本の森

原沢 伊都夫
講談社
売り上げランキング: 22,746

一口コメント

三上章とか大野晋とかに触発され、実際問題として何の役にも立たず困ったものだと思っていた橋本文法(学校文法)とは全く違う、外国人への日本語教授から生まれた明晰、明快な日本語文法の体系が、短い新書に凝縮している。これは今後の日本語文法論、ライティングの基礎として十分に使える。

簡単なまとめ

網羅的な「教科書」だから、一応、全体をじっくり読むのがよい。ただ、私たちは既に日本語を使用できるわけだから、その使用実態、方法を自覚的にとらえ直すこと、就中、論理的な文書を書くという観点から読み込むのがよい。以下、本書の要点を挙げてみよう。

日本語文の中心となるのは述語であり、述語になるのは、動詞、形容詞(イ形容詞、ナ形容詞)、名詞である。

文の成分と述語の関係を示すのが格助詞である。格助詞は、全部で9つあり、ガ格(主格(主語))、ヲ格(目的語)、ニ格(場所、時、到達点)、デ格(場所、手段・方法、原因・理由)、ト格(相手)、ヘ格(方向)、カラ格(起点)、ヨリ格(起点、比較)、マデ格(到達点)であり、鬼までが夜からデート(ヲニマデガヨリカラデヘト)と覚える。

成分には、必須成分と随意成分があり、必要最小限の組み合わせを文型という。

日本語文は、客観的な事柄を表す部分と(コト)、その事柄に対する話者の気持ちや態度(ムード)を表す部分に分かれる。「~ハ」は、ムードを表し、「主題」を提示し、述語はこれを説明する(主題-解説)。したがって、ムードには、付加部分と、「~ハ」がある。

主語は、述語との関係で、特別な存在ではない。格成分は、どの成分でも、「~ハ」によって、主題として提示される。

「自動詞」「他動詞」、「ボイス」、「アスベクト」、「テンス」、「ムード」

「は/が」の使い分け(150~157頁)

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本の森

英語の本を読む

M.J.アドラー、C.V.ドーレンの「本を読む本」は、なかなかの名著だ。講談社学術文庫に入っているので読んだ人も多いであろう。「本の森」でも紹介した(現時点では作成中)。

さて、せっかくだからこれを原書「How to Read a Book (A Touchstone book)」で読もうと考える人も多いであろう。その場合、日本のAmazonで容易に入手できる。日本のAmazoでは、普通の洋書であれば、ほぼ入手可能だ。送料はかかるが、アメリカのAmazonも利用できる。あとは、紀伊國屋や、丸善・ジュンク堂も利用できるだろう。

ここまでは普通の話だ。

Kindle本とaudible

さて、洋書の多くは、アメリカのAmazonで販売しているkindle-ebook(電子書籍=Kindle本。その後、日本のアマゾンでも販売が開始された。)に収録されている。「How to Read a Book」のような書籍は当然収録されている。Kindle本を購入するには、電子書籍を読むためのハードであるAmazon Kindleを購入した方が良いが、スマホやタブレットでも読むことは可能である。パソコンでは、今のところ英語の本しか読めない(ただし、パソコンにAndroidを載せるという裏技はある。)。

また、アメリカのAmazonは、audibleという、オーディオも販売している。ほとんどのオーディオプレーヤーで聞くことができる。そこにもかなりの数の洋書が収録されている。「HOW TO READ A BOOK」も収録されている。特筆すべきは、audibleはかなり安いということである。定価が、kindle-ebookよりも安いものも多い。ときどき3~7ドルという特売もしているし、毎月一冊ダウンロードできる会員になれば、すべて30%引きである。これについては、2015年1月の情報を「Audibleを聞く」という記事にまとめた。

どのように利用するか

これらの利用環境はどんどん改善されつつある。iPad、iPhone、iPodtouch、android、パソコンでこの両方が利用できるし、Kindleでも当然可能である。

単語を選択して日本語の辞書で調べることができるし、他でも英英辞書で調べることは可能である.。Kindleには、「Word Wise」という特筆すべき機能が搭載された。

したがって、kindleを読みながら、あるいは書籍を読みながら、audibleを聞くことができる。逆かな。聞きながら、読むことができる。

困ったこと

さて、洋書を楽しむために絶好の環境が整ったことは間違いない。「HOW TO READ A BOOK」について、日本語訳、原書、kindle本、audibleの4種そろい踏みである。

ただ、本を買ったかどうかさえおぼつかないのに、4種もあると訳がわからなくなってしまう。しかも、原書だって、ハードカバー版、ペーパーバック版があるし、Kindle本、audibleも、複数販売していることがある(全く同じものは、システムがチェックしてくれるが、別の主体から販売されている同じ書籍までは、チェックしてくれない。)。

たとえば、カーネマンの「Thinking,Fast and Slow」についていえば、私の枕元にハードカバー版ペーパーバックス版があり(これはあとでペーパーバック版を自覚して買ったのだからまだいい。)、なんと、kindle-ebookが2種類ある!audibleもある。足りないのは、日本語訳だったが、これも今では、単行本、文庫本、Kindle本の3種類がある。

2年経って

この記事を書いて2年以上経ったので、2015年1月に内容を少し見直した。しかし最大の問題は、2年以上経っても、少しは「英語の本を読む」ことができるようになったのだろうか。沈思黙考。

本の森

ダニエル カーネマン
楽工社
売り上げランキング: 7,887

一口コメント

“THINKING,FAST and SLOW"への橋渡し。カーネマンは、今後の社会や人間の理解に不可欠となるだろう。ただ、「前提」の検討が十分かという問題がある。

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