複雑な問題群

これは、固定頁「世界の複雑な問題群」の下位メニュー「地球温暖化とエネルギー問題」の初稿を投稿したものです。固定頁の方は漸次更新していきます。

検討すべき問題

ここでは、「エネルギー問題」、「地球温暖化と気候変動」、「再生可能エネルギーをめぐる問題」に分けて検討しよう。取り急ぎ作成時点(2020年10月)では、検討すべき本とその詳細目次を掲載するだけである。

エネルギー問題

地球・世界の持続可能性を考える場合、エネルギー問題を除外するわけにはいかない。原油の大量消費、原子力発電等をどう考えるのか等は、持続可能性にとって極めて重要な問題である。ここでは、まず次の本を読み込むことにしよう。検討した結果はおって掲載する。
1は、ある水準の考察が客観的に展開されており、放送大学を視聴すればより分かりやすいだろう。15項でまとめとして「エネルギーと持続可能な社会」が記述されている。
2は、「UCバークレー物理学教授、米国エネルギー省顧問」という肩書きの著者が、将来のアメリカの指導者たる学生を対象にして語るという段取りで、その内容は科学的ではあるものの相当にアメリカの「国益重視」で、記述に疑問も多い。ただこれと向き合わないとわが国の政策決定にも向き合えないだろう。

  1. エネルギーと社会:放送大学(詳細目次にリンク)
  2. エネルギー問題入門:リチャード・A・ムラー(詳細目次にリンク)

地球温暖化と気候変動

地球温暖化は現代のもっとも大きな課題であり、これを論じた本も多いが、そのうちから4冊を紹介しておこう。結局、気温の2度の上昇、4度の上昇が地球(人間の生活)何をもたらすかが納得できるかどうかが、素直に問題に向き合えるかどうかの分かれ目のような気がする。
それを理解するためにはまず2がいいだろう。1は、放送大学の教材、3の著者は、「第3次産業革命」、「限界費用ゼロ社会」等で斬新な観点から未来を考察するアドバイザー、4の著者はノーベル経済学賞受賞の経済学者である。

この他にも、持続可能性やこれからの社会を考察する重要な本の中でも数多く取り上げられているが、追って紹介しよう。

  1. 地球温暖化と社会イノベーション:放送大学
  2. -地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実:デイビッド・ウォレス・ウェルズ
  3. グローバル・グリーン・ニューディール-2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う:ジェレミー・リフキン
  4. 気候カジノ 経済学から見た地球温暖化問題の最適解:ウィリアム ノードハウス

再生可能エネルギーと原子力発電をめぐる問題

今は参考本だけを掲載しておく。

  • (再生可能エネルギー論)
    • 「再生可能エネルギー政策の国際比較: 日本の変革のために」(著者:植田和弘, 山家公雄)
    • 「世界の再生可能エネルギーと電力システム 経済・政策編」 (著者:安田 陽)
    • 「世界の再生可能エネルギーと電力システム 電力システム編 」(著者:安田 陽)
    • 「世界の再生可能エネルギーと電力システム 風力発電編 グラフとデータで徹底比較分析」(著者:安田 陽)
    • 「再生可能エネルギーのメンテナンスとリスクマネジメント」(著者:安田 陽)
    • 「送電線は行列のできるガラガラのそば屋さん?」(著者:安田 陽)
    • 「かんたん解説!! 1時間でわかる 太陽光発電ビジネス入門」(著者:江田 健二)
    • 「中規模・大規模太陽光発電システム -基礎・計画・設計・施工・運転管理・保守点検- 再生可能エネルギー協議会」(著者:NTTファシリティーズ)
  • (原子力発電論)
    • 「原発危機の経済学」(著者: 齊藤 誠 )
    • 「震災復興の政治経済学」 津波被災と原発危機の分離と交錯(著者: 齊藤 誠 )
    • 「原発のウソ」(著者:小出裕章)
    • 「原発のコスト――エネルギー転換への視点」(著者:大島 堅一)
    • 「原発に挑んだ裁判官」(著者:磯村健太郎、 山口栄二)
    • 「福島原発事故と法政策―震災・原発事故からの復興に向けて」(著者:高橋滋)

詳細目次

エネルギー問題

  • エネルギーと社会:放送大学

    • 目次
      • エネルギー資源とエネルギー利用史
      • エネルギーと社会・経済
      • エネルギーと環境
      • エネルギーと地球温暖化問題
      • エネルギーを理解するために―エクセルギーとアネルギー
      • エネルギー変換とエクセルギー破壊
      • エネルギーの熱利用
      • 高効率発電技術
      • 再生可能エネルギー
      • エネルギー貯蔵・輸送システム
      • 水素エネルギーと燃料電池
      • 原子力エネルギーと核融合
      • エネルギーの有効利用と省エネルギー
      • エネルギーと生活
      • エネルギーと持続可能な社会
  • エネルギー問題入門:リチャード・A・ムラー

