本の森

好きにすればいいのだけれど

数年前(がいつ頃かは定かではないが)、私は年末になると「このミス」(このミステリーがすごい)を買って、今年はどのくらい売れ筋のミステリーを読んだか(目の付け所が良かったか)を確認するのが恒例であったが、最近はミステリーを買ったとしても、1年間に2、3冊だと思うので(今年は何を買ったかも思い出せないが)、「このミス」には入っていないだろう。そこで今日(2014年12月23日)、「このミス」だけでなく軒並みナンバーワンにランクされている「その女アレックス」を買ってきた。早速読んでみよう。アメリカのkindle本では新しいミステリーもすぐに販売されているので、今後は「見栄」で英語のミステリーを買う機会も増えるだろう。

本を読もうとする目的が、こういうことについてまとまって知りたいとか、新しい世界に踏み込みたいとか、とにかく面白そうだとかいうレベルであれば、どうであれ好きにすればいいのだけれど、それでもその目的に叶う本をセレクトするにはどうすればいいかとか、時間とお金を余り浪費するのも好ましくないいうとかいうこともあるから、読書法(読書術)の本に目を通してみたりもする。しかし大部分は、偉そうにとか、それでどうしたとか茶々を入れたくなる代物だから、結局、やっぱり好きにすればいいのだけれど、ということになる。

ただ本を読むことの目的がもう少し実践的なものであれば、その具体的な目的に資するように、読んだ本の内容のうち、私にとっての必要部分(重要部分)について、効率的に整理して取り出し、頭に定着させる必要があるだろう。私は、今までこのようなことは全く行ったことがないが、さてどうしたらいいのだろうか。

「本当に使える読書術」を読む

「本当に使える勉強法」というすでに絶版になったと思われる本があるが、私はそのプラグマティックな内容及びその毒舌ぶりを気に入っていた(でもそのまま死蔵されていた。)。改めて手に取ってみたが、その第2章は「本当に使える「読書術」はこれだ!」と題して、「④まずは「時間泥棒」対策を!」、「①「何を読むべきか?」の本当の答え」、「②「速読法」は結局、どれがベストなのか」、「③読んだ本の内容を、いかに頭の中に残すか」から構成されている。

著者らの問題意識は、読書術の要点は、①何を読むか、②どれだけ早く読むか、③読んだものをどれだけ頭に残すかだが、それ以前に④そもそも、読書時間をきちんと確保できているかが重要ということであり、上記の構成はこれに基づいている。私としては、特に②③が、「本当に使える」かに興味がある。詳細はこの本の記述に譲るとして、「本当に使える読書術」のエッセンスとして、次のようにまとめられている。

「本当に使える読書術」のエッセンス

  • ○再読は、最良の速読トレーニング法である。
  • ○少しでも多くの読書時間を確保する。
  • ○新聞、雑誌は最小限にして、どんどん読み飛ばす。これが読み飛ばす能力の養成につながる。
  • ○あらゆるところにすきま時間用の簡単な本を携帯し、目を通す。
  • ○「ツァイガルニック効果」を活用し、いつでも読書モード、勉強モードに戻れる。
  • ○得意科目は人の視線があるところでも勉強する。
  • ○入門書、マンガをフル活用する。
  • ○単行本も、新聞や雑誌やネットのように、不要な部分はどんどん読み飛ばす。
  • ○誰でもできる速読法=頭の中で早口で音読する→音読せずに読む→大切そうなところを探す感覚を身につける。
  • ○再読で、高速読みの練習をする。内容を記憶に残す。
  • ○本を通読したら、もう一度目次を読む。
  • ○読んだ本の重要そうな部分をICレコーダーに吹き込み、聞きなおす。
  • ○再読は、最良の速読トレーニング法である。

