商品であろう)の問題は,人より物の振る舞いが前面に出る設定型,探索型の問題であるから,別に検討したほうが良さそうだ。ただし,それぞれの方法を他に応用することは有益である。なお企業に関わる「問題」は,個人型,人工物型,システム型のいずれの要素も含んでおり,併せて経営分析,経営戦略等として検討されているから,別途,検討すべきである。
「創造はシステムである」…基本書2
「創造」は,佐藤の「問題構造図式」の時間型分類の,設定型(この先どうする)ないし探索型(今より良くしたい問題)として,問題解決の一場面と位置づけることができる。
「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」(著者:中尾政之)(Amazonにリンク・本の森の紹介)は,「創造」(自分で目的を設定して,自分にとって新しい作品や作業を,新たに造ることと定義する。)の過程を,「思い」(願望)→「言葉」(目的)→「形」(手段)→「モノ」(アクションプラン)ととらえ,まず「目的」を言葉として設定することが重要だとする(これが「出力」となる「結果」である。)。そしてその「原因」となる「入力」「制約条件」等を<「形」(手段)+「モノ」(アクションプラン)>と捉え,その具体的な内容に「思考演算子」(これは,TRIZ(トゥリーズ)のことである。)を適用して,検討,選択し,「目的」を実現していく。システムである人工物の設計,創作を念頭に置いた問題構造図式の変化型であるが,システムについての問題解決は複雑,難解なものが多いので,まず人工物の創造でこれに習熟することには意味がある(ただし同書には,「システム思考」の話は出てこない。)。
「問題解決大全」…基本書3
なおこの上記の2つの方法に止まらず,「問題解決と創造」を実現する観点から考え出された様々な技法がある。それらの主要なものが「問題解決大全」(Amazonにリンク・本の森の紹介)で,丁寧に検討されている。「問題解決大全」では,問題解決の手法をリニア(直線的) な問題解決とサーキュラー(円環的) な問題解決の2つに大別して取り上げた上,問題解決の過程を,大きくは4段階,詳細には14段階に整理し,それぞれに該当する技法を紹介している。①問題の認知(目標設定,問題察知,問題定義,問題理解),②解決策の探求(情報収集,解の探求,解決策の改良,解決策の選択),③解決策の実行(結果予測,実行計画,進行管理),④結果の吟味(結果の検証,反省分析,学習・知識化)である。基本書1,2を十二分に補完する内容となっている。
基本書1~3を基本となる「基本3書」としたい。基本3書の詳細目次である「「問題解決と創造の方法」基本3書の詳細目次」(このサイトの記事にリンク)を作成してみた。これを見ているだけでも頭の整理になる。
放送大学の教材・参考本
- 問題解決の進め方:放送大学
- 問題解決の数理(’17) 大西 仁
- 新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方:佐藤 允一
- 創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ:中尾政之
- 実例で学ぶ創造技法:日本創造学会
- 問題解決手法の知識 (日経文庫):高橋 誠
- 問題構造学入門 知恵の方法を考える:佐藤允一
- 問題解決大全~ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール:読書猿
- なぜ危機に気づけなかったのか ― 組織を救うリーダーの問題発見力 :マイケル・A・ロベルト
主要な理論と方法
- 【複雑系・カオス】
- 【システム思考】
- 【統計学・データ分析】
- 【数理モデル】
- 【ゲーム理論】
- 【TRIZ】
- 【デザイン思考】
- 【KJ法】
- 【基礎情報学】
様々なアイデア
放送大学の教材
- 遠隔学習のためのパソコン活用(’17)(テレビ・字幕) 秋光 淳生、三輪 眞木子
- 社会調査の基礎(’19(テレビ・字幕) 北川 由紀彦、山口 恵子
- ユーザ調査法(’20)(テレビ) 高橋 秀明
- 社会統計学入門(’18(ラジオ) 林 拓也
- 問題解決の進め方(’19)(テレビ・字幕) 秋光 淳生、柴山 盛生
参考本
- アイデア大全~想像力とブレイクスルーを生み出す42のツール:読書猿
- 頭と仕事をシンプルにする 思考整理50のアイディア :サイモン・タイラー
- IDEA FACTORY 頭をアイデア工場にする20のステップ アンドリー・セドニエフ, 弓場隆
- アイデアのつくり方 ジェームス W.ヤング、 竹内 均
- アイデア・バイブル マイケル・マハルコ、 加藤昌治 ナビゲート
- アイデアのちから チップ・ハース、 ダン・ハース
- ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発想ツール70 小野 義直
- はじめよう!カンタンTRIZ―頭の片隅にあるアイデアをかたちにする本 光雄, 長谷部, 忠男, 小池
- アイデアはどこからやってくるのか 考具 基礎編 加藤 昌治
- 思いが伝わる! 心を動かす!アイデアを「カタチ」にする技術 長澤 宏樹
- <アイデア>の教科書 山田 壮夫
- ∞アイデアのつくり方 株式会社バンダイ高橋晋平
- アイデアを形にする!発明教室 vol.2 夢ツキ倶楽部
- アイデアを形にする!発明教室 vol.1 夢ツキ倶楽部
- 知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る 隆, 日垣
- BCG流 非連続思考法 アイデアがひらめく脳の運転技術 リュック・ド・ブラバンデール, 秋葉 洋子