    • 目次
      • まえがき はじめに
      • 第1部  エネルギー災害
        • 第1章  福島原発事故
          • メルトダウン 放射能放出 放射能がもたらす死  デンバー線量 最終結論:わたしたちはどうすればいいのか?
        • 第2章  メキシコ湾原油流出事故
          • ディープウォーター・ホライズンの事故 被害 医原病
        • 第3章  地球温暖化と気候変動
          • 地球温暖化ティッピングポイント 地域的変動 ハリケーン 竜巻 極地の温暖化 ホッケースティック 海面上昇 もし地球温暖化が脅威になるとしたら ──わたしたちはそれを止められるのか 地球工学 地球温暖化論争
      • 第2部  エネルギー景観
        • リサイクルされるエネルギー エネルギー安全保障
        • 第4章  天然ガス・思わぬ儲けもの
          • 水圧破砕と水平掘削 シェールガスの埋蔵量 海洋に眠るメタン
        • 第5章  液体エネルギー-安全保障
          • ハバート・ピーク
        • 第6章  シェールオイル
        • 第7章  エネルギー生産性
          • ノーリスク、非課税、年間純益一七・八パーセントの投資 ノーリスク、非課税、年間純益二〇九パーセントの投資 国ぐるみのエネルギー生産性政策 そのほかの重要な投資 クールルーフ 自動車の燃費の向上 エネルギー効率のよい冷蔵庫 マッキンゼーチャート 環境にやさしそうでやさしくない対策 バス 再生紙 停電 スマートグリッド ケーススタディー カリフォルニアのスマートメーター
      • 第3部  代替エネルギー
        • 第8章  太陽電池の急成長
          • 太陽光の物理 太陽熱発電 太陽電池 シリコン CdTe(テルル化カドミウム) CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン) 多接合太陽電池 太陽電池に関する
        • 第9章  風力
        • 第 10 章  エネルギー貯蔵
          • 電池 電池の物理と化学 将来の電池 風を瓶詰にする:圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES) フライホイール スーパーキャパシタ 水素と燃料電池 天然ガス
        • 第 11 章  原子力開発の急発展
          • 原子炉の爆発 コスト 小型モジュラー原子炉 ウラニウムが枯渇する? 核廃棄物貯蔵 原子力開発の急発展
        • 第 12 章  核融合
          • トカマク炉 米国国立点火施設(NIF) ビーム核融合 ミューオン核融合 常温核融合
        • 第 13 章  バイオ燃料
          • コーンエタノール 生分解性素材はよくない? バイオ燃料モドキ セルロースからつくるエタノール 藻類からくるエタノール
        • 第 14 章  合成燃料とハイテク化石燃料
          • 合成燃料 炭層メタン 炭層ガス化 原油の増進回収(EOR) オイル第
        • 第15 章  代替エネルギーのそのまた代替案 ── 水素、地熱、潮流、波力
          • 水素 地熱 潮力 波力
        • 第 16 章  電気自動車
          • 電気自動車ブーム テスラロードスター シボレーボルト 日産リーフ プラグイン・ハイブリド電気自動車 鉛酸バッテリー 再充電時間 燃費効率 普通のハイブリッド車 バッテリーの問題
        • 第 17 章  天然ガス自動車
        • 第 18 章  燃料電池
        • 第 19 章  クリーンな石炭
      • 第4部  エネルギーとは何か
        • エネルギーの特性 食品と燃料と物体のエネルギー エネルギーとは物なのか? エネルギーの意味 高校生や大学一年生が学ぶエネルギー 大学二年生が学ぶエネルギー 大学三年生が学ぶエネルギー 大学四年生と大学院生が教わるエネルギー エネルギーの美しさ
      • 第5部  未来の指導者へのアドバイス
        • エネルギー技術政策 エネルギー生産性 天然ガス シェールオイル 合成燃料 ハイブリッド車とプラグイン・ハイブリッド車 原子力 考慮すべき重要事項 地球温暖化と中国 エネルギー生産性に関する追加情報 電力網とベンチャービジネス投資 助成金 エネルギー災害 要注意事項 流行り物に要注意 リスク便益の計算に要注意 予防原則に要注意 楽観主義バイアスと懐疑主義バイアスに要注意 スローガンに要注意 指導者が未来に遺すもの

