組織の問題解決

「 ジュリスト 2019年4月号(1530号)の特集「パワハラ予防の課題」」を読む。

これは久しぶりの法律記事である。

「パワハラ」問題の現状

法令改正

今回のジュリストの特集は「パワハラ予防の課題」である。

2019年3月,パワハラに関する法案(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(旧称「雇用対策法」)の改正案)が国会に提出されたという報道があったが,「新しい法令の成立を調べる」から,内閣法制局,衆議院の動きをみても見当たらず,ここ何日かあれこれ探していたのだが,結局,3月8日に,「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」として国会提出されていることが確認できた(その内容は,厚労省のWebサイトに掲載されている。ただこれは従前の審議会等の経緯を追っている人には分かるのだろうが,そうでないと見当が付かない。関連する他の法令改正案とドッキングさせることで法案名が隠されてしまう提出手法はいかがなものだろうか(いろいろなものが含まれるだろうと予想が付く場合はまだいのだが,本件は「等」からだけで見当をつけなければならない)。

それまでの検討過程

なお法案提出までには,政府内部で,「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」,「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」,「労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)」等が開催され,報告書が作成されたり,建議が行われたりしている(その内容は,後記原論文(本ジュリスト35頁)の記載からたどれる)。

Webサイト「あかるい職場応援団」による情報提供

また,厚労省は従前から,「パワハラ裁判事例,他者の取組など,パワハラ対策についての総合情報サイト「あかるい職場応援団」」(外部サイトの記事にリンク)を設け,情報提供している。最近,厚労省に寄せられる労働相談で最も多いということだから(後記原論文),厚労省の対応の省力化を兼ねたサービス提供であろう。早晩,改正法令を踏まえた内容に修正されるだろうが(大した修正ではない),現状でも,「パワハラ基本情報」,「パワハラで悩んでいる方」,「管理職の方」,「人事担当の方」,「その他」,「相談窓口のご案内」,「Q&A」等から構成され,「動画で学ぶパワハラ」や「パワーハラスメントオンライン研修」もあり,非常に使いでのある,力の入ったサイトである(ただ,焦点を絞って検討しないと散漫になるが)。なお,これについては,次ページでサイトマップから飛べるようにした。

「パワハラ」問題の基礎知識

パワハラの定義と類型

職場においては,多種・多様な問題が生じる。「パワハラ」は,職場におけるある種の不適切な人間関係(言動)の切り取りと,それへの対応の問題である。

「パワハラ」は,次のように,定義としての3要素,典型的な6類型に整理されている。

パワハラの3要素

  • ①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
  • ②業務の適性な範囲を超えて行われること
  • ③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること,又は就業環境を害すること

パワハラの6類型

  • ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • ②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  • ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  • ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害)
  • ⑤過小な要求(業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  • ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

新法案の内容

新法案は3要素を,「①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより③その雇用する労働者の就業環境が害されること」とし(少し気になるのは従前の整理から「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること」が消えたことである。「パワハラ」の本質的要素は「人格攻撃」であるとされるが,新法案からそれが読み取れるであろうか)。

そして、事業主は、「パワハラ」が生じないように「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」との事業者の義務が法定されたのである。

ただ新法案が成立してもその適用は大企業は2020年4月,中小企業は2022年4月からとされている。

問題の考え方

「パワハラ」の限定

私は,新法案が定義を設けて「パワハラ」を限定して対応しようとすることについては賛成である。「パワハラ」といわれることで,職場の人間関係が悪化し,生産性が著しく低下すること,なにより職場が楽しくなくなるような言動は,なくすのが良い。

