本の森,組織の問題解決

「企業」「政府」はヒトの集団である

「ヒトの生活と行動」では、もっぱら個人としてのヒトから見た「問題解決と創造」を取り上げたが、「企業」、「政府」はヒトの集団であり、集団の行動には、<個×人数>とは違う固有の問題(マイナス面もあればプラス面もある)があるだろう。
そこで「企業」「政府」を検討する(項目の内容を修正するのに)に先立って、「集団」固有の問題を検討することには、十分に意味があると思い至り、Kindle本を検索して、「集団と集合知の心理学」という本に巡り合った。

「集団と集合知の心理学」を読む

集団と集合知の心理学:有馬淑子

アクセス

「集団」を検索して見つけたのだが、これは「掘り出し物」である。著者は、社会心理学の「集団の心理をテーマとしてネットゲームなどを用いて研究して」しているそうで、第2章の「集団過程」には力が入っている。私には本書における著者の専門分野での記述のできばえは評価しようもないが、著者が専門分野に止まらず、「集団」と「集合知」(「集団」「組織」「ネット上」)を幅広く取り上げてそれぞれの知見を簡潔に整理していること、さらに補足事項として方法論である「情報科学、ネットワークの科学、意思決定研究の概念、人工知能、ベイズ統計、マインドフルネス認知療法、シミュレーション研究 (含む複雑系)」を簡潔にまとめていること等々、「まとめ本」として秀逸である(これはお得な「おまけ」だ。)。
また「集合知」(特に、第6章「インターネットの集合知」)は、「デジタル情報の氾濫と法とルールの破綻」の検討において、大きな地位を占める問題になると思う。

備忘録

作者側の発信情報

我々は、条件次第で愚かにも、賢くもなれる。困難な課題に直面した時、何を頼りとすれば正解に近づけるだろうか。集団の愚かさが強調されてきた集団研究と、賢さを強調する集合知の知見を統合しわかりやすく解説する。

私の備忘メモ

「集合」を抽象的な多数の要素の集まり「示す概念として、ヒトの集合は、群衆、集団(所属集団名を共有した2名以上の人々)とし、「組織」は集団のうち、役割構造・課題構造に関する知識が共有されているものと整理する。「企業」「政府」は「組織」であるが、その機能は全く違う。
本書3章「集合行動」は群れ(行動、知性、同調と感染)とネットを検討し、4章以下、集団、組織、インターネットの「集合知」を検討している。ネットの集合知については」少なくても「集合知とは何か ネット時代の「知」のゆくえ (中公新書) :西垣通)を併せて検討しよう。
なお本書には、組織の問題解決という視点は余りないのかも知れない。この著者の先輩かも知れないが、釘原 直樹さんの「人はなぜ集団になると怠けるのか -「社会的手抜き」の心理学 (中公新書) 」や「グループ・ダイナミックス –集団と群集の心理学」等が、次に検討すべき本だろう。

詳細目次

 

人の心と行動

この投稿記事は、固定頁のコンテンツ「問題解決と創造」、「ヒトの行動と生活」を見やすく整理するために、「健康」を、「ヒトの行動と生活」の下位項目に移転するに際し、投稿記事にしたものです。今後、固定記事の方が、修正されます。

検討すべき課題と構成

検討すべき課題も何も、誰にとっても「健康」は、最優先の問題である。
問題は、生老病死のうち、生老病であり、私たちが日常的に実行するもっとも重要な課題は生の「食動考休」である。そして生の延長ででも老死を迎える。しかし、多くの場合、生老に、病が絡む。
そこで以下、「食動考休」、老化、病気の順番に検討しよう。
現代の「食動考休」は、狩猟採集生活時代のそれから大きく変容し、危機的状況を迎えている。「食動考休」を考える場合、その変容を視野に入れることが重要である。
「老化」は、早めに対応を考えるのが大事そうだ。
「病気」を理解することは重要ではあるが、これを取り上げると細部に振り回される傾向がある。絶えず「進化的適応」という観点からとらえ直すようにしたいと考えている。

なおこの分野の「放送大学の講義」は充実しているようなので、まずこれを纏めて紹介しておこう。「死生学のフィールド(’18)(ラジオ・字幕) 石丸 昌彦、山崎 浩司」は、死も視野に入れているのだろう。