地球温暖化と気候変動

 

地球温暖化と社会イノベーション

  • 1 パリ協定と地球温暖化対策の課題
  • 1.地球温暖化が人類に問うていること
  • 2.パリ協定の歴史的意義
  • 3.地球温暖化と社会イノベーション
  • 4.本講座の構成とねらい
  • 2 地球環境問題と地球温暖化
  • 1.地球環境問題について
  • 2.地球環境問題としての地球温暖化
  • 3.地球温暖化問題に対する国際的な取り組みの開始
  • 3 地球温暖化の予測と影響
  • 1.地球の気温
  • 2.将来の気候変動予測
  • 3.将来の予測と20世紀の地球規模の気象変動
  • 4.予測の不確実性
  • 4 地球温暖化−大気組成変化とその観測−
  • 1.地球大気と温暖化の関係
  • 2.地球の温度を左右するもの
  • 3.将来濃度監視のための温室効果ガス観測ネットワーク
  • 4.各種観測の重要性と課題
  • 5 地球温暖化−地球温暖化の緩和と将来予測−
  • 1.地球温暖化対策としての緩和策
  • 2.温室効果ガス排出量
  • 6 地球温暖化の影響と適応
  • 1.地球温暖化の影響
  • 2.現時点で確信度の高い温暖化影響
  • 3.日本における温暖化影響について
  • 4.将来の温暖化影響に対する適応策
  • 5.今後の課題
  • 7 問題解決への取り組み(1)日本の取り組みと国際、国内合意形成
  • 1.温室効果ガスの排出を削減するための国際的枠組み
  • 2.パリ協定実施のための国際的な取り組み
  • 3.国際的枠組み下での国内の合意形成
  • 8 問題解決への取り組み(2)ステークホルダーとその役割
  • 1.問題解決に対する日本の多様なステークホルダーの取り組み
  • 2.温暖化問題解決から持続可能な社会の実現への展開
  • 3.企業・市民イノベーションのスケールアップのために
  • 9 産業界の取り組み(1)1次エネルギー
  • 1.はじめに
  • 2.エネルギー
  • 3.再生可能エネルギー
  • 4.エネルギー効率の高度化
  • 10 産業界の取り組み(2)水素社会と炭素隔離
  • 1.低炭素化と水素利用
  • 2.炭素隔離技術
  • 3.水素の燃料としての利用
  • 11 産業界の取り組み(3)環境にやさしいさまざまな要素技術
  • 1.地球環境問題と要素技術
  • 2.技術開発のロードマップ
  • 3.さまざまな要素技術
  • 12 緩和と適応の交際協力
  • 1.水田における緩和技術開発に関する国際協力
  • 2.気候変動に適応するための防災分野における国際協力
  • 13 ICTとスマート化による環境貢献
  • 1.ICTによる効果と省エネルギー対策
  • 2.ICTを活用した適応施策
  • 3.ICTによる社会のスマート化
  • 14 みんなで地球環境を守る(1)地球環境保全に向けて
  • 1.地球に生活するものの共通の課題としての地球温暖化
  • 2.主体性のある市民としての地球環境保全
  • 3.社会連携・事業展開
  • 4.未来に向けて
  • 15 みんなで地球環境を守る(2)地球市民としてのチャレンジ
  • 1.地球環境の在り方を議論し、理解する
  • 2.実効性のある温暖化対策にするために
  • 3.後世に誇れるグローバルな環境市民になるために
  • 4.本講座の締めくくりに当たって

地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実:デイビッド・ウォレス・ウェルズ

    目次

        第1部   気候崩壊の連鎖が起きている

            第1章  いま何が起きているのか

            第2章  隠されてきた「最悪のシナリオ」

            第3章  気候崩壊はすでに進んでいる

            第4章  グローバルな気候崩壊の連鎖

            第5章  未来は変えられる

        第2部   気候変動によるさまざまな影響

            第6章  頻発する殺人熱波

            第7章  飢餓が世界を襲う

            第8章  水没する世界

            第9章  史上最悪の山火事

            第 10 章  自然災害が日常に

            第 11 章  水不足の脅威

            第 12 章  死にゆく海

            第 13 章  大気汚染による生命の危機

            第 14 章  グローバル化する感染症

            第 15 章  経済崩壊が世界を揺るがす

            第 16 章  気候戦争の勃発

            第 17 章  大規模な気候難民

        第3部   気候変動の見えない脅威

            第 18 章  世界の終わりの始まり

            第 19 章  資本主義の危機

            第 20 章  テクノロジーは解決策となるのか?