激動する現代社会において,職場におけるコミュニケーションの確保が難しくなりつつあるのは客観的な事実であると考えるが,それに苛立つ上司が「パワハラ」領域に足を踏み入れることも多いであろうが,一方,上からものをいわれた経験が乏しい部下が,上司の対応を「パワハラ」であると弾劾することも増えている。そのような場合,「パワハラ」の具体的な定義がないと,「パワハラ」という単語だけが一人歩きしてすべてが「パワハラ」で括られてしまい(この現象も現代社会の大きな特徴だ),上司も「パワハラ」弾劾にどう対応していいか困惑する場面が増えている。

しかし,上記のとおり「パワハラ」は,職場において生じる不適切な人間関係(言動)のうち,優越的な関係に基づき,必要かつ相当な範囲を超える,労働者の就業環境が害される行為であるとされており,このように定義されると,上司も,部下も,会社も,当該言動がそれに該当するか否か,検討する「余裕」を持つことができ,具体的な対応を検討することができる。少なくても上司が何かを命令したり,叱責したりするだけで「パワハラ」かなあという,疑心暗鬼に陥らなくて済む。

「パワハラ」から漏れる行為

職場においては「パワハラ」の定義には該当しないが,民法上の不法行為には該当するような様々な不適切な行為が生じることが考えられるが,それは事業者が対応すべき「パワハラ」の問題ではないとしても,その多くは,事業者の安全配慮義務(労働契約法5条)や職場環境配慮義務(労働契約法3条)に関する問題として,事業者は対応しなければならないだろう。又いわゆる「逆パワハラ」ということがいわれるが,「(ある特別な知識等を有している)優越的な関係を背景とした言動」とした「パワハラ」として扱うのかどうかという問題がある。そのような事例も類型的に多くなりつつああることは事実だとしても,「パワハラ」とは別に扱うかう方が適切なケースが多いだろう。「パワハラ」とはこういうものだという共通認識が失われることは,適切なことではない。

問題の整理

そうすると,①民法上の不法行為に該当する「パワハラ」と(この場合は,行為者の不法行為による損害賠償責任や労災補償責任,事業者の安全配慮義務や職場環境整備義務に違反する賠償責任の問題が生じる),②該当しない「パワハラ」が考えられが,事業者は,両者について,新法案によって「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」。

また,③「パワハラ」には該当しないが民法上の不法行為に該当するものについては事業者の安全配慮義務や職場環境整備義務に違反する賠償責任の問題が生じるので,一般的なコンプライアンス上の対応をしなければならない。

④「パワハラ」にも民法上の不法行為にも該当しない行為については,毅然として対応する叡智も必要である。

実務的な対応

私はある企業のコンプライアンス委員会の委員長をしているが,委員会はこれまで,従業員からのコンプライアンス違反の通報への対応(調査,取締役会への助言・勧告)を主としていたが,パワハラ,セクハラ,マタハラ,育児・介護ハラ等の法定を契機に,現在,これらについての相談窓口としても機能させ,これに適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じる仕組みを作る準備をしている。仕組みづくりができたら,モデルケースとして紹介したい。

ジュリストの特集「パワハラ予防の課題」について

その構成と内容

今回の特集は,下記①の座談会,及び②~⑤の論文から構成されている。

【特集】パワハラ予防の課題

■座談会

①現場から考えるパワハラとその予防 原 昌登/久保村俊哉/白井久明/杉浦ひとみ

■論文

②パワーハラスメントとは―労働法の見地から 著者:原 昌登

③スポーツ界のハラスメント問題―人間関係と団体のガバナンスにみる日米比較 著者:川井圭司

④学校現場におけるパワーハラスメント―子ども法の視点から「教育」を問い直す 著者: 横田光平

⑤パワーハラスメントとは―組織論の見地から 著者:太田 肇

①について

労働法学者,企業の担当者,スポーツ界のパワハラに関与している弁護士,学校現場におけるパワハラに関与している弁護士による座談会である。企業の担当者の逆パワハラの指摘がとても印象的だった。