誰でもできる速読法として、「頭の中で早口で音読する」から出発しているのは好感が持てる。

ついでに「技術」としての記憶法について次のようにまとめられている。

「記憶法の正解」

  • ○覚える対象を極力減らす。
  • ○楽しそうなところから勉強してみる。
  • ○人といつしよに勉強する。
  • ○苦手なものは、図やイメージや映像で覚える。
  • ○図だけを見て、本文を思い出してみる。
  • ○覚えることは、「○○」は何か?」などと、問題形式で自分に問いかけるようにする(問題にすると、記憶に残りやすい)。
  • ○音読やICレコーダーで、耳からも記憶する。
  • ○勉強会は人材交流の場として割り切る。
  • ○大切なことは5回以上繰り返す。
  • ○読む本を半分に削り、その分を繰り返しにあてる。
  • ○勉強前にウォーミングアップ(過去のおさらい)、勉強後にクールダウン(その日のおさらい)を導入する。
  • ○無意味なものはゴロ合わせを考えてみる(ゴロ合わせを考えてみるだけでも、覚えられる効果がある)。
  • ○書いて覚えるのは最低限に。書く場合は大きな字で書く。

ICレコーダーは使えるか

これの内容を見ると「ICレコーダー」に録音しその音声情報を活用することが大きポイントになっているが、これは果たして可能なのだろうか。

録音の文字化も含めて、今後、検討してみたい。

IT・AI・DX

Word Wiseとは?

2014年12月7日の夜、Kindle Paperwhiteで本を読んでいたら、いきなりアップデートが始まった。よくあることなので気にしないでいたら、今回はなぜかずいぶん時間がかかる。終了後に再起動されると、Word Wiseという新機能が使えるらしい。

たまたま読んでいた英文の本の右上のWord Wiseをオンにすると、行間が広がって、何個かの単語の上に小さな文字で英文で簡単な注釈が表示される(単語レベルがスライダーで調節して選べると書いてあるが、それがどこか今のところ分からない(その後、画面の右下のWord Wiseをクリックするとスライダーが出てくることが分かりました。)。もっとも表示されない単語についてはタップして従前の辞書機能が使えるが、こちらは表示までに少し時間がかかるのが難点だ。)。例えば「denigrate」の上に「to say critical things about」と表示され、更に「denigrate」をタップするとすぐに画面の3分のⅠ程度の大きさの別の画面が開き、その一番上に「denigrate(verb) その他の意味▶」、下の欄に、類義語として「besmirch,calumniate,defame」が、その下には「Merriam-Websterでの定義」が、4行ほどでてくる。「その他の意味」をクリックすると、別の画面が開き、「考えられる他の意味」として「to make seem less important」が出てきて、更にこれをクリックすると「Merriam-Websterでの定義」が出てくる。その画面の下には「この意味を使用」とあり、これをクリックすると、最初の小さな文字での注釈がそれに変更される。今はあるページでの一番難しそうな単語について説明したが、同じページには、「instituition」「deny」、「sppropriate」、「navigate」、「intuitive」等にも注釈がついている。

一見ややこしそうだが極めて使いやすい。念のため、AMAZONでの紹介は「Word Wiseは、対象のKindle洋書の読書中に出てきた難しい英単語に、簡単な同義語を表示するKindle電子書籍リーダーで利用できるサービスです。表示は自動で行われるため、その都度類語辞典や辞書を確認する必要はありません。その単語について詳しく知りたい場合は、そこをタップするだけでより詳細な定義や同義語が表示されます。自分の英語レベルに合わせて難易度を設定すれば、文中に表示されるヒントの数を調整することができます。」となっている。

評価

率直にいって素晴らしい機能だ。もっともこの機能が使える英文の本は限られているが(日本のAMAZONで今日現在5509という数字が出ており(2014年の12月末には9万2千を超えている。) 、その一覧も紹介されているので(こちら)、これからはそれを一つの選択の基準として洋書の購入を考えるようになるだろう。