放送大学の講義と参考記事

放送大学の講義

  •  運動と健康(’18)(テレビ・字幕) 関根 紀子
  • 食と健康(’18)(テレビ・字幕) 吉村 悦郎、佐藤 隆一郎
  •  食健康科学(’15)(テレビ・字幕) 小城 勝相、清水 誠
  •  健康と社会(’17)(ラジオ) 井上 洋士、山崎 喜比古
  •  健康への力の探求(’19)(ラジオ) 戸ヶ里 泰典、中山 和弘
  •  睡眠と健康(’17)(ラジオ) 宮崎 総一郎、林 光緒
  •  健康長寿のためのスポートロジー(’19)(テレビ・字幕) 田城 孝雄、内藤 久士
  • 死生学のフィールド(’18)(ラジオ・字幕) 石丸 昌彦、山崎 浩司

参考記事

いまのところ、

食動考休

健康であるためには、毎日の食動考休を適切に実行する必要がある。ここでなすべきことは、「健康になりたい」という「思い」を、できるだけ容易に「実現できる」スキームを創りだすことであるが、その内容を具体化するにあたって、科学的でなければならない。
以下、食動考休に分けて検討するが、食動考休の全体に<関連する記事>として次の記事を挙げておく。作成時にはまだ「休」が含まれていなかった。

食については、「多様なものを、新鮮なうちに(特に野菜・果実)、腹八分で」、という以上になすべきことはないであろう。検討すべき本として、「食事のせいで、死なないために[合本版]」(著者:マイケル・グレガー)(Amazonにリンク)を挙げておこう。

動(運動)は、有酸素運動(エアロビクス)、筋肉トレーニング、ストレッチを万遍なくこなすことだが、これではやりきれないので、簡易な運動+ウオーキング・ランニング、あるいは「多動」でもいいだろう。私は、スポーツクラブのジャグジーの「水中歩行」はほぼ定期的に行ってきた。今は、朝のスロージョギングに挑んでおり、そろそろ習慣として定着しそうだ。これについて、

「スロージョギングで人生が変わる」を読む」を紹介した。

これがつらい人、つらい時期、あるいは体調をよくしたいときは、次項の簡易ヨガがいいだろう。

<運動>

    • 一流の頭脳:アンダース・ハンセン
    • 脳のフィットネス完全マニュアル:フィル・ドブソン
    • 超ラジオ体操
    • 学術的に「正しい」若い体のつくり方
    • スロージョギングで人生が変わる (健康人新書):田中宏暁
    • 50代で自分史上最高の身体になる自重筋トレ (青春新書プレイブックス)
    • 自分史上最高の柔軟性が手に入るストレッチ
    • AV男優しみけんが教える うんこ座りでオトコの悩みの大半は解決する! :しみけん
    • 世界一やせるスクワット
    • その不調、背中ストレッチが解決します:吉田佳代
    • 1分間だけ伸ばせばいい  2つの筋肉を伸ばして体の悩みを改善:佐藤 義人

<ヨガ>

    • ヨーガ入門 ココロとカラダをよみがえらせる:佐保田 鶴治 R
    • マンガひとめでできるヨーガ健康法:番場一雄 R
    • 1日15分 ヨーガ健康法:番場一雄 R
    • ヨガの喜び:沖正弘
    • ずぼらヨガ 自律神経どこでもリセット!:崎田ミナ
    • もーっと ずぼらヨガ 自律神経どこでもリセット!:崎田ミナ
    • すごいストレッチ 職場で、家で、学校で、働くあなたの疲れをほぐす:崎田ミナ
    • 椅子ヨガ 1日5分で自律神経が整う:マガジンハウス
    • カラダが硬い人のための らくヨガ入門 基本のコツと50のポーズ :橋本 京子
    • 体が硬い人のためのヨガ:水野健二

考は、様々な分野の基礎となることだからとても重要であるし、その範囲は、広狭様々に設定できる。

人の食動考休というレベルで考えた場合、文字(発明から五千年、読む習慣が生まれて数百年)を前提とする「考」をここに入れることは不適切で、動と休に挟まれた「考」、すなわち、文字誕生以前の「脳」の機能に関連する日常生活の動と運動、瞑想等をここに入れ、文字を前提とする「考」は「思考」で検討することにした。

ただ「脳」については、いろいろなところで問題になるので当然重なるし、どういう観点から何を取り上げるかについて整理できていないので、当面ということで次の本を挙げておこう。