職場における「パワハラ」これまでの記述によってかなりの情報がカバーされているが,予防のポイントとして,ⅰパワハラに当たるか否かイマジネーションを働かせること,ⅱ指導方法を学び共有すること,ⅲ外部の目が届く環境を作ること,ⅳ相談できる環境を作ること,ⅴ粘り強く研修を続けることなどが挙げられた事を「紹介しておく(このの整理は②の論文による。)。

その他について

②は要領よくまとめられている。①の座談会も含め,スポーツ界(③論文),学校現場におけるパワハラ(④論文)については,スポーツ界については,基本的には任意であること,学校現場は「優越的な関係を背景にした教育」の問題であることから,どう考えるべきか,直ちには考えがまとまっていない。⑤は「組織論の見地から」というが,いかにも視野が狭い気がする。機会があれば考察を深めたい。

Webサイト「あかるい職場応援団」のサイトマップに続く。

組織の問題解決

デジタル?トランスフォーメーション?

一昨日(2019年2月11日),たまたまボストン・コンサルティング・グループの「BCGが読む 経営の論点2019」(Amazonにリンク)に目を通したが,その「はじめに」の冒頭に「デジタルを中核に据え、経営を変える。バリューチェーンを再構築し、新たな成長機会を創る。デジタルによって既存事業を変革し、新規事業でイノベーションを生み出す。2019年は、そんな流れがますます加速する1年となるはずだ」とあり,「デジタル化がもたらす変化には,大きく3つの領域があると考えている。1つ目は,デジタル・トランスフォーメーション。顧客との新たな関係性を重視しながら,ものづくり,サプライチェーン,顧客接点,エコシステムなど,デジタルをテコとしてすべてを見直し,バリューチェーンを変革すること」(あとの二つは,「デジタル ベンチャー」と「組織における働き方の改革」)と続く。

私は,そのときまで「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉を見たことはあったかもしれないが,意識したことはなく,古臭い「デジタル」という言葉も「こんなふうに使われるんだ,出世したなあ」と思ったのである。

ところで,1月末の高校の同窓会でたまたま横に座った友人に「最近,ITやAIについて,何かやってみたいと思っている」と話したところ,その友人に「Project DS DXの最新状況と近未来 これからの日本の進むべき方向」というイベントに誘われたので,昨日,出席してみた。

そこでは,最初から最後まで,「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉が乱舞した。昨日の今日だからびっくりした。確かに「ITやAI」では少しピントがずれている。「デジタル」の方が,簡単でよさそうだ。

ところで,このイベントは,出席者は20数人という小さな会合で,ある損保グループでCDOを務める人の講演と質疑応答という内容だった。そのグループでは,これまでの「損保」では将来が見えないので,長年,シリコンバレーで,スタートアップを手掛けてきたその人がCDOに抜擢され,グループ全体を引っ張っているということだった。

具体的な内容は公開すべきではないと思うので,興味深かったことだけを二つ挙げよう。

興味深いこと

ひとつ目

ひとつ目は,デジタルのビジネスを行う上で重要なツールは,ひとつは,「デザイン思考」,もう一つは「アジャイル」だという指摘である。

「デザイン思考」は,私の視野に入っていたが,抽象的で本当に使えるかどうか分かりにくいねということで,1月に若いデザイナーの友人と「デザイン思考」の本を読んでみようと約束したので,早晩,読書会兼飲み会をしようと思っている。対象は,「クリエイティブ・マインドセット-想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」(著者:デイヴィッド ケリー,トム ケリー)(Amazonにリンク)と,「デザイン思考が世界を変える」(著者:ティム・ブラウン)(Amazonにリンク)だ。「センスメイキング―本当に重要なものを見極める力」(著者:クリスチャン・マスビアウ)(Amazonにリンク)が「デザイン思考」を切り捨てているので,どんなもんだかと思っていた。実際に大学で試している「エンジニアのためのデザイン思考入門」(著者:東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト)(Amazonにリンク)が肝になるか?