            第 21 章  政治の弱体化

            第 22 章  進歩が終わったあとの歴史

            第 23 章  終末思想への抵抗

        第4部   これからの地球を変えるために

            第 24 章  劇的な変化の時代が始まる     

        謝辞     

        著者あとがき  残された時間で何をするべき

グローバル・グリーン・ニューディール-2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う:ジェレミー・リフキン

     目次

        イントロダクション

        第Ⅰ部   大転換 ──急速に進む化石燃料からの脱却と座礁資産  

            第1章   要はインフラだ      

                第三次産業革命のパラダイム      

                点と点を結ぶ

                インフラは誰が所有するべきか?      

                グーグルの統治とそれへの対抗手段  

            第2章   パワー・トゥ・ザ・ピープル-太陽と風は無料だ      

                EUの政治活動家がグリーン・ニューディールをスタートさせるまで      

                ICTとコミュニケーションのインターネット      

                再生可能エネルギーのインターネット  

            第3章   ゼロ炭素社会の暮らし-自動化された電気車両による移動、接続点となるIoT建築物、スマートなエコロジカル農業      

                限界費用ほぼゼロの移動      

                IoTの接続点となる建物      

                グリーン時代に備えて労働力を養成する

                スマートなエコロジカル農業      

                レジリエンスの時代  

            第4章   臨界点-二〇二八年前後にやってくる化石燃料文明の崩壊

                二〇二〇年に達成すべき 20‐20‐20      

                大転換── 緑の一線を越える

                見逃された警告      

                見て見ぬふりの北米      

                ブラックゴールドの呪い      

                警鐘を鳴らす金融業界

        第Ⅱ部   廃墟から立ち上がるグリーン・ニューディール  

            第5章   巨人を目覚めさせる-声を上げる年金の力      

                カール・マルクスをひっくり返す      

                理論から実践へ─ 革命の始まり  

            第6章   経済改革-新しい社会資本主義

                主役は社会的責任投資(SRI)      

                費用はどれだけ必要か?      

                資金はどこから      

                インフラを取り戻す      

                ESCO── グリーン・ニューディールのビジネスモデル  

            第7章   市民の力を結集せよ-地球上の生命を救うために      

                ヨーロッパからの手紙      

                種として考える      

                三頭のゾウ      

                グリーン・ニューディールのカギを握る二三の方策      

                ピア・アセンブリーによるガバナンス

気候カジノ 経済学から見た地球温暖化問題の最適解:ウィリアム ノードハウス

    目次

        第Ⅰ部  気候変動の起源    

            第1章   気候カジノへの入り口    

            第2章   二つの湖のエピソード    

            第3章   気候変動の経済的起源    

            第4章   将来の気候変動    

            第5章   気候カジノの臨界点

        第Ⅱ部  気候変動による人間システムなどへの影響    

            第6章   気候変動から影響まで    

            第7章   農業の行く末    

            第8章   健康への影響    

            第9章   海洋の危機    

            第 10 章   ハリケーンの強大化    

            第 11 章   野生生物と種の消失    

            第 12 章   気候変動がもたらす損害の合計

        第Ⅲ部  気候変動の抑制 ── アプローチとコスト    

            第 13 章   気候変動への対応──適応策と気候工学    

            第 14 章   排出削減による気候変動の抑制──緩和策    

            第 15 章   気候変動抑制のコスト    

            第 16 章   割引と時間の価値

        第Ⅳ部  気候変動の抑制 ── 政策と制度    

            第 17 章   気候政策の変遷    

            第 18 章   気候政策と費用便益分析  

            第 19 章   炭素価格の重要な役割    

            第 20 章   国家レベルでの気候変動政策    

            第 21 章   国家政策から国際協調政策へ    

            第 22 章   最善策に次ぐアプローチ    

            第 23 章   低炭素経済に向けた先進技術

        第Ⅴ部  気候変動の政治学    

            第 24 章   気候科学とそれに対する批判    

            第 25 章   気候変動をめぐる世論    

            第 26 章   気候変動政策にとっての障害

        謝辞   訳者あとがき   原注

 

 

複雑な問題群

「世界の複雑な問題群」を整備しています

これまで「持続可能性:世界の複雑な問題群」とか、「持続可能な地球」(世界、社会等々)いろいろな名前で呼んでいたこのコンテンツを、「世界の複雑な問題群-複雑系と持続可能性-」(略称は、世界の複雑な問題群)とし、トップページ、及び、次項に記載する記事で構成することとし、今日は、トップページの「世界の複雑な問題群」と、下位項目の「地球の環境問題」に手を入れました。