  • 「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」」(著者:櫻井 武)(Amazonにリンク
  • 「脳・心・人工知能-数理で脳を解き明かす」(著者:甘利俊一)(Amazonにリンク
  • 「脳の誕生-発生・発達・進化の謎を解く 」(著者:大隅典子)(Amazonにリンク
  • 「一流の頭脳 」(著者;アンダース・ハンセン)(Amazonにリンク
  • 「脳が冴える15の習慣-記憶・集中・思考力を高める」(著者:築山 節)(Amazonにリンク
  • 「バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣」(著者:久保田 競)(Amazonにリンク
  • 「もっとバカはなおせる 最新脳科学で頭が良くなる、才能が目覚める、長生き健康になる」(著者:久保田 競)(Amazonにリンク
  • 「脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方」(著者:レイティ,ジョン J., ヘイガーマン,エリック)(Amazonにリンク
  • 「スマート・シンキング -記憶の質を高め、必要なときにとり出す思考の技術」(著者:アート・マークマン)(Amazonにリンク
  • 「ペンタゴン式 目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ)(Amazonにリンク

休を考える。休は、体の弛緩、瞑想及び睡眠である。これらに一番いいのは、簡易なヨガだと思う。山田いずみさんの「椅子ヨガ」(NHK まる得マガジン 誰でも椅子ヨガ いつでもどこでも体をリセット 2018年 4月/5月 )(Amazonにリンク)や、崎田ミナさんも「ずぼらヨガ」(自律神経どこでもリセット!  ずぼらヨガ)(Amazonにリンク)がいい。しかしこれも面倒になってきたので、追って、もっと簡単で私でも実行できる「ストレッチ」を紹介しよう。

老化

誰もが避けることのできない老については、私も含め、ほとんどの人が老いを迎えて初めてじたばたするということが多い。これについては「老いに向かう日々」という記事を作成した。
あと、老いを迎える人にとって、大きなストレスとなる法律問題について、「高齢者の法律問題」という記事を早急に作成したい。

  • 若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間 :ジョシュ・ミッテルドルフ, ドリオン・セーガン
  • ヒトはどうして老いるのか ――老化・寿命の科学 (ちくま新書) :田沼靖一
  • 「老けない身体」を一瞬で手に入れる本:中嶋 輝彦
  • 老化という生存戦略 未
  • 初めて老人になるあなたへ  ハーバード流知的な老い方入門: B・F・スキナー

病気

健康と病気についての全貌を理解するためには、健康・医療に関わる本や資料を十分に読み込み検討する必要があるが、私は一時期「健康アプリ」を作成しようとして、ある程度関連する本を読み込んだことがあるので、順次整理していきたい。放送大学の講義の「医学・看護学」の分野は参考になるだろう。

参考本

  • 「健康・老化・寿命-人といのちの文化誌」(著者:黒木登志夫)(Amazonにリンク
  • 「果糖中毒-19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?」 (著者:ロバート・H・ラスティグ )(Amazonにリンク
  • 「一流の頭脳(」著者:アンダース・ハンセン)(Amazonにリンク
  • 「最強の健康法【ベスト・パフォーマンス編】 / 世界レベルの名医の「本音」を全部まとめてみた」(著者:ムーギー・キム)(Amazonにリンク
  • 「最強の健康法 【病気にならない最先端科学編】世界レベルの名医の「本音」を全部まとめてみた」( 著者:ムーギー・キム)(Amazonにリンク
  • 「ジエンド・オブ・イルネス」(著者:デイビッド B エイガス)(Amazonにリンク
  • 「元気で長生きするための、とても簡単な習慣」(著者:デイビッド B エイガス)(Amazonにリンク
  • 「人間と動物の病気を一緒にみる: 医療を変える汎動物学の発想」(著者:バーバラ・N・ホロウィッツ他)(Amazonにリンク
  • 「進化から見た病気-「ダーウィン医学」のすすめ」(著者: 栃内新)(Amazonにリンク
  • 「ペンタゴン式 目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ)(Amazonにリンク

 

人の心と行動

この投稿記事は、固定頁のコンテンツ「問題解決と創造」、「ヒトの行動と生活」を見やすく整理するために、「思考」を、「ヒトの行動と生活」の下位項目に移転するに際し、投稿記事にしたものです。今後、固定記事の方が、修正されます。

検討すべき課題と構成

「思考」は、「行動」の一部であり、情動、記憶、知覚等と並んで、心的世界を構成する。思考は、「推論」、「問題解決」、「意思決定」で構成されるとされるが、(「教養としての認知科学」「考えることの科学」等)、そのリジナルな出典は今のところ確認できていない。
この項目については、今までに作成した「思考の基礎となる基本5書」と「危機的な状況にある現代の思考に係わる2書」を紹介し、次いで「総論」、「問い」、「推論」、「問題解決」、「意思決定」に分けて参考本を紹介する。