もう一つの「アジャイル」は,ソフト開発の手法だということで言葉だけ頭にあったが,「そうでない手法は?」と聞かれても「ウォーターフォール」は,言葉としては出てこなかった。

ふたつ目

興味深いことのふたつ目は,その損保グループでは,新しいデジタルのビジネスを行うために,数人ずつ,エンジニアとデザイナーを自前で雇用し,Googleの無償のAIを利用し,スピーディーな試行錯誤を繰り返して,短期間に欲しい「機能」を実装しているというのである。なるほど。

ただ,後ででてきた話であるが,経営陣のすべてがこのような試みを理解してくれるわけではないそうである(これは内緒)。

私は三つのことを考えた

余計なことだが,私が考えた三つのことを書いておこう。

ひとつ目

一つは,このようなデジタル・トランスフォーメーションの集いだとイケイケどんどんということになるのだが,ユーザーの立場からして,本当にそのようなものが必要なのだろうかと考えてしまう。知的好奇心は無限に膨れ上がるが,例えば健康についてどこまでデジタルが必要なのかは疑問である。これについては,上記書の「6 健康・予防領域で「稼ぐ」ために-成長領域なのに黒字化できない本当の理由」での指摘が参考になる。

ふたつ目

ふたつ目は,生活の「便利さ」なんてこれ以上どうでもいいのではないだろうかということである。特にIoTはサーバー攻撃の対象となって当面「便利」どころではないという気がするし,新しいAIの個々の様々な機能は目新しくて「便利」だとしても,総体として複雑なユーザーインターフェイスをもたらし,結局,ユーザーにストレスを与えるだけではないのか。

少し話はずれるが「ウォーターフォール」における「システム開発」が,発注者にも開発者にもトラブルをもたらすことが多かったが,「アジャイル」もその解消策にはならないようだ(上記書の「5 アジャイルの可能性と罠-組織のスピード、適応力、生産性向上にどう活用するか」参照)。

みっつ目

みっつ目は,上記したように,確かに私もデジタル・トランスフォーメーションについての「知的好奇心は無限に膨れ上がる」が,それは人の理性・推論が機能している部分である。人は,まちがいなく動物としての進化の過程にある「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」であるから(「「こころ」と行動の基礎」参照),そのような動物としてデジタルをどう取り入れ利用するのかという観点がないと,複雑性の中で迷走しますよというのが私の「余計な」意見である。

デジタル・トランスフォーメーションの道遠く

ところで,「「BCGが読む 経営の論点2019」(Amazonにリンク)から上記の2点を指摘したが,この本はそのほかの内容も優れてる。コンサルというのは,うっとおしいと思っていたが,「デジタル・トランスフォーメーション」は,彼らの思考法とピントが合っているようだ。

ついでに「BCG デジタル経営改革 Digital Transformation」(Amazonにリンク)というムック仕様のkindle本も買ってみたが,これはどうだろうか。

むしろ今後勉強しなければならないのは,「デジタル・ビジネスモデル-次世代企業になるための6つの問い」(著者:ピーター・ウェイル)(Amazonにリンク)だろうか。

ところで,デジタル・トランスフォーメーションは,DXと略されることが多いようだが,DSとは何だろうか?略語も訳が分かりませんなあ。最後の疑問である。

 

 

組織の問題解決

ルールを守る心~ 逸脱と迷惑の社会心理学 ~(Amazonにリンク

著者:北折充隆

出版社等による内容の紹介の要約

私たちは,生まれてから死ぬまで,ずっとルールに従って生きています。しかしながら,ルールを守る,破るとはどういうことなのか,社会規範から逸脱するとはどういうことなのか,迷惑行為を抑止するためにはどうしたらよいのか……といったことについては突き詰めるとよく分かっていないのが実情ではないでしょうか。本書では,そのような問題について社会心理学の立場から長年研究を重ねてきた著者が,概念の混乱を整理しながら,これまでに行われてきた研究を分かりやすく紹介します。さらに,それらの知見を踏まえて,「考える」ことの大切さも強調しています。