情報の氾濫と法とルールの破綻、資本主義と企業の行方、地域の行方は今後作成しますが、いずれもなかなか難しい問題です。特に、法とルールの破綻や資本主義と企業の行方は、どうしたもんだか。

その他の項目は、速やかに手を入れます。

世界の複雑な問題群の構成

複雑な問題群

明日、ゼロから生活を始める

世界の「持続可能性」が途絶えたとき、つまり世界が無に帰したわけではないが世界のシステムのほとんどが破綻して、これまでどおりいかなくなったとき、私たちはどうしたらいいのだろうか。要は、分業に依存できなくなった場合、「明日、ゼロから生活を始める」ことができるだろうか。

とはいえ、明日の衣食住についていきなりゼロから確保できるはずもなく、当面の生命、生活を支えることのできるモノはまだ残っているが、それがなくなったとき、どのように個(それでは狭すぎるので小集団(家族、コミュニティーの方が適切だろう)が自立できるのか、できないのか、そこへの道筋を試行錯誤してみようというのがここでの「思考実験」である。問題は、他者の財・サービスの提供を前提としない、自立するための「知識」とその実践の獲得である。

私たちの知識

さて私たちは、他者の財・サービスの提供を前提とせず、何が可能だろうか。言い換えると、私たちは何を知っていて、何ができるのだろうか。これは哲学的、思想的な問いかけではなく、現実的な問いかけである。

トースターはできますか(「ゼロからトースターを作ってみた結果」(著者:トマス・スウェイツ))、鉛筆は、コメは、ナスは、塩は、衣服は、木材の伐採と加工はできますか?「いや、ちゃんとした文献があればこれは可能だ」という人はいるだろうが、世界の「持続可能性」が途絶えたときに「文献」が都合よく利用できるのだろうか、「文献」で実践できるのだろうか。

そこで事前に「明日、ゼロから生活を始める」ための「知識」をしっかり確認しておこうという試みの本がある。

「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」を読む

「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」(著者:著者ルイス・ダートネル)(原書は、「The Knowledge: How to Rebuild our World from Scratch」)は、これまでにも紹介したことがある。

内容は、文明の崩壊時に残された材料を利用する猶予期間、この時期を経て、農業/食糧と衣服/物質/材料/医薬品/人びとに動力を──パワー・トゥ・ザ・ピープル /輸送機関/コミュニケーション/応用化学/時間と場所をどうやって活用できるのかという「知識」の集約と実践論である。

たとえば、農業といったって、種、土壌、道具等々、あなたは何も知らないのではないの?とまさにそのとおりである。動力、工業、通信等々、私にはすべて「ブラックボックス」である。そういう人は当然生き残れない。生き残るために頭に叩き込む必要があるし、そうでなくても、私たちが生きている現実の自然、物質を知るためにも、必読である。詳細目次は後掲する。

なお事程左様に「分業」は重要であることを述べた、マット・リドレーの「繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史 」、「進化は万能である」を合わせて紹介しておこう・

でも日本人である私には少し違和感が…「日本列島回復論」を読む

「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」を読んでいると、ここでの自然や文明のあり方、あるいは様々な道具が、どうも違うなあという思いがしてくる。

それはそうだ、この本は、イングランドの自然と文明を前提としているわけで、日本とは自然も文明も異なる。

そういう中で、持続可能な日本を、「山水郷」という観点から捉えた「日本列島回復論: この国で生き続けるために」(著者:井上岳一)の日本の自然と文化の捉え方はとても参考になる。

あるいはもう少し突っ込んで世界の気候と文化を考察した「世界が分かる地理学入門」、「気候文明史」、「30の都市からよむ世界史」等は、地球温暖化論の前提としても役立つので、ここで目を通しておくのがよいだろう。

「「豊かさ」の誕生」を読む

さて、個の自立と分業のもたらす効能への考察はここまででいいとして、「分業」があれば当然に「文明」は繁栄するのか、何があれば経済発展があり得るのか、「持続可能性」のためには経済発展は望めないのかという、ということを考えてみるのもよい。

それには、「「豊かさ」の誕生 成長と発展の文明史 上・下」( 著者:ウィリアム・バーンスタイン」がよい。

この本は、1820年からの経済発展は、「私有財産権と法の支配」「科学的合理主義」「資本市場」「輸送・通信手段」があったからだと論じる前向きの本だ。

そして「ローマクラブ」の「成長の限界論」には」見向きもしないが、それはどうだろうか。