上記のWord Wiseの一覧は、最初は人気順で表示されているが、最初のページについては私はほとんど購入済みの本だ(トップは、何と「Capital in the Twenty-First Century」だ。)。

これを価格の安い順番に並べてみると10/345まで無料の本が並んでおり(百数十冊になるだろう。)、その後も価格の安い本の順番で並んでいるので、英語学習者には、たまらない。

つらつらと見ていると、私は既にダウンロード済みの「On the origin of species」(種の起源)があることに気がついた。この本は読みにくいことで有名だが、これで読める(かも知れない。)。

「Capital in the Twenty-First Century」にしても「On the origin of species」にしても、このWord Wiseに加えて、辞書を「英辞郎」(Kindle本として購入出来る。)にすれば、少なくても単語レベルでの、英文を読む環境は最高だ。だんだん、言い訳が難しい時代になりつつあるなあ。

おまけ

英語の環境で思い出したので備忘のために書いておくが、私はパソコンで「WEBLIO辞書」サービスにも加入しているよ。これも使いでありそうだけど 。あとは翻訳ソフト(コリャ英和)も使えるようにしておこう。

本の森

哲学入門 (ちくま新書)

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戸田山 和久
筑摩書房
売り上げランキング: 62,069

最初のひとこと

今、私のいち押しである。諸学と実践の基礎となり得るか、要するに役に立つかどうかは、自分次第だ。熟読されたい。

入口で考える

まずは褒め称えよう

この本を何回かに分けてざっと目を通した段階だ。

AMAZONでの本の紹介には「神は死んだ(ニーチェもね)。いまや世界のありようを解明するのは科学である。万物は詰まるところ素粒子のダンスにすぎないのだ。こうした世界観のもとでは、哲学が得意げに語ってきたものたちが、そもそも本当に存在するのかさえ疑わしい。「ことばの意味とは何か」「私たちは自由意志をもつのか」「道徳は可能だろうか」、そして「人生に意味はあるのか」……すべての哲学問題は、根底から問い直される必要がある!科学が明らかにした世界像のただなかで人間とは何かを探究する、最もラディカルにして普遍的な入門書。他に類を見ない傑作です。」とある。

何の変哲もない書名である。今さらと思って、手に取る人も少ないであろう。でも偉そうである(本の中にもあの廣松渉先生も「哲学入門一歩前」しか書いていないという紹介があった。)。でも「普遍的な入門書」とか「他に類を見ない傑作」といえるかどうかは横に置くとしても、哲学畑でない人が、この本で書かれていることを気にしながら、あるいはこの基盤にうまく載るかどうかを確かめながら、自分のやっている対象について考察と実践を掘り下げていくのは、とても意味があると思う。

最初に結論をいうと、この本はこれから何度もここに戻って「諸学と実践」の基礎とすべき内容になりうる、これまでに余り見たことのない、「地平」を切り拓いているといえるだろう。だからまずは褒め称えよう。

簡単な概要

「序 これがホントの哲学だ」、「第1章 意味」、「第2章 機能」、「第3章 情報」、「第4章 表象」、「第5章 目的」、「第6章 自由」、「第7章 道徳」、「人生の意味――むすびにかえて」という構成で、序から2章が導入で(目的論的意味論)、3章から4章が「言語論」、5章から結びが、人間の捉え方(「人間は目的手段推論という拡張機能をもったオシツオサレツ動物である」)を中心とした、自由と責任、道徳についての考察ということになるか。3章から5章が好きな人と、6章以降が好きな人に分かれるかも知れないが。前者が基礎論で、後者が不十分ではあるが応用論で、どちらも重要といえるだろう。なお論理がないじゃんとつっこもうと思ったが、戸田山さんは、浩瀚な「論理学をつくる」の著者だから、そこは何も言えないか。