私のコメント

社会心理学の立場から,「ルール」について概念の混乱を整理しながら検討するということで期待して読んだのだが,私の期待とは違う本であった。

「私たちは,生まれてから死ぬまで,ずっとルールに従って生きています」という記述は,人の行動が,特に言語の獲得以降,すぐには気が付かないものも含め多くの「ルール」に従っており,そこが人工知能のアポリアになっているという意味で,きわめて重要な指摘であるが,著者はそういう見方はしないようだ。

その上で,ルール,規則,法,社会規範,道徳,マナー等を適切に概念整理し,それぞれの機能と異同,及びそれらに従う人の行動の特質,遵守させる方法等を,実験に基づいて記述することができれば,ルールについて,心理学,哲学・倫理学,法学の架橋ができる素晴らしい本になったでだろう。

実は私が高く評価する「啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために」の著者であるジョセフ・ヒース には,「ルールに従う―社会科学の規範理論序説」という浩瀚な著書があり,「社会科学においてもっとも基礎的な問題である規範問題について、哲学、社会心理学的実験、進化理論、社会学や経済学の知見を用いて基礎理論を構築する。社会科学を統合するまったく新しい試み」と紹介されるのだが,訳者による「概要」の記述さえ膨大で頭に入りにくく,読み始めるのを躊躇している。その「先払い」にでもなればと思ったのだが,そうはいかなかった。

副題の「 逸脱と迷惑の」という意味もよくわからないし,社会的迷惑行為に「こころ」を対置するのでは,単なる道徳おじさんになってしまう。社会心理学は,哲学・倫理学,法学にはない,科学的手法でルールの解明に挑めるのだから,ぜひそちらを伸ばしてもらいたい。

なお,命令的規範と記述的規範,6つの道徳発達段階,視点が変われば正しいも変わる,返報性(互恵性),社会的公正の4分類,BIS(行動抑制システム)とBAS(行動接近システム)等々,個々の記述には参考になる記述も多い。

再読する機会があれば,このあたりを補足したい。

詳細目次

1 社会的迷惑とは何か
  社会的迷惑とは  言い訳の類型  社会考慮について  バカッター騒動
  迷惑とは考えないこと

2 逸脱行為とは何か
  社会規範とは  社会規範の所在について  すべての規範は集団規範
  当為について  社会心理学の切り口から見た二つの社会規範  社会規範の周辺概念  道徳性と社会規範  同調行動と社会規範  本章のまとめ

3 正しいを考える
  正しいを疑ってみる  時が経てば正しいも変わる  視点が変われば正しいも変わる  返報性について(時代や国境を越えたルール) 社会的公正と迷惑行為  正しいの概念整理

4 迷惑行為・ルール違反の抑止策
  抑止策の理論的背景  危ないからルールが必要なのか、ルールで決められたから危ないことなのか?  自制のメカニズム  BISに基づく迷惑行為の抑止
  恥の喚起とルール違反の抑止  BASに基づく迷惑行為の抑止
  相手が見えるとルールを守る?  親切に応えてルールを守る?
  教育側面からのアプローチについて  共感性の涵養に基づくルール違反・社会的迷惑の抑止  囚人のジレンマゲームに基づくルール違反・社会的迷惑の抑止
  考えることの大切さ  厳罰化の懸念

5 ルール研究の今後
  調査手法の課題と可能性  調査の信頼性と妥当性  社会的望ましさのハードル  倫理的な問題  フィールドに飛びだそう  バーチャル・リアリティの可能性  社会に関心を持ちましょう

6 ルールを突き詰める
  行き着くところは“考える”こと  “正しくない”を再考する  “自由は正しい”を疑う  ルールも迷惑も繰り返す  どう立ち回るべきか  まとめ

おわりに
引用文献