思考

思考を論じた本は多い。まず「思考の基礎となる基本5書」と「危機的な状況にある現代の思考2書」を紹介し、「参考本」を掲記する。

思考の基礎となる基本5書

  1. 「意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策」
  2. 「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」
  3. 「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」
  4. 「原因を推論する-政治分析方法論のすすめ」(著者:久米郁夫)
  5. 「物事のなぜ-原因を探る道に正解はあるか」(著者:ピーター・ラビンズ)

「意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策」

人の思考の基礎である早い思考、遅い思考(「二重過程理論」について概括的に論じた本として、「意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策」(著者:阿部 修士 )(Amazonにリンク)を挙げておこう。もちろん、「ファスト&スロー」を読み込めばいいのだが、批判的に検討しやすい本として当面これをあげておく(カーネマンについて、アレコレ言うのは、多少しんどい。)。

これを踏まえ、早い思考について、1992年時点で検討している「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)と、主として遅い思考の内容を緻密に検討している「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)を紹介しておく。この2冊については内容を簡単に紹介しよう。

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)(Amazonにリンク)は、 ヒトと組織(の中のヒト)の思考の特質(不合理性)について、丁寧にきちんと整理して論じている。著者は、サセックス大学の心理学教授であったが1998年に亡くなっており、本書の刊行は1992年で30年近い前である(しかしKindle本の刊行、翻訳等は最近行われているようだ。)。しかし内容は非常にしっかりしており、かつ著者の表現は機知に満ちていて、読んでいて楽しい。本書刊行後、ネットの普及等でヒトと組織(の中のヒト)の思考の不合理性は強まっているが、この本をネット普及前の「原型」はどうだったのかという観点から読み、現状をその「変容」と捉えればいいだろう。本書は近々「本の森」で紹介したいが、著者が「序章」で本書の構成について述べている部分だけも紹介しておきたい。

「こうした本では、序章の締め括りで、各章の要約を述べるのが約束事になっている。読者が本書を読まないでもすむように、ここで内容を要約するほど私は親切ではないが、全体の構成だけ簡単に説明しておこう。2章(誤った印象)では、人が判断ミスをおかす最もありふれた原因を述べる。その後に詳しく見ていく不合理な思考の多くにこの原因が絡んでいる。続く七つの章(服従、同調、内集団と外集団、組織の不合理性、間違った首尾一貫性、効果のない「アメとムチ」、衝動と情動)では、不合理な判断や行動をもたらす社会的要因と感情的要因を見ていく。10章から19章まで(証拠の無視、証拠の歪曲、相関関係の誤り、医療における錯誤相関、因果関係の誤り、証拠の誤った解釈、一貫性のない決断・勝ち目のない賭け、過信、リスク、誤った推理)は、事実をねじ曲げてしまうために陥る誤りを扱い、それに続く二つの章(直感の誤り、効用)では、手元にある情報の範囲内で、少なくとも理論上は最善の結論を出せるような方法を述べ、そうした方法で出した結論と直感的な選択とを比較して、直感がいかに当てにならないかを示す。22章(超常現象)では、それまでに述べてきた誤りのいくつかを振り返り、超常現象やオカルト、迷信がなぜ広く信じられているかを考える。最終章(合理的な思考は必要か)では、ヒトの進化の歴史と脳の特徴から、不合理な思考をもたらす根源的な素地を考え、併せて合理的な判断や行動を促すことが果たして可能かどうかを考える。そして最後(合理的な思考は必要か)に、「合理性は本当に必要なのか、さらには、合理性は望ましいのか」を考えてみたい。」。

なお著者は合理性について次のように言っている。

「合理性は、合理的な思考と合理的な選択という二つの形をとる。手持ちの情報が間違っていないかぎり、正しい結論を導き出すのが、合理的な思考だと言えるだろう。合理的な選択のほうはもう少し複雑だ。目的がわからなければ、合理的な選択かどうか評価できない。手持ちの情報をもとにして、目的を達成できる確率が最も高い選択が合理的な選択と言えるだろう。」。

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)(Amazonにリンク) は、人間の実際の思考を踏まえて、合理的な推論と意思決定について検討した本である。著者は、イギリスの心理学者である。少し前に入手していたが、古典的三段論法、「ならば」,因果推論、確率的説明,メンタルモデル理論、二重過程理論、帰納と検証、プロスペクト理論等、感情,合理性,個人差や文化の影響がもたらす複雑さ等、幅広く検討していて、「思考と推論」を考える上では必須の本であると思っていた。ただ問題はここに入り込むと、出てこられなくなることである。ほどほどが大事だ。