さてと

戸田山さんの基本的なスタンスは、世界に存在するのはただ物質だけで、そこから生まれた最初の生命に端を発し、人間に意識、言語のようなあたかも物質でないような「内容物」がありそうでなさそうでやっぱりありそうなことついて科学的、発生主義的な進化論によって位置づけるということであろう。固有の哲学問題はもちろん、交換、生産という経済活動も、政治や社会、規範、制度等々の位置づけも、本当は充ち溢れんばかりの最新の科学的な知見のなかで位置づけるという作業をしたいのであろうが、まだ科学の蓄積が客観的に(プラス主観的にも)不十分で、哲学プラスαの枠組みで論じているから、書かれていることは骨皮だけだという気もしないでもない。

それに「わかりやすい」講義調の口調で書かれているが、一方でこれは先鋭な論点が曖昧になることもあるし、「生徒」である読者は講義に正解を求めてしまい何か戸田山さんがいう「正解」を得てそれだけで満足してしまう傾向も生じるような気もする。最初の頃に展開されている、チューリング・テストやサールの「中国語の部屋」は哲学マニアの人にはともかく、この例示がどうでもいい人には煩わしいだけだ。

でもこの本はそれを差し引いても余りある魅力がある。

参考文献の著者はほとんど知らないなあ

「正解」を自分で批判的に検討していくためには、参考文献が重要だ。それにしても、戸田山さんが取り上げている著者は概ねマイナーだ。

この本の中心に据えているのはルース・G・ミリカン。この人の本は「Varieties of Meaning」が「意味と目的の世界」として翻訳されているが、あとはKINDLEにもほとんど収録されていない。この本の翻訳が悪いとかみついていた人がいたが、そうではなくて、もともと前提的な知識なしではわからない本のようだ。この本を読めば分かりそうだ。

あとは、ドレツキと、デネット。二人はそれなりに知られている人で、KINDLEだけでなく、AUDIBLEもある。

それと一般的な参考書籍として、「セックス。アンド・デス」、「脳がつくる倫理」、「コウモリであるとはどのようなことか」が重要そうだ。全部、KINDLEにあるが、仮にこのような本を英文で読もうとしたらどうなるのだろう。

なお7章後半の、ペレベーmに依拠した「刑事責任論」は残念ながら素人ッポ過ぎる。私はここと、より根本的には、利他行動や信頼を支えるルールをつくることに興味がある。

これからの作業

この本について学生さんがワープロで何十枚にもなるレジュメを公開していたが、それよりもキーワードを連ねた2、3枚のレジュメをつくってみるのが良さそうだ。それとは別に各章で展開されている議論で私にひっかっかるものについては、可能な限り英文の参考文献も参考にしながら考えていきたい。

そこまではそこそこ行けるだろうが、果たして「出口」までいけるかどうか。アフォーダンスとオシツオサレツに導かれる手段目的推論でやってみよう(なんのことやら!)。

 

書誌と評価

書名 哲学入門
著者(編者) 戸田山和久
出版社 ちくま新書
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本のタイプ ①参照・②簡単・③そこそこ・④かなり・⑤ものすごく
読込度 眺め読み・点読・通読・精読・熟読  →
暫定評価 ・〇・△・×・?
ISBN 978-4480067685

参考

「本のタイプ」は、佐藤優さんの「読書の技法」が紹介する、②簡単に読むことができる本、③そこそこ時間がかかる本、⑤ものすごく時間がかかる本に、①必要なときに参照する本、④かなり時間がかかる本を加え、5分類にしました。

「読込度」は、M.J.アドラーの「本を読む本」に準じ、第2レベル「点検読書」を、「点読」、「通読」に、第3レベル「分析読書」を「精読」に、第4レベル「シントピカル読書」を「熟読」にしました。さらに、それ以前の段階の「眺め読み」を加えました。紹介する時点では、ほとんど「眺め読み」、「点読」、「通読」ですが、将来、より詳細な読み方をする必要があると感じているときは→を付加します。

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