「原因を推論する-政治分析方法論のすすめ」

「原因を推論する-政治分析方法論のすすめ」(著者:久米郁夫)(Amazonにリンク)は、政治(公共政策)を主たる対象とするが、方法論は、意識的で、内容もしっかりとした客観的なものなので、安心して読むことができる。本書からの広がりもある。ただし、「人間の認知の限界」という視点は乏しいようである。

「物事のなぜ-原因を探る道に正解はあるか」

一方、「物事のなぜ-原因を探る道に正解はあるか」(著者:ピーター・ラビンズ)(Amazonにリンク)は、「原因、結果とその因果関係」を主題とし、古今の哲学者、科学者の主張を様々な事象に適用して網羅的に検討し、因果関係の論理を表す3つの概念モデル(断定型、確率型、創発型)、原因の4つの分析レベル(発生を促す原因、発生させる原因、プログラム上の原因、意図による原因)、原因を得るための3つの論法(検証型、叙述型、信仰型)にモデル化する。興味深いし、最後で行っている「Hiv/Aids」、「米国法」、「うつ病」の分析も優れていると思うが、「信仰型」の記述は若干疑問であるし、他者の諸書評によると、科学事象の記述に不正確なものがあるとのことで、有益なところだけ抜き取るという姿勢がいいのかもしれない。

危機的な状況にある現代の思考に係わる2書

  • 「知ってるつもり 無知の科学」
  • 「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」

前項の「思考の基礎」の本がいわば原則を論じているのに対し、現代の人の思考が論理性を失い危機的な状況にあるということについてことについて論じた本は多いが、ここでは「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)(Amazonにリンク)と、「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)(Amazonにリンク)を挙げておく。

この2冊については、「人の知能・思考がとらえる世界とは何か-方法論の基礎」に簡単に紹介したが、もう少し応用の効く内容として紹介する必要があるだろう。

参考本

総論

  • まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために:デヴィッド・ロバート・グライムス The Irrational Ape
  • 武器化する嘘 ──情報に仕掛けられた罠:ダニエル・J・レヴィティン
  • 知ってるつもり 無知の科学:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック
  • 不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100 :スチュアート・ サザーランド
  • 不合理 誰もがまぬがれない思考の罠100 :スチュアート・ サザーランド,
  • 批判的思考-21世紀を生き抜くリテラシーの基盤:楠見 孝・道田泰司 編
  • 決断科学のすすめ—持続可能な未来に向けて、どうすれば社会を変えられるか?:矢原 徹一
  • あざむかれる知性  ──本や論文はどこまで正しいか (ちくま新書)
  • 議論入門-負けないための5つの技術 (ちくま学芸文庫) :香西秀信
  • Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法:ロルフ・ドベリ
  • Think right  誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法:ロルフ・ドベリ
  • Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法 :ロルフ・ドベリ
  • なぜ、間違えたのか? :ロルフ ドベリ
  • 身銭を切れ――「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質 :ナシーム・ニコラス・タレブ
  • 脆弱性――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方:ナシーム・ニコラス・タレブ
  • 超一流が実践する思考法を世界中から集めて一冊にまとめてみた:ガブリエル・ワインバーグ,ローレン・マッキャン;Super Thinking
  • スマート・シンキング -記憶の質を高め、必要なときにとり出す思考の技術:アート・マークマン
  • 考えることの科学
  • 矛盾、誤謬、詭弁、強弁、偽善、屁理屈 :久野五郎
  • 賢く考える

問い

  • 問いこそが答えだ!~正しく問う力が仕事と人生の視界を開く~ :ハル・グレガーセン
  • 問い続ける力 (ちくま新書):石川善樹
  • 問題解決 自分のやっている9割のことを疑え!:堀江 巧
  • 答えが見つかるまで考え抜く技術 :表 三郎

推論

  • 思考と推論 理性・判断・意思決定の心理学:K・マンクロウ
  • アナロジー思考 :細谷 功
  • 問題解決力を高める「推論」の技術 :羽田康祐
  • 類似と思考 改訂版 (ちくま学芸文庫): 鈴木宏昭
  • 原因を推論する:政治分析方法論のすゝめ:久米郁男

問題解決

問題解決については、「問題解決の方法」、「問題解決の基礎」で紹介、検討した。

意思決定

  • 意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策 (講談社選書メチエ) :阿部修士
  • 意思決定トレーニング (ちくま新書) (Japanese Edition):印南一路
  • ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか:ピアーズ・スティール
  • 幸せな選択、不幸な選択-行動科学で最高の人生をデザインする:ポール ドーラン